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東日本大震災の犠牲者に捧ぐショートストーリーゲーム『9.03m』

9.03m-タイトル
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一人称視点の短いストーリーのゲーム『9.03m』は、2011年の東日本大震災と津波で犠牲になったかけがえのない人たちに捧げられている。『9.03m』の開発者であるKarl Inglottさんは、何を思ってこのゲームを制作したのだろうか。

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犠牲者に捧げられたゲーム

『9.03m』はAbertay大学の卒業生Karl Inglottさんによって制作された。彼は2013年1月に設立された、スコットランドに拠点を置くインディーゲームデベロッパーSpace Budgieのディレクターでもある。

“当初はこのプロジェクトについて論文を書いていて、それがきっかけでアイデアが浮かびました。以前からメッセージを込めたゲームを何か作りたいと思っていたのです。津波に関する記事を読むのは辛いものでした。そしてそれが私を動かしました。自分は感情的な人間なので、困難な状況に陥っている人たちを見ると、私も動揺してしまいます。”

サンフランシスコの浜辺

しかしInglottさんは気付いた。レポートで引用された単なる数字では想像性に乏しく、どこか他人事のように思える。そこで彼は感情移入ができ、犠牲者の個人的なストーリーを映し出すものを作ることを考えた。『9.03m』ではプレイヤーはサンフランシスコの浜辺からスタートする。場所が選ばれた理由は、津波の瓦礫が2年かけて流れ着いた先だからだ。

ゆっくりとシルエットに向かって歩いていくと、それは消え去り、別のオブジェが姿を現す。サッカーボール、オルゴール、時計、そしてベビーカー。オブジェを調べると、バタフライが宙を舞い、星を瞬かせて飛んで行く。するとカメラはまた別の姿を捉える。誰かの愛と失われた物語だ。断片的で静かなショートピースはわずか15分足らずだが、その目的を十分に果たしている。

この作品はとてもデリケートに制作されたように思える。Inglottさんの説明によると、完成品はオリジナルのものからは随分変更されたという。オブジェを発見するタイミングは、特に念入りに測られている。

“最初のオブジェクト間の長さでは、十分に機能していませんでした。そしてある段階では、浜辺にあったオブジェクトは3つ4つだけです。大学を卒業後に、大部分を変更することになります。また人々のシルエットは今のように3Dモデルではなく、全てテクスチャーでした。”

それらはゲームのメッセージとしてガイドの役割をしていて、オリジナルのものより透明な姿をしている。

ファーストパーソンのショートストーリーゲーム『9.03m』

名前が書かれたサッカーボール

彼はどうやってオブジェクトを選んだのだろうか。

“まずボールが最初に浮かびました。メディアの報道によって、名前が書かれたサッカーボールが発見されたこと、そしてそれが持ち主の元に送り届けられたことを知っていました。全ての物を津波の犠牲者に結びつけることはしたくなかった。それは無神経すぎるからです。しかし西洋と日本の人々に関連するものも選びたかった。例えばオルゴールは伝統的な西洋のオブジェクトですが、もし仮により日本的な物にしていたら、西洋のプレイヤーが感情移入しづらくなります。”

西洋のプレイヤーにも気を配ることが特に重要だったと、Inglottさんは説明する。海外で起きた悲劇をダイレクトに伝えることは簡単ではないからだ。

“十分に成熟したプレイヤーであれば、どこかで亡くなった人の持ち物を見つけて、それが持ち主の想い出の引き金になるというアイデアを理解することができると思います。”

ビジュアルとストーリー

印象的で最小限度に抑えらることに努めた美学、まばらなピアノのトーン。それらが静かな回想の時間を妨げることはない。非伝統的なゲームの香りを漂わせていて、それは『Journey(風ノ旅ビト)』、『Dear Esther』を思わせる。そしてデザイナー自身も『Journey』のデベロッパー thatgamecompany から受けた影響を喜んで認めている。

“JourneyとFlowerから主にインスピレーションを受けています。単なる物語の描き方だけではなく、ビジュアル面とストーリーがどのように絡み合っていくかに関してもそうです。アートスタイルはRothkoから着想を得ています。プレイヤーにはあまりビジュアル面に集中してほしくなかったからだ。単にそこに存在するだけで、主なフォーカスポイントではなく、私がしようとしている狙いとも少し違うのです。”

風ノ旅ビト

『Journey(風ノ旅ビト)』: 舞台はどこまでも広がる砂の世界で、プレイヤーはクローク風の外套をまとった「旅ビト」を操作して先に進んでいく。文字や言葉による直接的な情報やコミュニケーションを排し、美しいビジュアルと演出だけで世界観を表現する独特な作風が特徴。

セールスは全額寄付

Space BudgieでのInglottさんのチームは、『GlitchSpace』と名付けられたより伝統的なゲームの制作に取り組んでいて、現在アルファの段階にある。しかし、『9.03m』の反応には今でも励まされており、第一次世界大戦から100周年を記念するプロジェクトも検討しているそうだ。もし実現すれば、インタラクティブな展示物として美術館に提供したいのだという。

『9.03m』はこれからも原動力となり続けるだろう。東北地方で犠牲になった方々への追悼だけではない。ゲームプラットフォームSteamでは98円で販売されており、そのセールスの半分は、震災で親を亡くした子供たちを支援するチャリティ団体Aid For Japanへ、残りの半分は天災による被害あった地域、人々を支援するチャリティー団体RedRへ寄付される。

9.03m - Music on the Cliff Gameplay

Source: Edge

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