「理想の銃が組みたい!!」
ある程度銃が好きな人、FPSゲームをやりこんでる人なら、多くの人が抱く普遍的な欲求だろう。
日本で実銃をカスタマイズする事は難しいが、それでもエアソフトガンを弄ったり、またなにより表現技術が上がった昨今のFPS、例えば『Escape from Tarkov』や『Insurgency: Sandstorm』といったリアル寄りのタイトルで、銃のカスタマイズを楽しむことは可能だ。
好み・思想・目的に合わせてバレルやストックを選び、サイトやフラッシュライト、レーザー照準器を載せたり、サプレッサーをつけたり、マニアックなこだわりを反映するならレシーバー(発射機構やボルトを収める銃器のボディパーツ)やピストルグリップを換装したいと考える人もいるだろう。
しかし、筆者が知る限りどんなタイトルでも、マニアのニーズに100%応えることは難しい。
多くは登場するパーツやアクセサリーの少なさ(ゲームプレイには十分な数だが)に起因するほか、場合によってはゲームシステムによる制約が不満に繋がる事もある。ディテールに拘っていないタイトルであれば、実用的でないアクセサリーの組み合わせが散見されるし、FPSの中でもトップのカスタマイズ性を誇る『Escape from Tarkov』でさえもう少しの自由度が欲しくなる場面は少なくない。
そんな不満の解消を叶えてくれるのが、オンラインで楽しめるシミュレーションビルダー『Gunstruction(ガンストラクション)』だ。その魅力をじっくり見ていこう。
『Gunstruction(ガンストラクション)』とは?

『Gunstruction』は、銃器のカスタマイズに特化した基本無料の3Dシミュレーションビルダーだ。アメリカ最大級の銃器系オンラインフォーラムである「AR15.com」上でホストされ、Webブラウザでの利用が可能なほか、海外ではiOSアプリとしても配信されている(Androidアプリ版もあったが現在公開停止)。

その特徴は何と言っても実銃メーカーに許諾を得た上で実装されている大量の実在パーツであり、これらはバレル、ハンドガード、ストック、マガジン、光学照準器といった主要パーツから、フラッシュハイダーやトリガーなどの細部パーツ、さらには内部の機関部パーツに至るまで網羅されている。ユーザーは好みに合わせて自由に組み替えることができ、完成した銃は外観だけでなく重量や長さといった数値的な要素もリアルに計算される。
また、単なる「見た目遊び」に留まらず、パーツ全てに特性や価格が登録されているのもユニークな点だ。これら特徴は、単にアメリカにおける銃器の販売促進を目的としたシミュレーターでもあることが由来であり、日本においてはほとんど関係がないが。一方で購入を検討しているユーザーにとっては、カタログや写真だけでは得られない具体的なイメージを提供してくれる。更に、作った銃を共有する機能まで搭載。
まさに「理想の銃をノーコストノーリスクで、そして自由に試せる」仮想空間と言えるだろう。
充実の選べる銃種

これが『Gunstruction』のメニュー画面。まずプラットフォーム(この場合銃種の事)を選びカスタマイズしていく。プラットフォームとなる銃は以下のとおり。
- AR15の他にも大口径版となるAR308(AR10)
- 狙撃銃のレミントンM700
- アメリカでも人気の高いAK
- シューティングの基礎を学ぶ用途から競技や小動物のハンティングまで親しまれている22口径ライフル
- H&K MP5(G3スタイルに派生可能)
- 拳銃も現代標準のグロック
- ショットガンはレミントンM870


一般的ゲームの様に「カテゴリごとに何種も」とはいかないが、一通りのカテゴリを備えており、精巧なビルダーとしては充実の選択肢と言える。
実際にカスタムしていこう
さっそく理想の一丁を目指し組んでみよう。ブラウザ版にて動作を確かめつつ気の向くまま...と出来たら楽だが、登録パーツ数が膨大なだけに、ある程度のコンセプトを決めて取り掛かる事をお勧めする。
今回は筆者の好み100%で「いつでも扱いやすく、慣れ親しんだスタンダードなルックスで、比較的簡単に組め、近中距離対応のAR15」とコンセプトを定めて組んでいく。

この画面で表示されるビルド済みカスタムガンはスポンサー企業のお勧めビルドで、下にハイライト表示されている「FEATURED BUILD」で選択が可能。AR15プラットフォームではガイズリー製の高級ビルドが推されているようだ。

今回はコンセプトがあるので上の「BUILD」を選択。すると使用弾種の選択になる。.22LR弾から始まり標準の.223レミントン弾、狙撃向けの6.5ミリグレンデル弾や亜音速弾で近距離戦に適性がある.300BLK、果ては9mmで最近流行りのピストルキャリバーカービンまで組むことが可能だ。今回はもちろん通常用途を想定しているので.223レミントン弾仕様を選択。

次はビルド方法の選択。各メーカーが完成品として販売しているコンプリートガンをベースにある程度楽に組みたいなら「PREBUILT」が。「パーツを0から全て自分好みに選んで究極の一丁を目指す!」となれば「SCRATCH」がいいだろう。今回は比較的簡単なビルドを目指すので「SCRATCH」を選択。

コンプリートモデルが登録されているメーカーのアイコンがずらりと並び、タップするとその会社の概要が読める。今回は手堅い品質と妥当(もしくは安い)な価格に定評があるBCM社を選択。
好みによるが、初心者は AERO社 ・ CMMG社 ・ BCM社のいずれかを選択すれば組みやすいだろう。古いモデルが好きな人は左端のBROWNELLS社もいいかもしれない。

BCM社のプレビルドモデルが表示される。筆者は古い人間なので、昔ながらのフロントサイトポスト(通称:おにぎりサイト)にクアッドレールを備えた E.A.Gタクティカル モデルを選択。
E.A.Gタクティカル は米国内でタクティカルトレーニングを提供する会社であり、実戦的で扱いやすいモデルだ。

いよいよカスタマイズに移る、正直この時点で誰にでも非常に扱いやすい最大公約数的セッティングだが、少し自分の好みを反映させよう。


「EXPLODE(展開)」を選択すると、アッパーとロアーにレシーバーが分割されアクセスが可能になる。AR-15の場合ではあるが、パーツの構成ブロックは大きく分けてロア―(下部)とアッパー(上部)の2つに分けられる。今回はその構成に基づき、2段階の工程を意識してビルドしていこう。
ロアレシーバーカスタム

まずピストルグリップを変更する、Tango Down社のグリップも悪くはないが、より握り慣れた選択肢が優先だ。それにしてもな点として、画像左の「BUY」のアイコン下のスクロールバーの短さを見ていただきたい。グリップだけでもこの数の多さだ。


そこで右上のバーにあるフィルタリング機能を使用する。上のタブで製造会社や色や価格といった要素を、下のタブで具体的な条件を設定できる。「Manufacturer(製造会社)」で Magpul 社製品を設定してフィルタリング。

フィルタリングしてもこの量がずらっと並ぶ、安く握りやすいMOEグリップ(ブラックカラー)を選択して換装する。


次いで銃の“顔”を決める重要な一パーツであるストックを換える・定番ながら気の利いた B5 Systems 社製のSOPMODストックが目に留まった。「外し」や「あまり拘らないという拘り」を意識してフラットダークアースカラーを選択。

大変に細かい点としてレシーバーエンドプレートも変更できる。地味だが、実用で大変に重要なスリング(負い紐)の使い方や使用感に大きくかかわる。Magpul社製のASAPを選択。

機関部・直接の操作パーツを多く収めるロアレシーバーに移る。堂々のこの細かさ、トリガーの感触に大きくかかわるトリガーグループのみならず、固定用のピンまで嗜好を反映させられる。

評判のいいGeissele社製2ステージトリガーをチョイス。いやまあ日本ではおおよそ縁がないけれど、今の筆者は「アメリカの銃器愛好家」だ。


銃の信頼性に直接作用する大事なパーツ、マガジン。「アメリカの銃器愛好家」の頭で「手に入りやすくて安くてちゃんと動くのは・・・」と考え、またしても Magpul 社製の P-MAG を選択。ゲームでもおなじみなハイキャパシティマガジンも多くあり、変わり種の5連結星形マガジンなども実装されており驚き。
それにしてもこの星形マガジン、実用されている所を一度も見たことがない...。
アッパーレシーバーカスタム


そして、いよいよ銃の性格の大部分を決めるアッパーレシーバーのカスタマイズへ。重要な動作に関わる内部機関は、BCM社製の安定感あるパーツが既についているので弄らないこととする。今回は取り回しを優先したいので、バレルを一般的な14.5インチから12.5インチに変更しよう。

フィルタリング機能で「Barrel Length(銃身長)」から「12.5」を選択。

ここで問題発生!ガスポート(動作に必要な発射ガスをレシーバーに送るための孔)の位置の関係で「そのままの仕様で銃身だけ短くする」形で適合するパーツがなく、仕方がないので「SHOW ALL」機能を使い不適合パーツを表示し、Daniel Defence社製の12.5インチバレルを暫定的に選択。

干渉を起こしていたり、不適合な組み合わせのパーツはこの様に赤く表示される。バレル回りだけ見てもこのように食い合わせが悪いようだ。

問題を解消するべく赤い表示のパーツをタップ、すると干渉なしで使えるパーツが最初に並ぶ気の利いた機能があり、この場合はガスポートの位置に合わせた短さの製品を簡単に選べる。


バレル回りの組み合わせの問題は解決されたが、位置がずれたおにぎりサイトが元からついていたハンドガードと干渉してしまっているようだ。やや名残惜しいが同じLaRue タクティカル社製のショートバージョンのハンドガードに換えよう。
アクセサリーを盛ろう!

これで本体の構成は確定したが、最初からついているフォアグリップとレールカバーが残ってしまっている。「EXPLODE」の横の「ATTACH」の項目で外そう。不可逆な作業や決定は一つもない。


パーツを選択すると位置をずらしたり、除外することが可能だ。右下の回転アイコンを押すと銃が90度ずつ回転し、どの面にあるパーツでも選択出来る。


パーツは外し終えたが、ここで展開されているリアサイト、開いたままのダストカバーが気になったので「OPERATE」の項目から動作部品を操作して整える。ストックを体格に合わせて少し伸ばし、使用イメージの解像度を上げる。


本体の次に重要なパーツ、サイト選定の時間だ。扱いやすさと全体的なルックスのまとまりを意識してEotech社のホロサイトを、その中でも古めのルックスの“512”を選択。最近はやりのハイマウントで機動戦闘への適性を高めるために、Vortex社製ライザー(底上げ)マウントを噛ませる。

非常にかっこいい...。

「CHECK SIGHTS」の項目でサイトビューを見ることのできる、レティクルの形や大きさの確認も可能だ。


中距離戦闘へ対応するために倍率が欲しくなった。アクセサリー追加項目からマグニファイアーを選択し、サイトと同じEotech社のG33マグニファイアーにしよう。

単品では接続できないプロダクトは下列右に表示される「ADD MOUNT」で適合するマウントを選択可能だ。ここもやはりEotech純正品がいいだろう。

ここで大問題発生! ライザーマウントを噛ませたサイトにブースターの高さが合わないのだ。実際には対応する高さの同種マウントもあるのだが実装されていないので、口惜しいがホロサイトは諦めることとする。
不自由な点かもしれないが、同時にシミュレーターとしてサイトビューのチェック機能があるからこその気づきでもある。


サイトの第二候補には定番のAimpoint T1、ハンドガードと同じメーカーであるLaRue社製マウントで載せる。

問題なし!



更に重要な選択肢であるフラッシュライトを追加する。ウェポンライトとして専用設計されているものもいいが、業界トップシェアを誇るSurefire社の、ハンディライトとしても人気なG2XをまたしてもLaRue社製マウントを介して右側レールに装着する。ハンドガードとサイトマウント、フラッシュライトマウントで同じメーカー製にすることで統一感も醸し出せるだろう。

とてもかっこいい...。

ハンドリングに大切なフォアグリップには、これまた定番のMagpul社製のRVGを選択。
外装ドレスアップの仕上げに、使用していないレールの保護になるレールカバーを装着したいと思った。レール保護とは言ってみたが、新品のハンドガードのレール部分はエッジが立っておりグローブを痛めたり、手を切ったりすることすらあるので、手の保護に必要ともいえる。


Magpul社製のはめ込み式カバーを選択したが、好きな部分に必要な分を切り取って使用するスタイルの製品であり、余剰分が飛び出てしまった。



「OPERATE」からレールカバーをクリックで短くできる機能がちゃんとあった!ただ残念ながら、現状PCブラウザ版のみの機能の様だ。

非常にかっこよく、非常に扱いやすい、申し分ないビルドの完成だ!!
ペイント機能も搭載!

せっかくだしという事でペイント機能も試してみる。選択後まず驚いたのは用意されている色の多さだ。非常に小さな違いのミリタリーカラーがずらっと並んでいる。同じ色でも会社ごとに独自に設定してある色まで登録されていて圧倒された。

これは……これは違うかな……。

ロアレシーバーのみ、落ち着いたフラットダークアースカラーに塗ることにした。

夢中になって組んだが、とうとう完成!
充実しすぎな撮影機能


完成した銃は「PHOTO」から撮影が可能。こちらも嬉しい拘りが反映されており、パーツの展開図がワンタッチで撮れる。



撮影背景も無地や撮影スタジオ、ガンラック、レンガ積みの壁など好みなものを選択可能だ。

当然カメラと銃を操作して好きなアングルからの撮影が可能。光源の調整や、フィルターや被写界深度の設定など演出の自由度も抜かりない。レンガ壁に立てかけてる風の撮影にチャレンジをしたかったが、操作が非常に難しく挫折……



右上のアイコンから情報を確認可能。長さ・重量・総価格などの性能諸元が右窓にまとまっているのに加えて、左窓にはパーツごとの詳細なデータがずらっと並んでいる。
またお気に入りのビルドが組めた時や、ベースガンとして仕様を決めて組み換えのシミュレーションに使いたい時などは右上端の保存アイコンで自分だけのプリセットとして保存が可能な他、更にそれを人と共有する事も可能だ。
むむむしかし、5,000ドル(約¥73万円)か~
注意点・欠点は?
今回はPCブラウザ版を利用したが、筆者の今回使用したPCが貧弱な事もあるが、動作がやや重く感じた。最適化はイマイチかもしれないが、ブラウザ上で動作する精細な3Dビルダーとしては及第点以上だろうと思う。
またPCブラウザ版とIOSアプリ版にも差異があり、IOSアプリ版にはペイント機能に制限が掛かっているほか、有料版にアップグレードしないと特定少数のパーツは使用できないのには留意が必要だ。
加えて、各種操作性の限界やそれぞれのガイドの無さも、銃器知識がない人にはややとっつきにくいかもしれない。「凝った仕様を真似したいが、どうしたらこのアクセサリーを付けられるのか分からない」というような場合も起こってしまうだろう。
そして銃器ファンの視点から言うと、「あると思っていた定番パーツがない」事が気になった。軍隊からも民間からも最高評価を得ているナイツアーマメントの製品や、高級なLMTやLWRCといった会社の製品は登場せず、軍用や警察用をイメージした仕様が組めないのは結構な寂しさがある。この点については大前提が「アメリカの民間銃器市場」を想定していることが大きいだろうという事を考えると、仕方ないかもしれない。
そしてこれは欠点というほどのものではないが、「3Dビルダー/シミュレーター」であるからして射撃特性の確認は出来ない事は覚えておこう。命中精度や反動の参照は出来ない、あくまで外観+予算シミュレーションとして利用するのが正解だろう。
その他ギャラリー
めちゃかっこいいのができたぜー!

HK416の民間版、MR556をベースに組んだ米軍特殊部隊仕様イメージのカービン

『Metal Gear Solid 4』のスネークカービンイメージ

流行を抑えた16インチライフル、こういった「今風」な仕様が一番組みやすく、Gunstractionの本懐と言えるかもしれない

フィクションでは殆ど登場しないパーツの取り合わせの探求も出来る、癖が強いパーツを小奇麗にまとめる遊びも最高だ。







「スーダンから始まり第三世界で戦い抜いたAR-10」や「ゾンビ世界を旅する時のお供用PCC」、「完全自分専用AK」「現代化MP5K-PDW」「威嚇のために異形性を推したショットガン」「お金をかけまくったグッチグロック」想像力次第で好きな楽しみ方ができる。
「全部間違えてるじゃねーか」と叩かれてしまった米海軍での仕様を再現したっていい、スコープを前後逆に載せる事だってできるのだから。


Gunstruction 総評
全体的に、「銃好きが作った、銃好きのためのツール!」と感じた。ゲームとしての仕様は満たしていないかもしれないが、それでも「理想の銃を自由に組める遊び場」としての性質を突き詰めようとしている優れたツールであり、エアソフトガンなどのビルドを計画している人も、ただ「夢の銃」を作ってみたい人も楽しめるサービスだ。
銃好きなら一度は試して損はないと言える『Gunstruction』で、たまには無心に銃を組む時間も素敵なのではないだろうか。
- ar15.com - Your Firearm Resource. (AR-15, AR-10, M4, M16, AK-47, and More!)
- GUNSTRUCTION - The Ultimate 3D Configurator
FPS POWER TUNE


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