Ubisoftの『Rainbow Six Siege(レインボーシックス シージ)』では、新シーズン「オペレーション・スティールウェーブ」のリリースに向けてテストサーバーが開放されています。新オペレーターと同時に実装されるリワーク「民家」マップについて、シニア・レベルデザイナーのジェレミー・ダウセット氏が、シージのトークチャンネルLogic Bomb Podcastでその設計コンセプトについて語っていました。
ジェレミー・ダウセット氏の紹介
Developer Explains House Rework Ep.18 with Jeremy Dowsett
ジェレミー・ダウセット(Jeremy Dowsett)氏は『レインボーシックス シージ』のシニア・レベルデザイナーです。Ubisoftに10年近く勤務し、『アサシンクリード』シリーズや『ファークライ』シリーズの開発にも参加。モントリオールのスタジオに移ってからはテスト段階から『シージ』に関与し、昨今は「ヴィラ」やリワーク「運河」などのマップをデザインしています。新シーズンのリワーク「民家」もダウセット氏の作です。
「民家」はカジュアルリワーク?
リワークされた「民家」マップはランクマッチのマッププールには入っていないため、Redditなどのシージコミュニティでは「カジュアルリワーク」と称する向きもありました。これに対してダウセット氏は、「カジュアル層(現在の「クイックマッチ」のこと)はプレイヤーの大部分を占めているので、カジュアル・リワークという言葉はやや疑問ですが」としたうえで、次の点を説明していました。
- 旧「民家」はダウセット氏が最初に作ったマップの1つで、思い入れがある
- しかしシーズンを経るごとに「民家」のバランスの悪さが分かってきたため、ここでのリワークは良いタイミングだった
- 方針としては、プロリーグ向けの緊張感のあるマップというよりは、旧「民家」よりもさらに楽しくプレイできるマップにしたかった
- とはいえカジュアル用のマップとランク用マップを作るのに、プロセスや仕事量に違いはない
バランスの取り方
旧「民家」のバランスについては、リリース当初から指摘され続けてきたように、マップ全体の小ささが挙げられます。ダウセット氏も「旧『民家』の広さは、オペレーターたちがそれぞれ役割を果たすのに最低限必要な面積以下だった」と語っています。
特に地下守りでは、「補強壁を割ってスモークを炊いて設置して終わり」という流れがほとんどで、プレイヤーはマップの外にいる時間の方が長かったそうです。そこで新「民家」では、まず建物内に入って遊撃に対処しなければならないようにして、カジュアルとはいえ緊張感のあるプレイが楽しめるようにしたそうです。
具体的には以下のような変更が加えられています。
- 3つ目の階段を作ってローテーションしやすくし、外に面していた窓もいくつか閉じた
- 爆弾の移動・追加をした。また床の大部分が破壊できるようになり、特に地下爆弾での攻防を面白くした
- 同様の理由で、ガレージの壁は一方をふさいで、ドアをつけることで防衛側にも対抗策を増やした
- 地下はローテートができるようにして、壊せない棚を増やして防衛側にできることを増やした
- 防衛側にとっての安全地帯や、攻撃側が容易に入れる場所を減らした
マップのフレーバーも重要
シージにはストーリーモードこそほとんどありませんが、登場する各マップにはそれぞれ設定があります。テロリストによって住民を人質に取られた「民家」についても、ただ造り変えるだけでなく、いかにしてそのフレーバーを保ったままにするかがポイントだったそうです。
- 「ヘレフォード基地」のように、みんなは旧「民家」を惜しむと思う。それでもYouTubeなどでプレイヤーの反応を見ていると、うまくやれたんだろうと思う
- みんなが旧「民家」をテロハント(現在の「訓練場」)でウォームアップしていたのは知っているから、リワークにはプレッシャーもあった
- リワークの際はそのマップの雰囲気をいかに保つかが重要だ。「運河」リワークのときは、階段や部屋を足しても「運河」だと思えた。しかし「民家」の場合、部屋を4つ、階段を1つ増やして、さらにウォークインクローゼットを足したり、正面玄関を小さくしたりしたので、もはや「民家」というより「お屋敷」になってしまった。こういうマップのフレーバーを保つ作業がたいへんで、もし「ファベーラ」をリワークするなら同様の悩みに直面するだろう
- リワーク「民家」のコンセプトとしては、シージのリリースから4年が過ぎ、「民家」の住人も家をリフォームして子供をもう1人もうけて、ツリーハウスを危なっかしいものに改造した、という具合だ
設計側からプレイヤーに対して思うこと
入念にマップをデザインしたつもりが、いざテストサーバーに出してみると、デザイン側が想定していなかった戦い方をプレイヤーたちが見せてくれるのが、嬉しくもあり驚きでもあるとダウセット氏は述べています。特にテストサーバー初日時点で置かれていたガレージ前のボートは、防衛側にしてみれば上階からの飛び出しにうってつけの着地ポイントだと判明し、早々に撤去されています。
リスキルできるのはわざと?
またいわゆるリスキル(スポーンキルとも)についても語られました。『シージ』のマップには、ラウンドが始まってすぐに防衛側が攻撃側を撃てる(または撃ち返される)場所が多数ありますが、これはどこまで意図して設計しているのかという質問に対し、以下のように答えていました。
- 個人的には(リスキルについては)なんであんなことをしたがるのか理解できない。『シージ』のようなゲーム性で開始数秒で倒されてしまうのはストレスでしかない
- 仮にリスキルを狙うとしても、しかける方のプレイヤーにリスクとリワードを考慮させるようにしている
- それでもリスクを考慮せずにリスキルを試みるプレイヤーが多いので、攻撃側には建物に向かうルートがより安全になるようにデザインしている
また他のマップについても、「ドアや壁を一枚割ったらすぐに設置が可能」なデザインはあまり好んでおらず、最低でも1つの部屋を確保してから、その次の段階で設置に向かえるような構造にしたいとしています。とはいえ、上からの射線が通っている場所なら、リスキルと同様「リスクとリワード」の問題になるため容認しているそうです。たとえば新「民家」でも、ガレージ入り口の真上に射線が通るようデザインされているため、攻撃側には速攻をかけるか、まず1階にドローンを走らせて遊撃排除を試みるか、といった選択肢が与えられています。
データに基づいて設計
オペレーターやマップのリワークでは、常に社内のデータに基づいて行われているそうですが、そもそも「データ」とはどういうものなのかについても語られていました。
- 開発スタッフは、各マップごとに「どこでより多くのキル・デスが発生しているか」を示すヒートマップを閲覧できる。他のリワーク関係のスタッフはそれを活用している
- 民家は、テーマパークやオレゴンのようにランクマッチでもたくさん遊ばれているマップとは異なり、データが少なく問題点のアプローチが難しかった
- そこで、個々人のプレイ映像を1つずつ見てプレイヤーが「民家」でどんな風に動いているかをチェックし、マップ内に印をつけ、リストを作り、床を増やしたり窓を増やしたり、それらを元に戻したり試行錯誤を繰り返した
- YouTubeに上がっている動画についても、カジュアルなプレイヤーとプロ選手の両方をチェックした
コミュニティ次第ではランクマップ入りも
ダウセット氏は「新『民家』はバランスがとれている」と強調したことに対し、「バランスがとれているなら、なぜランクマッチに入らないのか」という質問がありました。
これに対してダウセット氏は苦笑しつつも、「マッププールを決めているのは他のスタッフだから」と言うに留めていました。しかし「ヴィラ」など、自分が手がけたマップがプロリーグでも採用されるのは嬉しいし、コミュニティが「#民家をランクマッチに」のようなハッシュタグでそれを望んでくれれば、いつかランクのマッププールに入る可能性はある、としています。
新シーズン「オペレーション・スティールウェーブ」では現在もテストサーバーが継続中で、より多くのフィードバックが求められています。PC版のプレイヤーの方はこの機会にぜひ参加してみてください。また、テストサーバーには参加していないという方やPS4版のプレイヤーの方は、今回の「民家」リワークにどのような印象を受けましたか。感想など、ぜひコメント欄にお寄せください。
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Source: LOGIC BOMB PODCAST
コメント
コメント一覧 (4件)
旧民家レベルだとリスキルしなきゃ防衛に勝ち目が無いシーンもあったしなあ
よほど飛び出し有利とかじゃなければ気をつけてればカモだし、対策を要求するほどではないかも
リスキルさせたくないから建物に近いとこからスポーンさせればいいと思うけどなー
少し制限時間短くして
そんな簡単にはいかないかな
リスキルにリスクを伴わせた結果が、あの全方位複数箇所から狙える上に一部は一方的に防衛側有利なマップだって言うなら流石に言葉失うわ
お世辞にもランクで使えるマップにはなってないよな。
ただヨットレベルのマップがヨットよりましになったレベル。