『マーベル・ライバルズ』のディレクターGuangyun Chen氏が、本作の土台となる開発哲学を明かした。
リリース時から『Overwatch 2(オーバーウォッチ2)』のような類似作品と比較されてきた『Marvel Rivals(マーベル・ライバルズ)』。とりわけ、ロールに制限がない点や、「シーズンボーナス」のような調整手法がコミュニティでの中心的な論点になっている。
もちろん開発側も、彼らなりの考えがあってこうしたシステムを採用している。賛成・反対はともかく、スタッフらが何を考えているのかを一度チェックしておこう。
『マーベル・ライバルズ』のロール制限なしやシーズンボーナスについて
METROが、『マーベル・ライバルズ』のディレクターGuangyun Chen氏との新たなインタビューを公開している。
『マーベル・ライバルズ』ではシーズン1がリリースされたばかり。マーベルの人気タイトルの1つ『ファンタスティック・フォー』から、「ミスター・ファンタスティック」と「インビジブル・ウーマン」が新たにプレイアブルとして参戦した。
今後もアップデート無料。追加される新キャラも無料でサービスが継続していく見込みだ。基本はすべて無料でありながら、スキンなどのアイテム収益では早くも200億円稼いだとする分析も出ており、Steam版の好調な人口動態が、そうした未確定情報にも説得力を与えている。
「ロールロックなし」の背景
とはいえ、コミュニティでは不満がまったくないわけではない。リリース時から『マーベル・ライバルズ』の論点となっているのは、「ロールロック」や「ロールキュー」といった、プレイヤーの役割を固定するシステムが存在しないことだ。
よく比較されるヒーローシューター『オーバーウォッチ2』では、チーム内での役割分担が明確だ。つまり5v5なら、必ずタンク1名、ダメージ2名、サポート2名でチームが編成されるようになっている。
対して『マーベル・ライバルズ』は、ヒーローごとに「ファイター」、「ストラテジスト」、「ヴァンガード」の3ロールが設定されているが、ランクも含めてチーム編成に制限はない。極端な場合、「ファイター6人」で戦うこともできる。
ただしチームの継続戦闘能力を考えると、「ファイター6人」はやはりバランスが悪いとされており、自発的にバランスを計算してきたチームに対して安定しない印象がある(実データは不明)。そのため、コミュニティではロールキューを求める声が絶えない。
ところが、『マーベル・ライバルズ』にはロールキューなどの導入予定はないことが、2024年12月のDot Esportsでのインタビューでも語られている。今回のGuangyun氏のインタビューはクリスマスの前ごろに行われたそうだが、シーズン1、さらにそれ以降もやはり、『マーベル・ライバルズ』にはロールロックを導入しない。その理由が改めて説明されている。
「コミュニティでロールキューやロールロックが議論されていることは、こちらでもしっかりと把握しています。その核心にあるのは、ゲームのバランスについての議論ですね。私たちはヒーローのデザインや、連携スキルのメカニズムを通じて、ヒーローのラインナップやチーム編成の可能性をさらに広げていきたいと考えています。つまりマーベル作品からインスパイアされたアプローチをもう少し続けていきます。
(ロールキューがないのは)プレイヤーが実験をし、ユニークな作戦を見つける自由を与えるためです。色々な対戦や配信で、こうした自由な編成を目にしてきました。リリース後、皆さんは無限のチーム編成パターンを試しており、次はどんなものが見られるのか、私たちも楽しみにしています。ロールキューがないことで、ゲーム体験がより豊かなものになると私たちは信じています」
自由度を高めつつも、ヒーローのバランスに関するデータは念入りにチェックしているとのこと。プレイヤーに対しても、各ヒーローのピック率や勝率のトラッキングデータを公式サイトで共有している。これは常時更新されるタイプのデータではないものの、メタ考察の材料として便利だ(非公式なトラッキングデータはRivalsMetaで見られる)。
現在はざっくりと「クイックモード」と「ランクモード」に分かれているが、今後は異なるシナリオでのピック率や勝率を見ていくとのこと。
「シーズンボーナス」と矛盾する?
一方、この「自由さ」に対してコミュニティでよく見られる反論は、「シーズンボーナス」との矛盾だ。
『マーベル・ライバルズ』のシーズンボーナスとは、たとえば「ヴェノムのHP上限が、今シーズン中は+150される」といった具合に、一部のヒーローにシーズン限定の強化がかかるというもの。
ロールロックを導入しないのは、チーム編成の可能性を広げるためだ。しかし特定のヒーローだけを強化するのは、重要なキャラをはっきりさせて選択の幅を狭めているとも解釈できる。開発側にはどういう意図があるのだろうか。
「まず連携スキル(チームアップ)のメカニズムから説明させてください。すべての連携スキルには2~3人のヒーローが関与しています。そのうち1人がコアとして働き、このコア・ヒーローにシーズンバフがかかっています。戦場にコア・ヒーローが1人いれば、特定の連携スキルに組み込まれた他のヒーローたちと全員で、このメカニズムが起動します。
1つの連携スキルを発動させるのに必要なヒーローは、2人だけです。つまり、チームは1試合で3セットの連携スキルを容易に発動させることができ、これでチーム編成にまったく新しい戦略と、深みを加えることができます。
一方ではシーズンバフを付け足すことで、コア・ヒーローを使うことを奨励し、1試合でより多くの連携スキルを発動できるようにしたいのです。こうすることで、より多くの自由を得つつ、自分がプレイしたいヒーローを選んでもらうこともできると考えています。
シーズン・アップデートを見据えた話ですが、新ヒーローを実装するとともに、連携スキルも毎シーズン更新していく予定です。新しい連携スキルを加え、さらに既存の連携スキルも分解して再編成し、誰もがダイナミックで魅力的な体験を保てるようにしていきます」
つまり、特定のキャラを長く使い続けたいタイプのプレイヤーには残念な話だが、開発側は対戦環境をシーズンごとにリフレッシュさせていきたい意図があるようだ。
他のタイトルの場合、キャラのバランス調整は、開発側の思惑から外れたデータが出た際に行われる。ライブサービス型の対戦ゲームは特に、新コンテンツが追加されるにつれて、バランスの乱れがどこかで必ず発生してしまうものだ。
そこで『マーベル・ライバルズ』では、バランスをどんどん変えていくこと自体をシーズン・コンテンツの一部として組み込んでいると読み取れる。バランス調整はどのみち必要になるのだから、シーズンボーナスを利用して、むしろ開発側から環境をさらに変え続けていこうという魂胆だろうか。
もちろんシーズン1ではヒーローごとのバランス調整を行っており、シーズンボーナスと並行した微調整もしていく構えを見せている。この試みがうまくいくかは、もう少し時間をかけて見ていく必要があるだろう。
1.5ヵ月ごとにヒーローを1人追加
ヒーローの追加ペースと、シーズンの構成についても補足説明があった。
「毎シーズン、新鮮なシーズン・ストーリー、新マップ、新ヒーローを展開していきます。厳密に言うと、1つのシーズンは2つのパートに分けられます。1シーズンの長さは3ヵ月です。そして半シーズンごとに、新ヒーローを1人実装していきます」
1シーズンが3ヵ月なので、1.5ヵ月に1人のペースで新ヒーローが追加されると解釈できる。
なおシーズン1前半では、ミスター・ファンタスティックとインビジブル・ウーマンの2人が追加された。後半ではヒューマン・トーチとザ・シングが登場する。既に「半シーズンに1人」ではなく2人になっているが、今後の追加ペースは不明だ。
気になる『ファンタスティック・フォー』の次のヒーローについても、まだ明かされていない。ドクター・ドゥームやデッドプールなど一部ヒーローはムービーやアイテムで姿が見られるものの、いずれプレイアブルになるかは不確定だ。
『マーベル・ライバルズ』は、基本プレイ無料であるだけでなく、新ヒーローを含めた全ヒーローが初期アンロック。さらに連携スキルとシーズンボーナスを活用して、環境が常に変わり続けていくようにデザインされている。一見すると「原作人気にあやかったキャラクターもの」のようで、さまざまなチャレンジが見られる意欲作だ。
リリース1ヵ月時点ではSteamトップ10に君臨する人気を博している本作が、その勢いをどこまで伸ばせるのか。引き続き『マーベル・ライバルズ』に注目していこう。
Gaming Device Power Tune for FPS
Source: METRO
コメント
コメント一覧 (2件)
モンハンまでの繋ぎでやってる程度だから別に今のまんまでも個人的にはええかな
ただぶっ壊れキャラにシーズンボーナスが乗ったシーズンは地獄になるだろうな。今回のアプデ内容みるにここの運営はバランス調整は多分そんな上手くない感じするし
オーバーウォッチもリリース当初はロールキュー無しキャラ被り有りでユーザーの自由な戦略を尊重したいみたいなスタンスを表明してた。
最終的には多数のユーザーの要望を受けてロールキューの導入に至ったわけだけどライバルズはどうするんだろうね、キャラゲーだからガチになるなよという層がOWよりもはるかに多いだろうからキャラ選択の自由を担保し続けるのかな