プロゲーミングストリーマー集団「父ノ背中」の副代表けんき氏が、オリジナルゲームの開発を発表してから約3年。タクティカルFPS『Project F(プロジェクトF)』のゲームプレイ映像が、9月15日の「東京ゲームショウ2022(以下、TGS 2022)」初日の会場にて初めて公開されました。
『Project F』をけんき氏がプレゼン
「TGS 2022」の初日となる9月15日、GRAPHT(グラフト)ブースに父ノ背中のけんき氏が登場。今回はオリジナルFPS『Project F』の開発企業として立ち上げたFractal Gamesのプロデューサーとして、自らそのプレゼンテーションを行いました。プレゼンの模様はTwitchの配信ログでも再視聴できます。
『Project F』とは
配信などで日々さまざまなFPSをプレイするうちに、それらの問題点・改善点が気になり始めたけんき氏は、「プレイヤーの独自性や創造性を重視したタクティカルシューターを作りたい」という思いからプロジェクトを発足。同じ志を持つ学生やプロのゲーム開発者ら、幅広いスタッフをチームとして募り、これまでで5,000万円の開発資金を投じてゲーム開発を進めているそうです。
気になる『Project F』ゲームプレイの詳細は、ストリーマー10名とともに事前に撮影したエキシビションマッチを使って解説されました。実況には、『レインボーシックス シージ』競技シーンのキャスターでおなじみのともぞう氏が登場。ZETA DIVISIONのストリーマーMeltonさんや父ノ背中のDustelBoxさんら、けんき氏のファンにはおなじみの顔ぶれも交えての対戦となりました。
『Project F』のゲーム内容は、5v5で、各チームは攻撃側と防衛側に分かれるという、いわゆる「爆弾モード」がベースになっています。
- 『Project F』のゲーム進行
- 5人構成の2チームが、攻撃側と防衛側に分かれる
- 防衛側は「モノリス」をマップ内の任意の部屋に設置できる
- 攻撃側の目標は、モノリスの解析、または防衛側のせん滅
- 防衛側の目標は、モノリスを制限時間まで守り切る、または攻撃側のせん滅
- 6ラウンドで攻防交代し、先に7ラウンドを取ったチームが勝利となる
拠点が複数ある典型的な爆弾ルールとは異なり、『Project F』の目標物となるモノリスは1箇所のみ。設置場所は防衛側がラウンドごとに決めることができます。
この点については、けんき氏から「AとBの拠点が離れすぎていて、どちらかに攻撃側が突っ込むとデスマッチになってしまうため」と解説されていました。また、モノリスを解析するための端末も攻撃側の全員が所持しているため(※典型的な爆弾モードでは、チームのうち1人だけが持ち運ぶ)、攻撃側のうち1人でもモノリスのある拠点に忍び込まれると、防衛側が一気に不利になるという展開が待っています。
6人のキャラクターにはそれぞれ固有アビリティがあり、壁や床を消滅させてルートを増やすものや、ドーム状のスモーク、2種類の効果を持つ投げナイフ、テレポートなどが見られました。
武器は全キャラ共通の武器プールの中からラウンド間で購入していくシステムで、倒されたプレイヤーがドロップした武器を拾うこともできます。
現代FPSの問題点に挑む「マップ自動生成システム」
『Project F』で特に目を引かれるのは、けんき氏が「開発期間のほぼすべてはこれに費やしている」と述べる、対戦マップの自動生成システムです。
「オフィス」や「武器庫」など、さまざまな部屋のアセットが自動的に組み合わさって1つの建物になり、プレイするたびに異なるマップを使って対戦するのがこのゲームの大きな特徴です。
そのパターンは実に10万通りにもおよび、けんき氏の指摘する現代FPSの問題点への1つの回答となり得る、斬新なシステムとなっています。
FPSゲームの対戦マップは、その構造が固定されているのが普通です。しかしけんき氏に言わせれば、「そのマップについて勉強するほど強い」というのはゲームとしてフェアではなく、「固定マップ」には以下のような問題が生じます。
- 大抵の場合、マップにおける定番の作戦がセオリーとして確立され、プレイヤー間で共有される。しかしセオリーがあることで、知らないプレイヤー同士でも即興での連携ができる一方で、ゲーム展開が似たり寄ったりになり、飽きさせる原因となっている
- マップが日々研究され、新しいセオリーが確立される度に、新規プレイヤーにとっての障害が増えてしまう。最初からプレイしている人たちばかりが有利になり、スキルではなく知識の差で負けてしまう環境になると、新規が入りづらい
たとえばけんき氏が長らくプレイしてきたタクティカルFPS『レインボーシックス シージ』のコミュニティでは、「新マップを追加して欲しい。既存のマップのリワークもして欲しい」という要望が常にある一方で、「新マップが追加されたのは喜ばしいが、プレイはしたくないからBANする」という、不可解な反応がたびたび見られます。
新マップが欲しい理由は新鮮なコンテンツを求めているためですが、新マップがBANされがちな理由は、けんき氏の分析で説明がつきます。まさしく「(プレイスキルではなく)マップの知識の差で負けても納得いかない&楽しくないから」で、『Project F』の自動マップ生成システムはこの点への解答と言えます。
マップが自動生成である以上、漠然としたパターン認識程度のセオリーは生まれても、新規プレイヤーが長時間の座学を強いられるような次元でのセオリーは生じなくなります。FPSに共通のガンスキルに自信のあるプレイヤーや、小難しいことをナシにして楽しみたいプレイヤーなら、誰でもすぐに飛び込めるような環境がそこに用意されています。
独自性と創造性を支援する各種機能
一方で、セオリーがないために連携もしづらいというデメリットも想定されています。これを埋めるために、『Project F』では以下の機能を採用してチーム内のコミュニケーションを支援しています。
- プロゲーマーのVCを擬似的に再現し、高度なコミュニケーションができる充実のピンシステム
- 大きなマップに自由に書き込みをすることで、チームメイトに自分の意図を共有できるマップドロー
けんき氏は『Project F』を、「学習速度を競うタクティカルFPS」と称しています。プレイヤーをセオリーから開放し、独自性や創造性を生み、没頭できるプレイ環境を生むのがそのコンセプトです。
他にも独自の強みとして、SNSとの連動を意識し、キルクリップをゲーム内で直接編集・作成できる機能や、クリップをスマホの縦型画面に対応した動画にもコンバートできる機能も搭載予定だそうです。
アート面のグレードアップに期待
けんき氏のFPS哲学から生まれたマップの自動生成システムは、現代FPSの定番に一石を投じるものであり、FPS界にどのように受け止められるかは興味深いものがあります。2022年内リリースということで、「知る人ぞ知る注目タイトル」になるでしょう。
一方、今回のプレゼンテーションで分かりやすかった難点として、グラフィック全般やエフェクト、テクスチャ、キャラクターのモーションなどアート面のディティールが不足していることが挙げられます。この点はけんき氏自身もリリースに向けての改善を約束していますが、現状ではSteamに溢れる数百円のFPSと同列に扱われてしまう懸念を抱きます。
これらのグレードアップを実現するためにも、けんき氏の『Project F』は現在パブリッシャー企業を募集しているとのことです。ユニークな作品であることは疑いようがないため、リリースに向けて、何らかの良いニュースがもたらされることを期待しましょう。
『Project F』は、開発ビジョンがしっかりしているFPSであることが、今回のプレゼンで広く伝わったと思われます。正式リリースまでに、どこまでクオリティを上げられるでしょうか。パブリッシャーの獲得とともに今後も注目していきたいところです。
基本プレイ無料FPS『Project F』は2022年9月~11月リリース予定で、対応プラットフォームはPC(Windows)、モバイル(iOS、Android)。PlayStation版も現在申請中。
- 『Project F』関連リンク
Source: Twitter, Twitch
コメント
コメント一覧 (6件)
う〜ん?プレイ動画見た感じだとヴァロ・シージ風味のデスマッチって感じだよね
自動生成だからなのか、攻め方が結局ラッシュ・固まって目標を真っ直ぐ目指す・散らばってパラパラと戦闘する以外に無さそうに思える
飽きが少ないGOだと思えば良いのかもだけど、オブジェクトルールと相性は良くない気がするな
ある程度フラットなマップでラウンド開始して、防衛プレイヤーたちが改造していくアルティメットチキンホース方式のが楽しそう
マップ自動生成ねぇ
アセットごとのセオリーができるか、セオリーを作るのが面倒くさいがゆえにデスマッチ的な行きあたりばったり戦闘だけになったりしないか?
こればっかりは実際に世に出ないとわからないけど、理想論がうまくいくか疑問は残る
めっちゃおもろそう やりたいな
CSGO老害コイン持ちとして、挙げられている問題点はGOでも感じるけど
知識差で負けたなら覚えて自分でも使ってみればいいし
お決まりのマップでお決まりの展開ってのもまた楽しみの一つだと思う
ゲーム見た感想はシージそのまんますぎるので経験者超有利なのと毎ラウンドマップ生成はテンポ悪いなと思った
開発上手くいって国内競技タイトルの一つに出来たら良いね
セオリーが複雑化するだけじゃないかなあってのが記事を読んででた感想。
ってのを途中送信してしまった
文句ばかり並べてるようになっちゃったけどおもしろくなるといいね
国産競技シューターとしては成功するといいねと思うけれど、研究の否定は競技の否定に繋がる概念だと個人的には思うな。
マップのそれらを排除しても音の位置やリコイル等や装備や能力等の知識要素等で構成されるゲームの癖みたいなものは絶対発生するし、そこで差がつかない事はビデオゲームのみならずアナログな遊びや肉体的なスポーツでもありえないしだろうし
ランダムにしたからこそ余計セオリー