2025年も残すところあとわずかとなったが、日本のPCゲーマーにとって現在は「かつてないほど厳しい冬」と言わざるを得ない。AI需要の爆発に端を発した世界的なメモリ・ストレージの高騰、そして主要PCメーカーによる一斉値上げが、ゲーミングPCの購入ハードルを垂直に押し上げている。
一方で、11万9,980円という価格で登場し「高い!」と驚かれていた「PlayStation 5 Pro」が、相対的に「極めて合理的な選択肢」として再評価されるという逆転現象が起きている。今、我々ゲーマーはゲーミングPCを無理にでも買うべきか、それともコンソールへ回帰すべきなのか。現在の市場データをもとに分析してみよう。
1. 2025年末、ゲーミングPCを襲う「異常」
現在、PCパーツ市場では「時期が悪い」という言葉では済まないレベルのコスト増が発生している。その主な要因は3つだ。
メモリ・SSDが年初比で3倍以上の“異常”高騰
2025年後半、SamsungやSK Hynixといった半導体大手が、利益率の高いAI向けHBM(高帯域幅メモリ)の生産にリソースを集中。さらに2025年12月3日、Micron(Crucial)が消費者向け事業から電撃撤退したことで、一般消費者向けのDRAM(メモリ)供給が減少した(することが確定した)。
- DDR5メモリ: 年初には1万数千円だった32GBキットが、12月現在では現在6〜7万円台、高けれ9万円〜11万円近くまで跳ね上がっているケースも。
- SSD(NAND): メモリ増産の影響でNANDフラッシュの生産が後回しにされ、1TB/2TBモデルの価格が倍増している。
- HDD:SDDよりはましだが、それでもWestern Digital WD BlueやSeagate Barracudaなどが値上がりしている。
大手PCメーカーが最大30%の値上げを断行へ
この部材コスト増を受け、DellやLenovoといった大手BTOメーカーは「メモリ価格は制御不能(DELL)」として、2025年12月中旬より、法人・個人向け製品の15%〜30%の値上げの準備をしている。年明けの2026年1月からはさらに価格改定が加速する見通しだ。
また、マウスコンピューターは12月16日に、部材不足による一部製品の販売停止と、2026年1月以降の価格改定(値上げ)を公式に発表した。PC本体だけでなく、SSDやUSBメモリも同様だ。例えばアイ・オー・データ機器などは、2026年1月より最大50%を超える大幅値上げを予告している。
大手のマウスコンピューターは現在お得なキャンペーンを12月24日まで開催中だが、「お得」どころではない「大チャンス」と言えるかもしれない。

RTX 50シリーズの「高価格・高消費電力」
2025年1月に華々しくデビューしたGeForce RTX 5090 / 5080だが、その価格設定は「ハイエンド=40万円〜60万円」という異次元の領域に到達した。ミドルクラスのRTX 5070ですら、円安の影響で10〜17万円の状況が続いており、「安価に高性能を手に入れる」道は事実上閉ざされているとも言える。
2. PS5 Proが「FPSゲーマーの駆け込み寺」になる理由
かつて「12万円は高すぎる」と揶揄されたPS5 Pro(Amazon)だが、現在のPC市場の惨状と(ざっくり)比較すると、その立ち位置は一変している。「純粋に最新ゲームをそこそこの高画質で遊びたいだけの人」にとっては、今のPC市場は割高だ。
| 項目 | PS5 Pro | 同等性能のゲーミングPC(2025年末推計) |
| 本体価格 | 119,980円 | 18万円〜25万円前後? |
| GPU性能 | RTX 3080 Ti 〜 4070 相当 | RTX 5070 / 4070 あたり? |
| FPS性能 | 120Hz(PSSRによるアップスケール) | 144Hz〜240Hz(設定次第) |
| メンテナンス | 設定不要、最適化済み | 自分で管理が必要 |
| オンライン対戦 | 有料 | 無料 |
| 用途 | ゲーム、エンタメ | すべて(高負荷作業はきつい) |
PSSR(AIアップスケール)の実力
PS5 Proに搭載された独自のAIアップスケール機能「PSSR」は、曰く、PCのDLSSに肉薄する品質を見せている。特に『Apex Legends』や『Call of Duty』などのタイトルにおいて、4K解像度を維持しながら安定した高フレームレートを出せる点は、PCで同等の環境を整えようとすれば、高騰したメモリやGPU代だけでPS5 Proの価格を超えてしまう。ただしまだ発展途上のようで、使いにくさなどが残り完璧ではないようだ。
自分にはどのPS5がマッチしている?
競技性の高いゲームでなければ、ノーマルPS5でも充分なゲーマーも多いだろう。この価格高騰を見越してか、 「日本語専用PS5」をわずか5.5万円でリリースしたSIEは「流石世界のソニー」と言って差し支えない。
- PlayStation 5 Pro(CFI-7100B01):118,400円(4k + 120Hz)
- PlayStation 5(CFI-2000A01):78,800円(購入メリットは特になし)
- PlayStation 5 デジタル・エディション 日本語専用:55,000円(実質値下げ)
もちろん、コスパ抜群の「Xbox」も選択肢に入れるべきだ。クロスプレイ・クロスセーブが当たり前な昨今、充分に検討する価値はあるだろう。関連記事もぜひご覧いただきたい。
- Xbox Series X 1TB デジタル版:79,980円(4k + 120Hz)
- Xbox Series S 1TB ホワイトエディション:67,480円(2K以下環境、場面によっては120FPS出ないなど)

3. 「PCを早く買うべき人」と「PS5で耐えるべき人」の分岐点
この状況下で、読者の皆様はどちらを選ぶべきか。以下の基準で判断してほしい。
ゲーミングPCを「今すぐ」買うべき人
- 『VALORANT』などを競技レベルでプレイしている:240Hz〜360Hzの超高リフレッシュレート環境は、依然としてPCの独壇場だ。コンソールの120Hz制限では満足できないコア層は、さらなる値上げが予想される2026年を待たず、年末セール中の現行在庫を確保すべきだろう。
- PCのみ対応でハイスペックを要求・されるタイトルを遊ぶ人:『Escape From Tarkov』や『VR系』『MOD系』
- 配信や動画編集も並行して行う:PCは資産であり、生産ツールだ。メモリが高騰していても、それによって収益やスキルが得られるなら投資価値はある。
PS5 / PS5 Pro を選ぶべき(または待つべき)人
- 「FPSで120Hz出れば十分」と考える層:正直なところ、多くのライト〜ミドル層にとって、30万円のPCと12万円のPS5 Proで得られる「体験の差」は、価格差ほど大きくない。
- 主にクロスプラットフォーム対応作を遊ぶ:『Apex』『CoD』『BF』『Overwatch 2』『Fortnite』などが主戦場であれば、PS5 ProやXbox Series Xは現在最もコストパフォーマンスに優れたハードウェアと言える。
「時期が悪いおじさん」ではないが、今は本当に時期が悪い。価格の狂乱は2026年後半どころか数年後まで続くとの予測もある。今はPS5で遊び、パーツ価格が安定するかもしれない数年後(?)にPCを新調するのも賢い戦略だ。
ゲーミングPCはどこで買うのが安い?
国内の中堅・小規模BTOメーカーや、秋葉原・日本橋の実店舗を持つパーツショップにはまだ「旧価格の在庫」や「独自の仕入れルート」による安値品が残っている。特に、注文後に組み立てるBTOよりも、「即納モデル(完成品在庫)」を狙うのが現在最も賢い選択かもしれない。そこで、現在セールをやっているPCメーカーをざっくり調べてみた。もちろん刻々と在庫数は変わるので、購入予定の人は急いだ方が良いだろう。
- マウスコンピューター「冬のボーナスセール」
- FRONTIER(フロンティア)「クリスマスセール」
- Lenovo セール会場
- パソコン工房「冬のボーナスセール」
- PCショップ アーク (ark)「クリスマスセール」
- 受注再開直後の「サイコム (Sycom)」
まとめ:2026年を見据えた「戦略的チョイス」
かつて「PCこそ至高」と言われた時代から一転、2025年末の日本は、経済状況と半導体需要のねじれによってコンソールが輝きを取り戻す特殊なフェーズに入っている。
もしあなたが「PCが欲しいが、予算が30万円に届かない」のであれば、無理をしてスペックの低いPCを買うよりも、PS5 Pro / Xbox Series Xと高品質な120Hz対応ゲーミングモニターに投資する方が、FPSプレイヤーとしてのQOL、幸福度は高くなる可能性が高い。
一方で、PC購入を決意しているなら、今日が「残りの人生で一番PCが安い日」になる可能性も? もちろん数年後には過剰供給などで安くなってもおかしくないが、PC各社のクリスマス・年末セールが、現行価格で買える最大のチャンスとなる...かもしれない。
Source: Pressrelease







コメント