たとえば『エーペックスレジェンズ』のような現在の人気タイトルや、今後リリースされるAAAゲームの画面に、他社製品の広告が表示される未来が訪れるのだろうか。
Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)のCEOは、2024年度末決算発表の場で「ゲーム内広告」について言及。そこからは、熟考を重ねたうえでゲーム内広告を発展させる可能性が見て取れる。EAの過去のゲーム内広告に関する出来事を振り返ると、プレイヤーをどう納得させるかがポイントになりそうだ。
「ゲーム内広告」についてEA CEOがコメント
「他社製品の広告を見ながらゲームをする」という体験が、今後さらに増えていくのかもしれない。
先日行われたEAの第4四半期決算発表の場で、CEOのAndrew Wilson氏は出席したアナリストからゲーム内広告に関する質問を受けた(決算発表の書き起こし)。
「(質問)より多くの従来型AAAタイトルに、よりダイナミックな広告を挿入する機会を市場にもたらすことと、それが中長期的な収益機会になることについてどう考えているか」
Wilson氏はダイナミックな広告挿入については「まだ早い段階」としつつも、ゲーム内広告については「これまでの歴史の中で熟考を重ねてきました」と回答している。
「プレイ、創作、視聴、つながり、いずれにも何十億時間もの時間が費やされており、その多くが、従来型のゲーム体験の枠組みの中で行われています。それを踏まえると、広告は当社にとって有意義な成長の原動力となる機会があると期待しています」
「そうした取り組みには熟考を重ねていくつもりですが、現在、社内にチームを編成しており、ゲーム体験の中でどのように熟考にもとづいた実装を行うかを検討しています。しかしより重要なことは、ゲームという枠組みを超えてコミュニティを築き、その力を活用し始めるとき、広告を体験における成長の原動力としてどのように考えるかです」
同じ資料内では、『エーペックスレジェンズ』が2019年のリリース以来、累計で34億ドル(約5,300億円)ものネットブッキングを計上したことが明かされている。現在の全プラットフォーム合計の人口は不明だが、PC Steam版には毎月平均15万人以上ものプレイヤーがいる。企業の視点では、こうした大ヒット作は広告を掲載するのに非常に魅力的な空間だ。
(※ネットブッキング=期内におけるゲームと関連サービスの、デジタルおよび実物から得た売上高から手数料などを差し引いた額。昨今はゲームそのものではなく、アイテム課金や月額サブスクサービスなどで収益を上げる機会が増加した。こうした変化を踏まえてゲーム業界では「ブッキング」の科目を用いる)
EAによる「ゲーム内広告」の試み
スマートフォン向けゲームに広告が表示されるのは珍しくないものの、『エーペックスレジェンズ』のようなEAの基本プレイ無料ゲームに、今後ゲーム内広告が表示される未来はあるのだろうか。
「これまでの歴史の中で熟考を重ねてきました」とWilson氏が述べるように、EAのゲーム内広告そのものは以前からよく見られている。
たとえばEAが手がけた2008年の公道レースゲーム『Burnout Paradise(バーンアウト パラダイス)』には、ハンバーガーチェーン「バーガーキング」や、プロクター・アンド・ギャンブル社のカミソリ製品ブランド「ジレット」などが登場した。これはゲーム内広告企業IGA Worldwideとのパートナーシップによるもの。
公道レースゲームと屋外広告は相性が良いと思われ、違和感がなく、ゲームの邪魔にならないアイデアならプレイヤーにも受け容れられそうだ。
しかし、EAにはこうした手法で失敗した経験もある。2020年の総合格闘ゲーム『EA SPORTS UFC 4』では、リプレイシーンの演出として海外ドラマ『ザ・ボーイズ』の広告を掲載。いかにもライブ映像らしい臨場感を狙ったものだったが、こちらはRedditなどで物議を醸した。
(『Burnout Paradise』も有料タイトルだが)このケースでは有料タイトルに広告を表示することの是非が問われたほか、画面全体に映されるのはゲームプレイの阻害にあたるという指摘もあり、結局この広告は取り下げられた。
広告の激化にコミュニティは警戒
今年の2月にも、EAの人気タイトルの1つ『ザ・シムズ4』で広告に関する議論が起きた。
こちらは他社広告ではなく、『ザ・シムズ4』の有料DLC購入を促すもの。ゲーム内ストアにつながるショッピングカートのアイコンが、プレイヤーの注意を引くために常に振動し続けるという仕組み。これは実装時から邪魔者扱いされ、その後有志によってこの機能を消すMODが公開されるほどだった。
一連の流れを踏まえ、今回のCEOの発言についてゲーマーからは「買ったゲームで広告を見せられるのかよ」など警戒の声も見られる。基本プレイ無料のゲームであれば広告をゼロにするのは逆に現実的ではなく、運営を続けるために採用してほしいくらいだ。しかし、購入したAAAタイトルでも広告を見せられるとなれば話が変わってくる。
プレイの邪魔にならない広告手法に期待
たとえ広告が出るとしても、『Burnout Paradise』に見られたように「プレイの邪魔をしない工夫」をすることがカギになりそうだ。ゲームプレイと広告を自然に融合させるアイデアが求められる。
広告ではないものの、『エーペックスレジェンズ』では、2024年1月に『ファイナルファンタジーVII リバース』とコラボした「Apex Legends & FINAL FANTASY™ VII REBIRTH イベント」が開催された。ちょうど同タイトルのリリースを控えていた点を踏まえれば、このイベントには広告効果があったと解釈できる。しかし広告的な面について批判が盛り上がるようなことはなく、FFコラボは好評のまま終了した。
「広告」と「コラボイベント/アイテム」は別モノとはいえ、ゲームコンテンツとして他社製品を宣伝する手法が進化すれば、プレイヤーにとって抵抗感も少なくなるだろう。単なる一度きりの広告ではなく、アイテムとしてインベントリに残ればプレイヤーの思い出にもなる。
広告をどう扱うかは、EAに限らずゲーム業界全体の中長期的な課題と思われる。そもそもゲーム内広告を活かすにはプレイしてもらえるゲームを開発することが大前提だが、EAならではのアイデアに期待したい。
Gaming Device Power Tune for FPS
Source: EA, X
コメント
コメント一覧 (5件)
きっとEAのことだからクソみたいな広告を目障りなデカさでぶちこんでくるんだろうな。
違和感がない広告かつ収益をゲームにちゃんと生かしてくれるなら良いんだけどね
金払って広告を見るゲームになるのはやめてくれよ
どっかのうさんくさい中華アプリゲーの広告流すとかまじやめてくれよ
広告がどうのじゃなくてさ、大事なのは「どんな」広告なのかが問題だと思うんだよ
例えばゲームだったらApexにスポーツだシムシティだって言うのは物凄く冷める
逆にDeadSpaceとか、BFとか、タイタンフォール2とかのセール広告ならむしろアリよ
デバイスであればPCとCSとプラットホーム事に映す内容変えれるとかさ
PSの方にはDualSense Edgeだとか、箱にはeliteコンとか、両方対応してるから双方にAstro系のオーディオの広告とか
PCならrazerとかロジクールのキーマウとか、モニター
そういうゲーム内の広告ならゲームにあった広告である事が重要だわ
これに限った話じゃないけど広告ブロック騒ぎもようはそれだと思ってる
ゲーム動画みてるのに転職がどうのとか興味を微塵も感じない物で割って入るから嫌われるんだよ
車のやつみたいなのなら全然えぇやん!ってなるけどボクシング?(ムエタイ?)みたいなやつは見てる方は違和感ないけど実際に遊んでたらうざいだろうな…