「Windows 11はゲーム性能が低い」という話は、登場以来ゲーマーの間で絶えず囁かれてきた。しかし、それは本当に事実なのだろうか。OSのアップデートは、時に安定性や互換性の問題を引き起こすため、多くのプレイヤーが移行をためらうのは無理もない。
本記事では、2024年から2025年にかけての最新ベンチマーク結果を基に、Windows 10とWindows 11のゲーミング性能を徹底比較。一部タイトルでWindows 10が優位な結果も出ているが、最新CPUへの最適化や将来性まで含めた「ゲーマーにとっての最適解」を明らかにしていく。
結論:僅差の性能差、しかし将来性はWindows 11に軍配
いきなり結論から述べよう。多くのゲームにおいて、両OSのパフォーマンス差は「ほぼ同等か僅差」である。しかし、将来性や最新CPUとの親和性、そしてサポート期間を総合的に考慮すると、今から選ぶならWindows 11に軍配が上がると言える。

ただし、「一部タイトルでは明確にWindows 10が有利」というデータも存在するため、プレイヤーの環境やプレイスタイルによって判断が分かれるのも事実だ。次項では、その具体的なデータを見ていこう。
最新ベンチマーク比較:一部人気タイトルでWindows 10が優勢
海外の著名なハードウェアメディアTechSpotが実施した13の最新タイトル比較テストによると、やはりいくつかのゲームでWindows 10がWindows 11よりも高いフレームレートを記録した。テストは両OSともにクリーンインストールし、最新のドライバを適用した公正な環境で行われている。
Win10が高速だった主なタイトルとFPS差
- 『Counter-Strike 2』: Intel Core i7-14700K環境で+11%、Ryzen 7 7700Xで+10%と、競技性の高いタイトルで顕著な差が見られた。
- 『サイバーパンク2077:仮初めの自由』: Ryzen 7 7800X3Dで+10%、Core i7-14700Kで+6%の向上。
- 『A Plague Tale: Requiem』: Ryzen 7 7800X3Dで+10%、Intel CPUでも+3~4%の差を記録。
- 『Homeworld 3』: AMD環境で+4~6%、Intel環境で+3~5%高速。
- 『Starfield』: 両陣営のCPUで+2~4%の差が確認された。
- 『Fortnite』『The Last of Us Part II』『God of War ラグナロク』『Stalker 2』などタイトルでは、Windows 11が平均FPSや最低フレームレートで明確に上回った。

その他のテスト対象タイトルでは、両OS間に統計的に有意な差は確認されなかった。この結果はPC構成、OSの設定、ゲーム側の設定、アップデートによって変動する常に可能性があるものの、特定のタイトルで勝ちにこだわるプレイヤーにとっては見過ごせないデータだ。ちなみにアプリでも若干のパフォーマンス低下があるのも困りもだったが、特にWindows 24H2以降は差が縮まったり、Win11が勝つ傾向が増えてきたのも事実だ。
なぜ差が生まれる?Windowsのゲーミング関連機能
では、なぜこのような性能差が生まれるのだろうか。原因は一つではないが、主に以下の機能が影響していると考えられる。
要因1:セキュリティ機能「VBS」の影響

Windows 11では、クリーンインストール時に「仮想化ベースのセキュリティ(VBS)」や「メモリ整合性」といったセキュリティ機能が標準で有効になる場合がある。これらはシステムの安全性を高める一方で、ゲームやアプリによっては数パーセントのパフォーマンス低下を招くことが知られている。1フレームを争う競技シーンでは、これを一時的に無効化することも選択肢となるが、セキュリティレベルが低下する点は十分に注意が必要だ。
要因2:最新CPUへの最適化「スレッドディレクター」
Intelの第12世代以降のCPU(Alder Lakeなど)に採用されているハイブリッド・アーキテクチャ(P-coreとE-core)の性能を最大限に引き出すのが、Windows 11に最適化された「Intel Thread Director」だ。このスケジューラは、ゲームなどの高負荷タスクを高性能なP-coreに、OSのバックグラウンドタスクを電力効率の良いE-coreに適切に割り振る。これにより、特にバックグラウンドで他のアプリケーションを動かしながらプレイする際に、パフォーマンスの安定化に寄与する。
要因3:ロード時間を短縮する「DirectStorage」

次世代の高速ストレージAPIである「DirectStorage」は、対応するNVMe SSDとゲームにおいて、ロード時間を劇的に短縮する技術だ。この技術はWindows 10と11の両方でサポートされているが、Windows 11ではより最適化された最新のI/Oスタックが採用されており、将来的にはその恩恵をより大きく受けられる可能性がある。
要因4:遅延を低減する「ウィンドウゲームの最適化」

ボーダレスウィンドウモードでプレイするゲーマーにとって嬉しいのが、Windows 11の「ウィンドウゲームの最適化」機能だ。これにより、従来のフルスクリーンモードに近い低遅延、Auto HDRや可変リフレッシュレート(VRR)といった機能の利用が可能になり、利便性とパフォーマンスを両立できる。
機能とサポート期限:ゲーマーが見逃せない2つの重要点
純粋なFPSだけでなく、長期的な運用を考えると以下の2点は極めて重要だ。
映像体験を向上させる「自動HDR」
SDR(スタンダードダイナミックレンジ)で開発されたゲームの映像を、AI技術を用いてHDR(ハイダイナミックレンジ)へと自動で変換する「自動HDR(Auto HDR)」は、Windows 11独自の魅力的な機能だ。フレームレートの向上にはつながらないのでFPSゲーマーには不要だが、対応モニターがあれば、より色彩豊かで臨場感のあるビジュアルでゲームを楽しむことができる(ただ、あまり効果的ではないとの声も...)。
【重要】Windows 10のサポート終了は2025年10月14日

こちらは重要な決定要因となるだろう。Windows 10 HomeおよびProは、2025年10月14日をもってMicrosoftの公式サポートが終了する。
これ以降は、新たな脆弱性が発見されてもセキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、ウイルス感染やハッキングのリスクが著しく高まる。オンライン環境でPCを使用すること自体が極めて危険になるため、全ゲーマーはいずれWindows 11への移行を迫られることになる。以下のMS公式比較ページもチェックしておこう。
- Windows 11と10の比較:公式比較ページ
総括:で、結局どっちを選ぶべき?
ここまでの情報を踏まえ、あなたのプレイスタイルに合わせた最適解を提示する。
ケース1:「今」のFPSを1でも高くしたい競技ゲーマー
あなたが『Counter-Strike 2』のようなeスポーツタイトルをメインにプレイしており、ベンチマークでWindows 10の優位性が確認されている環境にいるのであれば、サポートが終了する2025年10月までWindows 10を使い続けるという選択は合理的だ。ただし、その性能差は数パーセントで環境にも左右され、常に再現されるとは限らないことは念頭に置くべきである。
ケース2:将来も安心してゲームをしたい大多数のプレイヤー
Intel第12世代以降のCPUを搭載したPCを使っている、あるいはこれからPCを新調する予定があるならば、迷わずWindows 11を推奨する。Thread Directorによるパフォーマンスの安定化、DirectStorageや表示最適化といった将来的なメリット、そして何よりサポート期間が残っている安心感は、一部タイトルでの僅かな性能差を補って余りあるだろう。
最終的には、すべてのゲーマーがWindows 11へ移行することになる。根強い噂に惑わされることなく、最新の情報を基に、自身の環境と未来を見据えた賢明な判断を下してほしい。
Windows 11へ移行する際のパフォーマンスチェックリスト
- ドライバを最新化する: GPUとチップセットのドライバは必ず最新版を公式サイトから導入する。
- ウィンドウゲームの最適化をON: ボーダレス/ウィンドウモードでの遅延を低減させる。
- メモリ整合性を一時的にOFF: FPSを最優先する競技プレイ時に限り、一時的に無効化を検討(自己責任で)。
- アップグレードよりクリーンインストール: 可能であれば、OSを新規にクリーンインストールすることで、より安定した動作が期待できる。
【2025年10月サポート終了】まだ間に合う!Windows 10から11への無料アップグレード方法と、有料になるケース

来る2025年10月14日、多くのゲーマーに愛用されてきたWindows 10の公式サポートが、ついに終了の日を迎える。サポート終了後はセキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、オンラインでゲームをプレイする上で看過できないリスクにさらされることになる。
そこで、「自分のPCは無料でアップグレードできるのか?」「どうやってやればいいのか?」という疑問に答えるべく、Windows 10から11へのアップグレード手順を徹底解説。無料で行うための条件から、有料となってしまうケースまで、ゲーマーが知っておくべき情報を網羅していく。
【大前提】あなたのPCは対象? 無料アップグレードの条件
まず最も重要な点として、Windows 10から11への無料アップグレードは、すべてのPCで可能なわけではない。Microsoftが定める「最小システム要件」を満たしていることが絶対条件だ。正規のWindows 10ライセンスを所有していても、PCのハードウェアが古ければ対象外となる。
重要なシステム要件をチェック
Windows 11が要求する主なシステム要件は以下の通りだ。特に「TPM 2.0」と「CPU」の世代が関門となりやすい。
- CPU: 1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサ。目安としてIntelは第8世代Coreプロセッサー以降、AMDはRyzen 2000シリーズ(Zen 2アーキテクチャ)以降が対象。
- グラフィックスカード(GPU): DirectX 12以上(WDDM 2.0ドライバー)に対応
- RAM: 4GB以上
- ストレージ: 64GB以上の空き容量
- システムファームウェア: UEFI、セキュア ブート対応
- TPM: トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0
1分で確認!「PC正常性チェック」アプリの使い方
「自分のPCが要件を満たしているか分からない」という方も心配は無用だ。Microsoftが公式に提供している「PC正常性チェック」アプリを使えば、誰でも簡単に確認できる。※現在Win10環境がなくなってしまったため、文言などは正確ではない可能性があります。
- Microsoft公式サイトにアクセスし、「PC正常性チェックアプリ」をダウンロードする。
- アプリを起動し、「Windows 11のご紹介」セクションにある「今すぐチェック」ボタンをクリックする。
- 数秒後、結果が表示される。
- 「このPCは Windows 11の要件を満たしています」と表示されれば、無料アップグレードの対象。
- 「このPCは現在、Windows 11のシステム要件を満たしていません」と表示された場合は、残念ながら正規の方法での無料アップグレードはできない。どの項目が要件を満たしていないかの詳細も確認できる。
無料でWindows 11へ!アップグレード方法3選
「PC正常性チェック」を無事クリアしたプレイヤーは、以下のいずれかの方法でWindows 11へアップグレードできる。大切なデータは事前にバックアップを取ることを強く推奨する。
方法1:一番簡単!「Windows Update」から無料アップグレード
特別なツールは不要で、最も手軽な方法だ。基本的にはこの方法を推奨する。
- 「スタート」メニュー > 「設定」 > 「更新とセキュリティ」を開く。
- 「Windows Update」タブを選択する。
- 要件を満たしているPCには「Windows 11へのアップグレードの準備ができました」というメッセージが表示されているはずだ。「ダウンロードしてインストール」をクリックすれば、あとは画面の指示に従うだけでアップグレードが開始される。
- (メッセージが表示されない場合は「更新プログラムのチェック」をクリックしてみよう)
方法2:すぐに始めたい人向け「インストール アシスタント」
Windows Updateに通知が来ていないが、すぐにでもアップグレードしたいせっかちなゲーマー向けの方法。
- Windows 11のダウンロードページにアクセスする。
- 一番上にある「Windows 11 インストール アシスタント」の「今すぐダウンロード」をクリックし、ツールを実行する。
- 画面に表示される指示に従って進めれば、アップグレードが実行される。
方法3:クリーンインストールも可能「メディア作成ツール」
OSをクリーンインストール(初期化して新規インストール)したい上級者や、複数のPCをアップグレードしたい場合に便利な方法。
- Windows 11のダウンロードページにアクセスする。
- 「Windows 11 のインストール メディアを作成する」の「今すぐダウンロード」をクリック。
- ツールを起動し、指示に従って8GB以上の空のUSBメモリ、またはDVDにインストールメディアを作成する。
- 作成したメディアからPCを起動し、画面の指示に従ってアップグレードまたはクリーンインストールを行う。
アップグレードが「有料」になる2つのケース
残念ながら、すべてのゲーマーが無料でアップグレードできるわけではない。有料となるのは主に以下の2パターンだ。
ケース1:PCがシステム要件を満たさない
前述の「PC正常性チェック」でNG判定が出た場合、無料アップグレードはできない。この場合の選択肢は実質的に2つとなる。
- Windows 11がプリインストールされた新しいゲーミングPCを購入する。
- 現在のPCのパーツを交換・増設し、システム要件を満たす。(CPU、マザーボード、メモリの総入れ替えなど大規模な改修になる可能性が高い)
一部ではレジストリを編集するなどしてシステム要件チェックを回避する非公式な方法も存在するが、当然Microsoftはこれを推奨していない。最悪の場合、OSが不安定になったり、将来のセキュリティアップデートが受けられなくなったりする可能性があるため、EAA!!としても推奨しない。
ケース2:Windows 11のライセンスを新規に購入する
自作PCを組む、OSレスのPCを購入するなど、Windows 10のライセンスを持っていない状態からWindows 11を導入する場合は、当然ながらライセンスを新規に購入する必要がある。
Windows 11 ライセンスの価格目安(2025年8月時点)
ライセンスは、OS単体で販売される「パッケージ(USB)版」やオンラインコード版、PCパーツとのセット購入が前提の「DSP版」がある。
- Windows 11 Home パッケージ版: 14,188円
- Windows 11 Home オンラインコード版: 17,424円
- Windows 11 Pro パッケージ版: 21,289円
- Windows 11 Pro オンラインコード版: 25,800円
- Windows 11 DPS: 7,800円
【要注意】 ネットオークションやECサイトで数千円、時には数百円といった異常に安い価格で販売されているプロダクトキーは、非正規ライセンスである可能性が極めて高い。ライセンス認証が通らない、突然無効になるなどのトラブルに繋がるため、必ず正規販売代理店から購入しよう(Amazon / Microsoft)。筆者も激安Officeに飛びつきかけたが怪しい気づいた結果、数日で販売停止されていた。
まとめ:サポート終了前に、計画的なアップグレードを
Windows 10のサポート終了は、もはや対岸の火事ではない。本記事の要点を以下にまとめる。
- まずは「PC正常性チェック」アプリで、自分のPCが無料アップグレードの対象か確認する。
- 対象PCなら、サポート終了(2025年10月14日)までに無料でアップグレードを済ませるのが最も賢明。
- 対象外だった場合は、PCの新調やパーツのアップグレードを計画的に検討する必要がある。
セキュリティが確保されていないPCでオンラインに接続するのは、丸腰で戦場に赴くようなものだ。来るべき日に備え、今すぐ自身の環境を確認し、計画的なアップグレードを進めてほしい。
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Source: TechSpot, AnandTech, Microsoft for Developers, YouTube, Tom's Hardware
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