『オーバーウォッチ』や『ハースストーン』など世界的な人気作を多数手がけるBlizzard Entertainmentは、現地時間8月3日にCEOであるJ.アレン・ブラック氏の退任を発表しました。退任の背景には、7月より表面化していた同社内での深刻なセクハラ、女性差別問題が関係しており、同社にはユーザーとの信頼関係の再構築が求められています。
Blizzard社CEOが退任
『オーバーウォッチ』や『ハースストーン』など、世界的な人気タイトルで知られるゲームスタジオBlizzard Entertainmentは、現地時間8月3日に公式サイトにてリリースを公開。CEOを務めるJ.アレン・ブラック氏の退任を発表しました。後任には、副社長として開発部門を担当するジェン・オニール氏と、同じく副社長でプラットフォーム・テクノロジー部門のマイク・イバラ氏が、共同経営者という形で就任するとのことです。
今回の発表を通してBlizzard社は、「女性をはじめ、あらゆる性別、民族、性的指向、経歴を持つ人々にとって、最も安全で、最も歓迎される職場であることを保証するための今後の取り組み、当社の価値観の維持・強化、そして皆様の信頼の再構築に深くコミットしていきます」と述べています。
深刻な女性差別が社内で常態化
今回のCEO退任の背景には、Blizzard Entertainmentの親会社であるActivision Blizzardおよびその子会社、関連会社などで横行していた、女性従業員に対するセクシャルハラスメントや性差別の問題があります。
同社は、確認されている限りでも2年前から女性社員に対するセクハラや差別が常態化していたとして、7月に米カリフォルニア州公正雇用住宅法などへの違反容疑で訴えられていました。原告は米カリフォルニア州公正雇用住宅局(DFEH)で、800人以上の同社従業員との間に立った形です。
Bloomberg Lawが報じたところによると、Activision Blizzardでは以下のようなケースが確認されていたそうです。
- 勤務中、男性従業員が女性従業員に責任を押しつけて自分はビデオゲームをしたり、性的な会話をしたり、レイプについて公然と冗談を言ったりしていた
- 女性社員は、妊娠する可能性があるという理由で昇進を控えられたり、子どもを保育園に迎えに行くために席を外したことを批判されたり、男性の同僚が会議に使うために授乳室から追い出されたりした
- ある女性社員は、男性社員や上司から口説かれたり、レイプに関する軽蔑的なコメントをされたり、その他の卑劣な行為をされた
- 会社のホリデーパーティーでヌード写真を回されるなど、激しいセクハラを受けていた女性社員が、男性上司との社員旅行中に自ら命を絶った
原告であるDFEHは、職場保護の遵守を義務付ける差し止め命令のほか、女性従業員の未払賃金の支払い、給与の調整、失われた賃金および給付金の支払いを求めています。
反論からストライキへ
しかしActivision BlizzardはDFEHからの訴えを受け容れた一方で、内部からは「訴えの内容は歪曲されており、多くは誤りである」との反論も出ていました。
BloombergのJason Schreier氏が紹介している、Activision Blizzardの従業員からのメッセージによると、この人物は、原告であるDFEHは同社と十分な話し合いや情報共有を行わずに、起訴を急いだと不満を述べており、女性従業員の自殺についても本件とは無関係であるとしています。またDFEHが列挙したようなActivision Blizzardの企業文化は現在のものとは異なっており、同社および関連企業全体で、この数年でより多様性を反映する方向で改善が見られているとしています。
しかしこうした社内からの「反論」に対して、従業員側もこの対応を非難。元社員を含む従業員3,000名以上が「被害者への思いやり」を求める署名しに参加し、現地時間7月28にはActivision Blizzardの企業文化是正を求める従業員たちがストライキを決行しています。
同社経営陣はこのストライキを容認し、参加者は有給扱いとしました。しかしストライキで掲げられた「従業員契約における、(加害者にとって有利な)強制仲裁条項の廃止」など4つの要求は、いずれも呑まれないままとなりました。
更新(21年8月7日):コメント欄で時系列の誤りについてご指摘をいただき、記事を修正したうえで再編集をしております。ご指摘ありがとうございました。
スポンサー撤退・株主からの訴訟
今回の問題はBlizzard社が手がける『オーバーウォッチ』のeスポーツ競技シーン「OWL」にも波及しています。DEXERTOによると、米国の携帯電話事業社大手T-Mobileは、7月31日の時点でOWLの各種ウェブページからそのロゴを削除しており、スポンサーから撤退したものと見られています。
またPolygonによると、今回の問題はActivision Blizzardの株価にも深刻な悪影響を与え、数営業日のうちに6%以上の急落を招いたとして、同社は株主により別の訴訟を起こされています。
日本にも大きなプレイヤーベースを持つゲーム企業大手の今回の不祥事は、世界のゲーム業界全体にも大きな影響を与えるでしょう。原告であるDFEHおよびActivision Blizzardで働く従業員の方々の訴えが法的に適正に扱われ、今後の裁判を通じて相応の判決が下されることを願います。
Source: Blizzard Official, Bloomberg Law, DEXERTO
コメント
コメント一覧 (3件)
非常に興味深いよ dia3のロンチ炎上から面白いように凋落していったブリザード
何が起こってるのかと思ってたが簡単だった 作ってる奴らが腐ってたという
書くならちゃんと書けよ。歪曲されてる、事実とは違うっていう匿名の発表から、従業員がストライキして、CEOが辞任したんだろ。事実を時系列順に書かなずに、ブリザードが悪くないかもって印象操作すんの止めろ。
レジットにこのページ貼ったらとんでもないことになるぞ。
どんなに実績を積もうが、人を軽んじると様々なものを失う一例になったな
これを他人事と思わずに、業界全体で健全化に向けて動く切っ掛けになれたらいいなぁ