Embark Studios(エンバークスタジオ)は、基本プレイ無料アリーナFPS『THE FINALS(ザ・ファイナルズ)』の次回大型アップデート「シーズン2」の全貌を公開。
シーズン2は「ゲームショー『ザ・ファイナルズ』が『CNS』なる謎のハッカー集団に攻撃された」という筋立てだ。ところで、そもそも『ザ・ファイナルズ』のストーリーとは何なのか。Embark開発スタッフの方々から、『ザ・ファイナルズ』の設定や、今後の展開などについて多くの興味深い話を聞かせてもらった。
『ザ・ファイナルズ』シーズン2が3月15日スタート
『ザ・ファイナルズ』シーズン2は日本時間3月15日スタート。全体がグリッチを起こしたような新マップ「SYS$HORIZON(シスホライゾン)」など、関連する新コンテンツはこちらの記事で紹介。
シーズン2でフィーチャーされているのが、ゲームショー「ザ・ファイナルズ」にハッキングをかけた「CNS」という集団。シーズン2では、このCNSをモチーフにした新ガジェットや、バトルパス限定アイテムが多数登場する。
実際のところ『ザ・ファイナルズ』はどのような世界設定になっているのだろうか。そしてシーズン2、さらにシーズン3以降、どのような展開に期待できるのだろうか。Embarkの開発スタッフの方々から、プレイしているだけではほぼ分からない『ザ・ファイナルズ』の世界について聞かせてもらった。
『ザ・ファイナルズ』をとりまく組織
まず、この世界における究極のエンターテインメント・ゲームショー「ザ・ファイナルズ」に関わる組織や企業をおさえておこう。
ゲームプレイ中、アイテムなどを通じてこれらの企業のロゴマークを目にしたことがあるだろう。
- 現在の「ザ・ファイナルズ」関連企業
- MultiCo(マルチコ):ゲームショー「ザ・ファイナルズ」を所有・運営する組織
- OSPUZE(オスプーズ):エナジードリンクブランド。「モナコ2013」のオフィシャルスポンサー
- ISEUL-T(イスルティ):韓国のファッションブランド企業。「ソウル2023」のオフィシャルスポンサー
- VOLPE(ヴォルペ):「ザ・ファイナルズ」を実現可能にしているVR技術を提供する企業。「スカイウェイ・スタジアム」のオフィシャルスポンサー
- HOLTOW(ホルトウ):デジタル資産の保証に特化した保険企業。「ラスベガス2032」のオフィシャルスポンサー
こうした世界設定はリリース前から作り込まれている。試しに最初期のトレーラーの1つである「クローズド・アルファ」の予告映像を見返すと、各企業のロゴがちらっと登場していたのが分かる(実はCNSも登場していたという)。
そして、ハッカー集団CNSの存在が、シーズン2で本格的に紹介。CNSは現在、「ザ・ファイナルズ」に攻撃を仕掛けているという図式だ。
初期からあったCNSの「隠しメッセージ」
今回の合同メディアインタビューでは、Embark Studiosから以下の方々に回答をいただいた。
- インタビュー出演者
- Rob Runesson(ロブ・ルネソン):Embark Studios共同設立者。『ザ・ファイナルズ』エグゼクティブ・プロデューサー
- Sven Grundberg(スヴェン・グランドバーグ):コミュニケーションディレクター
- Gustav Tilleby(グスタフ・ティレビー):『ザ・ファイナルズ』クリエイティブ・ディレクター
Grundberg氏は、『ザ・ファイナルズ』の世界設定について以下のように解説している。
Grundberg「『ザ・ファイナルズ』の背景について軽く説明します。初期デザインから、『ザ・ファイナルズ』には2つの組織があるという前提で作られてきました。1つは『ザ・ファイナルズ』の運営グループ(MultiCo)。そしてもう1つがCNSです」
「CNSからのメッセージは、実は最初のトレーラーにも含まれていたんです。他のトレーラーや、ゲーム内のアリーナなどにも、隠しメッセージのような形で彼らの言葉があちこちに含まれています。これはプレイヤーに探してもらう謎解き要素でもあります。まだプレイヤーに発見されていないメッセージも多数あるのですが、これらは今後のシーズンのヒントも兼ねているんです。興味があればぜひ探してみてください」
なぜ「ザ・ファイナルズ」を攻撃?
「CNSには、現在の『ザ・ファイナルズ』は彼らが望むゲームではなく、違うものにしたいというビジョンがあります。CNSが言う『ザ・ファイルズ』のあるべき姿が、シーズン2で描かれるという設定なんです」
「今はまだ詳しくお話しできないのですが、現在『ザ・ファイナルズ』を運営しているMultiCoは、関連する企業ブランドの価値や、スポンサーの利益を優先してゲームショーを設計しています。しかし昔の『ザ・ファイナルズ』は、もっと誰でも気軽にプレイできるゲームだったんです」
「これからも、CNSが少しずつ『ザ・ファイナルズ』を変えていくという流れになっていきます。これはゲームプレイの部分にも関わりますので、楽しみにしていてください」
80~90年代の「デモシーン」からインスピレーション受ける
ちなみに「CNS」という組織名についてはちゃんと意味があるそうだが、何の略なのかは「まだ明かせません」とのこと。
Grundberg「『CNS』が何の略かはまだ明かせませんが、CNSについて大きなインスピレーションを受けたものについて少しお話ししましょう。『デモシーン』です。デモシーンは80~90年代のヨーロッパにおける非常に大きな、若者向けのサブカルチャーでした」(参考:Wikipedia)
「当時は自分のパソコンでゲームをクラックしたりして、感動的なデモが作られていたんです。ピクセルアートや音楽を作って、コンペを行ったりもしました。私やRobもそうした『デモシーン』の文化で育ちました。私たちは15歳の頃に出会い、最終的にゲーム業界に入ったんです。CNSは、この80~90年代のサブカルチャーに対するラブレターでもあるんです」
シーズン2は「80年代のゲーム」もテーマ
Runesson「『ザ・ファイナルズ』シーズン2のデザインについては、80年代のゲームからも強いインスピレーションを受けています。というのもEmbarkのスタッフの多くが、子供時代にその頃のゲームを経験してきたからです。今よりもゲームがもっとシンプルだった時代ですね。シーズン2は、そのような時代のゲームの純粋な楽しさに対するラブレターでもあるんです」
シーズン1でプレイヤーからの反応は?
シーズン1をプレイしたユーザーからの反応について。Embarkのスタッフは『ザ・ファイナルズ』への高評価には自分たちも驚いたという。
Runesson「プレイヤーからの反応は非常にポジティブで、こちらの予想以上のものでした。私たちは20年間ゲーム開発に携わってきましたが、この『ザ・ファイナルズ』では、皆さんから多くの愛を受け取っています。現在もコミュニティのDiscordやXでプレイヤーの皆さんと毎日やりとりをして、たくさんのアイデアをいただいています。ここまでポジティブな反応が来るとは思っておらず、プレイヤーの皆さんには本当に感謝しています」
Tilleby「世の中には他にもたくさんゲームがあるので、皆さんのフィードバックはときどき過激なこともあります。そんな中でも『ザ・ファイナルズ』に対するポジティブな反応はとても嬉しいです。ですが競技者たちのように、私たちにもこれから挑戦すべきことが多数あります。今後もゲームをより良いものにするために、色んな実験的なこと、新しいことを試していきます」
対戦のメタについて
シーズン2では、ミディアム競技者の専門「感覚強化」が削除され、「非実体化装置」に置き換わった。他にもコミュニティではシーズン中、赤キャニスターとC4を組み合わせたときの破壊力が問題視され、後に弱体化されるという出来事も。
こうした対戦のメタと、その変化について、開発者はどのような視点をもっているのか。ミディアムの「感覚強化」のことも含めてうかがった。
Runesson「私はヘヴィの専門なので、ミディアムの変更については何とも…(笑)」
Grundberg「これは冗談なんですが(笑)、『ザ・ファイナルズ』では最初からたくさんの武器やガジェットにアクセスできました。バランス調整が絶対に必要になることは分かっていたんです。すべてのメタをどんどん変えていくのも、私たちの戦略の1つなんです」
「シーズン1では、プレイヤーたちのガジェットの使い方を見ていると、『そんな使い方があるのか』とこちらも驚かされることがありました。フィードバックを踏まえ、シーズン2では各競技者クラスのプレイスタイルをよりバリエーション豊かにするにはどうすればいいかを考えて、今回の調整となりました」
「『ザ・ファイナルズ』は、スタイルの決まったヒーローの中からプレイするキャラを選ぶのではありません。自分のスタイルを見つけて、色んなプレイを試して、そうした中でチーム全体のプレイスタイルも変えていくようにしたいんです。今回は専門スキルが1つなくなりましたが、こういった変更は今後もあるでしょう。『感覚強化』についても戻って来る可能性があります」
シーズン2の展開は?
また、シーズン2を含め、今後の展開については以下の情報を共有してくれた。
Runesson「シーズン2でも(シーズン1と同様)毎週アップデートを実施していきます。たとえばプライベートマッチについてもシーズン内で機能を拡張していく予定です。また、シーズン2では最低でも1つの新しいゲームモードが登場します。これはかなり大きめのモードです。シーズン2では別のトーナメントも登場しますので、ぜひご期待ください」
「ミッドシーズンでは、イベントと、大きなアップデートを計画しています。他にもシーズン1のようにたくさんの小規模イベントや、コミュニティイベントも開催します」
Tilleby「シーズン2ではランクモードの改善が1つの重要なアップデートとなりますが、他にもフィードバックにもとづいて、バランス調整や不具合の修正、新機能の実装も予定しています」
シーズン2は3月15日スタート
『ザ・ファイナルズ』の背景にある、大企業とハッカー集団の対決。そしてさらにその背景にある、開発者たちが育った北欧ゲームコミュニティのデモ文化など、今回の話は非常に興味深いものだった。アートスタイルが非常に個性的な『ザ・ファイナルズ』だが、そこには開発者たちが子供時代に親しんだゲームへの愛がこめられている。
気になることに、開発者たちはどちらかと言うと、心情的にはハッカー集団CNSの方に共感しているという。果たしてこうした開発者たちの思いは、今後のゲーム開発にどう反映されていくのだろうか。
『ザ・ファイナルズ』シーズン2はいよいよ日本時間3月15日スタート。ゲームコンテンツで遊ぶのはもちろん、時にはゲーム内に散りばめられたデザインやアートにも注目してみよう。例の「まだ発見されていないCNSからのメッセージ」も、もしかしたら見つかるかもしれない。
- タイトル:THE FINALS(ザ・ファイナルズ)
- 配信日:2023年12月8日
- 対象機種:PC(Steam)/PS5/ Xbox Series X/S
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Source: Interview
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