『CONCORD(コンコード)』はなぜゲーム史に残る失敗となったのか。衝撃的な中止発表を経て、ゲーミングコミュニティはこの作品の「魅力」についても議論している。
『CONCORD』のフリーガンナーたちは、なぜ「魅力がない」と感じる声が多かったのか。逆に「とても魅力的だ」という人の意見にはどう説明したらいいのか。現役のゲームデザイナーJerrel Dulay氏による解説からヒントが得られるかもしれない。
本記事ではキャラデザインの重要なポイントである、「色調・シルエット・配色・素材・細部 + 意思」の5つ+αに整理した。
Dulay氏はあくまでクリエーター志望の視聴者をターゲットにしており、『CONCORD』のデザイナーを攻撃する意図はない。もちろんこの記事にもなく、むしろイラストレーター志望の方など、デザイン関連を目指す方に読んでほしい。また、「自分の分析手法だけが正解」と言っているわけでもなく、動画コメント欄の反対意見にも真摯に耳を傾けていることは理解しておこう。
『CONCORD』のキャラが魅力的ではない理由を分析
「このゲームのキャラクターには魅力を感じない」。史上最速レベルのサービス中止が発表された『CONCORD』に対して、よく目にするコメントの1つだ。
「宣伝不足」「ポリコレ」「有料」「ライバル作品の多さ」など、さまざまな点から失敗の原因が語られる本作。しかし「キャラに魅力がない」というのは娯楽作品として致命的だ。
なおプレイヤーが少なかったので、「魅力」とはあくまで外観デザインから受ける第一印象に限った話と思われる。各キャラの言動や背景設定、劇中での役割を含めた総合的なキャラクターデザインの良し悪しについては、本記事でも考慮していない。
『CONCORD』に「なぜ魅力を感じないか」を、論理的に解説するクリエーターSungrand StudiosのJerrel Dulay氏は、プロの写真家、ビジュアルアーティストとして長い経験を持つ人物。現在はフルタイムのゲーム開発者として活動しつつ、YouTubeにその理由を丁寧に解説した映像を公開。すでに計70万再生を超えた人気動画「CONCORD VS Overwatch」の概要を見てみよう。
ポイント1:色調にメリハリがあるか?
キャラクターデザインでは、色調のバランスが重要だとDulay氏は語る。キャラクターの画像をグレースケール処理することで、色調の問題点が見つけやすくなる。
グレースケールにする意義は以下のとおり。
- キャラクターの最も明るいパーツと、最も暗いパーツが際立つ
- すべて同じような色調にしてしまうと、のっぺりした印象になる
- 明るい部分と暗い部分のバランスも重要。メリハリをつけることでキャラクターが魅力的に感じられる
たとえば上掲した『CONCORD』のキャラクター“ワンオフ”は全身が黄色いロボットで、メインカラーの範囲が広すぎる。
エマリとラインハルトで比較
メリハリに欠けるために視覚的なインパクトが足りない問題は、他のキャラにも見られる。色調にメリハリがついた良い例としているのが、『オーバーウォッチ2』のラインハルト(右)。
グレースケールにしたとき、『CONCORD』のエマリ(左)はワンオフと同じく、明るい部分が多すぎて「のっぺり」している。対してラインハルトは明るい部分と暗い部分のバランスが全身で取られており、引き締まった印象を受ける。銀の鎧についた黄色いアクセントも冴えており、ライオンのシンボルにはっきりと目を引かれる。
ラインハルトについては鎧のディテールにも注目。起伏がはっきりしていることで、細部の陰影が際立ってさらに「クール」。エマリも重そうなアーマーを着ているものの、こちらは丸っこくて陰影が目立たない。アクセントのピンクも弱く、顔以外に視線を向けるエリアが無意識につかめないため印象に残らない。
追記:コンセプトアートではもっとクールだった
コメント欄で教えてもらったコンセプトアートを見ると、のっぺり感もなくもっとクールにできた可能性を感じてしまう。バックパックの旗や他のキャラにもみられるパイプ(統一感?)のようなもの、ヘルメットのガラス、凹凸感も省略され、紫の唇はコンセプトアート時点ではなかったようだ。
もちろん一部のスクリーンショットなので、動いていない点やポーズも関係しているだろうが、コンセプトアートでは「硬いアーマーを着たがっしり体型の歴戦の勇士」感があるが、ゲーム内では「ゴム製の丸っこいものを着た太った女性」といった印象。
ゲームへ落とし込むために細部を省略するのは仕方のない面もあるが、Dulay氏が指摘するように色調のメリハリとシルエットに問題があったのかもしれない。
ポイント2:シルエットが印象に残るか?
キャラクターに「ぼかし」をかけたとき、そのシルエットに魅力を感じなければデザインに問題があるとDulay氏は指摘する。画像は『CONCORD』のロカだが、確かに単なる「3Dモデルの素体」に見える。
ゲームの場合はさらに、キャラクターが動きまわる点を意識することも重要だ。画面に手や足がチラッと映っただけでも、あるいは遠くから見たときでも、すぐに誰なのか見分けがつくようにする必要がある。そしてその一瞬の姿さえも、やはり魅力的であるように心がけなければならない。
バズとシンメトラで比較
シルエットでの比較対象は、『CONCORD』のバズと『オーバーウォッチ2』のシンメトラ。シンメトラは手足が長くスラッとしたシルエットをしており、対戦中動きまわっているときもスカートがひらめきその魅力が際立つ。ちなみにシンメトラは、歩き方も走り方も、声さえも“優雅”だ。
対してバズは、立ち止まっているときは確かにインパクトのある髪型だ。しかしゲーム内で一瞬だけ画面を横切った場合を想定すると、髪型も含めて大きな赤い塊に見えてしまうため強い印象は残らないだろう。バズもまた、メインカラーである赤色の範囲が広すぎて色のバランスが悪い。
そもそも全体的にジョークのような格好に見え、彼女に憧れるゲーマーは少ないように感じる。
コメント
コメント一覧 (42件)
すまんがOWのキャラは魅力的じゃないわ
属性ごちゃごちゃしすぎ
仮にイケメン美女だらけだとしてもダサいものはダサいと思う
コンコードはなんかソーセージみたいな物巻き付けてる奴が多いんだけどディティールの引き出し少なすぎ
グルートポジションみたいな黄緑のおじいさんとかニコニコしてても細かいトゲが嫌すぎる
生理的に受け付けないキャラが多くて奇を衒いすぎ「これは誰もやらないだろう!」はやったらダサいから多くのデザイナはやらないのよ
言うてシンメトラのバイザーはくそダサいけどね。このラインはまだ時代が一周してない。やるんだったらもっとズラしをいれないとベタベタすぎるし首から下のコスチュームとコンセプトが離れ過ぎてる。
売れなかったものに対して後付けでなぜ売れなかったか?を理由付けすんのってめちゃくちゃ簡単なんだよな
キャラデザが美形じゃない俺好みの流れじゃないからポリコレだ!キャラデザで大失敗ざまあーみろ!みたいな痛々しい人を喜ばせるポルノみたいな記事。ヒーローシューター自体供給過多レッドオーシャンなのと宣伝不足のほうが圧倒的に大きいでしょ。すべてのゲームをスノウブレイクにすれば解決するのかよ?
商業的失敗の理由を語ってるんじゃなくて
デザイン面での失敗の理由を分析してるのに
なにを勘違いしてるん?AIに要約してもらったら?
人間系はポリコレとかで足枷が伴って来るようだ
もう人外しか残されていないな!
こういう建設的な記事を求めていました。
カートゥーン系のキャラデザインのほうが「メリハリ」を付けやすいのかなと思いました。
既にサービスは終了していますが、バトルボーンというゲームのキャラクターデザインも個性的で面白いと思います。
リーグオブレジェンドでどうしてポッピーがデザイン変わったか、変わってどういう印象になったかを考えるのが一番わかりやすい解決方法だと思う。
” やはり紙は細部に宿るのだ。”
誤字ってますよ。記事も細部までチェックして!w
要するに、人間が本能的に感じる魅力の表現を排して、より複雑化した(見ている本人の経験も加味したような)魅力にシフトする思想の元に作られているからだと思われます
どちらが良い悪いは敢えて語りませんが、後者は(例えば日本のわびさびや古典芸能のように)一時物珍しさでもてはやされたとしても、短い期間で一部の人が『これいいよね』と思うようなよりマイノリティなものに落ち着くものにしかならないでしょうし、色々な意味でゲームのようなエンターテインメント的コンテンツに採用するには根本的に不向きであると思われます
好きな人たちだけで楽しむ芸術的オブジェクトを作りたいならご自由に、と思いますし、それが多様性だとも思いますが