PlayStation 5 Pro(PS5 Pro)ユーザーに朗報だ。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のシステムアーキテクトであるMark Cerny(マーク・サーニー)氏が、2026年にPS5 Pro向けの大規模アップデートを予定していることを明らかにした。
同氏によると、このアップデートでは現行のPSSR(PlayStation Spectral Super Resolution)に代わる高度なグラフィックアップスケーリングアルゴリズムが導入され、PS5 Proのパフォーマンスと画質が大幅に向上するという。新アルゴリズムは現行PSSRの「ドロップイン(置き換え)可能な代替」と表現されており、実装後すぐにゲーム開発者が活用できるよう設計されている。
なお、このアップグレードを受けられるのはPS5 Proのみで、ベースモデルのPS5にはPSSR処理に必要な専用ハードウェアがないため対象外となる。
PS5 Proに新アップスケーリング技術、2026年実装へ

PS5 Proは2024年11月7日に発売されたばかりのPS5強化モデルで、AIによる超解像技術「PSSR(機械学習で映像のディテールを補完し、高精細なビジュアルを実現する機能)」を初めて搭載した。
今回予告された新アップスケーリング技術は、そのPSSRを凌駕する性能を持つとされる。Cerny氏は具体的な性能値には触れていないものの、新アルゴリズムにより解像度とフレームレートの両立がさらに進むと見られている。高速な描画が求められるFPSゲームなどでも、4K級の高解像度と安定した高フレームレートを両立しやすくなるだろう。
実際、類似技術の効果はPC版で実証済みだ。AMDの最新アップスケーリング技術FSR 4(FidelityFX Super Resolution 4)を利用したところ、ミドルレンジのグラフィックカードRadeon RX 9070上でも『Call of Duty(コール オブ デューティ)』が驚くほど高画質・高性能に動作したとの報告もある。
PS5 Proに同等の技術が導入されれば、コンソールゲームでも同様の恩恵が期待できる。Cerny氏自身も「PS5 Proに実装予定の新アルゴリズムは決して縮小版ではなく、共同開発した“フル仕様”のものです」と強調しており、据え置き機向けとして最高クラスの画質向上が図られる模様だ。
ソニーは現在、この新アルゴリズムをユーザーに提供する最適な方法(システムアップデートの形態など)を検討中で、詳細は今後正式発表される見込みとなっている。
AMDとの共同プロジェクト「Project Amethyst」

この高度なアップスケーリング技術の背景には、ソニーと半導体メーカーAMDの密接な協業がある。ソニーとAMDは2024年からProject Amethyst(プロジェクトアメジスト)と呼ばれる数年にわたる共同プロジェクトを進めており、ゲームグラフィックス向上のための機械学習アルゴリズム(超解像技術やCNNなど)の研究開発で協力している。
ソニーは家庭用ゲーム機ハードとゲーム開発の知見を、AMDはGPU開発の豊富な経験を持ち寄り、共同成果は両社が自由に活用できるオープンな契約となっている。
実際、AMDがPC向けに提供したFSR 4は、このProject Amethystから生まれた成果の一つだとされている。Cerny氏は「このパートナーシップは特定企業の独占技術を開発するためのものではなく、業界全体を前進させることが目的だ」と説明しており、ソニーの新技術もAMDの他顧客(PC業界など)に開放されることになるという。
なお、 「Amethyst(アメジスト)」という名称の理由は、PlayStation のブランドカラー「青」と、AMD ロゴの「赤」を混ぜると「紫」となり、そこから紫の宝石であるアメジストと名付けられたと開発者向け技術セミナーで明かされている。素敵な名称!
PS5/PS5 Pro本体の設計段階以上に緊密に連携した両社のチームは、定期的にミーティングを行い知見を共有。ソニー側はゲーム開発現場で蓄積した「重いシーンでの負荷テスト」のノウハウをAMD研究陣に提供し、AMD側はソニーに対しアップスケーリングアルゴリズム改良の効果検証に特化したQA(品質保証)チームの設置を提案するなど、互いに学び合う関係になっている。
Cerny氏は「共同開発した新アルゴリズムは現行世代のハードウェア上で実装可能で、既にAMDがPC向けFSR 4の一部としてリリースしたものだ。現在それをPS5向けに実装しており、2026年にはPS5 Pro向けにリリースされる予定だ」と述べている。まさに異例のスピードで成果が実用化されつつあると言えよう。

さらにCerny氏は、「AMDの次世代GPUアーキテクチャ(仮称: RDNA 5)の大部分は、このプロジェクトで自分が手掛けている技術から生み出されつつある」とも明かしており、今回の協業が今後のPC・コンソール双方の技術基盤に大きな影響を与える可能性もうかがえる。
SIEとしては次世代コンソール(将来のPS6など)を見据えて長期的な研究を続けている段階とのことだが、まずは目先のPS5 Proユーザーが2026年にその成果の一端を享受できる形だ。
XboxもAI活用を加速、次世代競争へ

コンソール業界全体でも、こうしたAI技術の活用は一つのトレンドになりつつある。今年6月、マイクロソフトのXbox部門トップであるSarah Bond氏は公式発表の中で「次世代のXboxコンソールはAMDのテクノロジーを採用し、AIの力でより深いレベルの映像品質を実現する」計画であることを明らかにした。
具体的な技術内容はまだ伏せられているが、AMDとの長期パートナーシップを更新した上で、家庭用機だけでなく携帯型デバイスへの展開も視野に入れた取り組みになるという。
興味深いのは、主要コンソールメーカーの中でXboxが最後発としてAI強化ハードに乗り出す点だ。すでにPS5 Proや任天堂のSwitch 2では、一部タイトルでAIベースのアップスケーリングにより4K解像度出力とパフォーマンス安定化を両立している(DLSS・Tensorコア)。Microsoftもそれに類する技術を導入するのは確実で、今後は各社がAI超解像技術を競い合う構図が鮮明になりそうだ。
こうしたプラットフォーム間の競争は、最終的にユーザー体験の向上につながる。例えばアップスケーリングによってGPU負荷が軽減されれば、安定したフレームレートや高解像度描画を両立しやすくなり、激しいアクションやFPSゲームでも映像の滑らかさと鮮明さが一段と向上するはずだ。各社の次世代機戦略にAIが組み込まれつつある現在、将来のゲーム体験はよりリッチでスムーズなものへと進化していくだろう。
まとめ:今後のFPS体験への影響

2026年に予定されるPS5 Proの大型アップデートは、コンソールにおけるAI活用グラフィックスの新たな一歩となる。ソニーはAMDとの協業を通じて、現行機に無料の性能向上をもたらす準備を進めており、この動きは競合他社にも波及して業界全体の技術水準を押し上げるだろう。
特にFPSを含むハイエンド志向のタイトルでは、高精細な映像を高フレームレートで楽しめる環境が整うことで、プレイヤーの没入感や競技性も向上しそうだ。
「業界全体を前進させる」と語るCerny氏の言葉どおり、コンソール各社のAI技術競争はゲーム体験そのものを次のレベルへ押し上げつつある。PS5 Proユーザーにとっては「PS5 Proを買って良かった」とより実感できる日が近づいているのかもしれない。
現在PS5 Proは10万円超えと高価だが、ゲーミングPCと比較すると充分に安価だ。個人的にはこのアップデートと同時に、ブラックカラーのPS5 Pro登場も期待したいところ。PS5 Proへさらなる価値がいつもたらされるのか、ソニーからの公式続報に引き続き注目したい。
Source: Tom’s Guide, TrueAchievements
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コメント
コメント一覧 (2件)
世代を重ねて本体の価格もまあ上がってはいるものの、PCと比べて安価で済むってのは強みだよな
既に持ってるものがアップグレードされるのは嬉しいねー
結局CS機のほうがコスパいいわな
ゲーミングPCはオンラインは確かに無料だけど、PCのカスタムに結局費用かかるし