2025年9月17日、液晶モニターメーカーのJAPANNEXTは、設立10周年を記念し、同社初となるプレスカンファレンスを開催した。
このイベントでは、同社のこれまでの歩みや独自の取り組みが紹介されたほか、eスポーツチーム「DetonatioN FocusMe」との提携、そしてクリエイターやゲーマー待望の「6Kモニター」開発といった、今後の展開を大きく期待させる発表が行われた。
JAPANNEXTとは何者か?異色の経歴を持つCEOと廃校が生んだユニークな開発拠点

JAPANNEXTの創業者であるベッカー・サムエル(Becker Samuel)CEOは、フランス出身という異色の経歴を持つ。10代の頃に日本のアニメやゲーム文化に触発され「日本のものづくり」に強い関心を抱くと、15歳で初来日。以来、夏休みになるたびに日本を訪れ、ヒッチハイクで全国を旅していたというから驚きだ。
そもそもJAPANNEXT設立のきっかけもユニークだ。当時CEOが熱中していたデイトレードでは複数のモニターを使うのが当たり前だったが、「これを大きな1画面で完結させたい」という自身のニーズを満たす製品が市場に存在しなかった。「欲しいものが無いなら、自分で作るしかない」。その思いが、後の65インチ4K曲面モニター開発、そしてJAPANNEXTの原点となった。
同社の個性は、千葉県いすみ市にある本社にも強く表れている。廃校となった小学校を利活用したという本社は、体育館が修理・検品エリア、音楽室がビリヤード台の置かれた休憩室になるなど、遊び心に溢れた空間だ。こうした自由な発想が生まれる環境から、昨年2024年には166もの新製品を発表している。


地域との共存共栄。ユニークな貢献活動
千葉県いすみ市に根を下ろす企業として、JAPANNEXTは地域貢献活動にも積極的だ。その取り組みは多岐にわたる。
- ふるさと納税への協力: 本社で再生された高品質なリファービッシュ品モニターを、いすみ市のふるさと納税返礼品として提供。
- いすみ鉄道との連携: 会社の最寄り駅である「上総中川」駅のネーミングライツを取得し、駅名は「JAPANNEXT」に。さらに、オリジナルラッピングを施した車両も運行している。
- 地域スポーツの支援: 隣接する一宮町の3人制プロバスケットボールチーム「esDGz OTAKI.EXE」のスポンサーも務める。

「お客様のこだわり」を実現するための3つの取り組み
JAPANNEXTの急成長を支えるのは、「お客様のこだわりを実現すること」を最重要視する姿勢だ。カンファレンスでは、そのための具体的な3つの取り組みが紹介された。
1つ目は「高付加価値な製品をお求めやすい価格で市場に投入する」こと。日本メーカー初の4K/144Hzモニターや500Hzのゲーミングモニターをいち早く市場に投入してきた実績が、その好例である。
2つ目は「柔軟な開発体制とサポート体制」。顧客の特殊な要望に応えて専用の基盤を開発した温浴施設の例など、ユーザーの声に真摯に耳を傾ける姿勢がうかがえる。
そして3つ目は「『未知の体験』を提案」すること。縦型でSNS表示に特化したモバイルモニターや、出張先での作業効率を劇的に向上させるデュアルモニター、トライモニターなど、従来の常識を覆すユニークな製品開発力がJAPANNEXTの真骨頂と言えるだろう。
eスポーツへの本格参入。DetonatioN FocusMeとタッグ
ゲーマーにとっての注目点は、国内屈指のeスポーツチーム「DetonatioN FocusMe」との提携発表だろう。これまでもJAPANNEXTは多くのeスポーツチームや施設を支援してきたが、今回の提携は単なるスポンサーシップに留まらない。
今後は、DetonatioN FocusMeのプロ選手の知見を活かしたモニターの共同開発など、より踏み込んだ取り組みを計画しているという。JAPANNEXTが持つ柔軟な開発力と、トッププロの要求が融合することで、どのようなゲーミングモニターが生まれるのか。今後の展開から目が離せない。

全てのデスク環境を革新する新製品たち
カンファレンスでは「全ての人がジャストフィットなデスク環境を手に入れられる世界」を目指すという新たなミッションが掲げられ、それを具現化する新製品群が発表された。デスク周りをスマートにする3-in-1ワイヤレスチャージャーや、新たな14インチモデルが追加されたデュアルモバイルモニターなど、意欲的な製品が並んだが、中でも会場の注目を一身に集めたのが、開発中だという6Kモニターだ。



市場価格の半額以下を目指す、31.5インチ6Kモニター
現在、6K解像度のモニターはApple社の「Pro Display XDR」がほぼ唯一の選択肢であり、その価格は70万円以上と、プロのクリエイターでも導入には覚悟がいる。その牙城を崩すべくJAPANNEXTが開発しているのが、31.5インチの6K(6016x3384)モニターだ。
DCI-P3 98%という広色域に対応し、90WのUSB-C給電機能、昇降式スタンドも備えるなど、プロユースを強く意識したスペックとなっている。驚くべきはその目標価格だ。Apple製品の「半額以下」、具体的には20万円から、高くても25万円を目指して開発を進めているという。
高精細な映像が求められる現代のAAAタイトルをプレイするゲーマーにとっても、4Kを遥かに超える解像度は新たなゲーム体験をもたらすだろう。2026年発売予定というこのモニターが、クリエイターだけでなくハイエンドゲーマーのデスク環境にも革命を起こすことは間違いない。


「モニターメーカー」から「デスク環境の革新者」へ

初開催とは思えないほど、多くの驚きと未来への期待に満ちていたJAPANNEXTのプレスカンファレンス。DetonatioN FocusMeとの提携による本格的なゲーミングデバイス開発への参入、そして6Kモニターという新たな挑戦は、同社が単なるモニターメーカーから、全ての人のデスク環境を革新する存在へと進化していくという強い意志の表れだ。ゲーマーとしても、彼らが次にどんな「未知の体験」を提案してくれるのか、楽しみに待ちたい。
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