つい先日最後のアップデートが発表された『Battlefield V(バトルフィールド V)』。あまりの唐突さが多くの憶測を呼んでいますが、とある情報筋からDICEの内部事情を伺い知れると聞きつけ、調査を行いました。企業レビューサイト「Glassdoor」からDICEの内部がどうなっているのか、推察していきましょう。
企業レビューサイトGlassdoorとは?
Glassdoorは任意の企業の従業員や元従業員が、企業のレビューを匿名で書き込むことができるウェブサイト。欧米では多くの人が就職の際に予習として使用するほか、企業の内部状態を推察するのにも使われています。
ただしGlassdoorは個人保護の観点から匿名を貫いているので、完全に信頼できるわけではなく、以下の留意点があります。
- 退職したばかりの人は、ストレス発散のために過剰な悪評を書き込みがち
- 企業自身が従業員に良いレビューを残すように要求し、工作することができる
- 書き込み主は1年に1つしかレビューを書けないなど制約があるが、本当にその企業の従業員だという保証はない
調査の大前提を覆しかねないのが3番ですが、これらは投稿者がどの程度その企業の内部文化を語っているか、また他のレビュー投稿者と照合するなどである程度回避できます。それでも絶対ではないので、今回は『BFV』の実際の状態とも照らし合わせつつ、あくまでも推察という体でDICEの今を分析していきます。
そして気になるDICEレビューの内容ですが、2018年のエントリーは5つがどれも高評価。しかし『BFV』が軌道に乗り出した辺りの5月から始まった2019年の投稿は6つともに低評価で、9月以降は完全に沈黙。
一応その後は2020年4月20日に連続して高評価レビューが2つ入っていますが、タイミングがタイミングなので不自然な気もします。以下では2019年の投稿を主に見ていきましょう。
DICEの良いところ - 2019年
- ベテランで経験豊かな開発スタッフが多く、みんなフレンドリー。しかも新人の教育に積極的で、いろいろ教えてくれる
- 単純に素晴らしいゲームを作りたいだけな開発スタッフが多く、話しやすい
- 新卒への給料はヨーロッパのゲーム業界基準では高いほう
- 残業が比較的少なめで、オフィスの雰囲気もリラックスしている
- 社食やパーティー、福利厚生が充実している
DICEの悪いところ - 2019年
- オフィスは社内政治が蔓延しており、開発力よりも政治力や縁故の方が幅を利かせている
- 2018年頃からもともとの上層部の定年が近づいてきたため、新たな上層部に世代交代しているが、人選が能力よりも縁故主義にしか見えない
- クリエイティブリーダーの決定は明らかに失敗しそうな物も多いが、反対意見をいくら挙げても強行され、全く成功すると思えないゴールのために開発することとなる
- クリエイティブリーダーは自分のビジョンを実現するためだけに躍起になっており、そのビジョンが実現可能なのか、そもそも良いビジョンなのかは全く考慮していない
- 上層部はプレイテスト中にきまって会議を開くため、ゲーム環境への理解がまったくない
- 開発スタッフも自身の意見が聞き入れてもらえないのが分かっているため、徐々にプレイテストに参加しないようになった
- 開発段階の全行程で問題が噴出しているのに、クリエイティブリーダーはますます頑固に当初に描いたビジョンを追い求めるだけ
- クリエイティブリーダーのプロジェクトが大失敗に終わっても、何度でもプロジェクトを任されるし、末端の開発スタッフは何年も末端のままに見える
- リーダーが自分のビジョンに比較的賛同していた開発スタッフを引き抜いてパブリックの矢面に立たせ、プレイヤーの意見を誘導し、自分の発言力を高めるために利用している
- コミュニティーのフィードバックから一部のみを抽出し、それが絶対多数の意見かのようにスタジオ内で標榜している
- スタジオ上層部にその事を相談しても、話は聞いてくれるがクリエイティブリーダーを止めるようなそぶりは全く見られない
- EA側の管理層はこれらスタジオの問題を黙認しているか、聞かされていないかのどちらかだとしか思えない
- 管理層は開発スタッフやシニアデザイナーを厚遇しないため、10年以上の勤務歴を持つベテランスタッフが多く離職しており、経験や知識が流出している
- 管理層がゲーム開発に対する理解に欠けており、自分が責任する物事に関する知識を持っていない
- 知識に欠けている管理層は開発スタッフの年次評価を他のスタッフに託しており、そのため自身の評価を上げるために政治的な駆け引きを行わなくてはいけない
- 年度ボーナスは成果よりも政治力が幅を利かせているように見える
- 開発部門がそれぞれ独立しており、ゴールやビジョンも違えばコミュニケーションや進度の共有もなされておらず、まったく協力できていない
- 開発パイプラインがとっちらかっており、自分が知らない間に自分の担当していた部分が修正されていたり削除されていたりする
- Frostbite(フロストバイト・ゲームエンジン)のエディターは重くて使いづらい。ただのコピー・ペーストでもバグがでるし、単純なファイル整理でさえ数分かかる
- しかも壊れているかどうかすらわかりにくい。問題がローカルなのかサーバー側なのかもわからない。シンプルなデバッグのために数時間かかったりする
- コードの設計中に問題が起きた場合、ベテランスタジオ特有の諦め、順応の雰囲気が濃く、革新に欠けている
- アートスタイルがゲームプレイより優先されている
- エンジニア職はそれなりに残業をすることになる
所感
以上が2019年のエントリー6本に共通するDICEのレビューです。まず良いところを見ると、兼ねてから言われたとおりのホワイト企業っぷりが目立ちます。ゲーム企業にしては残業が少なかったり、福利厚生が充実していたり、開発スタッフ間の雰囲気が良いのは素晴らしい点でしょう。
しかしその分、DICEの悪いところも『BFV』の現状と照らし合わせると納得できることが多いです。Westie氏の総括にも見られましたが、『BFV』では行ったり来たりの仕様変更やコンテンツのキャンセルが目立ち、これらは確かに知識不足の管理層が強行して招いた悲劇に見えます。
2020年4月に投稿された2つの高評価レビューも、ついでとばかりに挙げたDICEの欠点ではしっかりとリーダーシップの決断力の弱さを述べています。実態がどうあれ、2019年からのDICEの管理層に何らかの問題が存在するのは確かかもしれません。
それに加えてコミュニティからの意見を恣意的に選別していたのが事実だとするなら、それはユーザーからの信頼やコミュニティマネジャーの努力を踏みにじる行為であり、コミュニティと開発の橋渡しを勤めようとしていた人たちからしても、到底許せることではないでしょう。
しかし遅々として直らないコアシステムやマップのバグを考えると、開発スタッフに全く非がないとも言い切れないところです。先に書いたとおり、企業の低評価はそもそもストレス発散を目的に書いている人が多数居るでしょうし、管理層はどの会社でも実態以上のヘイトを集めがちです。
そして大所帯ともなると人間関係は必然的に複雑になるので、社内政治が存在することは大企業の宿命とも言えます。レビューの欠点も実際は半分ぐらいが事実で、残りはかなり大げさに書かれているつもりで扱った方がいいかもしれません。
なんにせよ、『BFV』は歴代作や当初に掛けられた期待から比較すると、シリーズファンを大きく失望させる出来になってしまったのは確かです。もし原因が本当にDICE内部の体制によるものなら、変革を行わない限りは2021年~2022年に予定されている『BF6(仮)』の行方も怪しいことになるでしょう。
Electronic Artsが過去に行ったユーザーフレンドリー革命のような、再度の革命が必要になるのかもしれません。過剰にユーザーの意見を取り入れるのも疑問ですが。
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『Battlefield V(バトルフィールド 5)』の発売日は11月20日で、対象機種はPlayStation 4、Xbox One、PC。
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コメント
コメント一覧 (3件)
まあデカい企業ほどこの手の問題は多いからなぁ
特にIT企業は転職によるキャリアアップが活発な業界だから
こりゃ駄目だと思ったら有能な人材はどんどん逃げていく
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