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レビュー:異世界ソ連『アトミックハート』 不満もあるがやりごたえのある戦闘と強化システム

先行レビュー:異世界ソ連『アトミックハート』 不満も多いがやりごたえのある戦闘と強化システムが好印象
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『Atomic Heart(アトミックハート)』は、キプロスの新興スタジオ Mundfish が2017年に開発を発表した新規タイトル。科学技術が現代よりも発展した架空のソ連で、反乱を起こしたロボットやクリーチャーと戦うハードコアファーストパーソン・シューティングゲームです。

約6年かけて完成させた本作は、ついに本日2月21日にPC/Xbox Series X|S/Xbox One版が先行発売され、4月13日にPS5/PS4向けのリリースも予定されています。今回は発売に先駆けてプレイする機会に恵まれたので実際にプレイしてみた印象を重要なネタバレなしでレビューしていきます。

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我がソ連の技術力は世界一ィィィ! な世界観

舞台は1950年代のソビエト連邦。 ただし、科学技術がリアルの現代を遥かに超える発展を遂げているパラレルワールドという設定。ソ連の人々はすでに神経ネットワークをグローバルネットワークに接続する「コレクティヴ」に繋がっています。「コレクティヴ」は我々の世界でいうスマートフォンの関係に近いもので、作中ではまだインターネットのイの字もない西側諸国に対して、圧倒的なテクノロジーアドバンテージを有しています。

また、ロボット技術やアンドロイド技術も発展しており、「コレクティヴ」と組み合わせた工業のほぼ全自動システムにより、経済力でも他国を圧倒。 アメリカもソ連からロボットを輸入しており、失業率が増加しているという、経済的侵略と理解しつつも依存せざるえない状況となっています。

ビジュアルインパクト大のアンドロイド

ストーリーはそんな「コレクティヴ」の次世代版「コレクティヴ 2.0」のローンチを翌日に控えた空中都市チェロメから始まります。 そんなお祭り騒ぎのチェロメを散策するのが、プレイヤーキャラクターとなる「P-3」。 以前までの記憶を失っていながらも、国家の特別捜査官として優れた任務遂行力にプライドを持っています。P-3の左手のグローブには、さまざまな特殊能力と自律回路を持つ頼れる相棒の「チャールズ」がいます。

主人公のP-3。とにかくチャールズとしゃべりまくる。

スターリン様式が発展した巨大な建築物を眺め、優雅に空中遊覧しながら目的地に向かっていたP-3ですが、ここでお約束の事件が発生。 ソ連のロボットたちが反乱を起こし、人間の虐殺を開始します。 ここからハードコアのグロ要素が全開になっていきます。

巨大建築物が並ぶレトロフューチャーな街並み

公式サイトの「世界観」を読むとより楽しめると思います。

アトミックハートの戦闘

戦闘だけでなく楽しい?アトラクションや謎解きも

暴走したロボットたちは容赦なくP-3に襲いかかってきます。 『アトミックハート』には難易度が3種類用意されていますが、最難関モードは当然のこと、2番目の難易度ですら敵に情けはありません。 ロボットですから。 敵のHPも非常に高く、数の暴力も合わさり、戦闘難易度は高いかもしれません。

なお、公式発表によるとカットシーンの合計時間は約1.5時間で、メインストーリーは20時間以上、サイドアクティビティは15時間以上となるそうです。

ロボットのほかにも、工業用アンドロイドや生物兵器といった人外の敵に挑むP-3。 P-3には、近接武器で殴る、銃を撃つ、スキルを使う、回避する、回復する、しゃがむ、の6種のアクションが用意されています。

無表情で迫ってくる不気味なアンドロイドたち。 クリティカル攻撃前に光ったらダッシュ回避のサイン。

最初は両手斧一本で立ち向かうP-3ですが、探索を進めていくうちに片手斧や剣といった近接武器や、ピストルにアサルトライフル、ロケットランチャーといった重火器の設計図が手に入ります。 『アトミックハート』には武器のクラフト要素が導入されており、クラフト用の端末にアクセスすることで新しい武器の作成や、武器のアップグレードが可能となっています。 銃は消費性のクラフトできる弾薬か、自動回復するエネルギー弾の2種類に分けられます。

さらに、P-3やチャールズ自体のアップグレードも可能で、体力を増やしたり、回避ダッシュの使用回数を増やしたりといった基本的なことから、相手を凍結させるフロストバイトや、空中に持ち上げて無抵抗にしたあとに地面に叩きつけるマステレキネシス、敵の攻撃を防ぎつつ防いだダメージ分だけ体力が回復するポリマーシールドなど、簡単にいうと銃と魔法の世界です。 発展しすぎた科学は魔法と見分けがつかないとはこのことです。

クラフトやアップグレードには素材が必要で、素材は探索や敵を倒すことで入手。 なかにはレアな素材もあり中々アップグレードできないという場面もチラホラ。 しかし、クラフトした武器は解体、アップグレードはリセットすることで、それまでに注ぎ込んだ素材が全て手元に返ってきます。 これは嬉しいポイント。そのため、新しい設計図や新しいスキルを使いたくなったら気軽に変更できるわけです。

アップグレードはシンプルかつリセットで素材も還元される嬉しい仕様。

敵が硬いことが多いので弾薬を無駄使いしづらいゲーム設計となっているためか、この手のゲームにしては珍しく近接武器がとても強い。 筆者は基本的に開幕にフロストバイトで敵を凍らせて殴りつけ、次に迫ってくる敵はマステレキネシスで一気に空中に持ち上げ、フロストバイトのクールダウンを待ちつつ、クールダウンが終わったら敵を地面に叩きつけてからまたフロストバイトというループで進んでいました。 他にも色々なスキルはありますが、フロストバイトとマステレキネシスが頭一つ飛び抜けて強い印象です。 後半になると敵も強くなってきて属性を合わせる必要も出てきますが、基本的にはこの2つのスキルで進めます。

マステレキネシスで一気に敵を空中に吊るす。 アップグレードすれば地面に叩きつけて一掃できる有用なスキル。

ただ敵との戦闘は楽しいものの、『アトミックハート』の敵は無限復活してくるケースがあり、敵を倒すことで手に入る素材も初めて倒したときしか手に入らず、永遠に戦っていても時間の無駄なので、途中からは必要最低限の戦闘しか行わなくなりました。

オープンワールドではなくオープンフィールド系

『アトミックハート』はオープンワールドゲームに見えますが、マップが広いだけでオープンワールドではありません。 基本的には進行ルートが定められているリニアなアクション・アドベンチャーです。 類似ゲームとしては『バイオショック』に非常に近い(ゲーム中にイースターエッグもあります)と言えます。 当サイトの読者の方には、「探索要素もある『CoD』や『BF』のキャンペーン」といえばイメージしやすいかもしれません。

メインヒロイン1 「ジーナ婆さん」。

メインストーリーでの探索の多くは、色々な研究所の内部で行われます。RPGのダンジョンのようなものと思ってください。 研究所内の施設は一つ一つが大きく、ロボットたちが押し寄せてくる中での謎解き要素や、アクション・アドベンチャーとしての作りはちゃんとしています。

ただし、謎解きギミックのルールが分かりづらい箇所が何点かあり、これを謎解きのスパイスと取るか、不親切な作りと取るかで評価が分かれそうです。

小さなパズルから大きな謎解きまで盛りだくさん。

探索や収集要素もこなそうとすると、思ったよりも時間が取られます。 架空のソ連の世界を堪能したいのですが、実際は崩壊した陰鬱な研究所に籠もっている事が多く、青空が恋しくなります。

メインヒロイン2の変態ロボ「ノラ」

世界観の構築に力を入れてある本作は、一つの研究所でも棟によってガラッとデザインが変わります。 その変化を楽しみつつも、あまりにも変化しすぎて、ふとした時に自分がいる研究所のコンセプトが何だったのか分からなくなるときもあります。

ここで嬉しいのが、壁に書かれているサインや広告などが当然ロシア語なのですが、視点を合わせると日本語字幕が表示されて内容が伝わります。 ストーリーの登場キャラクターだけでなく、道行くNPCの会話や広告などもしっかり日本語翻訳されているのは好印象。 翻訳もただの機械翻訳ではなくプロの翻訳を受けているようで、英語音声との翻訳の意味のズレを感じることもあまりなく、しっかりしたクオリティがものでした (セリフの字幕が一気に表示されてしまうことなどはあり)。

: 記事執筆時点ではXbox版は日本語字幕が収録されておらず、現在開発チームとパブリッシャーとMicrosoftが共同で問題の解決と調査を行っているとのことです。

アトミックハートの不満点

PC版『アトミックハート』はFキーを長押しすることで素材アイテムをまとめて回収できるのですが、しっかりエイムを合わせないと回収できていないことが多く、テンポが悪くストレスが溜まりました。 どうせなら一括回収してほしいところ。

ストレスを感じたもう一つの点は視野角の狭さからくる操作性の悪さです。 研究所にはギミックが用意されておりそれを解除することで進めていくのですが、視野角が狭いために頻繁に視点を動かさなくてはいけなかったり、足場を渡っていくジャンプパズルも距離感が掴みづらかったり、先述したアイテム収集も、視野角が狭いからこそ取りこぼしが発生しやすくなっています。

箱を開けても回収はF長押し。面倒くさい。

さらに、ゲームの設定でカメラが常に上下に小刻みに揺れており、揺れを最小に変更しても視野角が狭いとその揺れも大きく感じて、人によっては3D酔いしやすいと思われます。筆者は揺れが少ないゲームなら12時間ぶっ続けでもプレイ/配信していられますが、カットシーンなどでカメラ揺れがあるゲームだとすぐに休憩を挟むタイプです。 もちろん『アトミックハート』も何度か休憩を挟む必要がありました。

アトミックハート 総評

キプロスの新興スタジオが作り出した『アトミックハート』ですが、不満点や粗削りなところがあるものの、「科学技術が超発達した架空のソ連」という魅力あふれるテーマを、圧倒的なビジュアルで説得力を持たせ、世界観もしっかりと構築できています。

378万回再生されたショート動画

探索要素によるアイテム収集で自分が強くなっていく感覚を味わえつつ、戦闘は射撃とスキルを組み合わせた爽快感のある無双プレイから、難易度を上げることで一つ一つの判断ミスが命取りなシビアなハードコアゲームにも変貌できるなど、楽しいポイントをうまくまとめた作品です。 気になった方はぜひプレイしてください。

なお、現在は日本語字幕のみの対応ですが、4月13日を目標に日本語音声を全プラットフォーム向けに収録中とのことです。

『Atomic Heart(アトミックハート)』の発売日はPC(Steam / SteamDeckも可) / Xbox One / Series X|S版が2月21日で、PS4 / 5が4月13日となっています。

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