世界で50以上もの賞を受賞した『シャドウ・オブ・モルドール』など、約30年にわたって20作以上のタイトルを手がけたMonolith Productionsの閉鎖が報じられた。FPS界ではホラーFPSの傑作『F.E.A.R.』シリーズ、さらにさかのぼって『Blood』シリーズで知られる名スタジオだ。
2004年にワーナー・ブラザースに買収され、そのゲーム事業会社に組み込まれていたが、他の2スタジオとともにその歴史に幕を閉じることとなった。
Monolith Productionsなどワーナー3スタジオが閉鎖

BloombergのJason Schreier氏(ブルースカイ)を通じて、ワーナー・ブラザースが3つのゲームスタジオを閉鎖することが2月26日明らかになった。ワーナー・ブラザース ゲームズ傘下の、Monolith Productions(『シャドウ・オブ・モルドール』など)、Player First Games(『MultiVersus』など)そしてWBゲームズのサンディエゴスタジオがその対象だ。
これにともない、Monolith Productionsが開発中だった『ワンダーウーマン』のゲームもお蔵入りとなる。
閉鎖の背景には、ワーナー・ブラザースのゲーム事業の不振がある。直近の第3四半期決算でも同社ゲーム部門は30%の収益源。さかのぼって2024年度第1四半期には、『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』(Steam)が商業的に失敗し、その損失額は2億ドル(約300億円)とも報じられた(Bloomberg)。
さらに『ハリー・ポッター:クィディッチ・チャンピオンズ』など他作品も振るわず、ワーナーのスマブラと称された『MultiVersus』も2月初頭にサービス終了が発表された(Xアカウント)。
2023年にリリースされた『ホグワーツ・レガシー』では3,000万本を売り上げる成功をおさめたワーナーだが、グローバル・ストリーミング&ゲーム部門の責任者JB Perrette氏は、従業員に向けたメールの中で「あまりにも多くの新作が、プロダクトマーケットフィットと品質の面で失敗してしまった」と述べている(kotaku)。
(プロダクトマーケットフィットとは、サービスや商品が特定の市場において適合している状態のこと)
Monolithは『F.E.A.R.』シリーズの開発スタジオ
Monolith Productionsと言えば、アクションRPGの『シャドウ・オブ・モルドール』と続編の『シャドウ・オブ・ウォー』の成功が記憶に新しいが、FPS的には『F.E.A.R.』シリーズの開発スタジオである点は見落とせない。
プレイヤーは特殊部隊「F.E.A.R.」(First Encounter Assault Recon)の新人メンバーとなり、テレパシー能力で兵士を操る敵パクストン・フェッテルを追うというのが第1作のストーリー。ベースはストーリー主導型のミリタリーFPSだが、超常現象(急にガラスが割れる)や幻覚体験(少女の幻影が見える)といったホラー演出がふんだんに盛り込まれており、思いがけない方向に転がっていくシナリオも相まって、その独特な体験は後のFPSにも大きな影響を与えた。
スタジオのルーツとしては、1997年の作品『Blood』シリーズにさかのぼることができる。FPSの探索要素に、ホラー映画を思わせるアートワークや、オカルト演出、ポップカルチャーネタを組み込んだ点が、当時としては新鮮として話題になった。metacriticによると、『Blood』は7メディアから平均82という高いスコアを獲得している。
初代『F.E.A.R.』150円セール中

ゲーム販売プラットフォームGOGでは、『F.E.A.R.』第1作と拡張パック2本(Extraction Point、Perseus Mandate)を収録した『F.E.A.R. Platinum』が、現在0.99ドル(約150円)でセール中(GOGストアページ)。試してみたところゲーム内テキストは英語のみだったが、せっかくなので150円で確保してみてはいかがだろうか。
GOGでは、クラシックゲームの保存と、現代PC環境における最適化・互換性維持を目的とした「GOG Preservation Program(GOG保存プログラム)」を進めている(なお運営企業はCD Projektの子会社)。Monolith Productionsの閉鎖を受け、以前からプログラムに組み込まれる予定だった『F.E.A.R. Platinum』は、前倒しで3月までに組み込まれることとなった。Monolith Productionsの他の作品も今後、プログラムに含まれる可能性がある。
なお『F.E.A.R. 2: Project Origin + Reborn』も80%オフの2.99ドル(約450円)、開発はDay 1 Studiosだが『F.E.A.R. 3』も80%オフの3.99ドル(約600円)でセール中。いずれも日本時間3月1日午後5時ごろまで。ゲームとしては確かに古いものかもしれないが、FPS史では重要な作品の一つだ。興味を持った方は、この機会にプレイしてみてはいかがだろうか。
Gaming Device Power Tune for FPS
Source: Bloomberg, GOG, X and others
コメント