SteelSeriesより、長年にわたりeスポーツの最前線を支えてきた伝説的マウスパッド「QcK」シリーズの正統後継として、新たに「QcK Performance」シリーズが2025年3月21日に日本で発売された(Amazon.co.jp)。
「ゲームプレイはそれぞれの個性があるからこそ、マウスパッドも専用のものを」というコンセプトの通り、本シリーズはプレイスタイルに合わせて表面素材や滑走特性が異なる3つのモデルを選べるのが最大の特徴。“安くて高品質”というQcKの看板を一度下ろし、より専門的でニッチな要求に応えるプロ仕様の最上位コレクションだ。
本記事では、「QcK Performance」シリーズの3モデルをレビュー。各モデルの魅力やプレイスタイルとの相性、そして長かったマウスパッド探しの旅を終わらせる一枚を見つけるための比較まで、詳しく解説していこう。
QcK Performance シリーズ レビュー
- どんな製品?:プレイスタイルから“選べる”3種のサーフェスを持つ、SteelSeriesの次世代マウスパッド
- 向いてる人: AIMの精度を本気で高めたい人 / 自分のプレイスタイルに最適な"滑り"を見つけたい人
- 向いていない人:マウスパッドにこだわりがなく安さを最優先する人
- ラインナップ:SPEED / BALANCE / CONTROL
- 良い点:3つの選択肢 / 全面ラバーベース / ほつれ知らず
- いまいちな点:高い / 巻き癖 / メンテナンス
- 発売日:2025/03/21
- Amazon価格(税込):6,480円(Lサイズ) / 7,980円(XLサイズ)
- 公式サイト:SteelSeries
- マウスパッドの「コントロール系」と「スピード系」って何が違うの?
-
マウスパッドの滑りやすさを表す指標。「コントロール」系は摩擦が強く、マウスをピタッと止めやすいのが特徴。精密なAIMが求められるタクティカルFPS(VALORANT、CS2など)で好まれる傾向がある。
「スピード」系は摩擦が少なく、マウスを素早く長距離動かすのに適している。視点移動の多いトラッキング系の撃ち合い(Apex Legends、オーバーウォッチ 2など)で有利になる可能性がある。
どちらが良いかは個人の感覚とプレイスタイル次第だ。
QcK Performance レビュー結論:プレイスタイルを再定義する、“選ぶ”ためのプレミアムツール

- 明確な3モデル展開
- 激しい操作でも揺るがない安定性
- ステッチエッジ加工
- タグデザイン
- プレミアム価格
- 頑固な巻き癖
- メンテナンス
結論から述べると「QcK Performance」シリーズは、「自分のAIMスタイルと真剣に向き合い、弱点を克服するための究極の選択肢」だ。もはや「どのマウスパッドが良いか」ではなく、「どの"滑り"が自分を勝利に導くか」を問いかけてくる、まさに上達のための戦略的ツールだ。
高速なフリックを重視するなら「SPEED」、滑らかさとコントロールの両立を求めるなら「BALANCE」、そして精密なトラッキングと確実なストッピングを望むなら「CONTROL」。この明確な指針は、プレイヤーが自身のパフォーマンスを最大限に引き出すための確かな道筋を示してくれるはずだ。
従来のQcKシリーズよりも大幅に価格が引き上げられたが、QcKという王道ブランドから自身のプレイスタイルを深く見つめ直し、弱点を克服するための答えにたどり着けるようになった意義は大きい。



QcK Performance ギャラリー






その他の良い点や気になる点を含め、以下で詳細を見ていこう。
QcK Performance の良い点 4つ
1. プレイスタイルから“選べる”3つのサーフェス

本シリーズ最大の魅力は、なんといっても明確にコンセプト分けされた3種類の表面素材だろう。「SPEED」「BALANCE」「CONTROL」と、ゲーマーがマウスパッドに求める要素を完璧に言語化し、製品として昇華させている。
これまでの「なんとなくこれを使っている」という曖昧な状態から脱却し、「自分は“止める”エイムだからこれを選ぶ」という確固たる意志を持ってデバイスを選べるようになる。これはパフォーマンス向上において計り知れないアドバンテージだ。
2. 激しいフリックでも揺るがない、鉄壁の安定性
eスポーツの激しい試合中、マウスパッドのズレは致命的なミスにつながる。QcK Performanceは、底面に従来のゴムではなく、3.5mm厚の高密度ネオプレンゴムを採用。
これにより、デスクのわずかな凹凸を吸収し、常にフラットなプレイエリアを保証。ローセンシプレイヤーが腕をぶん回してもパッドがずれることのない優れた安定性と、手首への負担を和らげる適度なクッション性を両立している。

3. 耐久性を約束する、高品質な薄型ステッチ加工

エッジが切りっぱなしで、使い込むと端からほつれてくるのは、もはや過去の話。本シリーズでは、表面とほぼ同じ高さに抑えられた薄型のステッチ加工が施されている。
これにより、耐久性が劇的に向上しただけでなく、手首への刺激やマウスの引っ掛かりといった、質の低いステッチ加工にありがちなストレスからも解放される。
4. タグの色で語るアイデンティティ
各モデルの右上にさりげなく配置された、色分けされた布製のタグ。SPEEDはピンク、BALANCEは青、CONTROLは黄と、一見すると単なる装飾に見えるかもしれないが、これはSteelSeriesの巧みなデザイン言語だ。
この色分けは、各モデルが単なる"色違い"ではなく、明確に異なる目的を持つ"専用ツール"であることを視覚的に訴えかけてくる。
デスクに置いたその瞬間から、自分が選んだ武器の個性を強く意識させ、デスクに向かうモチベーションと所有欲を静かに満たしてくれるだろう。

QcK Performance 3種 試遊レポート
ここからは、本シリーズの核心である3種類のマウスパッド「SPEED」「BALANCE」「CONTROL」それぞれの特徴と、実際に試遊した生の感想を書き記していく。どのモデルが自分のプレイスタイルに突き刺さるか、ぜひ参考にしてほしい。


テスト環境は「HyperX Pulsefire Haste 2 Pro(PTFEソール)」と「Logicool G Pro X Superlight 2(UHMW-PE汎用ソール)」の2台で検証。基本プレイ無料FPS『THE FINALS』にて、トラッキング主体(フルオート系)とフリック主体(単発系)の武器を交互に試しながら、その性能を深掘りしていく。



1. QcK Performance SPEED:布の常識を覆す、究極の“滑り”

「SPEED」モデルは、速度を極限まで追求するプレイヤーのためのサーフェスだ。超低動摩擦の織り込みデザインは、わずかに光沢を帯び、指で触れるとツルツルとした滑らかな質感が伝わってくる。これはもはや布製というより、ハードパッドやガラスパッドに近い領域のプロダクトだ。
普段ガラスパッドを使う筆者も驚くほど滑らかで、初動の抵抗感は皆無。まるでマウスが浮いているかのような感覚だ。それでいて、布特有の沈み込みを利用してグッと力を入れれば、ハードパッドにはない制動力を生み出せるのが面白い。
特にPTFEソールとの組み合わせは氷上を滑るような体験で、高速で左右に動くターゲットにエイムがスッと吸い付いていく。これまで筋肉の緊張で補っていた微細な動きが、より直感的に行えるようになる。
手首や指先でコントロールする高感度プレイヤーには最高の武器になり得るが、腕で大きく動かすローセンシプレイヤーはその圧倒的な滑りを制御するために慣れが必要だろう。滑らかな表面は手垢や皮脂汚れがパフォーマンスに影響しやすいため、最高の状態を維持するには定期的なメンテナンスが必須となる。
2. QcK Performance BALANCE:迷ったらコレ。伝統と革新の優等生

「BALANCE」モデルは、まさにシリーズの“基準点”となる存在だ。高いステッチカウントとタイトな織りが特徴で、多くのプレイヤーが慣れ親しんだQcKの安心感はそのままに、全体の質を底上げしている。「SPEED」のような過激な滑りも、「CONTROL」のような強い抵抗もなく、あらゆる操作を高次元でこなす万能性が魅力だ。
滑り出しはスムーズでありながら、止めたい時には適度な摩擦がしっかりとアシストしてくれる。トラッキングでもフリックでも安定したスコアを記録でき、これぞ「優等生」という言葉がふさわしい。
突出した個性はないが、それはあらゆるゲーム、どんなエイムスタイルにも対応できるという圧倒的な強みでもある。自分のスタイルがまだ定まっていないプレイヤーや、複数のタイトルをプレイする人にとっては、最も賢明な選択肢だ。迷ったら、まずこの一枚を試せば間違いないだろう。
3. QcK Performance CONTROL:エイムが吸い付く。物理で止める制動力

「CONTROL」は、シリーズの中で最も強い制動力を持つ、完全にストッピング性能に特化したサーフェスだ。ザラっとした粗い織りの表面は、マウスの動きに対して明確な摩擦抵抗を与え、プレイヤーの意思をダイレクトに反映させる。
この強い摩擦が、ミリ単位の精密なマウスコントロールを可能にする。フリック系の武器で試した際、これまで感覚に頼っていたショットが、まるで強力なブレーキアシストが付いたかのように物理的に「止められている」感覚に変わった。行き過ぎてしまいがちなオーバーシュートが劇的に抑制され、エイムの安定感が向上するのをハッキリと体感できた。
低DPIで安定したエイムを求めるプレイヤーや、ヘッドショットラインを正確に維持したいタクティカルシューターの猛者にとって、これ以上なく頼もしい相棒となるだろう。ただし、UHMW-PEソールとの組み合わせでは摩擦が強すぎると感じる場面もあったため、PTFEソールなど滑りやすいソールとの組み合わせを推奨したい。
QcK Performance 3種 徹底比較

改めて、3つのモデルの特性を一覧で比較してみよう。自分のプレイスタイルや好みに最もマッチするのはどれか、見極めてほしい。
- | QcK SPEED | QcK BALANCE | QcK CONTROL |
---|---|---|---|
滑走速度 | ★★★★★(最速) | ★★★★☆(速い) | ★☆☆☆☆(遅い) |
コントロール性能 | ★★☆☆☆(難しい) | ★★★☆☆(標準) | ★★★★★(最高) |
滑走感 | 非常に滑らか。抵抗が少なく、ハード系パットに近い感覚。 | やや滑らか。標準的な布製パッドの感触に近い。 | 強い抵抗感。ザラつきのあるテクスチャで、マウスがしっかり沈む感覚。 |
推奨ゲーム | トラッキング主体 (Apex, CoD, Fortnite) | 両対応の万能型 (THE FINALS, Overwatch2) | フリック主体 (VALORANT, CS2) |
プレイヤー像 | 素早い視点移動と追いエイムを重視するプレイヤー | 特定のスタイルに特化せず、バランスを求めるプレイヤー | 精密なストッピングとマイクロフリックを極めたいプレイヤー |
メンテナンス性 | 高い(汚れや皮脂が目立ちやすく、頻繁な清掃が必要) | 中程度 | 低い(汚れが目立ちにくく、手入れが容易) |
一言 | 快適さと究極の“滑り”を両立したスピードスター | 伝統と革新を両立した、信頼のオールラウンダー | エイムに絶対の自信を与える“止め”のスペシャリスト |
この表が示す通り、3つのモデルに絶対的な優劣はない。あるのは、プレイスタイルとの「相性」だけである。「SPEED」と「CONTROL」は、正反対の目的のために設計された、完全に異なるツールだ。自分の長所をさらに伸ばすのか、それとも弱点を補い新たな強みとするのか。この選択こそが、自身のAIM力を次のレベルへ導くための一歩となるだろう。
QcK Performance クリーニング方法
最高のパフォーマンスを維持するためには、日々の手入れもプロの嗜みだ。どのモデルも布製である以上、長期運用で手垢や皮脂汚れが繊維に付着して滑走感に影響が出てしまう。公式サイト記載のクリーニング方法を参考に、自分の相棒を常に最高の状態に保とう。
QcK Performanceは、毎試合同じフィーリングを保証するために、入念なクリーニングが必要です。毛やゴミは、手や糸くず取りローラーで拭き取るか、ピンセットを使って丁寧に取り除く。特定の場所が汚れた場合は、水とマイクロファイバークロスで拭いてください。石鹸の使用は避けてください。
QcK Performance の気になる点 3つ
全体的に非常に高い完成度だと感じたが、購入を検討する上で気になった点もいくつかある。
1. "投資"クラスの価格設定

長年「安くて高品質」の代名詞だったQcKシリーズだが、その感覚で本製品の価格を見ると、思わず二度見してしまうかもしれない。一枚5,000円を超える価格設定は、従来のモデルが1,500円~2,000円程度で購入できたことを考えると、大きなジャンプアップだ。
もちろん、その品質と性能を考えれば納得できる部分もあるが、誰もが気軽に試せる価格でないことは確か。これはもはや消耗品ではなく、パフォーマンス向上のための「投資」と捉えるべき製品だろう。
2. プレミアムモデルらしからぬ、頑固な巻き癖
開封の儀は、ゲーマーにとって至福の瞬間だ。しかし、本製品は長方形のパッケージに丸めて梱包されているため、箱から出した直後から巻き癖との戦いが始まる。
最近のハイエンドマウスパッドが、巻き癖のないフラットパッケージを採用する傾向にあるだけに、この点は少し残念に感じた。
数日間はデスクの端が浮いてしまい、完全にフラットにするには逆側に丸めたり、重しを載せたりといった“おまじない”が必要になる。
致命的な欠点ではないが、プレミアムな体験を期待していると、少々もったいなく感じてしまうポイントだ。

3. モデルで異なる表面のメンテナンス性

最高のパフォーマンスを維持するには、相応のメンテナンスが求められる。特にデリケートなのが、圧倒的な滑走性能を誇る「SPEED」モデルだ。
その鏡面のようなサーフェスは、ホコリや皮脂、手汗の跡を吸い寄せやすく、汚れは見た目の問題だけでなく、滑りのムラ、すなわちエイムの一貫性の低下に直結する。
一方で、ザラついた「CONTROL」モデルは汚れが目立ちにくく、メンテナンスは比較的容易だ。この「維持コスト」の違いは、パッドを選ぶ上での重要な判断材料となるに違いない。
SteelSeries QcK Performance レビュー まとめ

あらためて結論を述べたい。QcK Performanceシリーズは、「全てのゲーマーに“自分だけの最適解”を提供する」というSteelSeriesの強い意志が体現された傑作だ。
近年、『VALORANT』の普及で精密なストッピングが、一方で『Apex』や『THE FINALS』のようなハイスピードバトルでは高速なトラッキングが求められるなど、ゲームごとに要求されるAIMが多様化している。そんな現代のFPSシーンに対する、SteelSeriesからの回答がこの「QcK Performance」なのではないだろうか。
これまで漠然と「滑る/止まる」で選んでいたマウスパッドを、「どのゲームで、どんなエイムをしたいか」という具体的な目的意識を持って選べるようになる。これは、上達を目指す全プレイヤーにとって、計り知れない価値を持つだろう。長かったマウスパッド探しの旅も、このシリーズの登場で本当に終わりを告げるかもしれない。



QcK Performance 製品仕様
製品名 | QcK Performance (SPEED / BALANCE / CONTROL) |
発売日 | 2025年3月21日 |
Amazon価格 | 6,480円(Lサイズ) / 7,980円(XLサイズ) |
保証期間 | 1年間 |
ベース素材 | 高密度ネオプレンゴム |
厚さ | 3.5mm |
本体サイズ | (長さ x 幅) Large: 490mm x 420mm / XL: 900mm x 400mm |
エッジ加工 | 薄型ステッチ加工 |
QcK Performance 製品仕様
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