先日行われた「ゲーマー国勢調査 2024-2025」で、ゲーミングPC部門の満足度・推奨度でダブルで1位受賞に輝いたサイコム(Sycom)。大手メーカーと比べて決してシェア率は高くないにもかかわらず、なぜ彼らはコアなゲーマーからこれほどまでに熱く、力強く支持されるのだろうか?
その秘密を探るべく、我々EAAは埼玉県八潮市にあるサイコム本社へ伺った。そこで、支持される理由や素朴な疑問、ゲーマーなら誰もが気になるPCの買い時まで、すべてをぶつけてきた。
結果、見えてきたのは、製品一つひとつに込められた熱い「ストーリー」と、ユーザーの「体験」を何よりも重視する、職人気質ともいえる彼らの哲学だった。
サイコム 第1位ダブル受賞記念インタビュー
埼玉県八潮市。ここに本社と工場を構えるサイコムから、日々ゲーマーたちの心を掴んで離さないBTO ゲーミングPCが生み出されている。


EAA:本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずはお二人の簡単な自己紹介をお願いします。
山田 正太郎氏(以下敬称略):株式会社サイコムのプロダクトマネージャー、製品企画の山田です。国内外のパーツの仕入れなども担当しています。
佐藤 明氏(以下敬称略):サイコムの佐藤 明と申します。マーケティングを担当しています。他にも色々やっているんですけどね(笑)。
EAA:元殺し屋の?!(『ザ・ファブル』の主人公は佐藤 明)
佐藤:初めてお会いする方には「本名ですか?」ってよく聞かれます(笑)
なぜサイコムは満足度・推奨度1位なのか?

EAA:失礼ながらサイコムさんのシェア率は決して高くはない中で、なぜNo.1の満足度と推奨度を獲得できたとお考えですか?
佐藤:サイコムの評判を検索すると「価格が高い」とよく言われますが、その理由は部品に妥協していないからです。その結果として「買って満足」していただくのはもちろん、色々なパーツを「細かく選べる」という点が、推奨度に繋がっているのではと思います。特にPCゲーマーは“道具”選びに妥協がない方が多いですよね。 そういった方々に、サイコムの品質やフルカスタマイズできる点が受け入れられているのだと思います。

山田:PCゲーマーと言っても、価格重視の方から性能を極めたい方まで様々です。EAAさんの読者層はコアなゲーマー、昔からのFPSプレイヤーといったアンテナ感度の高い人たちが多いはずです。そういう方々は価格だけではないところでPCを選ぶと思うんですが、そのレーダーに一番引っかかりやすいのがサイコム、ということなのかもしれませんね。
佐藤:ですので、今回いただいたような賞を前面に押し出していきたい、という気持ちはあります。 ただ、かといって「どうだ!!」みたいに自慢するのも、あまりやりたくないんです。 以前にも同様の賞をいただいたことはあったんですが、それを自慢するのがなんだか嫌でサイトの隅っこにひっそり載せていただけでしたね。
山田:それよりも、ユーザーの方に喜んでもらえるような記事だったり、ゲーマーの方に楽しんでもらえる記事のほうがほうが大切ですから。
佐藤:そうです。結局は、購入してくださったご本人が満足するかしないか。そこが全てだと思っています。
「サイコムしか勝たん」熱狂的なファンに支持される理由

EAA:サイコム PCへのコメントは「サイコムには感謝しかない」「サイコムありがとう」といった、ファンレターのような熱烈なコメントが多く散見されました。この強力な支持の理由はどこにあるのでしょうか?
佐藤:まず、一度買ってくれた方は次回もまた買ってくれます。これは非常に多い傾向です。何かしらの理由で一度他社製品に乗り換えたとしても、数年後に「やっぱりサポートが良かったから」と戻ってきてくれる率も高いんです。
実は、うちのお客様は平均年齢が40歳以上なんです。 特にアンケートに答えてくださる方に限れば43歳以上が中心ですね。 弊社が独自に行っている購入後のアンケートにも、「PCメーカーを迷った末に品質で選んだ」「裏配線の美しさで決めた」といった、PCをよく知る方ならではのリアルな声が日々届きます。 もちろん、ゲーマー全体の年齢層は10代から50代までと大きく広がっていますから、今後はもっと若い層の方々を取り入れていかなければいけない、というのが我々の課題です。
山田:自分が企画する時に意識しているのは、お客様に「わかってほしい」ということ。それは結局、すべてが「エクスペリエンス(体験)」なんです。例えば静音性や見た目、そして購入後のサポートです。PCトラブルは無いに越したことはありませんが、その性質上ゼロではありません。サポートさせていただいた際に「サイコムにして良かった」と思ってもらえるかが重要です。所有していること自体に満足感を得られるような、プレミアムな「体験」を提供したいんです。
EAA:その「静音性」へのこだわりは、具体的にどのような形で証明されているのですか?
山田:以前、静音PCの企画記事が大変ご好評をいただきました。そのコンテンツを作るにあたって客観的なデータが必要になったので、公的機関の無響室でプロの音響技師の方にデシベルを測定してもらいました。
技師の方のお話では、普段その施設は洗濯機やドライヤー、掃除機といった(音の大きな)生活家電の動作音を測ることがほとんどだそうで「パソコンの動作音を測りに来た会社は初めてだ」と言われました(笑)。

EAA:ところで、サイコムを自動車メーカーに例えるならどこになると思いますか?
佐藤:以前「光岡自動車」と言われたことがあります。分からなくもないですがちょっと違うかなと(笑)。
山田:自分は「アルファロメオ」かなと。アルファロメオには長い歴史とストーリーがあって、決して販売台数が多いわけではありませんが熱狂的なファンがいます。サイコムも同じで、製品には必ずストーリーがあります(※サイコム本社にも山田氏のアルファロメオが鎮座していた)。自分が企画する上で、シナリオがないものは絶対に売りません。「これ、誰が得するの?」といったPCは作らないんです。
今後の主流はコンパクトPC?職人にラインナップの方針を聞く

EAA:PCゲーマーの声には「デカいPCが好き」という意見と「コンパクトPCがありがたい」という相反するものがあります。サイコムでの売れ筋や、今後のラインナップ方針について教えてください。
佐藤:実はもう2年くらい前から、小型PCを売っていくアクションは取っています。今では「ミニタワー型ゲーミングモデル G-Master Spear mini」のようなコンパクトモデルが非常に売れていますね。正直、拡張カードやHDDを搭載する方は減ってきたので、ATXみたいな大きな規格は必要ないと思っています。
山田:2〜3年もすれば、フルタワーでゲーミングする人はかなり減るんじゃないかなと。CPUもGPUもどんどん省電力・高性能化していくので、PC本体は小さくなるのが自然な流れです。昔は水冷ユニットのために大きなケースが必要でしたが、今のmini-ITXケースは本当によくできていて、240mmのラジエーターが普通に搭載できますからね。

EAA:では、フルタワーを選ぶメリットはどこにあるのでしょう?
佐藤:もちろん、ロマンを求める方向けの選択肢は残していきます。うちで言えば、CPUとグラボを独立して水冷化する独自の「デュアル水冷」モデル。これはフルタワーならではのパフォーマンスと静音性を実現できます。本当に音にこだわりたい方向けの「静音モデル」もそうですね。タワー型だからこそできる、よりリッチなカスタマイズの魅力はまだまだあります。
「信頼は対応力で決まる」サイコムの“プロ”サポート体制

EAA:「サイコムはサポートがとにかく安心」というコメントも目立ちました。トラブル対応やカスタマイズ相談で「ここだけは負けない」というポイントはどこですか?
佐藤:本来、パソコンのトラブルはあってはならないものです。お客様にとっても、私たちにとっても望ましいことではありません。万が一問題が発生した際にどのように対応できるかが、信頼を築くうえで非常に重要だと考えています。
まず購入前の段階では、構成ミスが起きないような仕組みをWebサイトに実装してあります。例えば、特定のグラボを選んだら「電源は750W以上を選んでください」というアラートはもちろん、メモリを128GB以上にすると「Windows 11 Homeは対応していないのでProにしてください」といった細かいアラートも出ます。 自作経験はあるけど時間がない、というリテラシーのある方が安心して買える体制ですね 。
お客様が何かお困りの際には、電話やメールで親身に対応しています。ご対応するのは外部のコールセンターではなく、自社で経験を積んだ正社員スタッフですので、安心してご相談いただけます。
「この構成で大丈夫ですか?」という基本的なご質問から、「最近話題のIntel製CPUの不具合は影響ありませんか?」「グラフィックカードの発熱は大丈夫ですか?」といった専門的な内容まで、できる限り分かりやすくお答えしています。
購入後のサポート面で特に大事にしているのはスピード感です。修理品が届いた際には、原則2営業日以内の返送を目指しています。お客様のご経験に応じて、事前に交換パーツをお送りし、不具合のあった部品は後日ご返送いただくといった柔軟な対応を行うこともあります。
こうした対応が可能なのも、お客様との信頼関係を大切にしているからこそです。PCは精密機器ゆえにトラブルが起こることもありますが、そうしたときこそ「頼んで良かった」と思っていただけるような体験をお届けできればと考えています。
ゲーマーなら知りたい「PCの買い時」と「最新技術への対応」
EAA:ゲーマー国勢調査では、「PCの買い時が全くわからない」「PC価格の相場が分からない(現在の価格が安いか高いか)」という声をよく聞きます。ゲーミングPCメーカーとして、迷えるユーザーに何かアドバイスはありますか?
佐藤:結論から言うと「欲しい時が買い時」ですが(笑)、お得に買いたいなら夏と冬のセール時期は間違いありません! サイコムの場合は「〇万円引き」みたいな見せ方ではなく、「メモリを無償でアップグレード」といった、ユーザーのPCライフがより豊かになるようなキャンペーンを心がけています。これなら、浮いた予算でグラボを良くするなど、お客様がより満足できる構成を考える楽しみに繋がります。

EAA:購入を検討する上で、公式サイトの特徴はありますか?
佐藤:Webサイトにある「構成を保存してURLを発行できる機能」はご好評いただいています。 特にこの機能は、個人のお客様はもちろんのこと、法人のお客様に非常に好評です。 夜にご自宅で会社のPC20台分の構成をじっくり練って保存し、翌日に会社のメールアドレスからそのURLを送って見積もり依頼をいただく、といった使い方をされていますね。


EAA:NVIDIAやAMDの最新パーツ、DDR5メモリなど、新しい技術への対応方針はいかがですか?
佐藤:サイコムは新しいパーツが出たら、発売日には絶対に買えるようにしています。「タイム・トゥ・マーケット(※TTM / 製品企画から市場投入までの時間)」を非常に重視していますね。DDR5も今や主流ですし、常に最新の選択肢を用意しています。PCでしかできない体験、例えば配信しながらゲームをするなど、「ゲーム+α」の需要に応えるためにも最新技術の追随は欠かせません。
【特別モデル】今回のインタビューを記念したPCについて

EAA:今回のゲーミングPC満足・推奨度No.1ダブル受賞にあたって、記念のスペシャルモデルをご用意いただいたとのことですが、どのようなモデルなのでしょうか?
佐藤:サイコムの中でも売れ筋パーツ構成をベースにしたモデルで、製品名は「G-Master Velox Campio Edition 2025」です。CPUはRyzen 7 9700X、メモリは32GB、グラボはRTX 5070で、今のゲームで困ることはまずない、いわゆる“美味しい”構成になっています。
今回はゲーマー国勢調査アワード受賞記念モデルということで、本来であれば有償の「延長保証2年(計3年保証)」と「サイコムオリジナル ゲーミングデバイス3点セット」をお付けした上で、価格もなんとか30万円を切れるように設定しました。「パソコンメーカーサイコム」を知ってもらうきっかけになればと思います。


※製品名の「Velox」はラテン語で素早い・迅速といった意味で、「Campio」は同じくラテン語の戦士・格闘士・チャンピオンの意味。
サイコムファンやそうでない人に伝えたいこと

EAA:最後に、サイコムファンや購入を迷っているゲーマーにメッセージをお願いします。
佐藤:うーん...何がいいですかね。サイコムのことをアピールするのもなんだか違う気がするし……。
山田:(しばらく考えて)……死ぬ気でゲームしろ。
EAA:ぅおっ!?
山田:死ぬ気でゲームやりたいなら、必然的にタフなPCじゃないとダメですよね?「そんなヤワなPC買ってんじゃないよ!」っていうメッセージです(笑)
佐藤:もちろん、大前提として我々は常にお客様に感謝しています。その上での話ですが、せっかくサイコムのPCを選んでくれたからには、ぜひ死ぬ気でゲームに打ち込んでもらえたら嬉しいですね。僕らも死ぬ気で企画・検証しているので、ユーザーの皆さんにも全力で応えてもらえると作り手として本望です(笑)
ファン熱狂の理由は“職人の哲学”にあり
「ストーリーのないものは売らない」「トラブルはチャンス」「死ぬ気でゲームしろ」。
サイコムの強さは、単なる製品スペックや価格では測れない。ユーザーひとりひとりの「体験」を最大化するために、企画、製造、サポートのすべてに一貫した“哲学”が貫かれている。今回のインタビューではその哲学が熱狂的なファンを生み、高い満足度に繋がっているのだと感じられた。

なおサイコムはPCの製造・販売だけでなく、ゲームコミュニティを豊かにするための独自の活動も行っている。障がい者eスポーツを支援する「ePARA」との協業や、九州工業大学の「学生フォーミュラチーム」への高性能PC寄贈などだ。こういった社会貢献を行っているのも、愛される理由かもしれない。
またサイコムの技術者の方々にも話を聞いて、工場見学もさせてもらったが、感じたのはサイコム社員全員が極度の“職人気質”だと言うこと。例えるなら、「サイコム版スティーブ・ウォズニアック」が何人も社内にいるイメージだった。一人ではない。誰に話しかけても「飲みに行きましょう!」言いたくなる職人集団だった。
受賞記念モデル「G-Master Velox Campio Edition 2025」

そして今回、このインタビューを記念し、彼らの哲学と最新技術を詰め込んだ特別な記念モデル「G-Master Velox Campio Edition 2025」を用意してくれた。インタビューで語られた「ゲーマーに知ってもらうきっかけにしたい」という想いが込められた紫玉の一台だ。
その実力はいかほどか? 別記事では、この受賞記念モデルをレビューしてみよう。

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