SteelSeries(スティールシリーズ)は、ブランド初の最上級モデルとなるゲーミングヘッドセット「Arctis Nova Elite」を発表(Amazon)。10月17日の発売に先駆け、2025年10月10日にアート&テクノロジーをテーマにしたライフスタイル提案型家電店「二子玉川 蔦屋家電」にて開催された新製品体験会に、EAA!!も参加してきた。
今回の体験会で特に印象的だったのは、新開発のカーボンファイバードライバーがもたらす圧倒的な音質と、あらゆるライフスタイルに溶け込むその洗練されたデザインだ。本記事では、そんな「Arctis Nova Elite」体験会のミニレポートをお届けする。製品の詳細なスペックについては、こちらの記事を参照してほしい。
「アート&テクノロジー」に溶け込む、新次元のラグジュアリー
会場となった二子玉川 蔦屋家電は、家電だけでなくインテリアや本、雑貨などを通じてライフスタイルを提案する、アートとテクノロジーに満ちた空間だ。そこに設けられたSteelSeriesの展示ブースは、一見するとゲーミングデバイスの体験会とは思えないほど洗練されており、会場全体のラグジュアリーな雰囲気に自然と溶け込んでいた。

Arctis Nova Elite ブースギャラリー






試聴・試遊で体感する「Arctis Nova Elite」の実力
心臓部「カーボンファイバードライバー」を直接体験
体験会で最も衝撃的だったのが、「Arctis Nova Elite」の心臓部である「特注の2ピース真鍮製フレームを施した40mmカーボンファイバードライバー」が単体で展示され、なんと直接指で触れることができたことだ。

見た目にはハリがありつつも、指で軽く押すと「ペコッ」としなやかに凹み、すぐに元の形状へと復元する。この独特の感触は、音響特性を追求した結果生まれたものだろう。通常であれば決して触れることのでないヘッドセットの心臓部に直接触れるという体験は、ある種の背徳感すら覚えるユニークな展示だった。
質感と装着感:細部へのこだわり
ヘッドセット本体に触れてみると、その質感の高さも際立っていた。細部に至るまで高級感のある素材で構成されており、表面にはサラサラとした上質なコーティングが施されている。
本体重量は383gだが、手に取ると適度な重みはあるものの、実際に装着するとスキーゴーグル式のヘッドバンドと、柔らかさの中にもしっかりとした芯を感じるイヤークッションが巧みに重量を分散させ、数値ほどの重さをほとんど感じさせない。この快適な付け心地も、長時間の利用を前提とした設計思想の表れだろう。

Hi-Res音源と映画で感じる「音の粒」
会場中央には、Hi-Res音源を「Arctis Nova Elite」と既存のフラッグシップモデル「Arctis Nova Pro」で聴き比べできるブースが設置されていた。実際に聴き比べてみると、その差は明確に感じられた。Nova Proも素晴らしい音質だが、Nova Eliteが奏でるサウンドはさらに解像度が高く、どこまでも透き通るようなクリアさで一音一音の輪郭が際立つ。特にギターの弦を弾くような楽器の音は、その違いが顕著だった。
「音の粒がすごい」という表現がしっくりくるこの感覚は、既存の「Arctis Nova Pro」ユーザーにとっては、後戻りが難しくなるほど魅力的かもしれない。新次元のサウンドと言えるだろう。

また、ラグジュアリーな一部屋を再現した空間では、アクション/SF映画『トゥモロー・ウォー』を鑑賞できた。爆発音の重低音から細かな環境音までリアルに再現されるサウンドは、強力なアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能と合わさることで、まるで映画館のIMAXレーザーで鑑賞しているかのような深い没入感を生み出していた。

『Apex Legends』で試す実戦性能
FPSゲーマーとして最も気になるのは、やはり実戦でのパフォーマンスだろう。会場奥にはFPSゲーム『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』の試遊ブースが用意されていた。ここではスマートフォンのコンパニオンアプリ「SteelSeries Arctis Companion」を使い、イコライザー設定の違いを試すことができた。

このアプリで行った変更はヘッドセット本体(ハードウェア)に直接保存されるため、PCに接続した際にはPC用統合ソフトウェア「SteelSeries GG」の「Engine」タブにも設定が反映される。これはPCの仮想オーディオ機能である「Sonar」とは別の、ヘッドセット本体への直接的な設定変更となるようだ。
アプリに用意されたApex Legends専用のプリセットを有効にすると、他の銃声や爆発音に埋もれることなく、敵の足音がより聞き取りやすくなることを確認した。
驚異のAIノイズキャンセリングマイクを体験
マイク性能は、周囲で話し声が聞こえるような環境で、コンパニオンアプリ「SteelSeries Arctis Companion」からノイズキャンセリングのオンオフを切り替えながら録音テストすることで、より明確に体感できた。

まず格納式のブームマイクだが、こちらは音質も申し分なく、ノイズキャンセリングがオフの状態でも周囲の雑音をあまり拾わない印象だ。そしてオンにすると、会話音声がさらにクリアになる。
驚異的だったのは、ブームマイクを格納すると自動で切り替わる内蔵のオンイヤーマイクだ。ノイズキャンセリングがオフの状態では当然ながら周囲の音をすべて拾ってしまうが、オンにした途端、本当に自分の声以外は何も入らなくなる。
担当者によれば、公式YouTubeチャンネルでは「ヘリコプターの中やジェット機が近くを飛ぶ海岸線で会話しても、声だけをクリアに届けられる」ほどの性能を持つことが紹介されているが、その言葉に偽りはないだろう。また、自分の声がヘッドホンから聞こえるサイドトーン機能も、個人的には十分な範囲で調整可能だと感じた。
この性能には、思わず「TGS(東京ゲームショウ)でのインタビュー録音も、これで行いたかった」と感じたほどだった。
配信者も安心の音漏れ性能
配信者にとって気になるであろう音漏れについても、独自の方法でテストしてみた。ヘッドセットを最大音量に設定し、イヤーカップ同士を合わせるようにして膝で挟み、擬似的に装着状態を作り出したところ、その状態から耳を近づけてもごくわずかに音が聞こえる程度だった。
もちろん、大音量での長時間利用は推奨されないが、これはあくまで音漏れの限界を試すためのもの。通常より少し音量を上げて利用する分には、配信などで高感度のコンデンサーマイクを使用しても、ヘッドセットからの音漏れを拾ってしまう心配はまずないだろう。
担当者から聞く開発の裏側
ゲーミングの枠を超えたサウンド設計
担当者によると、SteelSeriesはかつて、2018年に発売された初代「Arctis Pro」シリーズで、ゲーミングヘッドセットとして業界初のHi-Fi(ハイファイ)対応を果たし、次いでソフトウェア「Sonar」を擁する後継の「Arctis Nova Pro」で新たな基準を打ち立てた。
そして今回の「Arctis Nova Elite」は、世界初の「Hi-Resワイヤレス」認証を取得。単なるゲーム用ではなく、音楽や映画鑑賞といったあらゆるオーディオ体験を最高品質で提供することを目指して開発されたという。
そのために採用されたのが、イヤホンでは採用例があるもののヘッドホンではまだ珍しい「カーボンファイバードライバー」だ。ゲーム用途であれば従来のネオジムドライバーでも十分高音質だが、より繊細な表現が求められる音楽や映画までカバーするために、この新ドライバーが必要だったとのことだ。
30万円の高級ヘッドホンとの比較
会場では、社内にいるというオーディオに並々ならぬこだわりを持つスタッフのエピソードも聞けた。彼は比較のため、私物のBang & Olufsen製ヘッドホン(約30万円)を持ち込んでArctis Nova Eliteと聴き比べたそうで、その感想は「本人からしても、これでも絶対いいと思います」とのこと。
担当者の話では、Bang & Olufsenのような高級オーディオブランドは、それぞれが目指す特有の「ブランドの音」というものが確立されている。一方でArctis Nova Eliteは、まず原音に忠実なフラットなサウンドを追求し、それをベースとしてソフトウェア「Sonar」でユーザーが自由に音をカスタマイズできる点に強みがあるという。
ゲームタイトルや音楽ジャンル、映画など、コンテンツごとに最適なサウンドプロファイルを適用できるのは、ゲーミングデバイスメーカーならではのアプローチと言えるだろう。
Arctis Nova Proからの物理的進化
従来モデルの「Arctis Nova Pro」では、イヤーカップ内側に小さな突起があり、長時間使用すると耳に当たって気になるとの声が一部であった。しかし、「Arctis Nova Elite」ではその突起が完全に無くなり、より快適な装着感を実現している。こうした細かな改善点からも、ユーザーのフィードバックを真摯に受け止める開発姿勢がうかがえる。

ハードウェア化がもたらすマイク性能の進化
先ほど体験した驚異的なマイク性能の背景には、技術的な大きな進化があった。従来モデルではPCソフトウェア「Sonar」を介してのみ利用可能だった高性能なAIノイズキャンセリング機能が、「Arctis Nova Elite」ではヘッドセット本体のハードウェアに直接搭載されたのだ。これにより、PlayStationやSwitchなどのコンソール機でも、PC同等のクリアな音声コミュニケーションが可能になった。
GameDACの利便性
付属のベースステーション「GameDAC」は、PC、PlayStation、Switchなど複数のデバイスを同時に接続し、音声のミキシングが可能。担当者からは、最近では「ゲームをしながらTikTokの音も同時に聴きたい」といった現代ならではのユニークな使い方をするユーザーもいるという話も聞けた。
GameDACのノブを回すことで、全体の音量調整だけでなく、ゲーム音と他のオーディオソースとの音量バランスを直感的に調整できるため、こうしたマルチタスクなリスニングスタイルにも柔軟に対応する。
専用キャリングケースとアクセサリー展開の展望
製品には質感の高い専用の持ち運び用キャリングケースが付属する。内部にはケーブルなどを収納できるジッパー付きのポケットもあり、高級モデルにふさわしい作り込みが感じられた。

アクセサリー展開についても言及があった。ユーザーからの要望が多いイヤークッション、ヘッドバンド、スピーカープレートをオプション品として販売することを検討しているという。カスタマイズ性の高さもArctis Novaシリーズの魅力の一つだが、その選択肢がさらに広がるかもしれない。

また、会場でヘッドセットを飾っていた専用スタンドも注目を集めていた。これは今回のメディア向けイベントのために特別にデザインされたもので、全世界で150個ほどしか制作されていない非売品だという。細部にまでこだわり抜くSteelSeriesの姿勢が垣間見える一品だった。

まとめ:ゲームの枠を超えたオーディオ体験へ
今回の体験会を通じて、「Arctis Nova Elite」が単なるゲーミングヘッドセットではなく、音楽や映画といったあらゆるエンターテインメントを高次元で楽しむための「プレミアム・オーディオデバイス」であることが強く印象付けられた。
ゲームにおける勝利を追求するだけでなく、日常生活における音の体験そのものを豊かにしたいと考えるすべてのユーザーにとって、Arctis Nova Eliteは有力な選択肢の一つとなるだろう。
Arctis Nova Eliteの詳細なスペックは以下の記事から確認してほしい。



FPS POWER TUNE


Source : Arctis Nova Elite
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