先週のアップデート6.2で武器環境がまたしても変化した『Battlefield V(バトルフィールド 5)』ですが、『BF3』の時代からデータマイニングを通して銃器の性能を明らかにし、プレイヤーに情報を提供し続けてきたSymthicコミュニティが現環境を詳しく解析しました。
本記事ではRedditでの投稿を行ったu/kht120氏とu/NoctyrneSAGA氏の文章をかいつまんでまとめるとともに、データ分析を行った両氏からみた現環境で強い銃器19本も紹介していきます。
6.2バランスの詳細解析 - kht210氏の意見
分析に入る前に、kht120氏の原文冒頭では元DICE LA勤務で競技コンテンツのプロデューサーを担当していたJojje Dalunde氏の5.2バランス実装時(氏は当時は既に退職済)のツイートが引用されました。
I wish I still had access to the data showing retention and churn of players in BFV. The 5.2 TTK update is almost certainly an attempt to make those KPIs perform better.
If we see a revert in Jan/Feb/Mar, the data probably looks worse in 5.2. If changes are kept, it worked.
— Jojje Dalunde (@Indigowd) December 6, 2019
『BFV』プレイヤーの維持率と離脱率を示すデータにまだアクセスできたらと思っているよ。5.2TTK(キルタイム)アップデートは間違いなくこれらのKPI(重要業績評価指標)を向上させるための試みだろう。もし1~3月にアップデートが取り消されたなら、多分5.2以降はうまく行かなかったということだろう。逆にそのままで済んだら、うまく行ったことになる。
Jojje氏の言葉を踏まえて現状の6.2バランスを見ると、一連の施策がうまく行ったかどうかはなんとも言えないところでしょう。6.2は5.0への完全回帰ではなく5.2の延長線上にある調整なので、遠距離環境の調整に関してはDICEはある程度の手応えを感じたと推測できます。
kht210氏も「多くのコンテンツクリエイターやコミュニティメンバーが文句を呈していたにもかかわらず、今回の調整はTTKの回帰ではなかった」と強調し、『BFV』のガンプレイ環境を取り巻く問題はまだ悪化の一途をたどっていると警鐘を鳴らしています。以下に氏の意見を要約します。
アップデート6.2は何をもたらしたのか
- アップデート6.2は総合的にはゲームにポジティブな効果をもたらした
- 自動式ライフル・セミオートライフル・ピストルカービンなどの全てのセミオート銃は5.0時代の強さを取り戻した
- ショットガンも公式は変更していないと説明したが、実際には5.0性能に戻っている
- 他の銃器もこれらの例に倣うべきだ
- SMGは5.0と比べ、20m以遠のBTK(キル弾数)が1増えた
- ダメージモデルは『BF1』のそれと近似しており、あまりよくない
- AR、LMG、MMGは5.0と比べ、30m以遠のBTKが1増えた
- ダメージモデルは5.0時のSMGと近似しており、これもよくない
- リコイルは全般的に5.0時代の強さに戻された
- ダメージモデルが5.0より悪化しているため、たくさんの銃は5.0時よりTTKが遅くなっている
- 総弾数は5.2時代のままで、この変更自体は素晴らしい。消耗戦のプレッシャーが弱くなった
- 個人的にはFPSを遊んでいるときは弾数の心配をせずに敵を撃ちたいので、この仕様は大歓迎だ
BTKが5.2.2より良くなったのなら、6.2の課題は?
- リコイルを5.0時代に戻してしまったのは大きな問題の1つ
- 5.0のガンプレイはリコイルとBTKのバランスに細心の注意を払って設定されたもの
- 5.0のリコイルなら、低レートのSMGのダメージは20m以遠で高レートのSMGを上回る(DICEスタッフによる証言)
- その上30mまで5BTKだったので、20~30mは低レートSMGのプレイ感が良かった
- 同じく5.0のリコイルなら、低レートのARやLMGは30m以遠で高レートの同カテゴリーを上回る(DICEスタッフによる証言)
- その上50mまでの5BTKは30~50mのプレイ感の向上に役立っていた
- 6.2ではリコイルとダメージモデルのバランスが崩れているため、しっちゃかめっちゃかになっている
- 低レート銃はリコイルによる得意距離とダメージモデルがかみ合っていないため、6.2で特に被害を被っている
- 6.2のSMGは20mまでが5BTKなので、高レートSMGの得意射程内のプレイ感は良い
- 逆に低レートSMGが精度によって高レートSMGののパフォーマンスを上回る射程ではBTKが6になるので、低レートSMGのプレイ感がとても悪い
6.2の問題を解決するには?
- 高レート銃の横反動と拡散値を増大するか、低レート銃の数値を減少するかによってBTKとリコイルのバランスを取り直すのは一応可能
- ただし高レート銃の反動はすでに非現実的で、プレイ感もつまらないレベルの大きさまで来てしまっている
- MG42を実射したことがあるが、『BFV』のよりもよほど反動が小さかった
- 高レート銃をこれ以上弱体化するのはナンセンスなので、低レート銃の強化が望ましい
- ただし低レート銃は既に拡散と反動がとても低いので、これ以上強化する空間が残っていない
- 個人的にはガンプレイ体験が細心の注意を払って調整されていた5.0のダメージモデルへの完全な回帰を提案する
- そもそも5.0の数値でさえまだ完璧ではなかった
- フルオート武器の最小BTK射程は10mだったが、Rotterdam, Narvik, Undergroundなど多くのマップの室内は10m以上の幅がある
- なので10mではプレイ感がイマイチだったが、最小BTKを15mに延長すればCQBのプレイ感は向上するし、低レート銃の強化にもつながる
- 最小BTKが15mに延長されても高レート銃のパフォーマンスはあまり変わらないが、腰撃ち精度が良好な低レート銃は大きく恩恵を受ける
- アサルトライフルは長らくセミオートライフルに競り負けていたが、最小BTK距離が15mまで伸びれば近中距離での信頼性がセミオートライフルに比べて大きく上がる
- 現状のSMGの20mまでが5BTKの調整は低レートSMGのパフォーマンスを大きく傷つけている
- 5.0時代は30mまでが5BTKでなかなか良かったが、これを35mまで伸ばせば低レートSMGはさらに輝くだろう
- 35mまでのBTKが5になれば低レートSMGは『BFV』での戦闘の75%を占める距離範囲でのパフォーマンスが向上するが、高レートSMGは精度が悪すぎるため特に強化されたことにならないからだ
武器のキルタイムチャート
kht210氏の原文には各銃器の極めて実践的なキルタイムのチャートも紹介されていました。チャートの注意点は以下の通りです:
- これらは自作の射撃シミュレーションで演算を10万回繰り返した集計データ
- シミュレーションには各銃器のレートや威力、拡散反動値、兵士の当たり判定が入力されていて疑似的な『BFV』環境を再現している
- 射撃設定は15連バースト射撃か、マガジンサイズが15以下だった場合はマガジンサイズ
- チックレートは60Hz(PC環境およびCS機の少人数モード環境)を想定
- 兵士のHPが0以下になった時点でキルを計測し、キルに掛かった弾数を計測するが、15連バーストは継続するので「1~15バーストそれぞれの致死性」の評価も可能
- 縦反動は完全に対応できている設定、つまり拡散と横反動値の影響しか考慮していない
- ADS静止時と腰撃ち移動時の設定を使用
- グラフのX軸は距離、Y軸は15連バーストでキルに成功した回数
- バーの色の濃さはそのテストランでキルに掛かった時間
- バー内に表示されている白字のU[FTK]はキルまでにかかったフレーム数の平均値
- グラフ上部に表示されている黒字のE[FTK]は15連バーストで仕留め損ねた回も計算に入れており、より実戦に近い数字
- 60Hzで計算しているため、FTKをTTKに換算する場合は小数点を繰り上げてから0.0167秒を乗算すれば良い
- 銃器ごとのグラフ4つのうち左側は専門技能の左ルート、右側は専門技能の右ルート。上側はADS、下側は腰撃ち
本記事では後文でkht210氏のおすすめ銃器を紹介する際に、それぞれ対応したグラフを切り取って紹介しています。他銃器のグラフが気になる方は原文をご参照ください。
キルタイムの分析
- 5.0のリコイルに無理やり新しいダメージモデルを合体させたので、低レート銃器の多くは割を食らっている
- M3グリースガン、MP40、Sten、Zk-383は30~75mのパフォーマンスは5.2.2よりも劣る
- これらの武器が本来得意とする距離や用途を考えると、600レート未満のSMGは軒並み弱体されたと捉えられる
- 高レート銃器もそれなりに削られている
- FG42やM2カービンは0~30mのパフォーマンスが向上したが、30m以遠のパフォーマンスは悪化した
- BAR(高レートモード)はほとんどの距離で5.2.2よりキルタイムや確殺率が落ちている
- 試製一型は『BF』シリーズの銃器ではSMG08以来の低精度となっており、10mの近距離でもキルに失敗することがある
- 試製一型の精度は大きく悪化したため、ダメージが向上したにも関わらずE[FTK]値は5.2.2とあまり変わっていない
- フルオート銃器は全般的に弱体されたと捉えられる
- TTKは5.2.2ととても似ているが、反動だけが強くなった
- 5.0の反動なのに、5.2.2と同程度の速度でしかキルできない
- BFVの現環境の「王者」はセミオート銃
- ファイアレートやダメージ値が5.0環境に逆戻りした
- 突撃兵のセミオートライフルは昔と比べると100m以遠でBTKが1伸びたが、この距離の交戦は非常に稀なのであまり関係ない
- セミオートライフルだけは5.0と全く同じ性能だと言える、現環境でこのカテゴリーの銃はハズレがない
個別の銃器に関して - NoctyrneSAGA氏の意見
kht120氏と共同でシミュレーションプロジェクトを行っているNoctyrneSAGA氏も、Symthicコミュニティのフォーラムにて別途一部銃器に関する意見を述べました。以下に要約します。
BAR(低レート)
- 最速キルフレームは36から22に大幅強化され、5.2.2よりは使用価値が上がったが、それだけしか良いところがない
- ダメージモデルがMadsenのそれから.30-06弾に統一されたため、50m以内のFTKは改善されている
- それ以上に距離減衰が痛いので、低レートモードの総合的な性能は下がっているといえる。遠距離での7BTKと6BTKはとても大きな差となるので、4-6BTK性能だったらプレイ感はよほど上がっていただろう
試製一型
- 元より確殺距離が短かったが、リコイルが強化されたため笑える程に信頼性が下がった
- 5.2.2では15m、今では10m内で縦反動を完璧に殺しきったとしても、15連バーストではキルし損なう可能性がある
- 15発で確実に目標をキルできる距離は5m以内に収まってしまった
kht120氏のおすすめ銃器と専門技能
以下はRedditスレッド内でkht120氏が現環境のおすすめだとしていた銃器を、対応した専門技能のFTKチャートのグラフとともに紹介します。
突撃兵
M1907 SF(右右右右)
- フルオート銃器の中では最良の一丁
- 反動が増加がそこまで痛くないし、マガジンサイズとバランスを取るためか横反動が小さめなので命中率もいい
- 5.2での唯一の欠点はダメージモデルだったが、それが解消されたので大きな欠点がない
Breda M1935 PG(右右右左)
- ワンバーストで敵を倒せる4BTK射程がまだ短すぎるきらいはあるが、それなりにいいキルタイムをもっている
Turner SMLE(左左左右)
- 5.0以前から強力な銃器の1つだったが、6.2では競合相手が軒並み弱体化したので相対的にさらに強くなった
- 良好な装弾数と比類ない中距離でのDPSはフルオート武器に大きく差をつけている
MAS 44(左左左右)
- Turner SMLEのほぼ平行互換
M1 Garand(左左左X)
- MAS-44のほぼ平行互換。重量弾を取ればG43の互換となる
Gewehr 1-5(右XX右)
- おそらく全『BFV』で最良の銃器
- 30m以降は4BTKに威力が落ちるが、フルオート武器が30m以遠はとても弱くなっているのであまり関係ない
- 10~30m範囲のDPSがとても高く、腰撃ちルートの専門技能を取れば10m以内の即応戦闘力も大きく上がる
- ダメージ、リコイル、マガジン容量、リロード速度、DPSが高いバランスでまとまっているため、サーバーを地獄に叩き落とすには最適な銃器
衛生兵
高レートSMG3種
- 試製一型(左左左右)
- Suomi KP/-31(左右右右)
- M1928A1(左右右右)
- 6.2バランスは20m以遠の全環境が軒並み弱いので、0~20mに特化したこれらの銃器は強力な選択肢
- Suomiは最良のダメージ、試製一型は最速のリロード速度、トンプソンは中間的な性能を持っている
MP28(左左左左)
- マガジンサイズが大きく、腰撃ち精度も良好なため、MP28は上記3種類の銃の互換だと言える
ZK-383(X左左右)
- 軽量ストックと軽量ボルトのおかげで、もう1つの互換となりえるだろう
ボルトアクションカービン2種
- M28 con Tromboncino / Jungle Carbine
- セミオートライフルと自動式ライフルが強化された影響でボルトアクションカービンは中距離での影響力が間接的に弱体したが、性能自体はまだまだいける
援護兵
ショットガン2種
- Model 37 / 12g Automatic
- 弾薬投げの必要性が下がった影響で、援護兵はより近距離での戦闘が求められるようになっており、ショットガンはこの距離でのエキスパートだ
Madsen MG(右右右右)
- フルオート銃器の中では最も遠距離適正が高い
- ショットガン以外のまともな銃で遊びたいなら突撃兵を遊ぶべきだ、強い銃目当てで援護兵を選ぶ意味はない
斥候兵
ZH-29(右右右左)
- 元から遠距離を完全制圧している王者だったが、余計強くなった
- 援護兵の7BTKしかないLMGは爪楊枝に刺されたぐらいにしか感じないのに、コイツは2発で相手を黙らせる
- ボルトアクションライフルの弾速強化はとても良いが、実用性が高いのは永遠にZH-29のままだろう
Model 8(右左左右)
- トリガージョブのファイアレートが224に戻ったおかげで、中距離のキルタイムがもっとも早い銃に返り咲いた
- リロードが遅いのとマガジン容量が小さいので使用自体は難しいが、純粋な性能は欠点を補って余りある
Trench Carbine(右左左右)
- P08 Carbineも強力ではあるが、このカテゴリーのコンセプトや得意距離を考えるとTrench Carbineの方が優秀
- ランク3右のフルオート専門技能を取ると運用がとても楽になるが、右左左右でADS移動と腰撃ち時の性能を両方強化するとパフォーマンスが大きく向上する
- P08 Carbineは比較すると75m以降のダメージモデルに優れるが、これらの銃器は弾速からしてその距離での戦闘を想定していない
見解
データマイナー集団Symthicの知名度は日本では大きくありませんが、武器のダメージや距離減衰などの詳細を求めてWikiを巡ったことは誰しも1回はあるのではないでしょうか。それらWikiの情報源の1つとなっていたのがSymthicのフォーラムとウェブサイトです。
その性質からデータの分析や解析が好きな凝り性の人間が集まる、どこかマッドサイエンティストの研究所のような印象もあったSymthic。そんな彼らが『BFV』内の環境を忠実に再現するシミュレーターを作ったと最初に聞いた時は筆者も耳を疑いました。
今回はSymthicコミュニティのうちの2人がシミュレーションの結果を携えて、珍しく外部フォーラムであるRedditで現状の銃器バランスに関する意見を公開した文章です。ただ「私はFPSをやる時は弾の心配はしたくない」と一蹴しているのを見るに、両氏ともBFプレイヤーとしては尖った意見の持ち主だと言えるでしょう。
おすすめ銃器も19本に絞られていますが、結局プレイスタイルや趣味、シチュエーション、個人個人のクセなどによって最適な銃器は変わりますし、強いとされている銃よりも自分が使っていて楽しい銃を見つけるのもFPSの遊び方。
ダメージチャートも拝見してみたところ、同カテゴリー内の得意距離はほぼ全ての銃器が6フレーム/0.1秒以内に収まっていると見受けられます。『BFV』は依然として武器の強さだけではなく、先んじて相手に発砲する立ち回りも重要となるゲームだと言えるでしょう。おすすめ銃器も参考程度に捉えたほうが良さそうです。
今回紹介した両氏の意見は、両氏がデータを見て思った感想でもあります。シミュレーションのデータ自体は全て公開されているので、『BFV』のバランスが気になる方はこれらを元に自分でも1つ考えてみるというのも面白そうですね。
『Battlefield V(バトルフィールド 5)』の発売日は11月20日で、対象機種はPlayStation 4、Xbox One、PC。
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Source: Reddit
コメント
コメント一覧 (6件)
結局の所、何がおすすめなん?
watasinoanarutoonajikanngaedesu
Symthicさんのサイトよく拝見させていただいてます。
無償で武器データを詳しく見れるのはありがたいですね。
武器バランスに関してはフルオート武器のBTKが増えたせいで、やはりセミオート武器が強く感じますね。
30m以内はフルオート武器より大きく不利になる調整になりますが、セミオート武器はファイアレートを下げた方が良い感じがします。
ようやく振り出し
個人的には弾薬ではなく武器種とレートをBTKの指標にしてほしい
700rpm以上の銃は同種の低レート銃と比較してBTKが5~10m手前で1発多くなるとか
同種同レートの銃は専門技能とリコイルで差別化するとか
ってなんで今更こんな議論になってんだよ・・・
近づくことが容易なのに高レート銃を過小評価しすぎだろ
よーいどん!の撃ち合いじゃないんだからさ
うーん…この人diceやめてて良かったと思うだけの記事だな