7月17日にリリースされた『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』を40時間以上先行プレイさせてもらった上で、いかにこのゲームが筆者の心に刺さったか、ストーリーよりもゲームプレイに重点を置いたネタバレなしの真剣レビューをお届けします。FPSではありませんががっちり真面目にレビューしたので、箸休めがてら覗いていってください。
歴史を知らなくても楽しめる
まず『ゴースト オブ ツシマ』をプレイするにあたってのバックグラウンドを解説します。 本作はこれまで『インファマス』シリーズなどを手掛けたSucker Punch Productionsが、かつて日本の「対馬」がモンゴル帝国に襲われた「元寇」に立ち向かう一人の侍の話となっています。 しかし、『ゴースト オブ ツシマ』は元寇をベースに独自のストーリーを作り上げているので歴史の知識は不要です。 ゲームの舞台となる対馬も現実のそれを参考にしていますが、一つの島に日本の様々な要素が詰め込まれているので現実の対馬とは別物です。
どんなゲームか?
本作の主人公は「境井仁(さかい じん)」というキャラクターです。対馬を守ろうと武家の侍達がモンゴル帝国の蒙古軍との戦いに赴きます。その侍達の中に「仁」もいるのですが、彼一人を残して侍たちは全滅してしまいます。 かろうじて生き延びた仁は、武士の戦い方だけでは対馬の民を守れないと痛感し、誇りを重んじる武士道を捻じ曲げてどんな手段を用いてでも蒙古を倒す「冥人(くろうど)」の道を歩むことを決めます。
このような設定があるため、仁は刀を使用し正々堂々と一騎討ちを申し込んだりと侍らしく戦えますが、同時に武士の誇りを捨ててでも茂みの中から暗殺したり、毒を用いるなどステルスゲームの立ち回りも可能です。 仁を侍らしく刀一本で敵を斬り伏せていくか、敵を闇討つ修羅となるかはプレイヤーの自由です。 なお、どのような戦い方をしてもストーリーに影響はありません。
https://www.youtube.com/watch?v=ZP3r3EAq5p0&feature=emb_titleロードは短い
筆者のプレイ環境はSSHDを搭載したPlayStation 4 Proなので、SSDより遅いがHDDよりは早い、といったところです。そんな環境でも『ゴースト オブ ツシマ』はロード時間が短いので、ゲーム再開時やファストトラベルによるストレスはありませんでした。
戦闘の仕組み
型の切り替えが重要
『ゴースト オブ ツシマ』の戦闘は基本的には“仁”一人に対して敵が数人で襲いかかってくる集団戦となっています。 敵にはガード値が設定されており、それを強攻撃で削りきらないと通常攻撃がなかなか通りません。 仁はモンゴル帝国に負けるまで、侍として刀と刀の戦いしか想定していませんでした、しかし、モンゴル帝国の兵士は盾兵や槍兵、巨漢の兵士など多種多様な兵種で溢れており、コレまでのやり方では歯が立たないことから、彼らの戦い方を研究することで新しい構えの「型」を覚えていきます。
「型」は敵の兵種に合わせて切り替えることで、強攻撃でのガード値の削りやすさが劇的に変わります。というより、有利の型以外ではガードを割るまでに時間がかかります。型の切り替えは瞬時に行えるので慣れてしまうと簡単です。そのため、一度に多くの敵が迫ってくるなかでどの型を選ぶかが肝になります。
https://www.youtube.com/watch?v=WotGxZuD0hw&feature=emb_title難易度は3種類
難易度はストーリーを楽しむことに特化した「優しい」、程々の戦闘の手応えがある「ノーマル」、敵が殺意に溢れる「難しい」の3種類が用意されています。 ゲームの難易度自体もいつでも変更可能です。 難易度によって敵の体力や攻撃方法に変動はありませんが、難易度を上げるほど敵の攻撃力や攻撃頻度が上がり、切り払いや回避によるカウンターのタイミングも難しくなります。
死にゲーではない
『ゴースト オブ ツシマ』の戦闘は集団戦が多いですが、雑魚敵はそれほど強くなく、敵の動きを覚えるまでは何度かやられると思いますが、最高難易度でも「死にゲー」となるほどの強敵もいません。 デスしてもアイテムロストといったペナルティはなし。 ただし『ゴースト オブ ツシマ』のボス戦は1vs1が基本となり、敵の戦い方に慣れるまでのボス戦は「死にゲー」となる可能性もあります。同じボスに何度も負けるとゲームが難易度を下げるか提案してきます。 なお、当サイトでは筆者ともう一人のライターがそれぞれレビューしましたが、二人ともあるボスは最初の壁という意見で一致しました。
成長要素は?
レベルの概念はなし
『ゴースト オブ ツシマ』に経験値といったレベルアップ要素はありません。また、敵のレベルが適正より高いから暗殺ができなかったりクエストを受諾不可といったこともありません。 極端な話をすると、仁はゲーム開始時点でラスボスを倒せる性能を秘めているわけです。
体力やスキルの成長要素はあり
レベルはありませんが成長要素はあります。 仁はクエストをこなしたりモンゴル帝国の拠点を制圧することで評判が高まります。この評判が一定まで上がることで「技量」というスキルポイントを獲得し、それを消費して新スキルや新しいアクションを覚えたりします。 先ほど紹介した「型」も解禁後は技量で強化ができます。 スキルの中には解禁しただけで効果が永続するものや、「気力」といういわゆるMPゲージを消耗することで発動するものもあります。 気力や体力は対馬に点在しているスポットを訪れることで強化ができます。 なお、体力は評判が一定まで上がった際にも上昇します。
『ゴースト オブ ツシマ』に「ハクスラ」要素はありません。 そのため、メイン武器は最初から所持している刀のみとなります。 仁はストーリーを進めることで弓や暗殺用の武具などの新しい装備を解禁していきますが、メイン武器は最初から所有している刀一本です。 これらの装備は該当するNPCを訪れることで強化して性能を上げていきます。 防具は性能を上げると見た目も変化しますが、性能はそのままに見た目を元に戻すことも可能で、さらに染色することでカラーリングも変更できます。
以上の通り、プレイヤーは仁の強化を最低限にストーリーをガンガン進めていくか、ストーリーよりも仁の性能強化を優先するか、それとも一切技量を振らない縛りプレイをするか自由に選べるわけです。
たっぷりのゲームボリューム
『ゴースト オブ ツシマ』メインクエストの「仁之道」とサイドクエストの「浮世草」が用意されています。 メインクエストは体感でトータル20〜30時間ほどあります。ストーリーの内容についてはネタバレを避けるために触れません。 一方でサイドクエストはとても簡単なものから、強力なスキルや防具が手に入るものもあります。 筆者はメインクエストをクリアしてからもずっとプレイし続けているのは、サイドクエストのボリュームが多いことと、真のメインコンテンツの魅力に取り憑かれてしまったからです。
真のメインコンテンツは「対馬」そのもの
『ゴースト オブ ツシマ』シングルキャンペーンのゲームなので、メインクエストを終わった時点でやめてしまう方も出てくると予想できますが、そこまでプレイした方の中には「対馬」の風景と没入感こそが本作の最大の魅力と気がついているはずです。
オープンワールドゲームでありながら、『ゴーストオブツシマ』にはミニマップもコンパスも用意されていません。 そのかわりに、タッチパッドを上にスワイプすることで発生する「誘い風」という風のエフェクトが目標までの道標となります。 これにより、余計なUIをゲームから排除することで、対馬の美しい景色と雰囲気への没入感を深めています。それが見事に作用しているおかげで、どこまでも景色に新鮮味を覚えられます。
Sucker Punchスタジオは『インファマス セカンドサン』でもアビリティのエフェクトの派手さと美麗さにかなりの力を入れていましたが、その技術を風景の美しさに詰め込んだことが伝わります。しかも、ゲーム内設定から最低限のUIのみを表示させたり、コントラストをよりクッキリさせる「ドラマチック」機能も用意するなど映像へのこだわりを感じ取れます。 「ドラマチック」機能をオンにすると、より日本の鮮やかな自然を表現した「対馬」を楽しむことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=sGGSdHcLjXk&feature=emb_title一方で、美麗な対馬に存在する村々の多くが、蒙古軍によって略奪や焼き払われていたり、生首の串刺や拷問を受けた死体が野晒しになっているなど、本作には表現規制がないので残虐性も表現されています。
映像へのこだわりはフォトモードにも反映されています。 撮影距離やフォーカスといった基本的な機能の他に、「蛍」や「紅葉」といったエフェクトの強度、風向きや風の強さまでも変更できるほど強いこだわりを感じ取れます。 ムービーシーン以外はいつでもフォトモードを起動できます。
また、開発チームが黒澤明監督の時代劇作品に影響を受けた「黒澤モード」では、画面が白黒になるだけでなくフィルムの汚れや傷も再現されています。「黒澤モード」を起動して驚いたのは汚れの再現だけではなく、ゲームの音質も下げて篭ったような音にすることで、まさに昔の時代劇映画の雰囲気を再現しているわけです。 ただし、単純にゲームとしてはUIが分かりにくくなったり、色鮮やかで美しい対馬の魅力が薄れてしまう部分があるのも否めません。 ですので、常にオンにしておく必要はありませんが、気分転換でプレイしてみたり、黒澤監督ファンには十分に価値があります。 この他、三池崇史監督の『十三人の刺客』の袖で刀の血を拭う納刀シーンもあるなど、時代劇へのリスペクトを感じ取れます。
このように、『ゴーストオブツシマ』は様々な面からゲームへの没入感を高める作りとなっていますが、日本を舞台にしたゲームのおかげで、日本のプレイヤーは海外のプレイヤーよりもさらに没入感を高めてくれる効果が用意されています。 それが「日本語ローカライズ」のクオリティです。
海外で指摘された日本語のクオリティは杞憂
先月、日本語版のメインメニューのスクリーンショットが掲載された際に、海外では「日本語のローカライズがおかしい」と指摘がありました。 この件が日本でも紹介されたことによって、日本語版がヘンテコな日本語ばかりになってしまうのではと不安の声も上がっていましたが、実際にプレイするとその不安は消し飛びます。
『ゴースト オブ ツシマ』は、SIE JAPAN Studioローカライズチームの坂井大剛氏がAAA作品のメインとしては初めてローカライズを担当し、同じくSIE JAPAN Studioローカライズチームの石立大介氏が監修されており、二人の努力のおかげで、古い言葉と現代的な言い回しとのバランスが取れた時代劇ドラマと遜色のない良質なローカライズに仕上がっています。
気になった2つの点「カメラワーク」と「ロックオン無し」
筆者は『ゴースト オブ ツシマ』をとても気に入りましたが、気になった点ももちろんあります。それは「戦闘中のカメラワークの悪さ」と「ロックオン」がない事です。
先述のように『ゴースト オブ ツシマ』は集団戦が多いのですが、このカメラワークに裏切られて不要なダメージを負うことが度々ありました。特に、背景の草木や建物にカメラがめりこんで何も見えなかったり、視野角が狭いのでカメラ外の敵を確認したくても、カメラの速度そのものが遅いので間に合わないことにはストレスを感じました。 集団戦が多いのにロックオン機能がないので、ターゲットを絞りづらい点も不満。 左スティックである程度の選定はできるのですが、あと1回斬ったら倒せるという場面で急に別の敵を攻撃したり、逆に後ろの敵を攻撃したいのに正面の敵を狙い続けていた事もあります。 せめてロックオンができたらカメラワークも気にならないのと思わざるをえません。
しかし、裏を返すとたったこの2点しか不満という不満はありませんでした。 それ以外は常に『ゴースト オブ ツシマ』を楽しめています。 しかも、刀の強化が進むと最高難易度でも敵をあっさり倒せるようになるので、これらに悩まされる前に戦闘が完了するようになるので、当レビューを執筆している時点ではこれらの点も緩和されました。
『ゴースト オブ ツシマ』総評
『アサシンクリード』シリーズを筆頭に、色々なゲームで培われてきた技術を導入しているので、オープンワールドゲームとしては斬新な作りというよりも安定した作りです。ミニマップとコンパスを排除したことで没入感を高める演出は成功していると思います。戦闘は欠点でも触れましたがカメラワークとロックオンがないことが気になったくらいで、未習得の型のせいで苦手だった敵が、有利な型を覚えた瞬間にあっさりと斬り伏せられるようになり仁が成長した実感や、カウンター成功により大ダメージを与えたときの爽快感も良し。 ステルス要素は敵のAIがあまり賢くないのでで『アサシンクリード』よりもり緩いと感じました。体感ですが、難易度を変えてもAIの検知範囲に変化は感じ取れませんでした。
2017年に初めて本作のリリースが告知された際には、「Sucker Punchとはいえ海外スタジオが作る日本が舞台のゲームは不安が残る…」と思っていましたが、いざプレイしてみるととても丁寧に日本の景色を取材して開発してくれたという努力と熱意が伝わりました。当然ゲームなので当時の日本
を正確に再現したわけではありませんが、世界観には大満足です。むしろ海外スタジオがこれほど日本を表現してくれたことは嬉しくもあります。
特にコロナウイルスにより遠出が難しい今、自然にあふれた世界を散策できることはストレスの発散にも繋がりました。筆者が日本に最後に帰国したのが10年以上前で、今年こそ一度帰国しようと思っていたらコロナウイルスのせいで帰国も難しくなった事もあり、日本の景色を散策できることは本当に心に刺さります。 癒しです。
筆者がこれまでプレイしてきたPS4用のシングルゲームで特に思い入れが強かったのが、『『inFAMOUS Second Son(インファマス セカンドサン) 』と『Horizon Zero Dawn(ホライゾンゼロドーン)』でした。 そして、『ゴースト オブ ツシマ』が新たにこの名作リストに追加されました。 良質なシングルプレイヤーゲームを求めている方はプレイして損をしないゲームであることは間違いありません。
【余談】侍ゲーなのにEAA‼︎がレビューしていいの?
当サイトEAA!!はFPSゲームサイトです。 『ゴースト オブ ツシマ』にはアサルトライフルやサブマシンガンは当然出てきません。それっぽいものというと、せいぜい「弓」とグレネードの先祖の「てつはう」くらいです。 それでもTPSでありFPSではありません。
では、「本作をレビューする資格がEAAにはないのでは?」という思いを抱く事もあるかもしれませんが安心してください。 隙間をくぐるときはFPSです! つまり当サイトが神ゲーと呼べる『ゴースト オブ ツシマ』をレビューしても問題がないのです!
日本を舞台にした日本への愛が溢れるオープンワールド時代劇アクションアドベンチャー『Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)』の発売日は2020年7月17日。FPSでの激しい戦闘疲れた際に、癒やしと爽快感を求めてプレイしてみては?
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コメント
コメント一覧 (9件)
多対一の剣戟を表現するためのロックオン無しのコンセプトを理解してないのが残念。
ロックのズレはレバーから指離してるからでしょ、攻撃対象にLスティックを入れながら斬るだけで自動ロックはズレない。
隙間くぐるときFPSになるのメタルギアを思い出すなぁ
彼残して全滅とかネタバレすんなよ
本の裏とかに書いてある軽いストーリー説明でキレてそう
製作者の日本愛が伝わってくる作品でいいと思う
同じ日本人として誇りに思うしこれを機にもっと日本の事が好きになってくれる外国人が増えたらいい
素のままだとロードが短過ぎてTipsが読めないからあえてロード時間伸ばしてるらしいな
それでも短く感じるから凄いな
確かに、「FPS専門の看板を掲げているサイトで他ジャンルのゲームレビューをしていいの?」って一瞬思ったんですが、番外編のようなものと思えばこれはこれで。
(難しいとは思いますが、第一弾の先行レビューのようにFPSゲーマーならではの視点、みたいなのがあったら差別化できて面白そうですね)
もちろん、ジャンル問わずで節操なしに大作ゲームばかり紹介するようになったらちょっと鼻白んでしまうと思いますが……。
それはないので安心してください!
あくまでFPS/TPS主体で、たまには息抜き記事もいいかなというスタンスです。
eaaって何に対しても上から目線だよな
これだからyoutube登録者少ないのも納得するわ