『Overwatch(オーバーウォッチ)』の魅力的な楽曲を視聴できるサウンドトラック「Overwatch: Cities & Countries」の公開を記念して、『オーバーウォッチ』シリーズの作曲家Adam Burgess氏と音楽ディレクターを務めているDerek Duke氏に独占メールインタビューの機会を得ることができました。
音楽制作の難しさと楽しさ、オーバーウォッチの驚くべき作曲秘話、『オーバーウォッチ2』に関するちょっとしたお話など、オーバーウォッチプレイヤーにとって非常に興味深い内容となっています。ぜひご覧ください。
オーバーウォッチの音楽
EAA:本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは簡単な自己紹介をお願いします。
Adam:Blizzard Entertainmentで作曲を担当しているAdam Burgessです。
Derek:同じくBlizzard Entertainmentで音楽ディレクターを務めているDerek Dukeです。
『オーバーウォッチ』について
EAA:オーバーウォッチで使用されている楽曲を作成する上で最も意識、注意した点はどの様なところでしょうか?
Adam氏とDerek氏:Overwatch: Cities & Countriesで皆さんに聞いていただいている楽曲については、聞いていただいた人にまるでオーバーウォッチの世界に飛び込んでしまったかのような刺激を感じてもらいたいと願いを込めて制作しました。また、楽曲を制作するにあたって、第一に「オーバーウォッチらしさ」を音楽で表現するということを理念に置いていました。
Adam氏とDerek氏:オーバーウォッチそのものに私たちは未来の可能性や向上・ポジティブといった印象を持っています。そのため、私たちはそれぞれのマップの音楽にもエネルギッシュな印象を持たせ、皆さんに高揚感やワクワクを持って戦いに臨んでもらおうと考えました。皆さんが共に戦うヒーローを選択している際、音楽を通じてそういった高揚感やワクワクを感じていただければ幸いです。音楽に独特で興味深い印象を持たせるため、それらに伝統的な味を織り込むことも重要視していましたが、やはり「オーバーウォッチらしさ」を持たせることが私たちの中で最も重要だったのです。
EAA:Overwatch:Cities & Countriesで公開された楽曲を聴いたところ、マップ決定時(移動時)に流れる2パターン(サイドにより異なる)の曲が1つの楽曲に両方含まれていると思うのですが、これは最初から分割して使用するつもりで作られたのでしょうか?
Adam氏:どのマップにおいても、普段皆さんにプレイ中聞いていただいている尺よりもかなり長い尺で楽曲を制作しています。出来上がった長い尺の楽曲をマップ移動時などのシーンに合わせて短く編集しています。ゲーム内でマップの楽曲が流れる際、楽曲の始まりから終わりまで20秒しか流すタイミングがなかったため、私たちは2パターンの楽曲を制作することにしました。
Adam氏:Overwatch: Cities & Countriesでは初の試みとして、これまで普段聞くことのできなかったフル尺の楽曲を楽しむことができます。「リアルト」がその良い例で、フル尺でないと楽しむことができない様々な感情やメロディー、そして演奏技法が含まれていますので、ぜひ意識して聞いてみてください。
Rialto | Overwatch: Cities & Countries
https://www.youtube.com/watch?v=rIFwrFuVaCc
EAA:どの楽曲も素晴らしい出来だと思うのですが、中でも良くできた、傑作と思う楽曲はありますか?
Derek氏:Blizzconを始め、様々なシーンで発表してきたこれら全ての楽曲は私たちにとって大切な思い出のようなもので、一つを選ぶことは難しいですね。このアルバムを聴いているとまるでこれまでの思い出を辿る旅に出るような感覚になります。オーバーウォッチを愛する皆さんにも、このアルバムを通じて私たちと同じようにこれまでのオーバーウォッチでの思い出を思い出してもらえると幸いです。
EAA:オーバーウォッチで使用されている楽曲の作曲秘話、誕生秘話があれば教えて下さい。
Derek氏:「ブリザードワールド」にまつわる面白い話があります。実は、その楽曲は他のタイトルに貸し出されるというオーバーウォッチでは初の試みを実施しました。また、そのマップが完全に空想上の存在であることも興味深い点です(そのテーマパークが実在すればいいのにと切に思っています)。この楽曲の後半部分はWorld of Warcraftの数多くのクラシックなテーマソングを合成して制作されており、複数のテーマソングがレイヤーのように重ねられています。耳を澄まして聞いていただき、重ねられているレイヤーを解いてみてください。そうするとWoWの「タイトルテーマ」、「A Call to Arms」、「Illidan」そして「Stormwind」等の異なる要素が組み合わさっていることに気が付くかと思います、しかしこの楽曲全体を俯瞰して聞くと、オーバーウォッチらしい楽曲に自然と感じることができると思います。Blizzardファンへ贈るイースターエッグのようなものです。オーケストラとコーラスを収録した瞬間、全てが一つになったような感覚に陥り、私たちは本当に興奮しました。
Blizzard World | Overwatch: Cities & Countries
https://www.youtube.com/watch?v=nFRl9IKBDgY
EAA:個人的に好きなヒーローとその理由を教えて下さい。
Adam氏:メイがお気に入りのヒーローです。彼女が持ち前の元気っぷりや何事も受け入れる優しさで正義を貫き、どんな恐怖や障害も乗り越えようとするその姿勢に感銘を受けました。しかし、ゲームプレイ的な要素で言えば、ジャンクラットをプレイすることが多いです。
作曲活動、アーティストについて
EAA:こういった楽曲は「不意に思いつく」(噂に聞く「降りてくる」)ものなのでしょうか、それとも「今から作るぞ」と意気込んで作るものなのでしょうか?
Derek氏とAdam氏:マップによって異なりますね。また私たちに限らず、皆さんも様々なきっかけがあってインスピレーションを受けることがあるかと思います。私たちの場合、マップのアートワーク、各国の歴史、伝統音楽、現代ポップカルチャーなど様々なコンテンツに影響を受けながら楽曲を制作しました。「ハリウッド」の楽曲がTaylor SwiftとNine Inch Nailsから大きなインスピレーションを受けながら制作されたことを聞かされると、恐らく皆さんも驚かれるでしょう。一見妙にも見えるアイデアであっても、それを追求したという想いがあれば結果として正しい道へ導いてくれることがあります。だからこそ私たちは常に何事に対しても柔軟でいることを心掛け、何でも挑戦したいという気持ちでいることが重要だと思っています。
Hollywood - Cities and Countries | Overwatch Theme
https://www.youtube.com/watch?v=u0C75pQv3KE
EAA:オーバーウォッチの作曲を行い、やりがいを感じるのはどういったときですか?また、それらやりがいの他に仕事へのモチベーションを維持するためにしている事などはありますか?
Adam氏:シネマティックトレーラーの制作は他の開発作業と比べ、徐行運転の乗用車かのような慎重かつ時間をかけて行う作業で、私は挑戦のようなものだと感じています。私たちはラフのアニメーションになる前の絵コンテを見ながらまずは音楽のアイデアの創出から始めたりします。初めから全体像をつかむことは難しいかもしれませんが、トレーラーの制作が進み様々な要素が追加されるのと同時に楽曲も完成へと近づいていきます。反復作業になってしまうことも多々ありますが、最高のコンテンツを制作するために私たちは喜んで何度でも挑戦します。こういった挑戦を克服し、最高のコンテンツを制作できた時こそ私たちにとって最高の瞬間です。Derekと私は音楽制作を愛しています、そしてBlizzardがこれまで築き上げてきたこの刺激的なタイトルに関わることができ、とても幸運だと感じます。モチベーションやインスピレーションはオーバーウォッチの世界から受けることが多々あります。
『オーバーウォッチ2』について
EAA:自身が関わる『オーバーウォッチ2』での作業はどの程度完了していますか?また、1との違いとして注目してほしいポイントなどはありますか?
Adam氏:『オーバーウォッチ2』には膨大なストーリー要素が含まれています、そして私たちは音楽という側面からどのようにしてたくさんのミッションが秘められているストーリーを引き立てることができるのか試行錯誤を繰り返しています。『オーバーウォッチ2』では、これまでのオーバーウォッチにはなかったインゲーム音楽へのアプローチ方法を採用しています。それが一体どのような方向に向かっていくのか非常に楽しみですし、来る日により多くの情報を皆さんにお届けできることを楽しみにしています。
EAA:今後の目標や課題などはありますか?
Adam氏:私たちは現在『オーバーウォッチ2』の開発に全力を尽くしています、そして私たちに作ることのできる最高の音楽をお届けしたいと思っております。それが大きな目標であり挑戦でもあります。
最後に
EAA:ありがとうございました!最後に日本のオーバーウォッチファンへ一言お願いします。
Adam氏:お話しすることができとても光栄です。私たちは日本が大好きで、日本のヒーローの皆さんのことも愛しています。私たちはいつも皆さんに強く支えられています、そして『オーバーウォッチ』への愛を強く表現してくれています。皆さんのような素晴らしいヒーローがいてくれて、本当に嬉しく思います。私たちが楽しみながら「Overwatch: Cities & Countries」を制作したように、皆さんにも楽しんで聞いていただけることを祈っています。
インタビューを終えて
今回、メールインタビュー形式ということで、ある程度返答を想定しての質問を行ったつもりでしたが、想定を上回る愛情と情熱を持って音楽制作に取り組まれており驚かされました。また、ゲーム性やヒーロー達の魅力などと同じように、ミュージックもオーバーウォッチを支える大切な要素だと再確認する良い機会となりました。
「Overwatch: Cities & Countries」をまだ聴いていない方や何気なく聞き流していた方は、ぜひ今回のインタビューの内容を踏まえて聴いてみてください。今まで気付かなかったオーバーウォッチミュージックの魅力を発見できるかも知れません。
Opening | Overwatch: Cities & Countries
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