中国最大のコングロマリットとして知られるテンセントは、『レインボーシックス シージ』や「アサシンクリード」シリーズなど数多くの人気作を手がけるフランスUbisoftに約3億ドルの増資を行い、同社の議決権を9.99%に引き上げました。背景には中国におけるモバイル事業での提携がうかがえます。
テンセントがUbisoftに約3億ドルの増資
現地時間9月6日、中国最大のテクノロジー・コングロマリットとして知られるテンセントは、フランスに本社を置くゲーム企業Ubisoftに対し、オーナー企業であるGuillemot Brothers Limitedを通じて約3億ドルの増資を行なったことがUbisoftのリリースから明らかになりました。このうち約2億ドルが株式の取得に、約1億ドルが増資にあてがわれ、テンセントはGuillemot Brothers Limitedの49.9%の株式と5%の議決権を取得したことになります。
今回の締結によりテンセントは、Ubisoftに対しても保有する株式および議決権を従来の4.99%から9%に高めました。その一方で、テンセントは取得した株式を最低5年間は売却できず、8年間はその株式保有比率および議決権を9.99%から引き上げることはできない内容となっています。
なお、Ubisoftの経営権は引き続きGuillemot Brothers Limitedが保持し、テンセントが業務上の拒否権を持つことはありません。Guillemot Brothers Limitedの経営権についても引き続き、Ubisoftの創業者であるGuillemot氏およびその一族側が保持し、テンセントはその取締役会に参加せず、同社事業に対する同意権や拒否権を持ちません。
モバイル事業で提携か
テンセントは現在ライアットゲームズの親会社であり、さらにはEpic Gamesの株式を40%保有しています。とりわけFPSの世界においては、ライアットの『VALORANT』人気の高まりを踏まえると、今後の界隈の発展を測るうえでは決して無視できない存在です。
Ubisoftへの増資に関し、テンセントのMartin Lau社長は、「Ubisoftが引き続き没入型のゲーム体験を開発し、同社の最も著名なAAAタイトルのいくつかをモバイル版に移植するなかで、創業者であるGuillemotファミリーとの関わりを拡大できたことを嬉しく思っています」と述べており、Ubisoftとともにモバイルゲームに注力したい意図がうかがえます。
Ubisoftのモバイル事業といえば、現在も『レインボーシックス シージ』のモバイル移植作品である『レインボーシックス モバイル』や、『ディビジョン』シリーズのモバイルタイトルとなる『ディビジョン リサージェンス』を開発中で、今後も事業拡大が見込まれています。
9月11日午前4時から配信される「Ubisoft Forward」でも何らかの最新情報が発表されることを踏まえると、Ubisoft Forwardの直前にリリースされたテンセントによる増資が、何かの伏線となるのかもしれません。
中国シージの再開発なるか?
『レインボーシックス シージ 』eスポーツ競技シーンの報道・統計データを取り扱うSiegeGGでは、今回の増資により、現在は巨大な空洞状態となっている「中国シージ」の再開発が行なわれる可能性に触れています。
とりわけ日本を含むアジアでのシージeスポーツは、これまで公式世界大会の最高順位が4位(野良連合による2019年の記録)で、チャンピオンの座には未だ縁がありません。先週から今週にかけては、APAC South(台湾、東南アジア、オセアニアのリーグ)にチームを有するeスポーツ団体、ChiefsとInvictus Gamingがそれぞれシージからの撤退を表明しており、暗雲が立ちこめている最中にあります。
テンセントと連携し、中国シージ界をAPACに招く流れとなれば、アジア勢の存在感は否応なく高まることでしょう。
しかし中国のゲーム産業は当局から好意的には見られていないのが現状で、気がかりなところです。また、「中国版シージにはアートワークに検閲が必要で、他国のシージのアートもこれに沿って変えられるかもしれない」といったトピックが2018年に話題となりました(参考:Gadgets 360)。これらの争点が再び掘り返されるとなれば、やはり多難が予想されます。
投資家は失望も、プレイヤーからは好意的な声も?
2022年のゲーム業界は、ここまで大きな動きが立て続けに見られています。
1月にMicrosoftがActivision Blizzardの買収を発表したことを皮切りに、2月にはSONYが『Destiny 2』開発スタジオのBUNGIEの買収を発表。2022年の上半期は、Electronic Arts、任天堂、Ubisoftなど、その時点で大きな動きが無かった他の世界的ゲーム企業についても数多くの噂話が飛び交いました。
テンセントに関しては、子会社のSixjoy Hong Kong Limitedが、「ソウルシリーズ」で知られるフロム・ソフトウェアに出資し、新株発行を受けて16.3%株主となったことが先日報じられたばかりです。
こうした流れの中でUbisoftもテンセントとの大きな発表したのですが、投資家はこれを好意的には受け止めておらず、現地時間9月7日の市場ではUbisoftの株価は前日比マイナス17%と大幅下落し、いわゆる「投げられた」形となりました。
この下落は、5月ごろにUbisoft買収の噂が流れていたことと関連があるようです。CNBCは、テンセントがその経営権を取得するのではなく、議決権の9.99%への引き上げという小規模なものに留まり、かつ今後8年はこの議決権を引き上げられず完全買収の可能性がほぼ消えたことが投資家の失望を招いたと分析しています。
しかし投資家よりも、実際のプレイヤーからの反応の方が重要です。SNSでは、世界的に勢力を増す中国企業に業界を支配されることを警戒する向きもあるものの、「テンセント→ライアット→VALORANT→より信頼できるアンチチートシステム(Vangurad)がある→シージにもVanguard導入?」といった連想で、シージのアンチチートの進化に期待する声も見られます。シージも他の人気タイトルと同様チーターに悩まされていることから、テンセントの出資が何らかの助けになれば幸いでしょう。
テンセントによる今回の増資が、結局のところどの層に利するのかは現時点では不透明ではあるものの、より多くのプレイヤーにとってのゲームプレイ体験が、より快適になることを願うばかりです。
- タイトル:Rainbow Six Siege(レインボーシックス シージ)
- 発売日:2015年12月10日
- 対象機種:PS5, PS4, Xbox Series X|S, Xbox One, PC(Steam)
Source: Ubisoft
コメント
コメント一覧 (5件)
これでアークナイツのシージコラボイベント復刻してくれたら嬉しい
あのコラボシージ側には何も無かったけど、源石チャームくらい入れて欲しいわね
世界観崩壊?今更シージやってる奴がそんなもの気にしてない
特殊部隊の訓練がスポーツとして民衆の見せ物になってる時点でマトモじゃないから世界観気にする人はとっくに辞めてる...
アンチチートが導入された所でプレイヤーが戻るかって言われたら、多分戻らない。Y7迎えたし、もうそろそろ無料化でもしないとプレイヤー離れは深刻。バトルパスもあるんだし。(F2Pになってもバグまみれ&FPS屈指の低民度ゲーに誰が来るのか...)
有料ゲーより無料ゲーの方がアンチチート強いのはおかしい話で、チーターがいないのが本当は当たり前。しかもVALORANTはバグが少ない。そりゃプレイヤーは離れる。UBIはシージの世界観ぶち壊しのクソみたいなスキン作るリソースを、バグ修正とチート対策に大きく振るべき。だけど今回の買収でファッション特殊部隊化は更に進むだろうと思うと、もう本当にオペレーター100人計画なんか無理よ。天国のkixstarも辛いで。悲しい。
早くアリバイのホログラムにスキン適応させろ。技術的に無理って宣言してもさすがに4年経つぞw手抜きって思われても仕方ないよ。
自身の意見なのか周りが言ったことにしたいのかこれもうわかんねえな
故人の名を持ち出して利用するのはどうかと思います。