- EAA独占インタビュー第1弾「【独占】ニキータが明かすタルコフ1.0の本音「もっと◯◯だった」新作『Fragmentary Order』の行方も」
ハードコアFPS『Escape from Tarkov(エスケープ フロム タルコフ)』を手がけるBattlestate Games(以下、BSG)のゲームディレクター兼COO、ニキータ・ブヤノフ(Nikita Buyanov)氏が、EAA!!の独占インタビューに応じてくれた。第2弾となる本記事のテーマは、タルコフの根幹をなす「銃器と装備のデザイン哲学」だ。
なぜタルコフの銃はあれほど「重い」のか。なぜポーチの配置ひとつまでリアルなのか。武器の摩耗やジャム、アーマーの劣化といった、競技系FPSが避けがちな要素をあえて入れる理由とは。開発の最前線にいる本人の言葉から、その答えを掘り下げていく。
- 3行まとめ
- BSGのニキータ・ブヤノフ氏が語るタルコフの銃器・装備デザイン哲学
- 開発チームには射撃場に通うアニメーターや銃器オーナーが在籍
- 武器の摩耗・ジャム・アーマー劣化は「戦闘シミュレーター」として不可欠な要素
タルコフの銃は「現代の架空紛争でのリアリティ」から選ばれていた
タルコフには、戦術志向のモダンライフル「Radian Model 1(レイディアン モデル ワン)」から、狩猟用途の「Marlin(マーリン)MXLR」、さらには先日実装がほのめかされた希少なH&K G11まで、実に幅広い背景を持つ銃器が包括され登場する。

Radian Model 1は2025年のリリース前後に実装され、コミュニティで「M4を超える」と話題をさらった5.56mmのAR-15系プラットフォーム。一方でレバーアクションのMarlinは、ハイテク装備が飛び交うタルコフにあって、いぶし銀の存在感を放つ。これらの銃をどんな基準で選んでいるのか。この問いに対しニキータ氏は、「選定基準が時間とともに変化してきた」と明かした。

開発初期、最優先の基準は「現代の架空紛争という文脈における絶対的な真正性」だったという。だが時間が経つにつれ、そのアプローチは拡張されていった。ユニークなもの、人気のあるもの、歴史的に魅力的なもの。紛争地帯に現実的には広く出回らないような、G11のような希少な例まで含まれるようになった。
ここでG11が引き合いに出されているのが、銃器好きにはたまらないポイントだ。H&K G11は、薬莢を持たないケースレス弾(無薬莢弾)を採用した伝説的なアサルトライフル。1980年代に西ドイツが次世代小銃として開発を進めたが、ドイツ再統一と冷戦終結のあおりで量産化されることなく姿を消した、いわば「実用化されなかった未来」だ。


「今日のタルコフは、ほとんど武器のデジタル百科事典として機能しています」とニキータ氏。現在の選定プロセスは、この百科事典的なライブラリを美しく補完し拡張する銃器を見つけることに焦点を当てているそうだ。希少な銃が次々と実装される背景には、こうした思想の変遷があったわけだ。
実銃の世界では博物館級のレア銃が、こうしてゲーム内で撃てるのだから、「武器のデジタル百科事典」という表現も大げさではない。

ポーチ配置のリアルさは「徹底的なリサーチ」と「サバゲープレイヤー」が支えていた
ゲーム内のタクティカルリグのポーチ配置や小物の収まり方は、本物の運用を知る人間が作ったとしか思えないリアルさがある。ここにどんなこだわりがあるのか。

ニキータ氏によれば、「開発チームはベテランのプロフェッショナル、筋金入りのギアマニア、そしてタクティカル装備の実地経験を持つ現役エアガンプレイヤーで構成されています」という。「私たちはただ推測しているわけではありません」と語り、「オンラインでの徹底的なリサーチと実物の分析を行い、ひとつひとつのポーチやアイテムの配置が実際の運用上の利便性を反映するようにしています」と説明した。タルコフのような深く没入感のあるゲームにとって、その「粒度のリアリズムは絶対不可欠」だとする。




「重さ」の秘密は射撃場通いとアニメーターの実体験にあった
タルコフの武器の取り回しには独特の「重量感」がある。リロードやボルト操作のアニメーション設計には何が参照されているのか。そして開発チーム内の軍事経験や銃器知識はどれほど影響しているのか。
ニキータ氏の答えは、意外にも「軍歴そのものとは関係なく、それをはるかに超える話です」というものだった。重要なのは机上の経歴ではなく、実際に銃を触っているかどうか。チームは定期的に射撃場を訪れ、アニメーターの多くが自ら銃器オーナーだという。この実地アクセスにより、現実世界で武器の挙動を直接テストし、発砲し、相互参照することが可能になっている。
これは銃を撃ったことがある人なら頷ける話だろう。同じアサルトライフルでも、ボルトキャリアが前進する瞬間の慣性、セレクターを切り替える指の抵抗、初弾を装填するときのチャージングハンドルの重みは、銃ごとに驚くほど違う。スペックシート上の数字には絶対に出てこないこの「手触り」を、タルコフは執拗に再現してくる。リロードのたびに思わず見入ってしまうのは、こうした地道な作り込みの賜物というわけだ。

「初めて銃を手にした人は誰でも、その重さと物理特性がいかに独特かを瞬時に理解します」とニキータ氏。そうした即座の、現実世界の感覚的な入力を、武器の取り回しとアニメーションシステムに直接翻訳しているのだという。あの手に伝わるような重みは、開発者自身の体験から来ていたわけだ。
巨大なカスタマイズシステムが生まれた経緯
タルコフには銃器だけでなく、膨大な数の武器Mod、光学機器、アクセサリーが存在する。このカスタマイズは単なる性能変更を超えて、「本物のギアを組み上げる」感覚を生み出している。なぜこれほど大規模で詳細なカスタマイズシステムを作ったのか。

「シンプルに言えば、そうしたかったからです。そして、とてつもなくクールだからです」とニキータ氏は率直だ。彼自身、武器のモディフィケーションとモジュラー性、つまり銃を視覚的にも機能的にも完全に変貌させる能力に深い情熱を持ってきたという。「私たちはまさにそのビジョンを実現したくて、この規模のシステムを作ろうとしました。そしてそれは自然と、タルコフを定義づけるコア機能のひとつになったのです」
摩耗・ジャム・アーマー劣化は「妥協なきシミュレーション」のための必須要素
武器の摩耗、ジャム(動作不良)、アーマーの耐久値。これらは主流の競技系FPSではしばしば省略される要素だ。なぜあえてこれらを実装したのか。
「タルコフは主流の競技系FPSであろうとしたことは一度もありません。その本質は戦闘シミュレーターなのです」とニキータ氏は言い切る。武器が故障し、パーツが摩耗し、アーマーがストレス下で劣化していく。そんな地に足のついた世界をシミュレートしているのだという。
さらに踏み込んだ発言が興味深い。「現実には、私たちは現実世界の戦闘に存在する変数のごく一部しか実装していません」。ビデオゲームとしてはあれだけ複雑に見えるタルコフのシステムですら、現実の戦闘のほんの断片に過ぎないというわけだ。どこまで現実を反映するかは腕の見せどころだが「これらのシステムこそが、コミュニティが期待する妥協なきシミュレーション体験を届けるために不可欠です」とニキータ氏は語る。
実装で最もこだわるのは「リアリズム」、そして膨大な反復作業
銃器や装備の実装プロセスそのものについて、最もこだわる点と、最も難しい部分はどこなのか。
ニキータ氏は、「実装プロセス全体を通して第一に重視するのは、リアリズムです」と答えた。すべてを可能な限り真正なものにすることに"執着"しているという。「真のリアリズムの達成は極めて複雑で時間がかかるため、この段階では膨大な数の反復作業と絶え間ない調整を必要とします。その堅固な基盤が整ってはじめて、美的なバランス調整へと移行し、それぞれのデザインが他のどんなものとも視覚的に異なるものになるよう仕上げていきます」としている。やはりこの異常なまでのこだわりが本作の鍵となっているようだ。
初期実装の武器は「定期的に作り直している」

長く続くタイトルとして、初期と現在で装備表現へのアプローチは変わったのか。たとえば初期実装のMP5のスケール感には、当時の技術的制約や制作フローが垣間見える。古い実装を見直す可能性はあるのだろうか。
「私たちの制作パイプラインは大きく進化しました」とニキータ氏。長年にわたって武器システムを磨き続けてきた結果、ワークフローは大きく効率化され、計画通りに最大限の精度で新規アセットを実装できるようになっているという。
そのうえで、古い武器モデルを定期的に見直し、完全に作り直していると明かした。「それらの古いアセットは、現在のパイプラインがまだ確立されていなかった初期に作られたものです。それらを現代の基準に引き上げることは、私たちが継続して取り組んでいることの一部なのです」。古参プレイヤーには嬉しい話だろう。

「メタ」は意図的に壊す。リアルとゲームバランスのせめぎ合い
逆に、「ゲームとして成立させるため」に現実からあえて変えた要素や、現実に存在するのに意図的に反映しなかったものはあるのか。「リアルなロードアウトの再現」と「ゲーム内バランス」のあいだで難しい判断はあったのか。
「バランス調整は継続的で、進化し続けるプロセスです」とニキータ氏。BSGは先頃、大規模なリバランスパッチを展開したばかりで、今後もさらに予定しているという。ゲームに要素を追加していくほど、バランス調整はより複雑になっていく。

ここで彼は「メタ」への明確なスタンスを示した。放置すれば、コミュニティは現実世界のロジックとのつながりを完全に失った硬直的な「メタビルド」へと傾いてしまう。だからこそBSGは、こうしたメタを破壊し、ビルドの多様性を促し、効果的なセットアップが真正で現実的な構成に見え、そして実際にそう感じられるように、意図的にバランス調整を行っているのだという。タルコフのバランス調整には、リアリティを守るという思想が貫かれているわけだ。
コスプレ・エアガンでの再現を「心から愛している」
タルコフのファンには、ゲーム内の性能比較を超えて、「リアルなロードアウトのロールプレイ」やコスプレ、エアガンやサバゲーでのロードアウト再現を楽しむ層がいる。BSGはこうしたコミュニティをどう見ているのか。



「私たちはこの側面のコミュニティを心から愛しています」とニキータ氏。プレイヤーが画面の外、現実世界のコスプレやタクティカルロールプレイ、エアガンのセットアップへと情熱を広げていく様子を見るのは素晴らしいことだと語る。自分たちがデザインしたギア、キャラクター、武器、その他のゲーム要素が、現実でこれほど情熱的に再現されるのを見ることに、計り知れない誇りを感じているという。

今後は「既存カテゴリの拡充」へ。ベルト給弾火器の選択肢拡大も
今後より深く描きたい銃器や装備のカテゴリ、あるいは挑戦したい新しい表現はあるのか。
ニキータ氏によれば、ゲームの基礎的なアーキテクチャはすでに完成しているという(1.0になったしね)。そのため、根本的に新しい武器分類を導入するよりも、既存のものを拡張し豊かにすることに注力している。ベルト給弾の機関銃やアンダーバレルのグレネードランチャーといった重量級システムはすでに実装済みだ。
今後は、ベルト給弾オプションの拡充など、既存カテゴリにさらなるバリエーションを加えていきたいとのこと。コンテンツの追加、今後のDLC、将来の拡張に焦点を当てていくという。

「リアル系FPS」としてタルコフを愛するプレイヤーへ
最後に、「リアルなFPS」としてタルコフを愛するプレイヤーへのメッセージを求めた。
「これは間違いなく、私たちのプレイヤーベースの中で最もお気に入りの部分のひとつです」とニキータ氏。「タルコフを標準的な競技シューターとして扱うのではなく、リアリズムのマインドセットで臨むプレイヤーに、多大な敬意を抱いています。こうしたプレイヤーは、タクティカルロールプレイ、正確さ、そして自分のギアやビルドの真正な見た目を大切にするのです」
「まさにこのプレイスタイルこそが、私たちが膨大な数の衣服オプションを提供している理由です。プレイヤーが自分のPMCを思い描いた通りに正確に造形できる自由を与えるためにです」。
PMC(民間軍事会社)とは、タルコフにおけるプレイヤー自身の分身となる傭兵キャラのこと。USECとBEARの2陣営があり、装備から服装まで自由に作り込める。ニキータ氏は、「このレベルのリアリズムを大切にするプレイヤーが増えるほど、ゲームはより良くなるんです」そう締めくくった。
第1弾インタビューもチェック
「ただ推測しているわけではない」。インタビュー全体を貫いていたのは、リアリティとバランス調整への異常な執着とも言える姿勢だった。机上の知識ではなく、実際に銃を触り、撃ち、その手触りをゲームに翻訳する。思えば、タルコフのリロードは「速い」のではなく「正しい」。だから遅くても許せるし、むしろ見ていたくなる。あの不思議な感覚の正体が、開発陣が射撃場で実際に得た手触りだったと知って、長年の謎が腑に落ちた。
みんなはタルコフのどの銃、どの装備やシステムへの「こだわり」と唸らされただろうか? お気に入りの要素があればぜひ教えてほしい。
先日公開した、EAA独占インタビュー第1弾「【独占】ニキータが明かすタルコフ1.0の本音「もっと◯◯だった」新作『Fragmentary Order』の行方も」では、タルコフ1.0以降・日本市場・新プロジェクトも網羅しているのでぜひチェックしてほしい。
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