ハードコアFPS『Escape from Tarkov(エスケープ フロム タルコフ)』を手がけるBattlestate Games(以下、BSG)のゲームディレクター兼COO、ニキータ・ブヤノフ(Nikita Buyanov)氏へのEAA!!独占インタビュー第1弾をお届けする。
主なテーマは「1.0リリース後の振り返り、日本市場、新プロジェクト」だ。2025年11月15日の1.0リリースから約半年。話題の『Arc Raiders』をどう見ているのか、新スタジオで進める新作『Fragmentary Order』とタルコフの両立は大丈夫なのか、そして急成長する日本市場への思いとは。
CoDやVALORANTを経てタルコフにたどり着いた日本のFPSプレイヤーへのメッセージまで、同氏本人の言葉で語ってもらった。
- 3行まとめ
- ニキータ氏が1.0リリースの最大の成果を総括
- 『タルコフ』はハイリスク・ハイリターンに振り切る
- 新作『Fragmentary Order』を開発中だが「タルコフを見捨てることはない」
1.0の最大の成果は「物語の完結」と「実際に脱出できるようになったこと」
2025年11月15日の1.0リリースから約半年。振り返って、最大の成功は何だったのか。そして、やり直せるなら変えたいことはあるのだろうか。

「1.0リリースの主な成果は、ゲーム全体を貫くストーリークエストを完全に締めくくり、タルコフから脱出するという実際のメカニカルな能力を導入したことです」とニキータ氏。
これによって、開発当初から思い描いていたコアなゲームプレイのループを見事に完結させることができたという。タイトルが『Escape from Tarkov(タルコフからの脱出)』である以上、「脱出」をゲームシステムとして成立させることには特別な意味があったわけだ。
一方で、悔いが残る点も率直に語った。「大規模なローンチ時の技術的な安定性は、常に予測が極めて難しいものです」。もしやり直せるなら、ローンチ当日にプレイヤーが経験した摩擦を完全に解消するため、技術インフラの強化にさらに多くのリソースを割きたかったという。タルコフ1.0は世界的な注目を集めた分、サーバー負荷との戦いでもあった。
『Arc Raiders』は「カジュアル向け」、タルコフは「第二の仕事」
ニキータ氏は2026年4月のGamesBeatのインタビューで、『Arc Raiders』を「カジュアルな人向けの脱出シューター」と評し、これは日本のコミュニティでも大きな話題になった。その発言の真意と、タルコフが目指す「苦しく、挑戦的で、報われる」体験の本質について、日本の読者に向けて改めて語ってもらった。
「皆さんもご存知の通り、タルコフは失敗のコストが信じられないほど高い、シリアスで過酷なゲームです」とニキータ氏。ミスをすれば、持ち込んだギアも、苦労して見つけた貴重なルートも失う」『Arc Raiders』のようなタイトルは脱出ループの基礎を捉えつつも、その強烈なペナルティとスリルを最小限に抑えた形で届けているという。
対して『タルコフ』は、ハイリスク・ハイリターンでこそ輝く。心理的にもメカニカルにも困難を乗り越えることを要求してくる。「その苦闘があまりにも過酷だからこそ、結果として得られる勝利感と報酬は、もっと手軽なタイトルでは決して味わえない比類なき感情の高揚になるのです」。
そして、こう続けた。「Arc Raidersのようなゲームが主に手軽でカジュアルな楽しさのために設計されているのに対し、私たちのコミュニティの多くは、まるで"第二の仕事"のような激しい献身をもってタルコフの過酷なグラインドを受け入れています」
ここまで言い切るあたり、自分たちのゲームの立ち位置への確信がうかがえる。『Arc Raiders』が盛り上がるいまだからこそ、この対比は刺さるものがある。
ちなみに「第二の仕事(second job)」というのは、タルコフ界隈ではおなじみの自虐フレーズだ。それくらい時間と労力を吸い取られる、本業の片手間では到底こなせない、という意味で長らくコミュニティに浸透してきた。開発者がコミュニティのミームをそのまま自分の言葉として返してくるあたり、距離の近さがうかがえて面白い。
新作『Fragmentary Order』開発でも「タルコフを見捨てることは絶対にない」
ニキータ氏は現在、新スタジオRant Gaming(ラント ゲーミング)でハードコアなSFシューター『Fragmentary Order(フラグメンタリー オーダー)』も開発している。
一部のタルコフファンは、メインクリエイターの注意が分散することを心配している。両プロジェクトへのコミットメントについて、EAAは日本のタルコフプレイヤーへ改めてメッセージを求めた。
「以前にも述べた通り、2つのプロジェクトを管理することは間違いなく困難です。しかし、いかなる状況でもタルコフを見捨てたり、離れたりすることは決してありません」とニキータ氏はきっぱりと回答。
最近はほぼタルコフの開発に専念しており、最新アップデート「ICEBREAKER」の展開を監督し、今後のコンテンツロードマップの軸を担っているという。
ゲームの方向性が完璧に実行されるよう、完全に現場に入り込んで取り組んでいると語った。

補足すると、『Fragmentary Order』(コミュニティでは通称「Frago」)は2026年4月12日に発表されたSF系のハードコアFPSで、ニキータ氏が新たに立ち上げたスタジオRant Gamingが開発を手がける。

タルコフとは別会社による独立プロジェクトであり、ニキータ氏自身もX(旧Twitter)などで「タルコフは私の人生であり、BSGの仲間とともに何があっても作り続ける」とコミュニティに念を押している。
ゲーマー国勢調査で「トップ10入り」、日本市場の成長をどう見るか
ゲーマー向けの大規模アンケート調査「ゲーマー国勢調査2025-2026」では、タルコフが昨年と比べて日本のゲーマーがプレイするタイトルのランキングを大きく駆け上がり、いまやトップ10に入っている。この日本市場での成長を、ニキータ氏はどう感じているのか。

「この知らせは信じられないほど素晴らしいですし、私たちの開発の方向性が日本のゲーマーに響いているという証だと感じます」とニキータ氏。今の目標は、日本のコミュニティにできるだけ多くの直接的なフィードバックを共有してもらい、体験を磨き上げ続けることだという。
「この勢いを維持したいですし、コミュニティイベントのためにもっと頻繁にこの地域を訪れることを楽しみにしています」と、日本史上への熱量も見せた。
TGS 2025で見た日本のファン「礼儀正しさに、こちらが恥ずかしくなったほど」
ニキータ氏は昨年の「東京ゲームショウ(TGS 2025)」のBSGブースに登場し、DJパフォーマンスまで披露した。日本のタルコフファンを間近で見て、印象に残ったエピソードはあったか。日本のプレイヤーに独特のものを感じたかのだろうか。



「日本のファンに会って最も印象的だったのは、彼らが信じられないほど親切で、礼儀正しく、独特の慎ましさを持っていたことです。その礼儀正しさに、私自身が恥ずかしくなってしまうほどでした!」とニキータ氏。
これほど多くの情熱的なファンが詰めかけ、自分にこれほどの敬意を払ってくれる光景を目の当たりにして、深く感動する体験だったと振り返った。


BSGはTGS 2025にブースを出展し、タルコフの試遊に加えて、DJパフォーマンスやボス・キャラクターとの撮影など遊び心あふれる企画で来場者を沸かせた。
なかでも名物だったのが「筋トレ」体験だ。ブースの特別タスクのひとつとして、来場者は同意書にサインしたうえで、3kgか8kgのダンベルを選んでトライセプスプレスを10回こなす。タルコフのHideout(隠れ家)には筋力や持久力を鍛えるトレーニング要素があり、それをリアルでやらせるという徹底ぶり。ニキータ氏自身のマッチョなイメージもあいまって、ファンには刺さる仕掛けになっていた。
最後に:日本のタルコフプレイヤーへ
最後に、『Call of Duty』シリーズや『VALORANT』のような手軽なタイトルをプレイしながらも、より深く、より過酷な『タルコフ』の体験へとたどり着いた日本のFPSプレイヤーへのメッセージを求めた。

「タルコフのような妥協のないゲームは、存在する必要があります。なぜなら、それは打たれ強さを鍛えてくれるからです」とニキータ氏。
プレイヤーを極度に注意深く、鋭敏で、強烈なストレスを管理できる人間へと鍛え上げる。そうしたスキルは、現実のストレスフルな場面をより楽に乗り越える助けにもなる、と語る。
「タルコフで繰り返す失敗を乗り越えることは、真の人格を形成します。負けたり一時的な技術的ハードルに、どうか気を落とさないでください」。
BSGは、タルコフの体験がこれからも長きにわたって独自の挑戦的で報われるものであり続けるよう、全力を尽くすという。「皆さんの素晴らしいサポートに心から感謝します。そして、どうかこれからもフィードバックを送り続けてください!」。そう力強く締めくくった。
第2弾インタビューも要チェック
『Escape from Tarkov』の本質でもある失う恐怖と、それを乗り越えたときの高揚。あの感情のジェットコースターは、確かに他のどのゲームにもない。
新作『Fragmentary Order』を進めながらも「タルコフは私の人生」と言い切るニキータ氏の姿勢は、長年このゲームを追ってきたファンには心強いだろう。日本のコミュニティへの愛も本物に見えた。次にニキータ氏が来日するとき、日本のタルコフ勢はどんな歓迎を見せるだろうか。
第2弾独占記事の「ニキータが明かすタルコフの装備デザイン論」も公開したので、あわせてチェックしてほしい。

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