ゲーミングデバイスメーカーのFinalmouseは2026年5月26日、新作ワイヤレスゲーミングマウス「Starlight X(SLX)」を発表した。価格は179ドル(約2万8,000円前後、5月26日執筆時点)で、注文受付は2026年5月30日から公式サイトにて開始される。
公式は「11年ぶりの新形状」と位置づけており、形状だけでなくクリックシステム、シャシー素材、無線アーキテクチャまで全面的に刷新された「新世代」モデルとなる。重量はわずか38g。タクティカルFPS向けに再設計されたシェイプと、物理的クリック遅延を最大35ms短縮するという新クリックシステム「TMR-DS」が大きな話題を呼んでいる。
- 3行まとめ
- Finalmouseが新作ワイヤレスマウス「Starlight X(SLX)」を発表、価格179ドル、5月30日受注開始
- 11年ぶりの新形状と38gの超軽量シャシー、新クリックシステム「TMR-DS」で物理的クリック遅延を最大35ms削減
- Nordic nRF54LM20搭載、PixArtと共同開発した新センサー「Finalmouse F1」採用
Finalmouseとは。軽量マウスの先駆者が放つ「新世代」

Finalmouseは、独創的なデザインと軽量化を武器に一時代を築いたゲーミングマウスメーカーである。ハニカム構造のシェルを採用した「Air58 Ninja」や、マグネシウム合金を使った「Starlight-12」、カーボンファイバー超複合材を投入した「UltralightX(ULX)」など、新素材と軽量化のフロンティアを切り拓いてきた歴史を持つ。
その独自路線がプレミアム価格を正当化していた時期もあったが、近年は状況が変わってきた。他社からもマグネシウムやカーボンファイバーを使った軽量マウスが手頃な価格で多数登場し、わざわざ高額なFinalmouseを選ぶ理由が薄れつつあった。直近モデルではシェルの剛性や個体差に関する声も一部で見られ、ブランドの最先端イメージにも揺らぎが生じていた。
そんな状況下で発表されたのが「Starlight X」だ。形状、シャシー、素材、クリック機構、無線、ファームウェアまで全てを再設計し、Finalmouseが再び「最先端」を主張するための答えと言える1モデルとなっている。
ワイヤレスゲーミングマウス「Starlight X」の概要
- 価格:179ドル(約2万8,000円前後、5月26日執筆時点)
- 注文受付開始:2026年5月30日
- 販売:Finalmouse公式サイト(finalmouse.com)
- カラー:Nightfall
- サイズ:1サイズ展開
Starlight Xは公式サイトでの直販モデルで、初回カラーは漆黒の「Nightfall」となる。製品概要は以下の通り。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | Finalmouse Starlight X |
| 接続方式 | ワイヤレス |
| 設定ツール | Xpanel |
| 対応OS | Windows / Mac / Linux |
| グリップ幅 | 58.9mm |
| 全長 | 124.8mm |
| 高さ | 39.5mm |
| 重量 | 38g |
| シェル素材 | カーボンファイバー超複合材 |
| 素材密度 | 0.9g/cm³未満 |
| クリックシステム | TMR-DS(Dual-State Analog Click System) |
| スイッチ | Huano Blue Shell Pink Dot |
| ファスナー | グラファイトコーティング・チタンスクリュー×15本 |
| MCU | Nordic nRF54LM20 |
| センサー | Finalmouse F1 |
| TMRセンサー | 独自仕様 |
| バッテリー | Jauch 250mAh アドバンスド・ケミストリー・リチウム |
| XLAT検証レイテンシ | 223μs(エンドツーエンド) |



Starlight Xの注目ポイント1:11年ぶりの新形状
Finalmouseは公式キーノートにて、Starlight Xを「初代Finalmouseから数えて11年ぶりの新形状」と位置づけている。過去4年間にわたり、握り心地を確認するためのクレイモデル(粘土による試作)から始まり、50を超える物理プロトタイプを経て磨き上げられた形状とのこと。

設計思想として明確に打ち出されているのが「タクティカルFPS最適化」だ。『Counter-Strike』のように水平方向の動きが中心となるゲームでは、エイムの「ブレを抑える安定性」が決定的に重要となる。そのため、リアハンプ(後部のふくらみ)を従来より大きく取り、手のひらとの接触面積を増やすことで安定性を確保する設計となっている。

サイズ感としては背が高めで、Razer Viper V4 Pro並みの高さを持つ。Finalmouseとしては新方向のシェイプであり、過去のULX系統が好みだったユーザーには好みが分かれそうな部分でもある。

クリック溝(指を乗せる位置に設けられた窪み)も明確に設計されており、幅は狭めに抑えられている。圧迫感のない安定性、シャープすぎない精度という、相反する要素のバランスが取られている。
形状や高さが他のマウスとどの程度違うのか気になるユーザーには、マウス形状比較サイト「Eloshapes.com」が便利だ。すでにStarlight Xの2Dシルエットが掲載されており、Razer Viper V4 ProやLogicool G PRO X SUPERLIGHT 2など、他社マウスとのサイズ感を重ねて比較できる。購入前のサイズ感チェックに活用したい。
Starlight Xの注目ポイント2:TMR-DSという新クリックシステム
Starlight Xの最大の目玉が、新開発のクリックシステム「TMR-DS(TMR Dual-State Analog Click System)」だ。これは従来のクリック遅延の概念そのものを覆す技術で、Finalmouseとしてもメインボタンの物理スイッチ機構に本格的にメスを入れた初の試みとなる。新機構ながら追加される重量はわずか0.24g、消費電力への影響もほぼないとされており、軽量化と性能向上を両立している点も大きなポイントだ。

従来のクリック遅延測定は「電気的に作動した瞬間」からカウントされてきた。しかし実際には、指が動き始めてからスイッチがプリトラベル(押し始めから信号発生までの空走距離)を経て、内部の金属リーフ(薄い板バネ)が圧縮されて電気信号が発生するまでの「物理的遅延」が存在する。この物理的遅延こそがクリック応答の最も遅い部分だが、これまでほとんど対策されてこなかった部分でもあった。

TMR-DSは、スイッチの下に磁石を組み込み、PCB上に高精度なTMRセンサー(磁気抵抗センサー)を独立配置することで、指がクリックに「踏み込んだ瞬間」の磁束変化を即座に検知する。TMR(トンネル磁気抵抗)センサーは、ホール効果センサー(磁場を感知する代表的なセンサー方式)よりも高精度で、消費電力にも優れる方式とされる。

公式によれば、Starlight Xは他のマウスと比較してクリック遅延を最大35ms短縮するという。35msという数字は、ローカルサーバーでプレイするのと国を跨いだサーバーでプレイするくらいの差に相当する、と公式は表現している。

作動点は0.01mm刻みで調整可能で、プリトラベル領域内に40段階の作動ポイントを設けることができる。0.01mmは人間の毛髪の太さの約10分の1に相当し、ラピッドトリガー対応も謳われている。

メカニカルスイッチ自体は廃止せず、Huano Blue Shell Pink Dotを採用。タクタイル感はメカニカルスイッチが担当し、速度をTMRセンサーが担当するという2系統構成だ。X-Panel(WEB設定ツール)上ではメカニカルモードとアナログモードを切り替え可能となっている。

Logicool G PRO X SUPERSTRIKEに搭載される「HITS(Hybrid Inductive Trigger System)」と狙いは近いが、HITSがインダクティブセンシング方式(コイルと磁界の変化で動きを検知する方式)なのに対し、TMR-DSはTMRセンサー方式という違いがある。Logicoolの特許を避けつつ、より高精度な磁気センサーで同じ方向性を狙ったアプローチと見ることができる。

クリック機構の物理的な安定性も大きく向上している。メカニカルキーボードのスイッチに着想を得た「デュアルレール+PTFEガイド」構造を新たに採用し、プランジャー(スイッチ内部の可動部分)を両側から支える設計に。横方向のブレや擦れを排除し、TMRセンサーの検知精度を最大限引き出すと同時に、クリック自体の滑らかさも向上させているという。
Starlight Xの注目ポイント3:航空宇宙級カーボンファイバーと38gの剛性
Starlight Xの重量は38gと、軽量マウスとして極めて軽い部類に入る。Logicool G PRO X SUPERSTRIKEの約61gと比較しても20g以上軽く、TMR-DSという新機構を搭載しながらこの重量を実現している点が驚異的だ。

これを支えているのが、Finalmouseが航空宇宙産業のサプライヤーと共同開発した新型カーボンファイバー超複合材である。密度は0.9g/cm³未満で、水よりも軽い。従来素材と比べてカーボンファイバー含有量が約70%増加しており、マグネシウムと比較しても強度重量比で3倍以上を実現するという。

シャシー構造も全面的に刷新された。これまでのハニカム構造から脱却し、ユニボディ・メインケージ(内部骨格を一体成型した構造)を採用。シェル構成は従来の4分割から3部品のユニボディ構造へとシンプル化されている。


F1(フォーミュラ1)にインスパイアされたという組み立て手法も特徴的で、グラファイトコーティングのチタンスクリューを15本使用。1本あたり約0.02gと極軽量ながら、シャシー全体を完全にロックし、クリーク(軋み音)やフレックス、構造的なガタつきを排除する設計となっている。
この点は、近年のFinalmouse製品で報告されていたシェル剛性に関する課題への明確な回答とも言えるだろう。


ハニカム構造に依存しない軽量化手法として、ストラテジック・カーボンファイバー・ビーミング(戦略的カーボンファイバー梁構造)と薄肉化が組み合わされている。圧力マッピングで「ゲーム中に絶対に触れない箇所」を特定し、そこだけにシェル開口を設けるという手法で、手に触れる面の連続性を保ちながら軽量化を達成している。
Starlight Xの注目ポイント4:Nordic nRF54LM20とFinalmouse F1センサー
ワイヤレスシステムも大きく進化している。心臓部となるMCUには、Nordic Semiconductorの新型「nRF54LM20」を採用。これはゲーミングデバイスでは業界初採用となる可能性が高い。

nRF54LM20は2025年9月に発表されたばかりの新型SoCで、25nmプロセスで製造される。128MHzのArm Cortex-M33コアにRISC-Vコプロセッサ、2MB NVM、512KB RAMを搭載し、4Mbps RF変調とハイスピードUSBにネイティブ対応する。Finalmouseはマウス側とレシーバー側の双方でハイスピードUSB対応MCUを採用することで、ドングル内のブリッジを省略し、システム全体の遅延を削減している。
業界の位置づけとしては、業界標準として広まりつつあるnRF54L15と比較すると、メモリ容量がほぼ2倍、ハイスピードUSBがネイティブで追加されており、明確な上位モデルとなる。さらに上位グレードに位置するnRF54H20(320MHzマルチコアM33搭載)と比べると、純粋な処理性能では一歩譲るものの、消費電力に優れる設計となっている。処理性能と消費電力のバランスを重視したチョイスと言える。

センサーは、PixArtと共同開発したカスタムセンサー「Finalmouse F1」を搭載。Starlight X専用設計で、解像度精度、IPS(速度耐性)、最大解像度、電力効率のすべてが改善されているとされる。
無線アーキテクチャ面では、独自技術「PerfectSync」と「PerfectPolling」が導入された。PerfectSyncはセンサーポーリングからMCU処理、RF送信、USB出力までを常時同期させる仕組みで、従来のモーションシンクのような平滑化フィルタによる遅延を排除する。

PerfectPollingは、近年マーケティング先行となっていたポーリングレート(1K/4K/8K等)の概念から脱却するアプローチだ。SubtickレイテンシとRFスケジューリング、ハイスピードUSB割り込みを組み合わせ、設定不要で最適なパフォーマンスを発揮するという。

XLATという独立した計測ツールによる第三者検証では、エンドツーエンドレイテンシ(クリックからUSB出力までの全工程の遅延)223μsを達成。一般的なゲーミングマウスが数ミリ秒台であることを考えると、業界トップクラスの応答速度と言える。


レシーバーはパック型に新設計され、内部に金属アンテナと安定化用のスチールウェイトを内蔵。マウス側ではアンテナをPCB上で北側に移動し、セラミックチップアンテナを採用することで、より低い送信電力で安定した通信を実現している。
Starlight Xに対する海外コミュニティの反応
Reddit、X、YouTubeなどの海外コミュニティでは、発表直後から多数の反応が寄せられている。肯定的な声と懐疑的な声、双方をピックアップして紹介する。
- 肯定的な声:
- クリーク(軋み音)の99%はシェル同士の擦れによるものだった。ネジで組み立てるシェル設計に戻ってくれたのが最高だ(Reddit)
- 新形状、ラピッドトリガーと作動点調整付きのアナログクリック、強化されたカーボンファイバー梁構造、PixArtと開発した独自センサー。明らかに興味深い。ただ、ラバー製スクロールホイールが欲しかった(Reddit)
- スペックは正直、頭がおかしいレベルにヤバい。品質管理は嫌いだけど、これが本当に届くなら…マジか(Reddit)
- ポーリングレートに関する発言は本当だ。高ければ良いというものではない。SL12でポーリングレートを変更できないのが不満だったので、この変更は大きい(YouTube)
- 38g、ヤバい(X)
- Logicool G PRO X SUPERSTRIKEとViper V4 Proを組み合わせたようなマウス(YouTube)
- 懐疑的な声:
- Finalmouseは過去に一度もスペックと品質管理の約束を守ったことがない。今回も守らないだろう(Reddit)
- メカクリックとTMRクリックの同期が取れないのでは?スーパーストライクのように作動点で触覚フィードバックが得られる方が良かった(Reddit)
- スクロールホイールが最大の問題。これに関する改善が見えない(YouTube)
- サイズ展開が1種類だけなのは残念。トラッキング系ゲーム向けにULX形状のバリエーションも欲しい(YouTube)
肯定派は技術的な刷新と軽量さに注目する一方、懐疑派はFinalmouseの品質管理の歴史と高価格に対する不安を表明している。サイズ展開、スクロールホイールの耐久性、メカ/TMRクリックの同期問題など、技術的に深い議論も交わされている。
Starlight Xは「新世代」の名にふさわしいか

Starlight Xは、軽量マウスがコモディティ化した市場でFinalmouseが再びプレミアムブランドとして立つための答えだろう。形状、シャシー、素材、クリック機構、無線、センサー、ファームウェアまで全てを刷新し、「Performance Without Compromise(妥協なきパフォーマンス)」を掲げる姿勢には説得力がある。
一方で、Finalmouseの過去には品質管理に関する課題があったことも事実で、コミュニティの懐疑的な声には無視できない重みがある。「届く製品が公式の主張通りであれば」という前提条件付きの評価が多いのも、これまでの経緯を反映していると言えるだろう。
日本国内では公式サイトからの直接購入が中心となり、並行輸入や代理店経由での流通も期待される。FPSプレイヤー、特に『Counter-Strike 2』や『VALORANT』のようなタクティカルFPSをプレイするユーザーにとって、Starlight Xは2026年の動向をチェックしておきたい1台と言えるだろう。
実際の使用感やレビュー、QC(品質管理)の状況など、続報に期待したい。あなたは「Starlight X」のスペックを見て、ぜひ手にしたいと感じただろうか?
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Source: Finalmouse



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