EAゲームチェンジャーの1人であり、コンテンツクリエイターのWestie氏が4月19日に『Battlefield V(バトルフィールド 5)』を500時間プレイした末の感想をYouTubeに投稿し、波紋を呼んでいます。
※ 本記事の執筆を開始したのは『BFV』の更新停止が発表される前の事で、時事に合わせて一部の内容を変更しています。
Westie氏が語る『BFV』の軌跡
Westie氏は『BFBC2』より前からのBFプレイヤーで、『BF1』で披露した高い洞察力と『BF』シリーズへの愛で一躍欧米コミュニティで最も人気なコメンテーターの1人となりました。そんな氏はかねてから『BFV』を酷評していたことで知られていましたが、それでも500時間しかプレイしていないという情報は大きな驚きを持って迎えられました。
「500時間」は一般のゲームからするととんでもない長時間プレイに思えますが、『BF』シリーズファンにとってはプレイ時間が1000時間に登ることはほぼ当たり前。歴代『BF』のファンでありコンスタントに『BFV』動画を作っていた氏も当然のごとくそれぐらい遊んでいるだろうと思われていたからです。
筆者も思わず問い返したところ、「2019年の夏と2020年の3月を除いては、『BFV』は刺激に欠けているし将来の展望も不明瞭なのでほとんど遊んでいないんだ。遊び込めるコンテンツが実装されたら、また遊びだすよ」と、自身のプレイ時間が比較的短いと自認しているコメント。
Summer of 2019 and from March 2020 onwards, I've barely played the game. There's no incentive for me to do so and with no info/communication about the future of the game, I'm currently playing other games.
Once there's stuff to do, I'll start playing again :)
— Westie (@MrProWestie) April 19, 2020
『BF』シリーズファンで、『BFV』を酷評しつつも見守って来たWestie氏。動画では『BFV』を発売前からの時系列から振り返りつつ、それぞれの段階を冷徹に分析しています。氏から見た『BFV』を取り巻く問題は何なのか、以下に要約しましたのでともに見ていきましょう。
初手から大ゴケしたBFV公式発表トレーラー
- ゲーム性はより戦術性を重視したハードコア路線に見えた
- しかしビジュアルは皆の知る第2次世界大戦とはかけ離れている
- ゲームスタイルとアートスタイルが真逆で、この時点でDICEは『BFV』をどうしようか全くわかっていなかったように見える
- 第2次大戦に忠実でないという点を含め多くのプレイヤーはすでに不安を覚えていたが、まだトレーラーだけなので実際のゲームプレイを待つ人も多かった
あと一手届かなかったアルファテスト
- 武器バランスとガンプレイは『BF1』よりはるかに優れていた
- 破壊表現に優れているが、そのせいで長期戦ではゲームプレイが崩壊するのは『BF』シリーズの欠点で、建築システムはシリーズの欠点を補う素晴らしいシステム
- 「消耗戦」スタイルも明らかになり、慢性的な弾薬不足を敵からの入手で補うなど戦術性が強化されていた
- しかし現実の第2次大戦とはかけ離れているアートスタイルも明らかになり、コミュニティを2分化させた
- グラフィックがリアルすぎたため「プレイヤーの視認性」という長く続いた問題も浮上した
- トレーラーでのちぐはぐなイメージを覆すのには失敗していた
妥協と疑問に満ちたベータテスト
- 『BFV』のコアゲームプレイの最終調整を行うためにリリースを11月に延期
- つまり『BFV』の当初のコアデザインは失敗したということが推測される
- プレイしていてとても2次大戦テーマとは思えないし、DICEの態度も無神経すぎて歴史への敬意を感じられない
- 「消耗戦」は理論上は楽しそうなテーマだが、実際のゲームプレイに落とし込めていなかった
- スタンダードサーバーの環境は歴代『BF』と比べて最も過酷で、過去作のハードコアサーバーをもこえる体験になっていた
- 急遽調整が入り、補給ステーションや弾薬所持数を増やすことによってコミュニティの声に答える形に
- しかし『BFV』の最も売りにしていた要素をやすやすと変更したのは、つまり最初から『BFV』で何をしたかったのか明確なビジョンを持っていなかったのではないか
- そしてゲームプレイはコミュニティの声に答えたのに、アートスタイルは全く変わらないままだった
悲惨なローンチ
- 1カ月も遅延したのにバグ修正は不足しており、ゲームプレイ体験も劇的には改善されなかった
- パフォーマンスは劣悪で、「進行度システム」などのコア要素が機能していなかった
- ローンチのマップ数は『BF1』や『BF4』よりも少なく、マップの出来栄えも記憶に残るほどではない
- 最もマーケティングされていたグランド・オペレーションは『BF1』の劣化だった
- バグで機能していなかった進行度システムも恐ろしく底が浅く、1週間で全カンストするプレイヤーもいた
- カスタマイズ機能も目に見えないアップグレードツリーに変更されていて、BFの魅力の1つがなくなっている
- かろうじて見た目が変わるスキンアイテムを購入しようにも、数カ月の間ラウンドリザルトが壊れて中隊コインを入手できない事態になった
- その上で修正後は中隊コインを試合報酬からキャリアランク報酬に変更と、ここまでコロコロと仕様が変わって固まったビジョンが全く見えない
第1次TTK変更とライブサービスモデル
- DICEはTTK(キルタイム)が早すぎると判断したのでコミュニティの反対を押し切り全武器を弱体したが、コミュニティの声に押されて1週間でロールバックした
- DICEはコミュニティの声を無視しているか、自分自身の創作物の良さを全くわかっていないかのどちらかだとしか思えない
- プレミアム版商法からスキン販売を軸にした「タイド・オブ・ウォー」のライブサービスに変更した点はDICEの大きなウリだった
- コンセプトは悪くないが、DLCモデルより改善されたとプレイヤーに思わせることに失敗している
- 発売1カ月後に新マップを実装したのは『BF1』と同じなのでこれは悪くないが、その次は6カ月後と前作に負けている
- 『BF4』は発売後1カ月でフルサイズのDLCを1つ、2カ月でもう1つ、その6週間後にさらにもう1つを配信している
- 『BF1』は1カ月で新マップを1つ、そのすぐ後にフルサイズのDLCを配信し、その直後に追加でマップを2つ実装している
- 『BFV』は毎週新たなアイテムを実装しているのは悪くないが、もっとも期待されている新マップは全く実装していない
- プレイヤーの多くはこの段階で「プレミアム商法にした方がまだ良かった」と言っていたが、それは的を射ていない
- 根本的な問題はコンテンツの開発がおそすぎることで、『BFV』がプレミアム商法だったとしても結局は配信延期を重ね、よりユーザーを怒らせただけだっただろう
- ライブサービスモデルはDICEの肝いりにも関わらず、多くのプレイヤーを失望させるだけとなった
出だしは良かったファイアストーム
- 拠点占拠やビークル、破壊表現に分隊協力など、コアプレイは『BF』のバトルロイヤルゲームとしては申し分なかった
- しかし発表後3週間で既に「死んだ」モードとなった
- 市場の大半がフリープレイモデルに移行していたのにフルプライスの60ドルのゲームの1部にしてしまったのは理由の1つ
- 当時の主流バトルロイヤルゲームと比べて魅力に欠けていたのはもう1つ
- ルートボックスがない、アイテムが拾いにくい、手軽なデュオモードが実装されていないといった小さな問題を多く抱えていた
- せっかくバトルロイヤルゲームの中でも最も大きなマップの1つが舞台なのに、64人という少人数のプレイヤーにしか対応できておらず、退屈に感じる
- DICEが引き継いだあとは「リソースをBFのコア要素に割く」を名目にファイアストームの開発を実質的に中止した
- 当時最も勢いがあったバトルロイヤル市場への進出を犠牲にしてまで繕わなくてはいけないほど、コア要素や開発環境が壊れているという意味でもある
太平洋の戦いで持ち直す
- 最初の数週間は『BFV』の最盛期
- 『BF1942』からのベテランスタッフであるLars Gustavsson氏が太平洋コンテンツの総責任者として表に出ており、まさしく歴代『BF』の魅力を捉えたものだった
- 日本軍の爆撃や砲撃を受けながら砂浜を駆け上がったり、揚陸艇などのビークルが入り交じるのは最高に2次大戦らしかったし、『BF』特有のサンドボックス体験を体現していた
- DICEはようやくプレイヤーが『BF』に期待しているものを理解したかのように見えた
第2次TTK変更で崩壊
- 遠距離からのキルのフラストレーションを解消し、交戦距離を短くするための武器バランス変更が実装された
- しかし実際は武器バランス全体を台無しにし、皆が好きだった銃を水鉄砲にしただけだった
- 結局DICEが当初に目指していたバージョン6.2のバランスに到達するまで3カ月もかかった
- そもそも壊れていなかったものを壊して直した一連の出来事は、DICEの優柔不断さを再び際立たせた
Westie氏のプレイ感想総括
- 悪かった点:
- 第2次世界大戦を描いたゲームのはずなのに、第2次世界大戦の雰囲気を一切感じられない
- ライブサービスが実際に形になりだしたのはサービス開始から6~7カ月たってからのことで、それまで数カ月は有意義なコンテンツは何も実装されなかった
- 実装されたとしてもバグや不具合だらけで、修正されるまではほとんど遊べなかった
- 常設モードと比べてはるかに楽しい期間限定モードが取り上げられるのを、何カ月も指を咥えて眺めていた
- 発売からそろそろ2年たつのに、太平洋実装後の6週間を除いては全く『BF』らしさを感じ取れなかった
- 『BF』の反面教師として勉強になる要素に満ちていた
- 歴史を題材としたゲームなのに、ゲーム性に寄与しない歴史改変をするな
- 「嫌なら買うな」と言うな
- ライブサービスを提供すると言っておきながら、小さい要素だけ小出しにするな
- AAAレベルの製品を短期間の開発で作り出そうとするな
- シリーズがずっとカジュアル向けだったのに、唐突にハードコア方面に舵を取るな
- シリーズとかけ離れたことがしたいなら、サブフランチャイズや外伝を作ればいい。『BF』である必要はない
- シングルプレイ・CO-OP・バトルロイヤル・マルチプレイと風呂敷を広げすぎた上で、そのすべてで失敗するな
- CO-OPは当初に言われていた躍動的なAIシステムやウィークリーチャレンジはまったく実装されていない
- ファイアストームは『BF』を忠実にとらえていたが、ローンチ後のサポートを全く得られなかった
- 良かった点:
- 『BF』がしてはいけない事をすべて味わったので、ここからシリーズは好転していくことが期待できる
I've Played 500 HOURS of Battlefield 5... Was It Worth It?
所感
Westie氏が動画を公開したのは4月19日ですが、奇しくも氏が『BFV』のすべてを酷評した数日後に『BFV』の実質更新停止が発表されたのを見ると、改めて氏とBFの奇妙な関連性に感服せざるを得ません。
そして記事冒頭でも述べたとおり、本来ここでは氏の動画から見て取れる『BFV』とDICEの問題点を深く分析する予定でしたが、『BFV』は開発からも匙を投げられたという時事を前提に書き直しました。一体どうして本作はシリーズ上でも類を見ない結末を迎えてしまったのでしょうか。
疑われるリーダーシップの欠如
- 消耗戦やグランドオペレーションというコアスタイルの形骸化
- 数度の武器バランス変更とロールバック
- コミュニティでそれなりに支持基盤があった「5対5競技モード」の唐突な開発中止とそれに伴うDICE LAの独立化
- それなりに盛り上がっていた「ファイアストーム」の実質的な開発中止とそれに伴うCriterionの独立化
- テンプレ化した「マルチプレイ体験の改善のためにリソースを再配置した」という文言
- チャプター4以降はだんまりが基本となってしまった今後の予定
- アートスタイルとゲーム性が乖離を起こしている
- 『BFV』は歴代で最もガンプレイが優れているのに、そのガンプレイから手を下す調整をくりかえす
- 『BF』の存在意義とも言えたレンタルサーバーを最初から度外視するという、シリーズコンセプトに相反するデザイン
- そのせいで間接的に悪化したチート関連の問題
漏れていた「5対5モード」の顛末を追加し、Westie氏が改めて羅列した『BFV』の歴史と問題点を並べてみると、行ったり来たりの仕様変更や唐突なコンテンツのキャンセルが目立ちます。DICEの方針と実際のゲーム内環境が矛盾していることも含めば、DICEのスタジオリーダーシップの決断力と作品への理解度が不足していると言えるでしょう。
ガンプレイや武器バランス、建築システム、プレイヤーの移動力の強化、分隊増援、俗に言う「GGシステム」の導入や、ToWによって過疎モードに息を吹き返すシステム設計。歴代バトルフィールドと同じように『BFV』もゲームプレイに数々の改善を盛り込んでおり、発売初期の開発スタッフのオープンな態度や活発なコミュニケーションも目を見張るものがありました。
Redditなどのフォーラムで時折シェアされているリーク情報を見ると、『BFV』は未実装コンテンツや予定を数多く抱えていたと伺えます。それなのに『BFV』は最後にアップデートを1回加えて終わりと発表したのは、アニメや漫画業界に見られる上層部の唐突な打ち切り宣言を思い起こします。
個々の開発者の頑張りが見えてくるだけに、『BFV』全体の方向性を見据えると「太平洋の戦い」以外は失策に失策を重ねたようにしか見えないのは、残念だとしか言いようがありません。これが本当にスタジオリーダーシップの問題だと言うのなら、2021~2022年に発売が予定されている次回作の『BF』に関しても不安を抱かざるを得ません。
深まるDICEと次回作への疑念
Westie氏は動画冒頭で次のように語っており、『BFV』に対する疑念の元はすべてこの1言に集約されていると言えるでしょう。
「第二次世界大戦をテーマとしたゲームは2000年代初頭で大ブームだった。過去作のノウハウや破壊表現、最新のビジュアルを兼ね備え、更に『BF1』で大成功したばかりのDICEなら、『BFV』をホームランにするのは簡単に思えた」
果たしてDICEの開発体制は大丈夫なのでしょうか。今『BFV』を打ち切ってすべてを来年の『BF6(仮)』に掛けるとしても、それで『BF6』が『BFV』の轍を踏まない保証はあるのでしょうか。
『BFV』の今夏のアップデートは今後詳細が語られるそうですが、同時にコミュニティの疑念も晴らせないならば、DICEは今以上に難しい立場に陥ることでしょう。
関連記事
『Battlefield V(バトルフィールド 5)』の発売日は11月20日で、対象機種はPlayStation 4、Xbox One、PC。
[wpap service="with" type="detail" id="B07D85MDDM" title="Battlefield V (バトルフィールドV) - PS4"]
コメント
コメント一覧 (48件)
雰囲気が売りだったのにポリコレのゴリ押しをした上に難色を示したファンの声なんて一切聞かずに逆に嫌なら買うならとか喧嘩売ったんだから仕方ないよね、はっきり言ってもう6出ても買うかわからない。買わないだろうな。
bfは1番好きなfpsだから6頑張って欲しい、期待させてくれサイコロ!
BFよ、次回作期待してるぞ
BF4のような楽しめる現代戦をよろしく
チーター対策も頼む
開発者は頑張ってたとかいう擁護するひとは勝手にお友達感覚なんですかね?
仮にも商品としてフルプライスで売り出したら、当然責任が生じるよね。
お客様は神様と揶揄されるような問題ではない。値段相応の価値を求めるのは当たり前でしょ。契約なんだよ売買は。 その域を超えてしまったら神様になるけどね。
bf1ですでに飽きてた。
今作で不快だった要素で一番記憶に残ってるのは、戦車が破壊不能の瓦礫に進軍を遮られることだわ
レンタルサーバーがないのも痛すぎるよなぁ。レン鯖出しときゃ配信者がイベント企画したり鯖管がチーターキックしてくれてチーター対策()になるのに。まあそれ以前にこのゲーム性じゃどっちも無理か。
ポリコレフィールドは中華チーターを差別しません!w
慈悲深いDICEは皆が中国人を受け入れることで彼らが改心してくれると本気で思ってますw