ここ数年でFPSタイトルは増えましたが、未だに最も権威のあるFPSの大会を問うならば、多くの古株プレイヤーは疑いもせず『Counter-Strike: Global Offensive(カウンターストライク グローバル・オフェンシブ/CS:GO)』のESL Pro League杯を挙げることでしょう。十数年もの伝統を持つ会場に、世界で認められた選りすぐりのチームのみが招待され、最強のFPSプレイヤーを決める年に一度の祭典。
その第13回大会、ESL Pro League Season 13の決勝戦、文字通りこの世で最もFPSが強い10人の対戦会場にて、信じられない光景が発生しました。なんと、とある選手が裸ナイフ一本で、フル武装の相手選手4人を全滅させたのです!
FPS史に残る神プレイ - "cadiaN 1v4 clutch"
3セット先取の5セット目、マッチポイント。最後の16点を先に取ったチームが世界チャンピオンになれるというところで、チームHeroic15点対チームGambit6点。1点だけ勝てば良いHeroicが有利に見えますが、その1点に手が届かず、些細なきっかけで逆転勝利されるのは『CS:GO』のプロ大会ではよくある話。HeroicとGambitはもとより実力が拮抗しているので、なおさら油断はできません。
しかし現時点で盤面に残るはHeroicのcadiaN選手のみ。ハンドガンしか持っておらず、アーマーすらなく、対するGambitは4人がフル武装。どう見てもこのラウンドは負け確で、しかも向こう数ラウンドは相手に主導権を握られるという状況。せめて裏からハンドガンによるHSを狙い、相手1人の武器を落とさせて経済上のダメージを与えたいところ。cadiaN選手も足音を消して、GambitのスナイパーSH1RO選手の後ろから近づきます。
なんか先手HSキルを狙うには近すぎる気もしますね。いやここでcadiaN選手、ナイフを取り出し...!?
なんと刺した!ハンドガンを使わず、わざわざナイフで刺したからには考えがあるのでしょうか?しかし周りにはお互いをカバーしあっているフル武装のGambitチームメンバーが3人も残っています!cadiaN選手、一体どうやって切り抜けるつもりなのか。FPS史に残る神クラッチと評されたプレイングを、ESLの公式クリップでどうぞご覧ください。
プレイ解説 - 一瞬で行われた無限の駆け引き
ナイフキルを決めたcadiaN選手はSh1RO選手が手放したAWP(胴体、腕か頭に当たったらワンショットキルできる強力なスナイパーライフル)をそのまま拾得。interz選手による銃撃を受けながらも、奇跡的に残り2HPで隠れることに成功します。そのまま冷静に構え、interz選手との射線が切れたことを確認し、nafany選手の足音を確認。
階段の上から跳んできたわけではないことを素早く確認すると、遮蔽から身を一瞬乗り出し、置きAIMで角を曲がったnafany選手をキル。当面の脅威が去った瞬間、すぐさま遮蔽の後ろに隠れているinterz選手の位置を完璧に読み切り、流れるような貫通キル。
またたく間に1対4の状態から1対1まで持ち直しましたが、むしろここからが本番。試合は爆破ルールで、Heroicは爆弾を設置する側のテロリストチームです。時間内に爆弾を拾って設置しないとHeroicは負けてしまいますが、肝心の爆弾が空き地に落ちてしまっているので、cadiaN選手もうかつに拾いには行けませんし、なにより最後の敵であるAx1Le選手がどこに隠れているのかもわかりません。
cadiaN選手は瀕死で、どこに弾がかすってもデスする状態。一方でcadiaN選手のAWPもAx1Le選手を瞬殺できるので、この勝負は両者ともに先手必勝。冷静に仕切り直したcadiaN選手は、先ほどのナイフキルで拾った焼夷グレネードを未確認の遮蔽に投げ込み、自身もボムサイトへの入り口をクリアリングしつつ歩みを進めていきます。
そしていよいよ最後の遮蔽、cadiaN選手が見ていない間に足音を消して回り込んでいたAx1Le選手。それを知ってか知らないでか、飛び出して誘うcadiaN選手。残り時間は20秒。栄光のESL Pro League Season 13の行方は――
まさに偉業。FPS史に残る神の1分間。最後までブレなかったプレイスキルもそうですが、一瞬で行われた状況判断たるや、まさしくESL Pro Leagueでしか見られないような光景でした。実はHeroicとGambit両チームともにESLでは新参なのに、歴代大会で鎬を削ってきた強豪全員を無敗で下したという下剋上ドラマもあるのですが、このプレイの前ではそれも蛇足というものでしょう。
cadiaN選手の功績を称え、ESL Counter-Strike公式チャンネルでは異例のマルチリンガルクリップが記念として投稿されています。グローバルな興奮に耳を傾けながら、神プレイの余韻に浸ってみるのも乙なものです。
基本プレイ無料FPS『Counter-Strike: Global Offensive(カウンターストライク グローバル・オフェンシブ)』の配信日は2012年8月21日、対象機種はPC(Steam)。
コメント
コメント一覧 (15件)
これは歴史に残る試合だわ
未プレイだけど
色々間違えてませんか