CD Projekt Red創業者が語る“ルートボックス問題”「課金は時間節約と利便性のために行われるべき」

CD Projekt Red創業者が語る“ルートボックス問題”「課金は時間節約と利便性のために行われるべき」

その年のゲーム業界の動向を語る上で外せないキーワードというものが必ず存在する。始まって2ヶ月未満の2018年ゲーム業界のキーワードはまだわからないが、昨年2017年のキーワードなら多くの人が「ルートボックス」、いわるゆ「ガチャ」を挙げるだろう。

去年のルートボックス関連の問題は単なるプレイヤーの愚痴や不満の域を大きく超えて、『SWBFⅡ』内の全ての課金システムが一時的に停止されたり、海外App Storeにてルートボックスの確率明記が規約に追加されたりと大規模な騒動に発展することが多かった。

事はゲーム業界内の問題に留まらない。先月にはアメリカ・ワシントン州で、今月は同じくハワイ州でルートボックスの法規制に対する法案が相次いて提出された。ルートボックスの問題が政治の世界も巻き込んだ議論に発展しつつあることが窺える。(関連リンク:GamesIndustry.biz

そんなルートボックスの根幹が揺らぐような事態が相次ぐ中、『ウィッチャー3 ワイルドハント』で世界的な名声を獲得した「CD Projekt Red」の創業者マーチン・イウィンスキ氏が、海外サイトにてルートボックス問題に切り込んでいる。

ウィッチャー3 ワイルドハント ゲラルト シリ
『ウィッチャー3 ワイルドハント』はCD Projekt Redが2015年に発売したアクションロールプレイング。プレイヤーは伝説のウィッチャー「リヴィアのゲラルト」となり、様々な怪物に立ち向かいながら「シリ」を探す旅に赴く。濃密かつ緻密なメインストーリーと充実したサブストーリーが特徴で、2015年のGOTYを獲得。

マーチン・イウィンスキが語るルートボックス

怒れるゲーマーが声を上げた

「“議論”という言葉は昨年に起きた諸々を表現するにはお上品すぎる」というのがイウィンスキ氏の言だ。

私ならルートボックス問題を”ゲーマーの反発”と呼ぶでしょう。コアゲーマーのコミュニティだけではなく、多くの怒れるプレイヤーが居て、彼らがついに声を上げたということでしょう。

さらに氏は、CD Projekt Redのルートボックスに対するスタンスについて以下のように続ける。

我々の方針は非常にシンプルなものです。過去にリリースした作品、最近だと『ウィッチャー3』や『グウェント』を見ればわかっていただけると思います。プレイヤーがフルプライスのゲームを購入したならば、それに見合うような、充実していて、かつ洗練されたコンテンツが伴わなければなりません。そしてそれらは、プレイヤーに長時間の楽しいゲームプレイを提供するものであるべきです。

“長時間”とはどの程度の時間を指すのだろうか。彼は作品ごとに違いがあると前置きした上で以下のように話しを続ける。

我々の作品では、メインストーリーには50から60時間、それとセットで数百時間のサイドアクティビティが妥当なラインだと考えています。サイドアクティビティに関してはプレイヤーが最大限に楽しもうとしてくれた場合の話ですが、これが私の考える公平な取引です。

CD Projekt Redはプレイヤーが支払った金額に見合うような物を手に入れ、更には期待以上の物が提供できるように常にベストを尽くしているという。

満足してくれたプレイヤーによる、友達へのオススメに勝るプロモーションなどありませんから。

追加コンテンツのあるべき姿

続けて、イウィンスキ氏は追加コンテンツの話にも言及した。

我々は追加コンテンツの事を“エクスパンション(拡張)”と呼んで、単なるDLC(ダウンロードコンテンツ)とは明確に区別しています。かつて『バルダーズゲート』(訳注:1998年から2016年という長いスパンで拡張され続けたRPG。開発はBioWare)で行われていた類のものです。我々は『ウィッチャー3」において2つのエキスパンションをリリースしましたが、それらはいずれも長時間に渡る新たなストーリーとゲームプレイをユーザーにもたらす事ができる、しっかりとした有意義なコンテンツ群でした。それとは別に”DLC”と呼ばれる小さなコンテンツ群は、我々にとっては無料で提供されるべきものです。

これはフルプライスのタイトルについて述べたものだが、基本無料である『グウェント』にも通じるものだとイウィンスキ氏は付け加える。課金はあくまで時間の節約と利便性のために行われるべきであって、根本的なゲーム性を害してはならないと。

グウェント ウィッチャーカードゲーム
ウィッチャー世界に存在する架空のカードゲーム「グウェント」を独立させたタイトル。アイテム課金型の基本無料ゲーム。

「プレイヤーの逆襲」

イウィンスキ氏は開発者側が「透明性」を確保することの重要性を強調する。ゲームに関するあらゆる情報は速やかに提供されるべきであり、プレイヤーが十分な情報を元にしてお金の使い道を決定することが出来るようにならなければならない。そして、もしプレイヤーがフルプライスのゲームを購入してくれたのであれば、彼らには金額に見合う充実した長時間のゲームプレイと、相当量のコンテンツが提供されるべきであると。

開発者が不当な方法で搾取しようとしているとプレイヤーが感じれば、彼らはすぐさま声をあげます。そして、正直なところ、それは業界にとって良いことだと私は考えます。

スプレッドシートの視点からならば素晴らしいと思える事はたびたび存在します。しかし、意思決定者がしばしば自問自答し忘れるのは、「プレイヤーはどう感じるだろう?」「これは公正なオファーなのか?」ということなのです。ゲームを愛するプレイヤーたちによる逆襲が現在進行形で行われています。この事態が、結果的に我々の業界をより良くしてくれることを心の底から望んでいます。

ルートボックスの未来

これが、仮に何の実績も無いゲーム開発者による言葉であれば、単に理想論を語っているだけだと軽んじる向きもたくさんあっただろう。しかし現にマーチン・イウィンスキ氏率いるCD Projekt Redは、プレイヤーに誠実に向き合うことにより大きな成功を収めた。その実績が言葉に確かな説得力を与えている。

彼がインタビュー中で語っていた通り、『ウィッチャー3 ワイルドハント』はメイン、サブ、そしてエキスパンションに至るまで、ある種狂気じみているとすら言える量と質を両立したコンテンツがこれでもかという程に詰め込まれている。サブストーリー大好きな筆者は軽く200時間はプレイしたし、エキスパンションパックも残らず購入した。ここまで気持ちよくお金を払えるゲームは中々無いだろう。

冒頭に述べた通り、今やルートボックス騒動はゲーム業界の内輪揉めから、政治問題へと変質しつつある。まだ法案は審議中だが、仮にこれが通れば、アメリカ全体で似たような運動が起きるというのは十分に有り得る。世界的な議論に波及する素地も十分にある。まさにこの瞬間、ゲーム業界には大きな変動の波が訪れているのだ。

ただ、国による規制が全てを良い方向に変えていくとは考えづらい。これまで好き勝手やってきた業界への制裁という側面が強いため、“行き過ぎた”規制になる可能性は小さくない。いちゲームファンとして、業界全体が同じ方向を向き、確かな自浄作用を内外に示してくれることを期待したい。出来れば、ガチガチに縛られて身動きできなくなる前に。その際大切になるのは、きっとイウィンスキ氏が語っている「当たり前の良識」になってくるはずだ。

なお、本家のインタビューには『ウィッチャー3 ワイルドハント』の今後の展望や、絶賛開発中である『Cyberpunk2077』に対するコメントも掲載されている。興味のある方は一度参照してほしい。

Source: PC Gamer

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