先日『Fallout』シリーズのフェイクサイトだったことを自ら公表した「TheSurvivor2299.com」。ファンの間で様々な反響があり、中には怒りの矛先をBethesda開発スタッフに向けたファンも。
今回は一連の騒動を振り返り、精密かつ壮大過ぎる釣りサイト「TheSurvivor2299.com」がゲーム業界に残した影響を見てみましょう。
サイトの発見から終結まで
2013年11月14日
海外掲示板"Reddit"のユーザーが,ティザーサイト「TheSurvivor2299.com」を発見。「11-12-13」(2013年12月11日)を意味するモールス信号の発信とともに、謎のカウントダウンが開始。同日、ヨーロッパで『Fallout 4』の商標が登録されたと報告される。
11月19日
『Fallout 4』登録商標は誤報・フェイクだったことが明らかになる。
11月21日
モールス信号が変化。「核の冬がやって来る」(Nuclear winter is coming)というメッセージがメインページに登場。しばらくの間、電話番号と思われる番号が掲載されており、実際に電話をかけたユーザーによると、モールス信号で「CODE7667」と発信されていたとの事。
11月22日
ティザーサイトに初めて暗号文が登場。ユーザーによって解読された文章は、「妹へ。これからインスティチュート(研究所)に向かおうと思う。あそこで何が行われているのか、誰も全く知らないんだ」。
11月23日
新たなモールス信号。「こちらコンコードからブリッジポートへ。クアビン貯水池に到達した。繰り返す。クアビン貯水池に到達した」。(クアビン貯水池はボストンと同じマサチューセッツ州にある)。また、Bethesda Softworks公式サイトの年末セール特設ページで、ロゴの背景に使われていたアートワークがボストンのマップではないか?と話題に。
11月25日
2つめのカウントダウンが登場し、BST(ボストン)というゲームの舞台を暗示したモールス信号が発信。
11月26日
モールス信号更新。クアビン貯水池に続いて、マサチューセッツ州を横断する「国道119号線」を指すと思われる「Number 119」という単語が登場。
同日、ボストン一帯で無線を使った「Fallout」新作の発表が行われたという報告があるも、後にデマだと判明。
11月27日
新たなモールス信号。内容は"ボストンへの核攻撃"。
12月1日
カウントダウンが終了。一時的にティザーサイトの背景が「Vault 119」に更新される。
新たに配信されたモールス信号から「ブラックロウ」という単語が初めて登場。Vaultの支配者と予測される“Overseer”のほか、多数の死者が出てVaultが封印されたことを伝えた。
12月2日
ティザーサイトから“隠しページ”が発見される。「未知の敵を発見した」というメッセージや、「KEY 7667」というコードナンバーを含む新しい単語が続々と登場しファンを悩ませる。
12月3日
ティザーサイトのメインページで「ついに核の冬がやってきた」というメッセージと共に、暗号やモールス信号が更新。暗号からは、デズモンド・ロックハートと関連があることがファンによって明かされる。「これは偉大なるゲームへのカギだ」というメッセージが解読される。
※デズモンド・ロックハート:『Fallout 3』のDLC第4弾「Point Lookout」に登場した人物。核戦争以前から生きているグールで、もともとは科学者というキャラクター。汚い言葉を多用し、相手を子供扱いする特徴がある。
12月4日
インスティチュート近くの偵察隊員のメッセージを伝えるモールス信号や、デズモンドのセリフだとされる暗号文がさらに登場。
12月5日
偵察隊員が謎の敵に襲撃されたことがモールス信号で伝えられる。その中の唯一の生存者が、新作の主人公ではないか?とファンから暗号文から浮かび上がった情報をまとめる。
12月7日
突然、カウントダウンで予告されていた12月11日を待たずに「TheSurvivor2299.com」製作者が自らフェイクサイトであると公表、今回の騒動にひとまずピリオドが打たれる。
しかしフェイクサイトだと判明すると同時に新たな騒動が生まれることに。
「TheSurvivor2299.com」を取り巻くファンと公式スタッフ
ユーザー同士のコミュニケーションとニュースサイトの力
この「TheSurvivor2299.com」がここまで話題になったのは、『Fallout』シリーズというブランドの力と熱狂的なファンであることは明らかです。
まず特筆すべきなのが、一連の騒動の仕掛け人が1ファンであること、そして躍起になって1ファンが出題した様々な謎を解き明かすのも、紛れもないファンであったということでした。
モールス信号の解読や暗号文の解読など、これほどまでに熱狂的なファンが多いというのも『Fallout』シリーズがどれだけ人気のあるシリーズかを改めて証明する結果になりました。その点ではフェイク様様と言った感じでしょうか。
またこのユーザーたちによって解読された暗号などは、日本国内外の様々なニュースサイトやまとめサイトに取り上げられ、「TheSurvivor2299.com」の知名度やPV数の向上にさらに拍車をかけることとなりました。
今回の件は、ユーザー同士のコミュニケーション、つまり普段受け取る側が情報を産み出し、まとめサイトやニュースサイトなどを通して改めて情報が発信されるという、ある意味ネット社会の縮図が「TheSurvivor2299.com」の話題に大いに貢献したわけです。
ただしそこにはユーザー側の熱意だけではなく、最後まで沈黙を突き通したスタッフと言う存在が一役買っているのは言うまでもありません。
脇役に徹したスタッフ
さて「TheSurvivor2299.com」がフェイクだと公表するまで沈黙を突き通したBethesda Softworksですが、その中でも広報担当であったピート・ハインズ氏に注目してみましょう。
現在「TheSurvivor2299.com」がフェイクだと公表されてからは批判的なユーザーからの意見に対応しているピート・ハインズ氏ですが、一連の騒動の最中は一切関与しないと言う姿勢をとっていました。
「どんなに巧みなフェイクサイトでも、我々はファンによる噂や予想の一つ。ある意味エンターテインメントの一つとして扱うだけだよ」
Twitter上などではファンの批判にきっちり対応しているようですが、以下の様なやや自虐的なコメントも残しています。
「広報ってのは、まぁ企業の“肉の盾”みたいなものだからね」
騒動中の一貫した"関与しない"姿勢やファンのアフターケアがあったからこそ、フェイクサイトだと公表したあとの騒動がさほど泥沼化しなかった理由かもしれません。
Bethesdaとファンの選択
こうして一時期大きな話題になった「TheSurvivor2299.com」を巡る騒動。大まかな流れとしては、フェイクサイトだと判明するまではユーザーが盛り上げ、フェイクサイトと判明したあとのアフターケアをBethesdaが行ったといった感じでしょうか。
このようなフェイクサイトの騒動はその他にも時や場所を変えてありましたが、ここまで大いに盛り上がることは少なく、いわゆる「炎上」に至るケースが大多数です。しかし今回の「TheSurvivor2299.com」に関しては、フェイクサイトでありながら海外掲示板で一番のトピックに挙がるほどの盛り上がりと、フェイク判明後の炎上や批判が少なかったことが、ゲーム業界、主に各企業の上層部を賑わせています。
このようなPR手法を公式に取り組めばどうなるのか…。
「どうしてフェイクだと教えてくれなかったんだ」とBethesdaに抗議するユーザーもいましたが、ユーザーたちが謎を解き明かしている最中に「それはフェイクだよ」と言われるのもなんだか無粋な気がします。
Bethesdaが選んだ"沈黙"という選択肢がベストだとは言い切れませんが、少なくともベターな選択肢だとは言えるでしょう。それに今までファンのフェイクサイトに対して否定するという選択肢が当然の対応であったゲーム業界に、新しいスタンスを提案したのは大きな一歩だと思えます。
「TheSurvivor2299.com」の一件は、制作者の『Fallout』シリーズに対する造詣や知識の深さと、多様な謎解きの数々から、少なくともゲームの歴史に残る壮大ないたずらとしてファンや開発者の胸に刻まれ、風化することはないでしょう。
制作者も制作者なら、普通なら投げ出してしまいそうな難解なモールス信号に挑戦し続けたマニアックなファン達もファン達であり、改めて北米ゲーム市場の層の厚さを感じられずにはいられない一件になりました。また同時に、このフェイクサイトに粋な対応をし続けたBethesda Softworksの企業イメージがさらに向上したのは言うまでもないでしょう。
これでおしまい…?
実はフェイクサイトだと公表した「TheSurvivor2299.com」がまた新たなメッセージを残しています。
サイトには12.27.13のメッセージ。2013年12月27日ということでしょうか。
やはりフェイクなのか、果たして…
12月27日まで目が離せなさそうです。
2013/12/18日追記:サイトがドメイン切れ。どうやらホントに
「これで、おしまい」
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コメント
コメント一覧 (1件)
フェイクだったけど熱かったよな
ますますFO4が待ち遠しくなった