昨年2023年もさまざまなゲームが話題になったが、これまでのゲーミング市場をふまえ今後の市場はどうなっていくのだろうか。ゲーミング市場のデータを提供するNewzooから、PCとコンソールゲームの各種データをまとめたレポートが公開された。
このレポートからは、ゲーミング市場が拡大を続ける一方、新しいタイトルを開発して成功するチャンスは過去よりも限られている現状が伝わってくる。世界のゲーマーたちは、毎年の最新作よりも、リリースから6年以上経っているような少数のゲームをずっとプレイし続けているようだ。
2023年のゲーミング市場データをチェック
2023年のゲーミング市場全体は、2022年から2.6%成長し935億ドル(約14兆円)の収益。けん引役となったのはPCゲームの方で、コンソール機の市場が前年比で1.7%拡大したのに対し、PCゲームは3.9%の伸びを見せた。
しかし、2.6%という数字自体は目をみはるものではない。2015年から2021年、いわゆる「パンデミック期」を含む期間ではゲーミング市場の全体収益が7.2%増加したが、2022年から2023年は0.4%のマイナス。なお2024年から2026年は2.7%の増加が予測されている。これに伴い、新たに「ゲーマー」となる人の数も、2026年にかけては伸び率が減速していく見通しだ。
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2023年のアクティブユーザー数ランキング
今回のレポートの中でも特に、2023年に人気を博していた具体的なゲームタイトルと、そのランキングに注目したい。
以下はPC、PlayStation、Xbox、Nintendo Switchの各プラットフォームの、「2023年における月間平均アクティブユーザー数」トップ10を集計したもの。PC、PS、Xboxは、中国とインドを除く37ヵ国分のデータ。Switchは米国および英国のデータにもとづく。カッコ内はそのゲームがリリースされた年。
- PCゲーム アクティブユーザートップ10
- PlayStation アクティブユーザートップ10
- 『フォートナイト』(2017年)
- 『グランド・セフト・オートV』(2013年)
- 『コール オブ デューティ』シリーズ(MW2、MW3、ウォーゾーン合算)
- 『EA SPORTS FC 24』(2023年)
- 『ロブロックス』(2006年)
- 『ロケットリーグ』(2015年)
- 『マインクラフト』(2011年)
- 『レインボーシックス シージ』(2015年)
- 『エーペックスレジェンズ』(2019年)
- 『フォールガイズ』(2020年)
- Xbox アクティブユーザートップ10
- 『フォートナイト』(2017年)
- 『コール オブ デューティ』シリーズ(MW2、MW3、ウォーゾーン合算)
- 『グランド・セフト・オートV』(2013年)
- 『マインクラフト』(2011年)
- 『ロブロックス』(2006年)
- 『レインボーシックス シージ』(2015年)
- 『ロケットリーグ』(2015年)
- 『スターフィールド』(2023年)
- 『エーペックスレジェンズ』(2019年)
- 『FIFA 23』(2022年)
- Switch アクティブユーザートップ10
- 『フォートナイト』(2017年)
- 『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(2023年)
- 『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』(2023年)
- 『マリオカート8』(2014年)
- 『マインクラフト』(2011年)
- 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(2022年)
- 『フォールガイズ』(2020年)
- 『あつまれ どうぶつの森』(2020年)
- 『ホグワーツ・レガシー』(2023年)
- 『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018年)
意外性ナシ? トップ10の「平均年齢」に注目
『フォートナイト』が各プラットフォームで1位を独占していることについては、特に意外とは思わないプレイヤーの方が多いだろう。以前からの人気が今なお続いている形だ。
Switchは別として、ランキング上位のタイトルはどのプラットフォームも旧作ばかり。逆に、近年リリースされた新作ゲームの方が少ない。
Newzooは、トップ10に入った各タイトルがリリースされてからの経過時間に注目している。
- トップ10タイトルの、リリースされてからの経過時間の平均
- PC:9.6年
- PlayStation:7.4年
- Xbox:7.2年
- Switch:3.9年
Switchのみ、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』など2023年の新作も入っており、トップ10タイトルの"平均年齢"は3.9年と最も若い。
対して、他のプラットフォームで「2023年の新作」を探していくと、『EA SPORTS FC 24』や『コール オブ デューティ』のような毎年の定番タイトルのほかは、Xboxに『スターフィールド』があるくらい。PCのランキングは、リリースされてから平均9.6年経ったゲーム。PlayStationは平均7.4年経ったゲームで占められている。
昨今はライブサービス型ゲームが発展したこともあり、「リリースから何年も経った人気作ほどさらに有利」な環境であることが示唆されている。2023年もさまざまな新作ゲームが話題になったが、実際にプレイされていたのは「何年も前からサービスが続いている人気ゲーム」ばかりだったようだ。
このような結果が出た背景について、Newzooは以下の4点を各タイトルの「強み」と指摘している。
- プラットフォーム:『ロブロックス』や『フォートナイト』は、個別タイトルというよりデジタル上のゲーミングプラットフォームとして機能。コミュニティを育み、コンテンツ制作や他社ブランドとのコラボに有利
- 年間リリース:『EA SPORTS』や『コール オブ デューティ』は、毎年新作をリリースすることで根強いファンベースを維持できる
- 競技シーン:『リーグ・オブ・レジェンド』や『カウンターストライク2』などは、プロ競技シーンの存在が強み。コアとなるオンライン対戦のループを魅力あるものにしている
- サンドボックス型:『マインクラフト』や『グランド・セフト・オートV』は、プレイヤーの創造力をかきたてるサンドボックス要素が魅力。これがコミュニティの成長へとつながっている
新作ゲームは『フォートナイト』や『ロブロックス』との対決必至
Switchでは新作もランキングに加わっているが、1位はやはり『フォートナイト』。このゲームの強さがうかがえる。実際のところ『フォートナイト』は2023年も、「シーズンORIGIN」や『レゴ フォートナイト』のリリースにあわせてアクティブプレイヤー数が激増したという。ファンにとっては納得の人気継続ぶりだろう。
一方、新作ゲームでの成功を目指すスタジオにとって、今の環境は辛く苦しい。Newzooはゲーム開発スタジオに向けて、「持続発展するプレイヤーベースや、新しいオーディエンスを維持するなら、常に『フォートナイト』や『ロブロックス』と競争状態にあることを頭に入れておくことが不可欠」と述べる。
「ゲームの時間」は減少傾向
ゲーマー全体の数が増えれば、新作ゲームをプレイしてもらえる時間も増えるはず。しかし実際のところ、自宅待機を余儀なくされたコロナ禍の時期が過ぎた後は、平均ゲームプレイ時間も減少傾向にあることが判明。
2021年の第1四半期と比較して、2023年の第4四半期では、全プラットフォーム合算で四半期あたりの平均ゲームプレイ時間は26%も減っている。
プレイ時間の減少に対して、ゲームタイトルの増加ペースは上がっている。Steamではこれまで7万3000以上のゲーム作品がリリースされており、年間の新作数も増加傾向にある。全プラットフォームを合わせれば、さらに多様なゲームに触れられるだろう。
しかしタイトル間では、ゲーマーの時間の奪い合いが過熱していることが察せられる。
1年間でプレイされるのは「6年以上前のゲーム」が中心
「新規フランチャイズのゲームが話題になり、リリース後しばらくは自分もプレイするが、その後は結局、何年も前のゲームや長寿シリーズの新作の方をプレイしている」という点に、実感のあるゲーマーは多いのではないだろうか。
これはアクティブプレイヤー数ランキングだけでなく、「ゲームプレイ時間」のデータとしても再確認できる。世界のゲーマーたちの「ゲームプレイ時間」は、ごく少数の、一部のタイトルにのみ費やされているようだ。
2023年は、すべてのゲーマーのプレイ時間のうち、80%がわずか66作品に占められていた。これはアクティブユーザーのランキングとも相関しており、66作品のうち多くは、リリース後されてから年月の経っている方のゲームだった。
上のグラフは、「リリースから3年未満のゲーム」、「リリースから3年~5年が経過したゲーム」、「リリースから6年以上経過したゲーム」の、2021年から2023年のプレイ時間の割合。
グラフで見ると、2023年は全プレイ時間のうち61%が「リリースから6年以上経過したゲーム」に占められていると分かる。「リリースから3年未満のゲーム」もプレイ時間が23%に伸びたが、「リリースから6年以上経過したゲーム」のプレイ時間は割合がさらに伸び続けている。
このデータは、「長くプレイされ続けるゲームを作るのがいかに難しいかを示している」とNewzooはまとめている。
補足すると『フォートナイト』をはじめ、プレイ時間トップ5のタイトルだけでプレイ時間の27%をも占めている。
「新作」がプレイされる時間は全体のわずか8%
「リリースから3年未満のゲーム」のプレイ時間である「23%」を分解すると、15%分は『コール オブ デューティ』シリーズや『FIFA』シリーズなど、毎年リリースされ、プレイする前からどんなゲームか分かっているような「定番タイトル」が占めている。
つまり、定番タイトルの新作とは異なる「完全新作」としてリリースされるゲームに費やされる時間は、残りのわずか8%しかない。
なお、2023年における「新作」のプレイ時間1位は『ディアブロ IV』(1.4%)だった。しかし『ディアブロ IV』はその名のとおり『ディアブロ』シリーズであり、ゲームのコアの部分は昔から知られている。2位の『ホグワーツ・レガシー』こそゲーム的には「新作」と言えるが、そのプレイ時間は全体のわずか0.8%にとどまる。さらに言うと、こちらもハリー・ポッターシリーズという原作がある。
3位の『バルダーズ・ゲート3』(0.6%)もシリーズもの。同率4位の『エルデンリング』(0.3%)も、ゲームシステムのコアはほとんどダークソウルシリーズを引き継いでいる。その点『スターフィールド』(0.3%)は新規フランチャイズではあるものの、プレイ体験にはエルダースクロールシリーズや、3以降のフォールアウトシリーズに似た部分も多い。
こうして俯瞰すると、たとえ「新作」でも、過去の成功作から要素を引き継いでいるゲームの方がプレイされやすいようだ。もうビデオゲームとは「そういうものだ」という認識でも間違いではなく、それだけテレビゲームというコンテンツが成熟しているとも言える。
今回公開されたレポートは、ゲーマーたちが普段から感じていることをデータではっきりと裏付けるような内容だったのではないだろうか。ゲーミング市場は減速気味とはいえ成長継続中。しかしその一方で新作ゲームは、たとえリリース時には話題になっても長続きしないケースの方がはるかに多い。
したがって『フォートナイト』、『エーペックスレジェンズ』、『コール オブ デューティ』といった人気作は、今後も環境を活かして長くサービスが続いていくことが予想される。既存ファンにとっては喜ばしい話だが、新作ゲームの開発者目線では厳しい競争環境であることは間違いない。
今後、新作のヒットは?
「長く続いているシリーズほど有利。新規シリーズは不利」という傾向は、振り返ってみればゲーム市場に限った話ではない。
エンタメで長い歴史を誇る映画業界でも、ヒット作の続編や旧作のリメイクが長らく行われている。日本の漫画業界でも「カイジ」や「北斗の拳」など積極的なスピンオフが多く行われており、ゲームでもコラボが盛んだ。これらの施策は制作側のコストは少なくファンにとってもうれしいので、一挙両得とも言える。完全新作が少ないことは市場原理に沿っている。
ゲームでも続編やリメイクでしか成功しにくいことは察せられるが、新作で成功するチャンスももちろんある。
2024年はまだ4分の1が終わったばかりだが、既に『パルワールド』や『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』(関連記事)、『Incursion Red River(インカージョン レッドリバー)』(関連記事)、『Gray Zone Warfare(グレーゾーン ウォーフェア)』(関連記事)などの新作が大きな話題となっている。これらのタイトルが、今後のアクティブプレイヤーランキングの常連タイトルとなる可能性もある。
ただし、この中でも一応完全新作と言っていいのは『パルワールド』ぐらいで、その他は続編やヒット作の亜種に近いと言えそうだ。
いずれにせよ、現環境もいずれは変化していく。果たして今後、何がきっかけとなって、どんなゲームが次世代を代表する作品になるのだろうか。現時点ではまったく予想がつかないが、引き続き2024年以降のゲーム業界をウォッチしていこう。
Gaming Device Power Tune for FPS
Source: Newzoo
コメント
コメント一覧 (2件)
シージはPCユーザーのプレイの方が映えやすいから動画はPC民の方が多いんだろうな
ただそれを見てシージをやり始めるヤツ、やり続けるヤツはCS民に多い、と
PCのランキングにはPCでしかできないゲームが幾つか入ってるんも関係してるかもしれない
PCはCSに比べてゲームの選択肢も多いから余計に人が定着しにくいのかもしれんな、あと母数がどうなってるか
pvpとソロないしクラフトゲーは一緒に考えて良い物なんだろうか
ビジネスのやり方自体が異なるから一緒に考えても仕方ないと思うんだけど
ただこの統計的に虹六はCSの方が上だって言うのはちょっとビックリ
このわりに動画で見る機会はPCの方が多いから
編集するPCとプレイするハードが同じだから
アクティブユーザーじゃなくて動画化するユーザーがPCに多いだけなのかな?