ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が2023年に買収し、Firewalk Studiosが開発を手がける新作ヒーローシューター『CONCORD(コンコード)』が、8月24日に正式リリースされた。パブリッシャーとはいえSIEからの本格的なオンライン対戦型FPSということで、興味を持ったゲーマーもいるだろう。
しかし、少なくともPC Steam版での初動は振るわなかったようだ。トラッキングデータからは、リリース初日の過酷な戦況が伝わってくる。
『CONCORD』が正式リリース、しかし...
『CONCORD』がプレイされていない。ベータを経て8月24日に正式リリースを迎えた本作だが、PC Steam版における初日の同時接続数はたったの697人。ゲーミングコミュニティから悪い意味で注目されてしまっている(Steam Chartsの集計では660人)。
この数字だと、そもそも存在自体を知らない方もいるだろう。『CONCORD』はFirewalk Studiosが開発、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが販売を手がける新作ヒーローシューター。PlayStation版を軸に、PC(Steam、Epic Games Store)でも展開するAAAタイトルだ。
プレイヤーは銀河の荒くれ者「フリーガンナー」となり、個性豊かな16人のキャラクターの中からチームを編成。ガンファト型のゲームプレイを軸に、仲間とともに役割分担しながら勝利を目指すというシステムだ。海外向けには『CONCORD』テーマのDualSense ワイヤレスコントローラーも発売され、この新作を盛り上げようとしていた。
クオリティが低かった...?
オープンベータの時点で最大同接数がわずか2,388人と、不穏だった『CONCORD』。何がまずかったのだろうか。
少なくとも「ゲーム自体の出来が悪かった」、「不具合が多すぎた」という意味ではないはず。そもそもプレイヤーが非常に少ないため、ゲームプレイの良し悪しについての議論は進んでいない。ベータでは「楽しかった」という意見も確かにあり、記事執筆時点でSteamレビューも「やや好評」だ。
PSブログでは、コアシステム以外にアクセシビリティの充実ぶりをアピールしていた。範囲にピンを立ててミニマップに反映させる機能や、プレイヤーとオブジェクトの輪郭線の太さを調整する機能。インターフェースのカスタマイズ要素など、さまざまなプレイヤーの要望に応じた設定ができる。
プラットフォーム間でフレンドとのクロスプレイももちろん可能。若干スローペースな試合展開ではあるが、これは万人向けとも言える。決して「製品としてのクオリティが低くてプレイしにくい」わけではないだろう。
有料なのがダメ...?
基本プレイ無料で高クオリティなゲームが増えてきた中で、『CONCORD』は「通常版 4,480円」な点で避けられたという見方もある。
しかしSIEつながりで言うと、『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』は同じ4,480円で初月から同接45万人の大ヒットを記録した。ジャンルはまったく異なるが、『CONCORD』と同じ週にアクションRPGの大作『黒神話:悟空』がリリース。通常版7,590円でも、8月20日にリリースされて既に全プラットフォーム合算で1,000万本を売り上げている。
昨今は基本プレイ無料で高クオリティなゲームが増えているとはいえ、ゲーマーたちが魅力を感じたタイトルは、これまで通りにしっかり購入されていることが分かる。
PRが足りなかった...?
モノを売るには宣伝広告も重要な要素。パブリッシャーであるSIEは、自社はもとより、日本国内向けにも大手メディアなどで宣伝記事や動画もしっかり出している。しかし、(詳細は省くが)どれもパッとしていないことが感じられる。
リリース前からあまり話題にならなかったためか、そこまで広告予算を割かなかった可能性もある。
激戦区に飛び込んでしまった...?
ベータの時点から指摘されていたことだが、この手のゲームには既に人気作が多数ある。ベータ参加者たちの見立て通り、『CONCORD』は厳しい戦いに敢えて挑んでしまった可能性がある。
「ヒーローシューター」というサブジャンルに限らなくとも、オンライン対戦型FPS・TPSの世界はレッドオーシャンの満員状態。『オーバーウォッチ2』、『VALORANT(ヴァロラント)』、『エーペックスレジェンズ』、『Counter-Strike 2(カウンターストライク2)』、『レインボーシックス シージ』、『フォートナイト』など多数の大型タイトルが日々プレイヤー争奪戦を繰り広げている。
10月には「コール オブ デューティ」シリーズ最新作『Call of Duty: Black Ops 6(コールオブデューティ: ブラックオプス6)』が登場。12月には『Marvel Rivals(マーベルライバルズ)』がリリース。ヒーローものではないが、2025年には『Splitgate 2(スプリットゲート 2)』が。さらにVALVEの新作『Deadlock(デッドロック)』も発表された。こちらはMOBA要素が入った三人称視点ヒーローシューターだ。
毛色が異なるがFPSジャンルとしては、タルコフライクFPS『Arena Breakout: Infinite』やブラックホーク・ダウンFPS『デルタフォース』なども期待されている。
このように似たゲームが多数あるとはいえ、『CONCORD』にももちろん独自要素がある。たとえば操作キャラクターを切り替えることで次のキャラクターが強化されていく「クルーボーナス」というシステムなどで、他のゲームとの体験の違いをアピールできている。
しかしどんな独自要素があっても、既に同様のゲームをやり込んでいるプレイヤーが『CONCORD』に引っ越すほどのインパクトは与えられなかったのかもしれない。
この先、「リリース時は注目されていなかったが徐々に話題を集め...」というパターンもあるだろう。しかし今のところ『CONCORD』スタッフによる銀河の冒険は多難なものとなりそうだ。ただし、本家とも言えるPS5板が売れている可能性があることは忘れてはいけない。
なぜこうなった?
あくまでも超個人的な感想だが、正直キーアートとキャラクターに魅力は感じない。キャラクターはプレイヤー自身の分身で、なりたい姿とも言えるが「あえて選ぶならロカか1-OFFかな...」と消極的な選択となってしまった。『Overwatch 2(オーバーウォッチ 2)』などと違い、積極的に「これでプレイしたい!」というキャラクターは少なかった。
SIE自身が「超個性的なキャラクターたち」を謳っているように、尖ったデザインのキャラクターだらけだ。もちろんこれらのキャラクターが好きな人もいるはずで、あくまで筆者の好みに合わなかっただけの可能性もある。
ゲームの第一印象を決める要素がキャラクターだとすれば、次に大事なのは世界観を構築するマップデザイン。こちらもあまり惹かれるものがないと感じてしまった。一度“ガワ”を層とっかえしたバージョンも見てみたい。
それでもたっぷり開発期間を取って制作され、リアルなグラフィックや整理されたUI、フォントや日本語吹き替えもクオリティが高い。初日から6種ものゲームモードや12種ものマップ、16名もの様々なスキルを備えたキャラクターでボリュームたっぷり。さらにはFPSゲームではこれまでにない「マップに残り続ける任意のオブジェクト」などの新規性も見られる。
ストーリーやキャラクターのバックグラウンドや人間関係もしっかり用意され、PCとPS5のクロスプレイにも対応。このように様々な要素が高いレベルで融合したタイトルで、開発のFirewalk Studiosは、シーズン制によるリリース後の精力的なアップデートも約束しており、今後も安心。それでも現時点では“大コケ”と言えてしまう状態だ。
Steam版はなぜこうなってしまったのだろうか。日本のゲーマーで『CONCORD』の存在を知っていたという方は、なぜ買う気にならなかったのか? 購入済みのプレイヤーは正式リリース版をどう感じたのか? 思うところがあればぜひコメント欄で聞かせてほしい。
Gaming Device Power Tune for FPS
Source: Steam
コメント
コメント一覧 (37件)
そのキャラで遊びたいか?への答えが全てだろ
オーバーウォッチの二番煎じで、オーバーウォッチに到底及ばないほどキャラに魅力が無く、オーバーウォッチは無料だがこれは4500円ほど取られる。
誰がやるのこれ。
例えゲーム内容が面白くてもガワが駄目なら手にも取ってもらえない。
OWユーザーです
初めてPV見たとき面白そうとは思いましたが近いゲーム性で無料のOWがあるにも関わらず4000円という価格だったので様子見しました。
近年無料FPSとして出たエックスディファイアントでさえ人口減少して蟲毒状態になりつつあるのでユーザー数が大事なPvPで他にはない強みがない限り有料はかなりの懸念材料だと思います。
ヒーローシューターの中でもトップに位置してるであろうOWとPaladinsが無料なのがでかいと個人的には思う。
結局お金出すくらいならその二つやればいいじゃんって感じる人が多いだろうからFoamstarsみたいにPSPlus会員は少しの間無料とかでまず入り口を作ってあげるべきだったんじゃないかなと思う。
無料かつIPもののガンエボですら持たなかったんだから新規かつ有料で入ろうとするのはさすがに無謀なんじゃないかなぁ…。