アメリカ国防総省は現地時間1月6日付で、米国で活動する「中国の軍関連企業のリスト」を更新した。ゲーム業界ではよく知られるIT企業テンセントなどが新たにリスト入りしており、今後の米中関係を見定める意味でも注目を集めている。
このリストに入ることでペナルティが課されるわけではない。しかし関連する規制に今後連動していく恐れや、企業イメージの悪化につながる懸念があるため、テンセント側のスポークスマンは今回のリスト入りを「明らかな間違い」として米政府を批判している。
テンセントが「中国の軍関連企業」に認定される
テンセントがアメリカ国防総省によって、いわゆる「中国の軍関連企業のリスト」に加えられた(現地時間1月6日付の最新リストは連邦官報に掲載)。
テンセントといえばもはや誰もが知る中国の代表的なIT企業で、その時価総額は記事執筆時点で約4,520億ドル(約71兆円)。日本で最も時価総額の大きいトヨタ自動車(約48兆円)をはるかに上回る規模を誇る。とりわけゲーム業界における高い存在感は、ゲーマーならご存知の通りだ。
FPS界について言えば、タクティカルシューター『VALORANT』を手がけるライアットゲームズの親会社として知られている。また、『フォートナイト』などで知られるEpic Gamesの株式の40%を保有中。2024年10月には、あくまで噂だが、業績が低迷するUbisoftの買収を検討しているといった話も取り沙汰された。
関連スタジオやゲームタイトルには今のところ影響ナシ
アメリカ国防総省では、2021年度国防授権法(NDAA)1260H条に基づいて、米国で活動する中国軍関連企業のリストをとりまとめている。軍関連企業とは、中国人民解放軍と、情報共有など何らかの形でつながっているとされる企業だ。テンセントは今回、中国最大規模の電気自動車用電池メーカーCATL(寧徳時代)などとともに軍関連企業として追加された形だ。
この「1260H条リスト」に入ること自体は、何らかの制限・制裁が課されることを意味しない。上述したゲームタイトルにも、速やかに何らかの規制がかかることはないと解釈できる。
とはいえBloombergなどでは、過去の事例と同様にこれを「ブラックリスト入り」と表現している。リストに入った企業には、米国での大統領令14032と連動し、投資制限などの形で間接的な規制がかる恐れがあるからだ。また、たとえ何の制裁もなくても、企業イメージの面において他社との取引に影響するリスクはある。
テンセント側は「明らかな間違い」と批判
テンセント側は、今回のリスト入りを「(米政府の)明らかな間違い」と述べ、リストからの除外を求めている。テンセントのスポークスマンDanny Marti氏はThe Vergeを通じて、テンセントは軍事企業でもなければ、軍事関連のサプライヤーでもなく、リスト入りによる同社の事業への影響はない旨を説明している。
2021年には中国のスマートフォンメーカー「シャオミ」が、リストからの除外を米裁判所に求め、勝訴したという出来事もある(ロイター)。テンセントも同様に、リストから外れる可能性は残されている。
今回の報道を受け、テンセントの株価は1月7日の香港市場で、終値ベース-7.28%の大幅下落。国内経済の再活性化をはかる中国政府にとっては頭の痛いニュースとなった。上では関連するタイトルに影響はないと解釈したが、投資家筋は「収益に影響する」と判断した様子。
高関税政策など対中強硬姿勢を示すドナルド・トランプ氏の大統領就任を1月20日に控えた今、米中関係のさらなる緊張の高まりが警戒される。
Gaming Device Power Tune for FPS
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