Respawn Entertainmentの『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』では現地時間11月2日から新シーズン「エスケープ」がスタート。今回はシーズン開始に先駆けて、5名の開発スタッフに話を伺う機会をいただけました。新ステージ「ストームポイント」について話を伺った前編に引き続き、後編では新キャラクター「アッシュ」の質問を聞いていきます。
APEX シーズン11インタビュー後編「アッシュについて」
本日のゲスト
Steven Ferreira:チームディレクター。ストームポイントのディレクション担当。
Rodney Reece:レベルデザイナー。ストームポイントのデザイン担当。
Ashley Reed:シニアライター。アッシュの世界観担当。
Devin Weise:デザイナー。アッシュのデザイン担当。
John Larson:ライブバランスデザイナー。C.A.R. SMGやその他のバランス担当。
アグレッシブなオフェンスキャラクター「アッシュ」
EAA!!:先程まではシーズン11の目玉コンテンツであるストームポイントに関して様々な情報を教えていただきましたが、シーズン11の新要素はマップだけではありませんね!というわけでそろそろアッシュのことも聞いていきたいと思います。まずは彼女のパッシブですが、偵察系の能力ですけどカテゴリはオフェンス型なんですよね?
Devin:ええ。彼女の能力は「戦闘を仕掛けること(イニシエイト)」を中心に作っています。とてもアグレッシブなキャラクターで、戦略的な進行方向を先導するだけでなく、戦闘においても真っ先に仕掛けていくレジェンドになっています。
例えばフレンドたちと一緒に遊んでいる時に、3人のうち1人は指示を出す役をすると思うんですよ、いわゆるショットコーラーですね。そういうショットコーラータイプのプレイヤーが使うレジェンドになると思います。パッシブからどこで戦闘があったか、どこに敵が向かったかなどの情報を得て、チームの進行方向を決める。そして実際に接敵すると、アークスネアを決めるからフェーズティアで突っ込んで攻撃しよう、となるわけです。
戦略上と戦術上両方においてアグレッシブなキャラクターがアッシュだと思っていて、だからこそのオフェンス型です。
アッシュ:相性が良いレジェンド3名
EAA!!:では開発的には、そんなアッシュと1番相性の良いレジェンドは誰だと思いますか?
Devin:組んでみると面白い組み合わせはいくつかあるのではないかなと思っています。まずは同じシミュラクラム(人造人間)仲間のレヴナントですね。ウルト相性がとてもいい。アッシュの欠点の1つは、ウルトが一方通行だという点なので、万が一突入先でヤバい状況になったら、そこからの脱出が困難なんです。でももしレヴナントと一緒のチームですと、突入前にデストーテムを置いてもらえば無事に戻ってこれますから。
リコン型からも相性が良いレジェンドを挙げるならば、シアかブラッドハウンドですね。こちらはアッシュのパッシブと相性が良くて、アッシュが敵の大体の方角を突き止めれば、シアやブラッドハウンドはそこから細い位置を特定できます。なのでアッシュと組むなら、とりあえずこれらの3レジェンドですね。
EAA!!:まずレヴナント、そしてリコン型からシアかブラッドハウンドですね、ありがとうございます。
アッシュ:パッシブスキルの使い方
EAA!!:ところでアッシュのパッシブ、3分間も表示するのは大分強くないですか?
Devin:それに関してはですね...アッシュのキャラクターデザインが、とにかく戦闘に突っ込むためのものという話は先程しましたね。その上でアッシュのパッシブの意図ですが、あれはプレイヤーに「どこで戦闘が発生したか」を知ってもらうためのアビリティです。なので全体の流れがわかるぐらいには、デスボックスを表示させつづけないといけない、という縛りはありました。
例えばこっちのデスボックスは割と前に発生したもので、向こうのデスボックスはつい最近できたばかりだから、他プレイヤーは大体あっちの方角に移動しているんだな、じゃあ丁度かち合うように向こうに回り込もう、みたいな感じですね。実は開発中には時間制限がなく、常に表示され続けていた頃もあったんですけど、それだと流石に情報量が多すぎたので今の仕様になったんです。
なのでその頃と比べると、今の3分間という長さは丁度いいのかなという感じです。狙って漁夫プレイができるほど精確な情報はわからないけど、相手が大体どこに向かっているかはわかるし、戦いに行きたければ戦える。そういうところに落ち着いたのではないかなと。
アッシュ:データナイフのモーション
EAA!!:そういえばパッシブといえばもう1つ、データナイフを差し込めばアタッカーの行き先が見えるという機能もありますけど、テストプレイ時は演出があっさり気味なのが気になりました。あれも演出を削ったなどのいきさつがあるんでしょうか?
Devin:現状はたしかサウンドエフェクトが鳴るだけになっていましたっけ。まずアレをやっている最中は武器を落としているので、あまり長い演出にはしたくなかったんです。
『タイタンフォール2』のテイクダウンアニメーションのような、長くてかっこいい演出を欲しがるプレイヤーも多いだろうなとは思っていましたし、実際に試してはいました。ただ『APEX』の戦闘テンポにアレを入れてみると、データナイフをぐっさり差し込むのはかなりテンポが悪くて。なので全体のフローを重視して、今の仕様になりました。
ゲームプレイ体験のために『タイタンフォール2』要素の1つをカットするのは、私たちにとっても残念でしたが、完全に切り捨てたわけでもないので、丁度いい着地点に落ち着いたと思っています。
アッシュ:アークスネアは意図的に遅くしてある
EAA!!:アッシュの戦術アビリティ「アークスネア」に関しての質問なんですけど、移動速度が若干遅いような気がしました。これは意図的な調整でしょうか?
Devin:ええ。まずアークスネアの着想は『タイタンフォール2』のLG-87サンダーボルトから得ているんです。移動速度が遅く、近くの敵に放電する電撃弾を発射する武器でしたね。現状のアークスネアはとてもクセが強く、慣れが必要なアビリティになっています。敵プレイヤーの移動速度などをちゃんと考えて撃たないと当てにくい。
そういう仕様にした理由は、やられる側のプレイヤーにも回避の機会を与えるためです。こっそり撃って相手をハメる、というアビリティではなくて、ビジュアルエフェクトとサウンドエフェクトの両方を派手に作ってあるんですね。ちょっと遠く、例えば30mも離れたところから相手に投げれば、確実に気づかれて対策を取られる、そういう性能を目指しました。きちんと考えて撃たないと、簡単に回避されてしまう。
もちろん、ここらへんのパラメーターは全部あとから調整が可能ですから。ただローンチ時としての考えは、ハメ技にならないように意識した感じです。
EAA!!:なるほど、実際のパフォーマンスにも要注目なんですね。
ワットソン:インターセプションパイロンの仕様変更
EAA!!:アークスネアといえばもう1つ、テストプレイ時にワットソンの「インターセプションパイロン」に消されなかったのに気がついたんですけど、これも意図的な仕様でしょうか?
Devin:それに関してはワットソン側のバランス調整が原因ですね。投てき物がパイロンの内側で静止した時にのみ、消えるようになったんです。なのでもしパイロンの効果範囲を通過するように投げたのなら、消えないので正解のはずです。確か今回シーズン11で実装予定の調整ですよね?
John:はい、シーズン11のアップデートに入っていますね。
EAA!!:そういうことだったんですね!どうやら新しいワットソンにもこれから慣れていかないといけないようです(笑)
ワットソン:開発から見た問題点
EAA!!:そういえば、開発から見たワットソンのシーズン10での問題点はなんでしたか?
John:ディフェンス型のレジェンドたちを並べた際に、ワットソンと同じ役割を、ワットソンよりも上手くできるキャラクターが居たのが問題でした。例えばコースティックもトラップで広範囲のエリアを封鎖することができましたが、トラップはステルス性能が高めなのに対し、ワットソンはロビー全体に「わたしはここだよ!」と叫ばんばかりに目立っていますよね。
あとは同じくコースティックとの比較なのですが、『APEX』のハイスピードな戦闘テンポを鑑みた際に、やはりコースティックの方が汎用性が高めなんです。さまざまなシチュエーションに対応できる。トラップのクールダウンは短いですし、ウルトを攻撃的に使うこともできる。
一方でワットソンの方を見てみると、アビリティを使いたい時に限ってアビリティが使えないと感じるのが、1番のストレスの元だなと思ったんです。戦場が変われば、また新しくフェンスが必要になりますからね。なのでまずリキャストを半分にカットするところからはじめました。あとは使い勝手が良くなるように、細かい調整を重ねていったのが、今のワットソンです。
アッシュ:コンセプトデザインはローニンタイタンがベース
EAA!!:アッシュの話に戻りますけど、キャラクターコンセプトやキャラクターデザインについて詳しい話を伺いたいです。『タイタンフォール2』の頃から居たキャラクターではありますけど、今回結構大胆にキャラを掘り下げましたよね。キャラを作り込む上のテーマはなんでしたか?
Ashley:まず、アッシュは私たちがずっと『APEX』でも使いたかったキャラクターでした。例えば、シーズン5のクエストを作っていた時のことですが、当時のデザイナーの1人が部屋の中に入ってきて、唐突に「クエストの最後の報酬はアッシュの生首にするぞ!」と言い出して、でそれを聞いた他のスタッフが全員「は?」と(一同笑)。
まあでも、皆面くらいつつも面白がって、そのクエスト報酬に似合うようなストーリーを考えて肉付けして行ったんです。そんな感じで、とにかくアッシュに関しては皆も結構な熱意を持っているんですよ。キャラクターとして好きですし、『タイタンフォール』の世界からぜひとも引き継ぎたかったですし。なので『APEX』で登場させられるチャンスがあれば、いつも登場させていたと思います。
そのうちに段々とバックストーリーも固まってきて、アッシュならどこに行って何をするかなと考え出したり、どうすれば過去作のボスキャラを違和感なく、プレイヤーキャラという枠に押し込めるかと考えたり。それ以降のコンセプトデザインの部分はDevinさんに丸投げしておきます。(笑)
Devin:そこからはまず『タイタンフォール2』らしさを引き継ぐことを考えて、乗機でもあったローニン・タイタンの性能を応用することにしたんです。開発の初期段階では、アークウェーブとフェイズダッシュが戦術アビリティとウルトでした。そしてさらに何回か調整を経て、私がアッシュにはじめて触れたのはそのあとでした。
その段階では戦術とウルトも固まっていたので、あとは良さげなパッシブをつけたかったんです。でアッシュは確かに陰謀や策謀に長けたキャラクターではありますけど、それ以上に攻撃的な性格でもありますし、直接的な手段を好む性質もありました。わざわざローニンのブロードソードで敵をぶった切りに行くような、ですね。
でも一方で『APEX』はガンゲームで、すべてのアビリティやデザインは銃を撃つことを中心に作られています。じゃあどうすればローニンらしさ、アッシュらしさを出せるのか。ここらへんは結構悩みましたね、リスポーンのないゲームですので、接近されたら超ダメージでワンパンしにくるという性能だと理不尽すぎますし。そこで悩み抜いた上で出来上がったのが、今のアッシュというレジェンドです。
EAA!!:言われてみれば、ウルトを使ってたときは確かに「ローニンっぽいな」と感じていました。それとフィニッシャーも!あの剣で突き刺すモーション、とてもクールですよね。
Devin:あのフィニッシャーは皆さんノリノリで作っていましたね!やっぱ剣はかっこいいので。(笑)
近接武器:今の『APEX』にはまだ合わない
EAA!!:ついでに、ガンゲームだと言われた手前で聞くのもアレですけど、他にかっこいい近接武器とかをカテゴリとして作る予定はあったりします?
Devin:うーん...まあまず、スーパーレジェンド(Heirloom)はそんな試みの1つですね。通常の近接攻撃のスキン違いなだけではあるんですが、これを通して各レジェンドのキャラクターを掘り下げたりしています。ですが近接武器というカテゴリの話になりますと、JohnさんかSteveさんにちょっとバトンタッチしたいですね。
Steve:開発内で試したことはあるんですよ、近接武器。ただ先ほどもDevinさんが言った通り、『APEX』は結局のところガンゲームなので。各銃器やレジェンドごとに適正と感じる間合いはきちんと考えてあるんですけど、至近距離を主体としたプレイングは全く想定していないんです。なので現時点で近接武器は、全く予定がありません。
もちろん、将来的に作る可能性が完全に無いわけではないので、絶対に作らないとは言いませんが、今の『APEX』はもう少し間合いを開けたほうが楽しいように作ってあります。
日本の『APEX』ファンへのメッセージ
EAA!!:最後に、日本のファンの皆さんへメッセージをお願いします。
Steve:では私から。皆さんにシーズン11を楽しんで頂けたら幸いです。私たち開発一同、やはり皆さんが楽しんでくれているのを見るのが1番の楽しみなので。特に日本の皆さんには、かなり注目しています。
Rodney:私は子供の頃は日本で育ったんです。長野県で、日本育ちのアメリカ人として暮らしていましたが、とにかくアメリカのゲームは日本で一度もヒットしなかったことが強く印象に残っているんですよ。なので日本コミュニティが『APEX』を楽しんでくれていると聞いた時は、本当に嬉しかったです。
Steve:ええ、それぐらい「日本でヒットしている」というのは、私たち皆にとって大きな意味を持っているんです。日本の方にいるスタッフにも、色んな写真を撮ってもらって、それを開発内で回し見しては盛り上がっていまして。
Ashley:たしか、「シブヤ」でしたっけ?イベントをやっていた...
EAA!!:ええ、渋谷ですね、スクランブル交差点の。
Ashley:それを見て、「マジで!?」って大盛りあがりで。タイムズスクエアよりもクールだぜ!って興奮していました。(笑)
EAA!!:そう言って頂けますと嬉しいですね!
Devin:どんな人にも楽しんでいただけるというのは、『APEX』の強みだと思っています。プロでも、初心者でも、誰でも遊べば面白いと思ってもらえるように頑張っていますし、日本の皆さんを始めとした世界各地のコミュニティもそれを後押ししてくれているので、いつも励みになっています。
Steve:あらためて、ありがとうございます。
EAA!!:こちらこそ!素晴らしいゲームをありがとうございます!
スクランブル交差点に『APEX』の広告が張られていたのが、開発スタッフにとっても大きな波紋をうんでいたことが明らかになりました。今年12月には公式グッズストアの”APEXLEGENDS POP-UP STORE”も開店されますが(関連記事)、訪れる予定がある方は写真をツイッターにでも上げれば、開発スタッフに喜んでもらえるかもしれませんね!
今回EAA!!ではインタビューの他にも、さまざまなシーズン11「エスケープ」の新情報をまとめています。そちらのほうも、ぜひともごらんください!
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