新GM就任も、『SWBF2』が大炎上
オスカーがDICEのGM(ゼネラルマネージャー)として指揮を引き継いだのは、『Star Wars バトルフロントII(SWBF2)』の開発が佳境を迎えている時期でした。しかし彼もソダーランドも、最終的に物議を醸すこととなるゲームデザイン上の欠陥、特にルートボックス(ガチャ要素)の問題を十分に認識していませんでした。
オスカーが就任したばかりだったため、ソダーランドは前任者であるパトリック・バッハに責任の一部を転嫁し、自らの責任を軽減することができました。
『SWBF2』のルートボックス論争は、EAとDICEの評価を地の底に落としました。この問題は単なる論争にとどまらず、深刻な金銭的打撃をもたらすことになります。
EAの幹部にとって、収益の損失は何よりも重要な問題です。そのためこの事件は、DICEの運営に大きな影響を与えました。
『SWBF2』の問題を抱えながらも、DICEは次作『BFV』の開発に向けて結束を図りました。この時ソダーランドは『BFV』のゲームビジョンと進行を監督するため、より直接的な役割を担うことになります。この動きは同時期に、BioWareが『Mass Effect: Andromeda(EA Play / 日本語はなし)』の開発を進めていた状況とも重なります。
2017年に発売された『Mass Effect: Andromeda』は、期待外れのレビューと売上低迷により、BioWareの主導権に対する信頼を著しく損ねました。
結果的に、ソダーランドは2年間で2つの「失敗作」を監督した形となり、EA内での立場も揺らぐことになります。
『BFV』へのこだわりと失敗
このような背景の中、ソダーランドは『バトルフィールドV(BFV)』を成功させるべく指揮を強化しました。彼は『BFV』を、『BF1』のように記録的な成功をしたタイトルを目指したのです。
2018年、ソダーランドは『BFV』の開発を徹底的に管理し、定期的にプレイテストや技術デモをレビューしていました。彼はプロデューサーやデザイナーをオフィスに呼び出し「正しい方法」でゲームを構築する方法について講義を行い、特にゲームプレイにおける「フィジカリティ」の重要性を強調しました。
フィジカリティとは、“周囲の混沌がプレイヤーに物理的な影響を与えているという本能的な感覚”を指します。これが彼の最大の指令の1つでした。
『BFV』チームは、より強いリアリズムと没入感を追求するために、フィジカリティを重視した制作方針に従いました。しかし、この方針は、ゲームを完成させるために必要なコンテンツ制作のリソースを奪い、結果的に重要なパスコンテンツ(ゲームの主要要素)の遅延を招きます。
フィジカリティ推進(の悪影響)が最も顕著に表れたのは、『BFV』の発表トレーラーでした。このトレーラーは、第二次世界大戦を舞台としながらも“奇抜な”コスメティックや非伝統的なデザインが目立つ内容で、ファンから大きな反発を受けることになりました。
トレーラーは、ゲームのテーマである第二次世界大戦の舞台設定と、課金要素として導入された“奇抜な”コスメティックとの間に存在する断絶を露呈しました。
『BFV』が最も売れなかったタイトルに
『BFV』は、ライブサービスゲームモデル採用後に発売された、初のバトルフィールド作品でした。この新モデルでは従来のDLCパック販売ができなくなり、代わりにゲームプレイに影響を与えないコスメティック要素(キャラや武器などのスキン)で収益を上げることが求められたのです。
しかし『SWBF2』のルートボックス論争の影響で、DICEはライブサービスゲームに対する不安を抱えていました。トレーラーへの批判を受けてソダーランドは奇抜な衣装を削除し、歴史的に正確な(しかし平凡な)コスメティックを採用する方針へと転換することになります。
また、彼はフィジカリティ機能をさらに強化し、『BFV』を美しくリアルな第二次世界大戦への回帰として位置づけることを目指しました。
『BFV』は当初の予定より1か月遅れの2018年末にリリースされたものの、ゲームは未完成の状態。典型的な「ライブサービスで問題を修正する(発売後にアップデートで改善する)」という手法に依存する形となってしまいました。
さらに限定コスメティックのデザインが不評であったことや、発表トレーラーの失敗による予約数の低迷が重なり、全体的な売上は伸び悩むことに。結果、『BFV』はメインラインのバトルフィールドシリーズの中で最も売れ行きが悪いタイトルとなり、BFフランチャイズの評価に大きなダメージを与えました。
救世主、『Apex Legends』様登場
ソダーランドの3年間で3つの失敗(『Mass Effect: Andromeda』『SWBF2』『BFV』)は、EAのCEOであるアンドリュー・ウィルソンにとって我慢の限界でした。ソダーランドは『BFV』の発売直前にEAを去り、新しいゲームスタジオ「Embark Games(THE FINALSやARC Raiders)」を設立することになります。
EAは短期的な株主価値を重視する企業です。『BFV』の商業的失敗は、会社の年間収益を危機にさらすハメに。
この状況でEAに残された最後の2つの希望は、BioWareの『Anthem(アンセム)』とRespawn Entertainmentの小規模プロジェクト『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』。
結果的に『Anthem』は失敗に終わりましたが、『Apex Legends』はEAを救う成功を収めました。
この成功により、RespawnはEA内での評価を飛躍的に高め、Respawnのリーダーであるヴィンス・ザンペラは、ソダーランドの後任であるローラ・ミーレから即座に信頼を得ています。
引き抜きや移籍で崩壊するDICE
ソダーランドは、DICEの近く(15分程度の距離)に新スタジオEmbark Gamesを設立後、人材の引き抜きを開始。彼はDICEのコンテンツ/アート責任者、運営責任者、研究開発責任者、そしてシニアクリエイティブディレクターの1人を引き抜きました。さらに、DICEのアーティストやゲームエンジン開発者、運営担当者も採用しました。
他のシニアリーダーたちも、この機会を利用してUbisoftやActivision Blizzardなどの他社へ移籍します。
注目すべき点として、ソダーランドは『バトルフィールド』のデザイナーやプロデューサーを引き抜くことはありませんでした。これは彼が『BFV』に過干渉したことが、BFチーム内で悪い感情を生み出していたためと考えられます。ソダーランドの退任後、DICEは人材の流出と予算削減に苦しむことになったのです。
一方、Respawnのヴィンス・ザンペラはEAの非スポーツゲーム部門における新たなトップとなり、ローラ・ミーレの信頼を得ていました。この変化により『Star Wars バトルフロント3』はキャンセルされ、DICE L.A.はヴィンスの指揮下に移行。『Apex Legends』のコンテンツ制作を担う、工場的な役割を果たすようになりました。
一方のDICE本体は、『BFV』のライブサービスに集中するよう指示されました。BFV開発チームはソダーランドの“侵略的な”監視から解放され、次のビッグゲームのデザインを進めることができるようになったのです。
残されたベテランのBFチームは『BFV』の「太平洋戦争」アップデートを完成させ、新メンバーたちは次回作『BF2042』となるプロジェクトの取り組みを始めました。
『BF2042』の失敗と人材流出
2021年に発売された『BF2042』は、EAの期待を大きく下回る結果となりました。この失敗の原因は複数ありますが、大きな要因の1つは、DICEがプレイヤーの希望に対応できなかったためです。ニーズを正確に把握できず、結果として『BF2042』は多くの批判を受けることになりました。
『BF2042』はGen4(PS4/Xbox One)とGen5(PS5/Xbox Series X|S)の両世代コンソール向けに同時開発されたため、ゲームエンジンに技術的な課題と苦しみをもたらしました。さらに、上記のEmbark Gamesによる人材流出も、DICEの技術的な能力に大きな打撃を与えた要因の1つです。
『BF2042』は、DICEとオスカー・ガブリエルソンにとって最後のチャンスだとされていました。『BF2042』が失敗に終わると、EAは大規模な改革を実施。DICEの上位陣は一掃され、スタジオの方向性が大きく転換されることになったのです。
「バトルフィールドのCoD化計画」
EAのビジネス担当者たちは長年、Activisionの『コール オブ デューティ(CoD)』シリーズが毎年稼ぎ出す莫大な収益を羨望の眼差しで見てきました。そして、「バトルフィールドシリーズはなぜCoDのようになれないのか?」と問い続けていました。
『BF2042』の失敗で、EA内での『バトルフィールド』の立場はさらに悪化。そしてこの状況は、Respawnのヴィンス・ザンペラとEAのローラ・ミーレにとって、「バトルフィールドをCoDのような成功を収めるシリーズ」に変えるという夢を進める機会となったのです。
2021年、DICEのGMであったオスカー・ガブリエルソンは辞任を求められ、その後、元Ubisoft GMのレベッカ・クータズがDICEの新たなGMに就任します。
同時期に、EAは『コール オブ デューティ(CoD)』シリーズのGMであったバイロン・ビードを採用し、バトルフィールドフランチャイズのGMとして迎え入れました。『バトルフィールド』の管理はロサンゼルスのバイロンに移管され、DICEは『バトルフィールド』スタジオのグループに参加するように言われました。
EAは、シアトルに新スタジオ「Ridgeline Games」を設立するため、Haloの共同クリエイターであるマーカス・レトを採用。この新たな構想は、Ripple Effect(ロサンゼルス)、DICE(ストックホルム)、Ridgeline(シアトル)が協力し、『CoD』シリーズのInfinity Ward、Treyarch、Sledgehammerのように、バトルフィールドを複数スタジオ体制で構築する計画が立てられました。
BFモバイルの開始と終焉
さらに、モバイルゲーム開発スタジオであるIndustrial Toysは、『バトルフィールド モバイル』の制作を担当することになりました。
「BFフランチャイズ管理権」の消失と、EAによる「BFのCoD化計画」、そしてバイロン・ビードとマーカス・レトの「DICEに対する態度」は、DICEに残っていた古参のバトルフィールド開発者たちを追い出す結果となります。
以前の『BF』責任者であったアレクサンドル・グロンダルは、ソダーランドが設立したEmbark Gamesへ移籍。また、バトルフィールドのクリエイティブおよび制作スタッフの多くは、ストックホルムに新しいスタジオ「TTK Games」を設立し、独自の道を歩み始めました(※TTK Gamesはオンラインシューターを開発中)。
パンデミック(コロナ)とそれに伴う世界経済の混乱は、EAの当初の「BFのコール オブ デューティ化計画」に悪影響を与えました。その影響は、いくつかのプロジェクトやスタジオに直接的な打撃を与える形で現れます。
モバイルゲーム開発を担っていたIndustrial Toysは、2023年1月に閉鎖されました。同時に『バトルフィールド モバイル』の開発も中止され、EAのモバイル戦略は大きな後退を余儀なくされます。
シアトルに設立予定だった新スタジオ「Ridgeline」は、パンデミック後も開設されることはありませんでした。このプロジェクトの中心人物であったマーカス・レトは2024年にEAを去りましたが、退社は良好な条件ではなかったようです。EAの新スタジオ計画は頓挫することになりました。
コメント
コメント一覧 (60件)
bf4はあり得ないほど楽しかった。
ビークルも破壊表現もこだわりプレイ(敵地にリスポーンビーコンおいてサプ付き隠密部隊ごっこ)も本当楽しかった。
ANTHEM懐かしいな
アプデ打ち切りはまだ許せないわ
デルタデルタうるせぇな、俺はBFがプレイしたいの
デルタフォースやればよくね?
近々pad対応してくれるらしいし、ありゃ完全に俺たちの愛したbf3やbf4の後継だ。基本プレイ無料だし。
よしんばDFやらないにしても、フルプライスでPV詐欺のゴミ掴まされる可能性がある以上、もう発売日には買わねえよ。
デルタフォースとかいう俺達がBFで批判してた要素あるゲームをやるわけねえだろ
無名の兵士になってロードアウト制限もないゲームがやりたいの!スキルとかキャラとかあんのおかしいだろ〜2042の頃散々言われてたのにわからないか
じゃあ一生BF4とかやっといたら?
人いないけど
ロードアウト制限がないのがいいなら4、1、Vは遊べないし、無名の兵士がいいなら2042は遊べないね
さっさとこんな終わったタイトル見放してCoDでもやってたら…?
ロードアウト制限も無いしキャンペーンにも出てこないような雑兵選べば実質無名の兵士だよ、良かったね
ヒーローでも特殊部隊でもオペレーターでもないただのモブ兵士になって戦争ごっこ出来るゲームでそれなりに人が集まるのもうこのゲームしかないんだよ
マジで頼むぞ
デルタフォースってゲーム調べてみな。
オペレーター制度ある時点でみんなが求めてるBFじゃありません笑 キャラクターに名前あったらだめなんだよ
前半読みましたかね
CoDになるのも差別化できなくて悪手過ぎるだろ何考えてんだ
CoDみたいなBF作るよりもアクチの傘下入ってBFみたいなCoD作る方がまだ未来あるだろ
英文そのまま翻訳したような記事・・・ DICEを抜けた後も別でゲーム開発をしていたスタッフも失敗をまた経験してるしシリーズに関わったスタッフはなんか恵まれないね
「ような」ではなく、まさに「英文をそのまま翻訳した記事」でしょう。
はじめからそのような断りがあるように。
テスト
期待しすぎるなって言われても…
期待値地面にめり込んじゃうよ…
bf1が一番おもろかった
バトルフィールドってタイトルにしなければいいのでは
そうすると今度なんでBFシリーズをなくしたんだ!ってプレイヤーやファンに叩かれるのでは