剣撃コンボと高リスク・ハイリターン設計のすべて
Blizzard Entertainmentは、『Overwatch 2(オーバーウォッチ2 )』シーズン20で登場する新ヒーロー「ヴェンデッタ(Vendetta)」をついにお披露目。巨大な両手剣を振るう“近接DPS”という、シリーズでも最も挑戦的な役割を担うキャラクターであり、リスクとリターンを極端に突き詰めた設計だ。
本記事では、日本メディア向け合同インタビューの内容を基に、「アビリティの意図」「デザインコンセプト」「ストーリー背景」「メタ・競技シーンの展望」の4つの観点から、開発者の言葉をQ&A形式で詳しく掘り下げる。
ヴェンデッタを使いこなしたいプレイヤー、シーズン20の環境変化に備えたいプレイヤー、新ヒーローの開発思想を知りたい読者に向けて、理解の助けとなるなっているので、ぜひご覧いただきたい。
【OW2】近接DPSヒーロー「ヴェンデッタ(Vendetta)」開発インタビュー
インタビューで得られた内容を、分かりやすく分解してお届けしよう。

Q. ヴェンデッタ(Vendetta)はどんなヒーローですか?

A.「ヴェンデッタは、いわゆる“突っ込んで戦う近接DPS”として設計しました。大剣を振り回して、短い時間の中で一気に敵を倒し切る、かなり攻撃的なプレイスタイルを想定しています。もちろん、リスクも大きいです。敵陣に踏み込む以上、こちらも狙われやすくなりますから、その分だけ操作するプレイヤーには判断の速さが求められます。でもその反面、うまく使えた時の爆発力はこれまでのヒーローと比べても非常に高くて、プレイ中の緊張感や手応えはかなり強いと思います。
従来のDPSのように射撃で削るというより、“どのタイミングで仕掛けるか”が重要で、それが決まれば一気に試合を動かすことができます。アグレッシブなプレイが好きな方や、短期決戦型のキャラを求めていた方には、非常に刺さるヒーローになるはずです。」
- 要点
- 短時間で敵を倒す近接DPS
- リスクとリターンが極端に大きい
- 突入タイミングの判断が重要
- 攻撃的プレイヤーと好相性

Q. メイン攻撃の特徴を教えてください。

A.「メイン攻撃は巨大な大剣“パラタインのグレートソード(Palatine Greatsword)”を使った3段コンボが基本になります。最初の2段は横に大きく振る水平斬りで、コンボの流れを作る部分ですね。その後に3段目として縦方向の強力な斬り下ろしが入ります。この3段目はクリティカル扱いなので、命中すれば本当に大きなダメージが出ます。
ただし、そのぶん3段目は当てるのが難しくて、位置取りやタイミングをしっかり計る必要があります。いわば“リスクを取って高火力を取る”というヴェンデッタのコンセプトが、このコンボそのものの中に組み込まれているようなイメージです。熟練したプレイヤーほど、この3段目で戦い方がまったく変わってくると思います。」
- 要点
- 3段コンボ(横→横→縦)
- 3段目はクリティカル級の大ダメージ
- 当てにくいぶん威力が高い
- プレイスキルが強く反映される
Q. 機動アビリティについて詳しく教えてください。

A.「近接DPSなので、まずは“どうやって距離を詰めるか”が重要なんですよね。そのために、ヴェンデッタには二つの大きな移動アビリティを用意しています。
一つ目は“ワールウィンド・ダッシュ(Whirlwind Dash)”です。彼女が剣を構えながら素早く回転し、その勢いのまま前方へ突進するアビリティで、単純に距離を詰めるだけでなく、敵の退路を追ったり、不利な位置を一瞬で変えたりできます。回転しながら進むので攻撃判定も付いていて、攻撃と位置取りを同時に行えるのが特徴です。
二つ目は“ソアリング・ストライク(Soaring Strike)”。これはもっと大胆な移動で、一度大剣を前に投げ、剣が刺さった地点に向かって彼女自身が大跳躍します。さらに、着地後すぐに出す最初の攻撃が、通常コンボの3段目に相当する強力な縦斬りに変化します。つまり“剣を投げる → 飛び込む → 着地して即フィニッシュ級の攻撃”という流れが組めて、一気に勝負を決めるためのアビリティなんです。」
- 要点
- 高速接近用アビリティを2種持つ
- ワールウィンド=攻撃+位置取り
- ソアリング=近接距離へ一瞬で到達
- 接近からフィニッシュまで一気に繋がる
Q. 防御手段は?

A.「突っ込むヒーローである以上、生存力がないとゲームにならないので、防御面も工夫しています。それが“ウォーディング・スタンス(Warding Stance)”です。これは右クリックで発動する防御姿勢で、発動中は専用のリソースを消費しながら、さまざまな攻撃を軽減・無効化できます。
具体的には、遠距離攻撃は約35%ほど軽減しますし、近接攻撃は完全に無効化できます。つまり、近接同士の真っ向勝負に持ち込んだ場合、ヴェンデッタ側がかなり有利になります。さらに防御姿勢のまま左クリックをすると、前方に衝撃波のような攻撃を飛ばせるので、“敵に近づく前に少し削っておく”という使い方もできます。
もちろん、防御リソースは有限なので“いつ使うか”が重要です。攻撃と防御の切り替えが、他のヒーロー以上に重要になると思います。」
要点
・遠距離を軽減、近接を完全無効化
・防御しつつ攻撃も可能
・防御リソースの管理が必要
・攻守の切り替えが重要
Q. パッシブとアルティメットは?

A.「パッシブについては、彼女が“攻撃を受けることで動き出す”ような性質を持っています。具体的にはダメージを受けた直後に、移動速度と攻撃速度がしばらく上昇します。敵の攻撃を受けながらでも、その勢いを利用して一気に踏み込むことができるので、接近戦の中でテンポよく攻撃を続けられるんです。
アルティメットの“サンダリング・ブレード(Thundering Blade)”は非常に強力で、3段階のチャージが可能です。チャージが進むほど威力が上がり、最大チャージだと約400ダメージに到達します。しかもバリアやオーバーヘルスを貫通するので、ほとんどのヒーローを一撃で倒せてしまうほど危険な技です。撃つタイミングを見誤ると無駄になりますが、決まれば状況を一変させるほどの力を持っています。」
- 要点
- 被弾を攻勢に変換するパッシブ
- 最大400ダメージのULT
- バリア・オーバーヘルス貫通
- 一発逆転が狙える大技
Q. ラッシュ構成やダイブ構成との相性は?

A.「ヴェンデッタは、ラッシュとダイブの両方で活躍できると思っています。ラッシュ構成について言えば、“短い時間で後衛に飛び込んで火力を出す”という性質が非常にマッチしていて、ウィンストンなどのダイブ系タンクと組んだとき、敵の支援役を一気に崩すような動きができます。ダイブ構成でももちろん強力で、初代のDPSドゥームフィストを使っていたプレイヤーや、トレーサーのように“入って出ていく”リズムが好きな人には、とても扱いやすいキャラになると思います。短時間でインファイトを終わらせるタイプなので、前線を崩す役として自然に編成に収まるはずです。」
- 要点
- ラッシュ/ダイブ両対応
- 特にウィンストンと好相性
- DPSドゥームやトレーサー経験者向け
- 後衛を一気に崩す役割
Q. デザインが“剣闘士”となった理由は?

A.「開発中のプロトタイプで、“大剣を投げてそこへ飛び込む”というアクションが非常に魅力的で、それを違和感なく表現できるキャラクター像を探した結果、女剣闘士(Gladiator)が最もしっくりきたんです。そこから、ローマの剣闘士が着ていた装備を参考にして、例えば片腕だけを覆う“マニカ(Manica)”や、スタッズ付きの“カリガ(Caligae)”に似た足装備など、歴史的なビジュアルを取り入れながら、オーバーウォッチらしいスタイルに落とし込みました。巨大な剣は完全にアニメ的な誇張ですが、全体としては“ローマ帝国の剣闘士をOWが解釈したらこうなる”というイメージです。」
- 要点
- 剣を投げて飛び込む動きを自然に見せるため
- ローマ剣闘士をベースにしたデザイン
- 巨大剣のアニメ表現をOW風に融合
- 歴史+ファンタジーのミックス
Q. 狼モチーフの理由は?

A.「これはローマ神話に登場する“ローマの牝狼”が由来です。ヴェンデッタの通り名は“La Lupa(ラ・ルーパ)”で、これは直訳すると“牝狼”なんですね。彼女のUIやアイコンにも狼の意匠を入れていて、“野性的で、失った帝国を取り戻そうとする戦士”というテーマを象徴しています。ヒーローの性格やストーリー背景とも自然に結びつくので、デザイン面でも非常に重要なモチーフになりました。」
- 要点
- ラ・ルーパ=牝狼が通り名
- ローマ神話が直接モチーフ
- UI・アイコンにも狼要素
- 復讐と再起の象徴として機能
Q. タロン(Talon)との関係は?

A.「まだ全部の情報を公開できる段階ではないのですが、彼女の父親はタロンの元メンバーです。彼の死に対してヴェンデッタは強い理不尽さを感じていて、“奪われたものを取り返したい”“自分が受けるべきだった立場を取り戻したい”という想いが、彼女の行動原理になっています。復讐というテーマが大きく関わってくるキャラクターなので、今後の展開でも重要な位置づけになると思います。」
- 要点
- 父は元タロン構成員
- 父の死が復讐の起点
- 奪われた立場を取り戻す物語構造
- 今後のストーリーの中心要素

Q. なぜこのタイミングで近接DPSを追加した?

A.「実は、近接DPSへの要望はプレイヤーから非常に多かったんです。ただ、そのまま追加するとゲームバランスを崩してしまう可能性が高く、どうやって実装するかを長い時間かけて検討していました。
そんな中、ヴェンデッタの初期プロトタイプが非常に良い手応えで、“この方向なら実現できる”と判断したんです。特に、大剣を使った攻撃と機動力の組み合わせ、そしてプレイ中の緊張感は、今までのヒーローにはないものでした。そこから本格的に開発を進め、“プレイヤーに提供する価値がある”と確信できたので、このタイミングでの実装になりました。」
- 要点
- 近接DPSは多くなく、長年プレイヤーから要望
- バランス面の課題が大きかった
- プロトタイプの成功で実現
- プレイ体験として新しい価値提供が可能に
Q. OWCSなど競技シーンでの活躍はどう見ていますか?

A.「社内テストであらゆる状況を試しましたが、やはり最終的には選手次第だと思っています。彼女はスキル天井がかなり高いので、本当に強さを引き出せるのはトップレベルのプレイヤーでしょう。ダイブ構成やバックラインへの侵入を得意とするチームなら、彼女の特性を最大限に活かした戦術が出てくると思います。
一方で、弱点も確かにあるので、プロシーンではカウンター方法もどんどん開発されていくはずです。OWCSでどのように使われ、どんな対策が生まれ、どんな瞬間が試合を決めるのか、開発としても非常に楽しみにしています。」
- 要点
- 競技シーンでは研究次第で大化け?
- スキル天井が高い
- 対策や新戦術が生まれる余地が多い
- メタ変化を起こす可能性あり
新ヒーロー「ヴェンデッタ」まとめ
ヴェンデッタ(Vendetta)は、攻め続けることで真価を発揮する“本格近接DPS”として設計されたヒーローだ。横斬りから繋ぐ3段コンボ、高速接近技のワールウィンド・ダッシュ(Whirlwind Dash)とソアリング・ストライク(Soaring Strike)、近接完全無効のウォーディング・スタンス(Warding Stance)、最大400ダメージのサンダリング・ブレード(Thundering Blade)など、リスクを取ることで爆発的な火力を引き出す設計になっている。
デザイン面ではローマ剣闘士×牝狼のモチーフが深く組み込まれ、ストーリーでは“奪われたものを取り返す”という強い動機が描かれる。ラッシュ構成・ダイブ構成のどちらにも適性があり、OWCSを含む競技シーンでも研究の余地が非常に大きい。
シーズン20の環境は、彼女の登場によって確実に動き出すだろう。あなた自身は、ヴェンデッタをどんな構成で、どんなプレイスタイルで使ってみたいだろうか? ぜひ実際に触れ、その手で“高リスク・高リターン”の魅力を体感してほしい。
- タイトル:Overwatch 2(オーバーウォッチ2 )
- 発売日:2022年10月5日
- 対象機種:PC / Xbox Series X|S, Xbox One / PS5, PS4 / Nintendo Switch
FPS POWER TUNE
Source: Interview







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