古参タロンエージェント3名の脱退
今回のコミック公開における最も衝撃的な進展として挙げられるのが、これまでタロンに所属していた「リーパー」「ウィドウメイカー」「ソンブラ」という古株メンバー3名がタロンを脱退した点だろう。脱退理由について作中では、「上層部との対立」とのみ語られている。
ここで注目したいのが、今から約4年前に公開された短編小説「コード・オブ・バイオレンス」だ。当時は、リーパーとソンブラによる初の共同ミッション(ウィドウメイカーも協力)を描き、「シーブレン・デ・カイパー博士(現在のシグマ)」の拉致任務を扱った作品、という認識だった。しかし今回の脱退発表を受けた後に読むと、現在のタロン再編と結び付く形で再解釈できるようになった。
以下では、ウィドウメイカーは「神経操作プログラム」による強制加入である点を踏まえ対象から除外し、リーパーとソンブラの脱退理由について、「コード・オブ・バイオレンス」の描写と結び付けて簡単な考察を行う。
リーパーとドゥームフィストの関係性
ドゥームフィスト(アカンデ・オグンディム)とリーパー(ガブリエル・レイエス)の出会いは、マクシミリアンのリークによって逮捕された「世界屈指の影響力を持つ犯罪者」とそれを監視する「オーバーウォッチのエージェント」という立場だった。
その際に交わされた会話と、それに対するリーパーの反応が以下だ。
「貴様はがむしゃらに働き続け、肉体を歪めてまで善なる世界のために尽くしてきた。その末に、何が残った? この世界の仕組みは、欠陥のある体制というわけではない。分断を生み出し利益を得る犯罪者が報われ、守られるよう意図的に作られている。そこでひとつ聞きたい。貴様が守っているのは一体誰だ? 私から人類を守っているのか? それとも、犯罪者どもを私の正義から守っているのか?」
レイエスはその問いかけに返答できなかった。アカンデの言葉は誰にも――国連、ICPO、アメリカ司法制度にさえ否定できない真実を語っていた。体制のしがらみによって手が出せない不正を正すべく、共に秘密作戦部隊を結成するに至ったオーバーウォッチも、彼を否定できない。レイエスの心に復讐の種が植え付けられたのは、この時のことだ。その種が芽吹き、リーパーを生み出した。
ソルジャー76(ジャック・モリソン)に勝るとも劣らない正義感を持ちながらも、煩雑な規則や体制のしがらみが、オーバーウォッチにおいて真の正義を実現する妨げになっていることに苛立っていた当時のリーパーにとって、この言葉は深く胸に突き刺さった。

そして、時には過激な手段を選んででも正義を押し通そうとする彼は、ドゥームフィストが築こうとしていた新たな世界秩序「声を上げられぬ者たちの声となり、貧困の壁を打ち壊す破城槌となり、地位の低い者を踏み台にして富を得たエリートの顎を砕く拳となる」という思想に、強く引き付けられていくことになる。
最終的に「コード・オブ・バイオレンス」は、以下の一文で締めくくられており、他のメディアで展開されてきたストーリーではあまり描かれてこなかったものの、当時のリーパーがドゥームフィストにどれほど心酔していたかがうかがえる。
過去の人生が、黒煙の中に沈んでいく。その下にある、底なしの激情に飲み込まれてしまったのだ。もはや友情もほしくなければ、愛情もいらない。大事なのは正義を求める心だけだ。それはドゥームフィストがこの壊れた世界を直すために必要なもの。今のレイエスが、唯一差し出せるものだった。
だからこそ、自身が「悪」と断じて処刑した「アントニオ」の娘に反旗を翻され、タロンを乗っ取られた現状を、彼が素直に受け入れ、組織に残り続ける方がむしろ不自然に映るのではないだろうか。
ソンブラとドゥームフィストの関係性
ソンブラについては、「コード・オブ・バイオレンス」内に登場する彼女の特に興味深いセリフとして以下を挙げたい。
「よーく聞いて。タロンにいる理由はそれぞれよ。あなたみたいに、他に居場所がないって人もいるけど、タロンのリソースが目当てって人もいるし、リーダーを信じてる人もいる。今は思想と意志と資産を持ってるドゥームフィストが覇権を握ってるけど、明日にはリーダーが変わってるかもしれないし、変わってないかもしれない。だから私も都合がよければ命令に従うけど、今はよくないから従わない。分かる?」
このセリフは、現在のタロンの状況をそのまま言い当てているようにも見える。彼女の高い情報収集能力と、初期から一貫した目的意識の強さがよく表れている場面だ。
また直前には、「心配しないで。アカンデの指示には従う。今日は利害も一致してるし」と語っており、利害関係の一致前提ではあるものの、最低限の信頼は置いていたことも読み取れる。
眼のシンボルマークの組織

2024~2025年に公開された短編小説、ヒーローたちの夜明けシリーズ「過去の亡霊」「運のいい男」でも、ソンブラはタロンの意志とは無関係に、自身の目的のために行動する姿が描かれている。その目的とは、特徴的な“眼”のシンボルマークを持った「タロンよりも強大な何か(あるいは誰か)」を突き止めることだ。

今回の人員再編で新たに加わる「エムレ」の胸部やアルティメットのマークには、同じ眼のシンボルマークが描かれており、ソンブラがこの勢力との接触を避けるためにタロンを離れた、という可能性も十分に考えられる。

さらに、今回「復讐の訪れ」でヴェンデッタが語った「忠誠心というのは常に買い手市場だ」という言葉に対し、「コード・オブ・バイオレンス」におけるソンブラは、「今どき、本物の忠誠心なんて金じゃ買えない。特にこの業界じゃね。黄金と同じくらいの価値がある」と語っている。
裕福な環境で育ったヴェンデッタと、戦後の不安定な環境で幼少期を過ごしたソンブラとでは、忠誠心に対する価値観が異なるのも自然だろう。こうした認識の違いもまた、今回の脱退に影響を与えた要因の一つではないだろうか。
そんな「コード・オブ・バイオレンス」でドゥームフィストの指示により誘拐されたシグマについても評議会に出席しておらず(出席しても普通の対話はできそうにないが)、今後どのように扱われるのか気になるところだ。
タロンに協力する新たな「外部組織」と「人物」

古株3名の脱退により優秀な人材を失った新生タロンだが、すでに新たな協力者への根回しは完了している。個人だけでなく複数の組織と手を組むことで、タロンを「日陰の時代から、眩い勝利に満ちた栄光の時代へ」と押し上げようとしている。
- ヴィシュカー(ドミナ)
- 硬質光技術による装備・防御面の強化
- デッドロック・ギャング(アッシュ)
- グランド・メサ周辺に仮拠点を構え、武器庫への突入で潜入の援護を担当
- 元オーバーウォッチ・エージェント(フレイヤ、エムレ)
- 実績ある人員の補充
- ハシモト組(ミズキ)
- 優秀な刀鍛冶(おそらくキリコの父“山神 敏郎”を含む)による武器の供給
新戦力を加え、当面の目的として掲げられているのは、ヘリックス・セキュリティーズが管理する旧オーバーウォッチ施設「グランド・メサ」への潜入だ。
この施設は、管理移管後に単身のソルジャー76によって“ヘビー・パルス・ライフル”の試作品を盗まれていることから、意外とザルなセキュリティとも言えるが、父の教え通り組織における失敗を許さないヴェンデッタの方針を考えれば、油断は禁物といったところだろうか。

また現時点では協力関係にないものの、ジャンカータウンを治めるジャンカー・クイーンとの外交役として、今後マウガが派遣されることも判明している。粗暴ながらも頭の切れる両者の交渉がどのように展開するのか、他のジャンカー組の反応や「お宝」に関する情報にも期待が高まる。
「コード・オブ・バイオレンス」は、かなり過去の時代を描いた短編小説であり、昨今のストーリー展開と直接強く結び付く作品ではない。しかし、旧タロンの思想や空気感を描いた物語として、今なお高い完成度を誇っている。
今回取り上げた内容は、数ある要素の中でも特に関連性が高いと思われるごく一部に過ぎない。「復讐の訪れ」を読んだ今だからこそ、未読の方はもちろん、すでに読んだことのある方にも、改めて読んでみてほしい一編だ。
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- タイトル:Overwatch 2(オーバーウォッチ2 )
- 発売日:2022年10月5日
- 対象機種:PC / Xbox Series X|S, Xbox One / PS5, PS4 / Nintendo Switch
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Source: Overwatch


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