『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』や『Battlefield V(バトルフィールド 5)』、『Star Wars Battlefront II(スター・ウォーズ バトルフロント 2)』、『Anthem(アンセム)』、『Titanfall 2(タイタンフォール 2)』を擁するElectronic Arts社が、1月30日に2020年第3四半期業績報告(Q2 2020 Earnings Conference Call)にて、最高経営責任者(CEO)のAndrew Wilson氏と最高執行責任者(COO)兼最高財務責任者(CFO)のBlake Jorgensen氏が各タイトルに関する報告や未来への展望を発信しました。
本記事では我々FPSゲーマー向けの話題をかいつまんでお知らせする他に、報告から読み取れるEAの動向を分析していきます。
Electronic Arts 第3四半期報告
Apex Legends
- 『Apex Legends』はEAのイノベーションを体現する最も傑出した作品。
- シーズン3はシーズン2よりも盛り上がっておりアクティブユーザーも増加。今後も定期的なシーズンアップデートでクリエイティビティを発揮していきたい。
- ゲーム業界で10年以上ものライブサービスが続いている人気タイトルは『CS:GO』『DotA2』『League of Legends』が挙げられるが、『Apex』もそれらのゲームを参考にして、3本の柱を中心に長期的なサービスを展開していく。
- 1.個性際立つおもしろいキャラクター
- 2.魅力的な世界観
- 3.高い競技性と社交性を提供し、プレイヤーとともに成長していくゲーム体験
- 2021年度は『Apex』のプラットフォームの幅を増やすことを画策している。取り組みの一つはグローバルなEスポーツコミュニティの創立。
- 『Apex』のEスポーツリーグにはLenovo, Gillette, Snickers, Pizza Hutその他企業が協賛。
- アジアでのモバイルゲームの隆盛に鑑みて、『Apexモバイル(仮)』は中国でサービスを展開する予定。
- 中国で『Apexモバイル(仮)』を代理運営する企業はモバイル版の開発全体にも関わっている。PC版『Apex』の中国代理運営も同じ企業が担当する予定。
- RespawnスタジオCEOのヴィンス・ザンペラ氏がDICE LAの指揮に着いた件に関して、移籍ではなくRespawnのCEOも今まで通り兼任していく。
- 必要さえあればヴィンス氏はDICE LAからRespawnへリソースを引き抜くこともできる。
- EAとしては、Respawnスタジオがより心を許してくれる事を期待している。
Battlefield V
- 太平洋戦線アップデートは新規タイトルに遜色ないコンテンツ量だったと認識。
- 次回作は変わりなく2022年度に予定(EA社にとっては2021年4月から2022年3月までの間)。
- 伝統的にDICE Stockholmスタジオのサポートとして付いていたDICE LAスタジオはヴィンス・ザンペラ氏の指揮の元に再出発し、今後は独自タイトルを開発する予定。
Star Wars Battlefront 2
- スター・ウォーズゲームは過去に類を見ないほど盛り上がっており、『Star Wars Jedi: Fallen Order』が大成功だっただけではなく、『SWBF2』も目覚ましい成長を遂げた。
- ライブサービスのマルチプレイゲームとシングルプレイヤーゲームが同規模の成功を遂げたのは、スター・ウォーズというIPだからこそという認識。今後も幅広い層のスター・ウォーズファンに向けて発展させていく。
Anthem
言及なし...。
その他
- 『Star Wars: Jedi Fallen Order』は2020年度終了時点で6~800万部の販売を予想していたが、現状第3期のみでその予想は達成されている。
- 年度終了時点では1000万部の販売を新たに予想、純粋なシングルプレイヤーゲームとしては著しく成功したと認識。
- EAのライブサービスモデルの成長を主導しているのは『Apex Legends』だが、『FIFA』や『Madden Ultimate Teams』およびアジアで展開している『FIFA Online』も大きく貢献している。
- これからはライブサービスモデルがEAゲームの中心になっていく。
- モバイル事業はアジアが特に大きい市場で、『Command and Conquer: Red Alert』の中国でのライセンス販売が利益を挙げている。
- 他にもさまざまなモバイルタイトルを開発中なので、今後の事業の発展に期待できる。
- Maxis、BioWare、Motive、DICE LA、RespawnとEA Sportsスタジオは、それぞれ現在開発中の新規作品を抱えている。
- Xbox OneとPlaystation 4では過去12カ月の販売のうち49%がデジタル販売で、これは前年の47%より成長した形。
- 次世代機コンシューマー機は桁違いに性能が高いので、イノベーションが一気に爆発する見込み。
- Nintendo Switchは、XboxやPlaystationと競合しないゲーム体験を提供している魅力的なプラットフォームという認識。
- ただしSwitchで成功しているタイトルのほぼ全ては任天堂の自社ブランドなので、進出には慎重な姿勢を取っている。
業績報告
- 第3期の純収入は15億9300万ドル、営業経費は7億2400万ドル、GAAP(米国会計基準)利益額は3億6100万ドル。
- 一株当たり利益は1.18ドルで、想定よりも0.26ドル上回った形に。
- 営業キャッシュフローは11億400万ドルで、うちCAPEX(設備投資費)に2800万ドルを消費し、フリーキャッシュフローは10億7600万ドル。
- 前年比1億5000万ドルの増加。過去12カ月の営業キャッシュフローは18億9800万ドル。
- 第3期は3億500万ドルを用いた310万株の自社株買いを行い、これは2018年5月より開始した2年間に渡る24億ドル自社株買いプロジェクトのうち、20億が完了したことになる。
- 第3期の総予約は19億7800万ドルで、去年より23%成長。
- デジタル総予約は14億4400万ドルで、前年比20%成長。過去12カ月ではデジタル予約が全体の77%を占めており、前年の74%よりも占有率が上がった形。
- ライブサービス予約は27%の成長をみせ、9億9300万ドル。
- モバイル事業は予約1億3400万ドルで去年よりは6%の低下、しかし予想と比べると成長した結果に。
- パソコンおよびコンシューマー機のフルタイトルダウンロード販売の総予約は3億1700万ドルで、前年比16%の成長。
見解
『Apex Legends』と「その他大勢」
FPSタイトル関連に着目するならば、『Apex Legends』とそれを擁するRespawnスタジオがEAにとっての新たな寵児になったのは間違いないでしょう。第2期業績報告でも全力のバックアップ体制を整えていることが報告されましたが、今回はEスポーツリーグの協賛企業やモバイル版の予定など踏み込んだ情報が明かされました。
『CS:GO』や『DotA2』、『League of Legends』といった世界で最も成功している競技タイトルの3つを挙げて、比肩するようなロングセラー作品を作り上げていくという強い意気込みをあらわにしたEA。『Apex』は今回の会計報告でスポットライトを一身に浴びているとも言えますが、その影がチラ見えするような情報も発信されました。
EAがFPSタイトルのeスポーツリーグ創立に大々的に乗り出すのは『BF4』以来の出来事です。『BF1』ではIncursionsという競技モードが開発未完に終わり、後継として期待されていた5対5ゲームモードも取りつぶしになった『BFV』とは鮮明な対比だと言えます。そしてこれら『BF』の競技向けモードを開発していたのは今回ヴィンス氏の指揮下に入ったDICE LA。
質問でヴィンス氏とRespawnの今後について聞かれた際に、必要ならばヴィンス氏はDICE LAからリソースをRespawnに引き抜けるとBlake氏は答えました。会計報告末尾でも「RespawnにはEAが悪役ではなく、楽しい協力関係を築ける相手だと気づいてほしい」と発言するなど、積極的にRespawnにすり寄ろうとする姿勢を見せています。
もともとのゲーム性の違いもあるので、『Apex』にEスポーツリソースを注ぎ込むのは単に渡りに船だったという解釈も可能ですが、Biowareの元職員が去年「EA内はスタジオ間のリソースの奪い合いだ」と暴露したのは記憶に新しいところ。一連のRespawn優遇がスタジオ間の関係に水を差さないことを願うばかりです。
シングルプレイヤーはまだまだいける
『Star Wars Jedi: Fallen Order』の成功はシングルプレイモードを熱望するプレイヤーにとっては1つの快挙と言えるでしょう。
FPSゲームとシングルプレイヤーキャンペーンは複雑な関係にあります。伝説的な名作『Half-Life』や、CS機でのFPSの普及に一役買った『Halo』、映画的な手法で多くのプレイヤーに感動を与えた初期の『Medal of Honor』や『Call of Duty』シリーズなど、黎明期のFPSはシングルプレイヤーこそがキーコンテンツでした。
近年でも『Titanfall 2』は素晴らしいストーリー体験を提供していましたが、『CoD:BO4』が需要を鑑みてシングルプレイモードを削除したり、EAも第1期会計報告の際は「『BFV』の業績不振の一因はシングルモードにリソースを割いたこと」と発表するなど、シングルモード好きのFPSプレイヤーは肩身が狭いと感じることも多くなってきました。
そんな中で『Star Wars Jedi』という純粋なシングルプレイゲームがマルチプレイゲームに遜色ない盛り上がりに至ったというのは、ひときわ輝く実績だと言えます。
もちろん、『Star Wars Jedi』はFPSではなく3Dアクションゲームであり、それを純粋にFPSのシングルコンテンツと結びつける事はできません。「スター・ウォーズという完成された世界と、ファン層のジェダイになりたい願望があってこそだ」とはEAも認識しています。
だとしてもライブサービスモデルのマルチプレイを主体にすると発表した中での『Star Wars Jedi』の成功は、EAの経営陣や時代の流れに1つの大きな楔を打ち込んだ事でしょう。
EAのアジア・モバイル事業の中心は中国
モバイルゲームと言えば日本も大きな市場を誇っている印象がありますが、EAにとっての「アジアのモバイルゲーム市場」は中国の方が魅力的な投資先に映ったようです。
単純な市場規模を比べるなら、2019年での日本の市場はファミ通調べで約1.2兆円と目されている一方で、中国市場は中国メディアの中商情报网によると約2.9兆円に登るとの見込みが発表されています。
市場規模の差の他にも、アリババクラウドの「中国市場と日本市場スマホゲームの違いと現状」によりますと、日本市場は人口の9割が無課金であり、1割未満の重課金プレイヤーが定着しないと収益が上がりにくい特徴をもつ特殊な地域。一方中国のユーザーは課金額を誇る傾向が強く、さらに海外IPが人気を博しており、日本よりもMMORPGなどのコアなゲーム体験が好まれているとのこと。
今回EAの試金石となった『Command and Conquer: Red Alert』は、パソコンゲームの黎明期に中国で大流行した往年の名作RTSで、人気を博す海外IPの筆頭です。それを用いて確かな手応えを中国市場から感じたことで、EAは今後も中国をモバイル事業の中心としていくことが予想されます。
Source: EA
コメント
コメント一覧 (8件)
Titanfall2を頭EAリリースで殺しておいて調子乗ってんじゃねぇぞカス
二度とリスポの足引っ張んなよ
初めはともかくその後はrespawnのせいでしょ
何度も何度も安売りしても一瞬増えてすぐ消える
フリープレイにしても人数が残らなかったあたりコンテンツの能力がないと言わざるを得ない
同時期にじわ売れしていったr6sがあるから余計にそう言える
猛者様の声を聞いてパイロットの戦術の幅も無くなったし、タイタン戦になれば…と言いたいがゲージのシステムと糞マッチングのせいでPTが最速で複数体出して蹂躙する試合が8割以上
まあ新規が来る土壌ではないよね
パイロットタイタンを消してAPEXに行ったのは(消えた個人的な悲しさを抜けば)上手くやったなあとは思うけど、あの惨状を見てたらEAに足引っ張るななんてイキってられんよね。いつ崩壊するか怖いわ
EAはBF4の成功に味をしめたのか、その未完成で出してアプデしていく悪しき方式を引き継ぎ、加えてフォートナイト、シージといったいわゆる流行りのシステムを中途半端に組み込んだゲームを発売してしまった。BFVやSWBF2はその被害者だ。
無理な収益化や似合わないeスポーツ化を強いてプレイヤーが求めるニーズを履き違えBFやSWブランドそのものを汚してしまったんだ。
APEXやSWFOの完成度の高さを見習って、ユーザー側の視点に立ち、じっくり時間をかけてそれぞれの次回作を出してほしい。
DICE LAに期待と信用をしてはいけない(戒め)
ANTHEM...お前死ぬんか...?
果たして生きていたことはあったのだろうか
いつかこのライブサービスの形態にも衰退が訪れることを願う。Fortniteは存在してはいけなかった。
そういうゲームが面白いのは認めるが、シングルプレイゲームというオアシスが駆逐されるのは勘弁。
anthemから逃げるな