[速報] MicrosoftのActivision買収：英国規制当局が"認めない"結論、Microsoftは「理解が足りない」と遺憾

Microsoftは2022年の初頭から、『コール オブ デューティ』シリーズなど人気タイトルを手がけるActivision Blizzardの買収を進めてきました。

争点となっているのは、CoDシリーズがMicrosoftの手に渡ることでゲーム業界の競争が損なわれる可能性の有無でしたが、買収の可否について調査を進めていた規制当局の1つ、イギリスのCMAがこの買収計画を認めないとする結論を発表しました。

イギリスCMAが買収を認めない結論

CMAのリリースによると、MicrosoftによるActivision買収は、コンソールゲームの業界では競争性を低める見込みは薄く、ライバルであるソニー（SIE）の競争力を損なわない点を認めつつも、一方でクラウドゲーミングサービス業界の競争性を低下させるとしています。

XboxやWindows、AzureやXboxクラウドゲーミングといった各プラットフォームを有しているMicrosoftは、イギリス国内のクラウドゲーミング業界においても既に強固な立ち位置にあると指摘。そして「世界のクラウドゲーミングサービスにおいて60～70％のマーケットシェアが予想されることから、既に競合他社に対して非常に強固」であり、この買収は現在、そして将来的に、「発展途上にあるこの市場の競争を著しく損なう可能性がある」として、買収を認めない結論を下しました。

Microsoftは遺憾の意

MicrosoftのBrad Smith氏はCMAの結論に対して声明を発し、「今回の結論は、この（ゲーミング）市場および関連するクラウドテクノロジーの実務に対する理解度が欠落していることを反映している」と遺憾の意を表明しています。買収計画を棄却するつもりはなく、引き続き実現に向けて邁進することを請け負いました。

MicrosoftはCoDシリーズを手中におさめるうえで、任天堂と10年契約を結んだほか、NVIDIAやBoosteroid（ウクライナのクラウドゲーミングプロバイダー）というクラウドゲーミングサービスを提供する企業とも契約を結んできました。さらに現在の「PS版限定コンテンツ」のようなものを無くすことで、プラットフォーム間の差も取り払い、新作CoDをより多くのプレイヤーに、より同等な形で提供していくことをアピールしてきました。

しかしこうした数多の試みが結果として、「クラウドゲーミング市場での競争阻害になりうる」という懸念を引き起こしたとすれば、Microsoft側の努力が報われないCMAの結論だったと言えるでしょう。

他国の動きとしては、日本を含めた6ヵ国の規制当局は既にこの買収を承認しています。しかし現実的にはこれらの国におけるActivisionのシェアやプレイヤー人口を鑑みたとき、イギリスやEU、米国といった、CoDの主要プレイヤー層を形成する「CoD大国」の規制当局は、これら「CoD小国」の結論は検討材料にしないことが予想されます。

CMA以外の影響力のある規制当局の判断としては、欧州委員会が5月21日に結論を下します。米国FTCによる訴訟に関するヒアリングも8月から本格化しますが、今回イギリスが買収不認可に回ったことが、どのような影響を与えるかに注目したいところです。

MicrosoftによるActivision買収の流れ

• 2022年
  • 1月：MicrosoftがActivision Blizzard買収を発表
  • 1月：CoDシリーズの行方をめぐってコミュニティで物議
  • 7月：英競争・市場庁による調査が開始
  • 9月：SIEのジム・ライアンCEOがMicrosoft批判
  • 11月：CoDシリーズをPSへ今後10年間提供し続ける契約提案
  • 12月：米連邦取引委員会が買収阻止に乗り出す
  • 12月：CoDシリーズ任天堂でもリリースへ、10年の契約締結
• 2023年
  • 1月：GoogleとNVIDIAが買収に懸念
  • 2月：MicrosoftがNVIDIAとの新たな契約
  • 3月：ソニーに対し、10年間のCoDライセンス契約を提案
  • 3月：MicrosoftがBoosteroidと10年間の契約
  • 3月：英国CMAが暫定判断、「競争を著しく後退させない」
  • 3月：日本の公正取引委員会が買収を容認
  • 4月：南アフリカの規制当局が買収を容認
  • 4月：イギリス規制当局（CMA）が買収を差し止めする結論（現在）
  • 5月21日：欧州委員会による結論（予定）
  • 8月2日より：米国FTCによるヒアリング（予定）

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Source: CMA