Microsoft(マイクロソフト)は現在もActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)の買収完了を目指しているところですが、4月にイギリスの規制当局であるCMAがこの買収を容認しない判断をしたことが、Microsoft側にとっての大きな障害となっています。
CMAの判断はまだ覆る可能性があるものの、イギリスでは買収が承認されなかった場合の「究極の選択」として、Microsoftは『コール オブ デューティ』シリーズなどActivisionのゲームタイトルをイギリスから撤退させることも検討しているそうです。
イギリス規制当局に抵抗するMicrosoft
2022年初頭から始まった、MicrosoftによるActivision Blizzard買収の動き。主な争点となっているのは、Activisionの看板タイトルである『コール オブ デューティ』シリーズをMicrosoftが獲得することによる、ゲーム市場の競争阻害の恐れです。
その後1年以上を経て、日本を含めた40以上の国々の規制当局は、この買収を「問題ナシ」として承認してきました。つい最近では、韓国の規制当局KFTCも承認。時系列は前後しますが、5月にはCoDのプレイヤー人口が特に多い地域の1つである、ヨーロッパの規制当局から承認を得られたことが、Microsoftにとって追い風となっていました。
そんな中、同じくCoD人口の多いイギリスの規制当局CMAは、買収を容認しない結論を下しました。これはMicrosoftにとって大打撃であり、7月24日からイギリスの競争控訴審判所(CAT)が行う今回のCMAの判断への審理が極めて重要になります。制度的にはここでCATがCMAの判断を覆すことは可能となっていますが、実際そうなるかは誰にも分からないのが現状です。
Microsoft社長がロンドンへ
Bloombergが報じたところによると、CATによる審理が始まる前に、Microsoftの社長兼副会長であるブラッド・スミス氏は来週ロンドンを訪れ、イギリスの財務大臣ジェレミー・ハント氏と会談を行うそうです。ハント氏はCMAの判断に批判的であるとの見方をされており、先日もCMAついて「自分たちのより広範な責任を理解しなければならない」とコメントしていたそうです。
ハント氏を説得できればMicrosoftには有利かもしれませんが、一方でスミス氏は4月に「イギリスよりもEUの方がビジネスを始めるのに魅力的な場所だ」というコメントをBBCで発しています。これが元でイギリス当局からは快く思われていないことも予想され、やはり困難は避けられないでしょう。
イギリス版CoDが消滅する?
さらにBloombergによると、スミス氏はCMAの判断にどう対応するかをMicrosoft法務部とも話し合っているそうです。もしCMAの判断を覆せなかった場合の「究極の選択」として、買収を完了させるためにActivisionをイギリスの市場からは撤退させることも視野に入れているのだとか。
これは、『コール オブ デューティ』はじめ、同社タイトルの「イギリス版」は販売・サポートされなくなり、イギリスのゲーマーたちは、EUなど他のパブリッシャーを介してCoDを購入せざるを得なくなることを意味します。
最初の発表通りであれば、会計年度2023年度中(2024年3月末まで)には完了するはずのMicrosoftによるActivisionグループ買収ですが、その規模の大きさが故か、予想以上の難航ぶりには驚かされるばかりです。過去1年に起きた紆余曲折については、以下の関連記事も合わせてご覧ください。
ちなみに本当にイギリス版CoDが無くなってしまった場合、シリーズを代表するプライス大尉やギャズ、ゴーストら、イギリス出身のメインキャラクターはなんとも居心地の悪い感じになりそうです。いずれにせよ、世界のゲーマーたちが最大に得をする形で決着がついて欲しいものです。
MicrosoftによるActivision買収の流れ
- 2022年
- 2023年
- 1月:GoogleとNVIDIAが買収に懸念
- 2月:MicrosoftがNVIDIAとの新たな契約
- 3月:ソニーに対し、10年間のCoDライセンス契約を提案
- 3月:MicrosoftがBoosteroidと10年間の契約
- 3月:英国CMAが暫定判断、「競争を著しく後退させない」
- 3月:日本の公正取引委員会が買収を容認
- 4月:英国CMAが買収を差し止めする結論
- 5月:欧州委員会が買収を承認
- 7月24日より:イギリス競争控訴審判所(CAT)による審理(予定)
- 8月2日より:米国FTCによるヒアリング(予定)
- タイトル:Call of Duty: Modern Warfare ll(コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア Ⅱ)
- 発売日:2022年10月28日
- 対象機種:PS5/PS4, Xbox X|S/Xbox One, PC(Battle.net / Steam)
Via: VGC
コメント
コメント一覧 (9件)
主要国が認めてないのに何の権限があって言ってんだろ?なんかMS追い詰められて完全に意地になってんな
IPやユーザーをこれ以上政治に振り回すのは止めなよみっともない…
マイクロソフトは、まずマルチだった作品を買収したあと独占にしたソフトをマルチに戻してから商談しろと言いたい
イギリスもおま国仲間になろうぜ
世界のゲーマーたちが最大に得をする形で決着ってMSがゲーム事業畳んで撤退することしかないんだよな
こんなやり方で仮にMSが買収してもレッドフォールみたらCODブランドが衰退していく未来しか感じないわ
結局EUからの承認条件をのむ契約書は出したの?
期限過ぎてもこれに関する情報が全く無いけど
もし本当ならMicrosoftってマジでゲーム界の癌じゃん
いやそうでなくとも既に十分害悪なんだが
焦りすぎてもうヤケクソなこと言ってるなw
FTCにもダメって言われたらアメリカからも撤退すんの?w
一種の脅し?w