『Call of Duty(コール オブ デューティ / CoD)』のアンチチートを担う「Team RICOCHET」が9月18日、チート産業の構造と対策の全体像を公式ブログで公開しました。試合に1つのチートが紛れ込む裏には、開発者・販売業者・再販業者・アカウント売買・検知回避サービスが連なる市場があります。RICOCHETが狙うのは個々のチーターではなく、その市場そのものです。
- 3行まとめ
- RICOCHETがチート産業の構造を公開、標的は個人のBANより売る側の市場
- 業界全体のチート市場は年間85億ドル(約1兆3400億円)の推計で、eスポーツ全体を上回る
- 再販375件超を妨害・業者31社を閉鎖、先月だけで7万件超のハードウェアBAN
チート産業は年間1兆円、eスポーツ全体より儲かっている
RICOCHETがまず示したのは市場の大きさです。ゲームの不正行為を追う脅威情報企業Intorqaが今年2月に出した分析によると、主要15タイトルのチートのサブスクリプション収入だけで年間約35億ドル(約5500億円)にのぼります。公表されたBAN数とチートの価格、プレイヤー人口から逆算した値で、調査に入っていないタイトルや地域を含めればもっと膨らむ「下限」の数字です。
ここにアカウント売買、ブースティング(代行プレイで戦績やランクを吊り上げる行為)、スプーファー(ハードウェア情報を偽装してBANをすり抜けるツール)といった周辺サービスを足すと、Intorqaの見立てはチート経済全体で年間約85億ドル(約1兆3400億円)になります。幅を持たせても51億ドルから138億ドル(約8000億円から約2兆1700億円)で、2026年のeスポーツ全体の予想収益51億ドルを中央値で上回り、上限なら英国が1年にゲームへ使う金額の2倍に当たります。
「無数のチート」は錯覚、頂点の少数が名前を変えて同じ物を売る
RICOCHETによれば、市場はピラミッド型です。頂点にいるのは少数のチート開発者で、多くは再販業者やサポート担当を間に挟み、自分は販売や宣伝の表に出ません。その下の販売業者が顧客へ直接売りつつ再販業者にも卸し、さらに下で何層もの再販業者が同じ商品を別のストアやコミュニティに流します。RICOCHETはこうした業者を数百社規模で追跡しているとのことです。

この構造が生むのが「品揃えの錯覚」です。市場には無数のチートがあるように見えますが、実際には同じ製品がロゴと名前とストアだけ変えて並んでいるケースが多いといいます。売っている人間が作った人間でないケースもあり、再販業者がソースコードを買い取ったり盗んだりして別ブランドで再包装します。検知済みの製品を延命でき、BAN情報を話すコミュニティが分断され、何もしていないのに「新製品」に見えるわけです。RICOCHETが主要な販売業者に加えて、検知済みチートを塗り替える再販業者まで標的にする理由はここにあります。
売り手が客を安心させる手口も明かされました。検知されて製品が使えなくなっても「インフルエンザ」「手術」「交通事故」を理由に数か月の停止を説明した開発者がいたそうです。代金を集めて消える出口詐欺や、大きな検知の波が来ると「法的措置を受けた」と称して沈黙し、別の名前で店を開き直す業者もいます。
売る側を潰す:業者31社を閉鎖、再販375件を止めた
この市場に対してRICOCHETは、技術的な検知・アカウントセキュリティ・TPM 2.0の強制・調査・法的措置の5つを重ねています。それぞれが担当する相手は別で、チートそのものと不正な挙動、代替アカウント、ハードウェアと検知回避、流通網、そしてそれを動かす人間です。

実績も数字で示されました。RICOCHETはこれまでに375件超の再販業者の営業を妨害し、80件超の活動停止要求を送り、31社の主要な販売業者の閉鎖に関わったといいます。法的措置は業者の収益・決済手段・取引関係を直接叩くので、商売を続けるほど割に合わなくなります。チート業者が突然オフラインになったり、チーターが試合に戻れなくなったりするのは、市場に圧力が伝わっている兆候だとRICOCHETは説明しています。
Activisionは8月にチート製作者の自宅へ乗り込んで活動停止通告を手渡す映像を公開し(詳細記事)、9月には訴訟でチート組織「Zenith」「Devware」を恒久停止に追い込んでいます(詳細記事)。今回のブログは、この一連の動きが「売る側を潰す」という1本の方針でつながっていることを公式が言語化した格好です。
チート商売は「ソフト」「アカウント」「BAN回避」の3つで回る
RICOCHETは市場を「チート」「アカウント」「検知回避」の3本柱で捉えています。互いに客を送り合う関係で、1本を叩けば残りにも不安定さが広がるそうです。
チートはいちばん分かりやすい柱で、エイムボット、ウォールハック、レイジチート、アンロックツール、DMA機器、それにCronus・XIM・Titanのような入力を改変する外部デバイスまで含みます(詳細記事)。月額や週額、プレミアムパッケージの形で売られ、「プライベート」「カスタム」「限定」を謳っていても再販網で同じものが広く流れています。対策はゲームに干渉する不正ソフトの検知と、長期のプレイ傾向から自動補助のパターンを拾う挙動分析の二段構えです。
アカウントはチーターの消耗品です。BANで消えるたびに補充が要るので、盗まれたアカウント、育成済みのアカウント、ランクプレイに参加できる状態のアカウント、ブースティングの市場ができています。背景には乗っ取りの多さがあり、米消費者金融保護局が引いた1万人規模の調査では、3人に1人が過去2年でゲームアカウントを乗っ取られたと答えています。RICOCHETは二段階認証の必須化で乗っ取りを減らしつつ、使い捨てアカウントの供給も絞っています。TPM 2.0・Secure Boot・Remote AttestationによるPCの整合性チェックも、この層でチーターのコストを上げる仕掛けです。
検知回避は常習犯を支える柱で、スプーファーや回避ツールを売ってBAN後の復帰を助けます。RICOCHETはMicrosoft Azure Attestationのような要件を加えた挙動・技術検知で対抗し、ハードウェアBANの精度も上げてきました。先月だけで7万件超のハードウェアBANを新たに出したとのことです。
チーターは月6,000円、年16万円払って個人情報まで差し出す
売る側への圧力は、使う側の財布にも跳ね返ります。サブスク型のチートは平均で月40ドル(約6300円)前後、高いものは100ドル(約1万5700円)を超え、スプーファーが別料金で乗ります。1人で年1,000ドル(約15万7000円)を超える計算で、DMA機器まで手を出せばさらに増えます。BANされればそこまでの支出はまるごと消えます。RICOCHETが「負ける投資」と呼ぶのはこのためです。
金銭だけでは済みません。多くのチートコミュニティはフォーラムやダウンロードの前にアカウント認証を求め、その過程で実IPアドレス、紐付いたDiscordアカウント、ハードウェア情報、メールアドレス、支払い情報が業者側に渡ります。写真付きの身分証明書を要求する業者もあり、製品にマルウェアを仕込む開発者もいます。セキュリティ保護を自分で切った状態でそれらを差し出すことになるわけです。
PCで『CoD:MW4』を遊ぶならTPM 2.0とSecure Bootを有効に
ブログに合わせて公式Xは、10月23日発売の『Call of Duty: Modern Warfare 4(コール オブ デューティ:モダン・ウォーフェア4 / CoD:MW4)』をPCで遊ぶにはTPM 2.0とSecure Bootが必須だと改めて告知しました。マザーボードメーカーと協力して必要なアップデートを広げているとし、ベータで弾かれた人にはBIOSやファームウェアの最新版を確認するよう呼びかけています(詳細記事)。

『CoD:MW4』はPC(Steam / Microsoft Store / Battle.net)、Xbox Series X|S、PS5、Nintendo Switch 2向けに10月23日発売です。チート市場は年間1兆円超、RICOCHETは再販375件超を妨害して業者31社を閉じ、先月は7万件超のハードウェアBANを出しました。PCで参戦するなら、TPM 2.0とSecure Bootの有効化だけは発売前に済ませておきましょう。

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Source: callofduty.com, intorqa.gg, x.com
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コメント
コメント一覧 (1件)
>1人で年1,000ドル(約15万7000円)を超える計算で、DMA機器まで手を出せばさらに増えます。BANされればそこまでの支出はまるごと消えます。RICOCHETが「負ける投資」と呼ぶのはこのためです。
この辺がマジで開発側が時勢を理解してないよなあ
今どきチートに投資しても動画サイトで隠れチーターとして投稿してフォロワーと再生数を獲得すれば余裕でペイ出来るからこんだけ規模がデカくなってんのよ
ApexやValorant見てりゃ分かるけど聞いた事もないポっと出のやつが異常なエイムやリコイルコントロール・敵の位置読みをバンバンやって「プロになれば?オフラインの大会出れば?」の声ガン無視でオンライン上でのみの活動で素性を隠して金銭を得られるシステムをどうにかしないとこれは今後ずっと付きまとう問題だよ