[速報] 控訴否決でアクティビジョン買収が前進、FTCは税金の無駄遣いと批判され資金25％カットの危機

Microsoft（マイクロソフト）のActivision Blizzard（アクティビジョン・ブリザード）買収の勝訴判決に対し、連邦取引委員会（FTC）が控訴を裁判所に提出したが却下された。 なお、アメリカでは近年のFTCの活動が税金の無駄遣いであるとして、資金が25％カットされる見込みとなった。

アクティビジョン・ブリザード買収にまた一歩前進

アメリカ現地時間7月12日にFTCが第9巡回区控訴裁判所に控訴を提出、しかしマイクロソフトとFTCの裁判官を務めたコーリー判事がこれを却下した。 控訴を完全に棄却するには第9巡回区控訴裁判所も同意する必要があるが、判決を覆さなければアメリカでマイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収が決まる可能性が高い。

コーリー判事が控訴を却下する前に、FTCは連邦裁判所に控訴の判決がでるまでマイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードの買収協議を一時停止させる命令を求めた。

約690億ドルという巨大な買収だが、アメリカ現地時間7月18日までにマイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードが合意に至る必要がある。 ただし締切日は延長できるので、両者が買収に不合意で取引決裂する可能性は低い。

そんな買収協議だが、現在マイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードは現地時間7月15日まで話し合いの席につくことを一時的に禁止されている。 FTCは控訴の判決がでるまでこの一時禁止命令の延長を求めたわけだ。

マイクロソフト プレジデントのBrad Smith氏は「FTCが明らかに弱い訴訟を追求し続けていることに失望しており、遅延行為に反対します」と表明している。

敗戦続きのFTC

FTCはアメリカ国内では非難の対象となっている。

2021年にバイデン大統領に任命されたFTCのリナ・カーン委員長は巨大テック企業の権力を抑制しようと厳しい姿勢を取っている。とくに今回の買収のような案件には敏感で、過去にはメタ社がVRアプリ制作会社が買収しようとしたときも立ちふさがった。 ところが買収阻止が目的の裁判では0勝4敗の連敗街道を邁進してしまっている。

これが税金の無駄遣いとして、アメリカ現地時間2023年7月13日に共和党がカーン委員長を召喚して公聴会を開き、カーン委員長が厳しい追求に晒された。 *FTCの控訴が却下されたのは公聴会のあと。

アメリカは2024年に大統領選を控えており、共和党からすれば民主党政権のFTCは格好の攻撃の的だ。民主党はカーン委員長の姿勢を評価しているが、やはり最近のFTCの敗戦イメージは拭いきれない。

FTCも決して負け続けているわけではない。 直近ではAmazon傘下のセキュリティカメラ会社Ringの従業員が勝手に顧客のカメラを覗いてプライバシーを侵害したとFTCが告発し、580万ドル(約8億円)の支払いで合意した。このようにFTCの取り組みは評価されるところは評価されている。 ただ買収関連の裁判は全敗しており、とくにマイクロソフトとの裁判が税金の無駄遣いとして世論の声が大きくなっている。

FTCは予算の37％アップを要求していたが、財源を管理している歳出委員会は共和党委員が多く、予算アップどころか資産25％カットになるだろうと宣告された。

そんな状況でもカーン委員長は独占禁止法の執行を追求する意志を固め、アクティビジョン・ブリザード買収に今後も立ち向かい続けるようだ。

MicrosoftによるActivision買収の流れ

• 2022年
  • 1月：MicrosoftがActivision Blizzard買収を発表
  • 1月：CoDシリーズの行方をめぐってコミュニティで物議
  • 7月：英競争・市場庁による調査が開始
  • 9月：SIEのジム・ライアンCEOがMicrosoft批判
  • 11月：CoDシリーズをPSへ今後10年間提供し続ける契約提案
  • 12月：米連邦取引委員会が買収阻止に乗り出す
  • 12月：CoDシリーズ任天堂でもリリースへ、10年の契約締結
• 2023年
  • 1月：GoogleとNVIDIAが買収に懸念
  • 2月：MicrosoftがNVIDIAとの新たな契約
  • 3月：ソニーに対し、10年間のCoDライセンス契約を提案
  • 3月：MicrosoftがBoosteroidと10年間の契約
  • 3月：英国CMAが暫定判断、「競争を著しく後退させない」
  • 3月：日本の公正取引委員会が買収を容認
  • 4月：英国CMAが買収を差し止めする結論
  • 5月：欧州委員会が買収を承認
  • 6月：Microsoftスミス氏が訪英。イギリス抜きで買収完了の可能性示唆
  • 6月：FTCが連邦裁判所に買収の仮差し止め申請
  • 7月11日：FTCの仮差し止め請求棄却。期限までの買収が可能に
  • 7月12〜13日：FTCが控訴するも却下される（現在）
  • 7月24日より：イギリス競争控訴審判所（CAT）による審理（予定）

Source: The Verge, CNN, Reuters